「たっだいまァ~」

 君島が自宅の扉を開けた時、日は殆ど落ちかけていた。
1日アルバイトに精を出し、体中に疲労が溜まっている。稼ぎが多いとはお世辞にも言えないが、いい暮らしだ、と君島は思う。
都市はしっかりと整備されて、犯罪もあるにはあるが崩壊地区のような無法地帯にはなっていない。
かつて潜入した市街内部の様子とよく似ている。渓谷のように荒れ果てた地形を、君島は市内で見かけたことが無かった。

 今も大金があるわけではないが、食うもの、寝る場所、着るものには何ら不自由していないし、ここではヤバい橋を渡る必要もない。
こういう場所に生まれてれば、自分もアイツも痛い思いや苦しい思いをしながら、日々を生きることも無かったのだろう。

「今日も一日平和に終われそうだな。良かった、良かった」

「いつまでも続くわけじゃない。油断するな」

「暗くなる事言うなよ、アーチャー。ほれ、メシメシ」

 靴を脱ぎ、廊下に足を着けるとアーチャーが実体化した。現実に引き戻された君島は顔をしかめる。口調はうんざりとしているが、声音に重苦しい物はない。
テーブルに荷物をおろし、帰りがけに買ってきた出来合い弁当を渡す。アーチャーが希望したのは、俵形の握り飯とおかずとを詰め合わせた幕の内弁当。

 サーヴァントが飲食を必要としないのは知っているが、食事風景をじっと見られるのも居心地が悪いため、彼にも注文を聞いたのだ。
ちなみに彼の注文は君島が頼んだメニューと同じもの。めぼしい物が無かったのだろうな、と思ったが口にしないでおいた。



 まもなく二人は食事に取り掛かる。
君島がBGM代わりにテレビの電源を入れるとアーチャーは画面に視線を向けたが、何も言う事なく手に取った弁当に視線を戻した。
数十分もすれば食事は終わり、お互いに空の容器をビニール袋に納めた。ややあって、烏龍茶を飲んでいた君島が口を開いた。

「方針を決めたぜ~。アーチャー」

「……」

 アーチャーが電源を消す。聞く姿勢が整ったことを確認して、君島は話を続ける。

「俺たちは脱出を目標とする。話の合いそうな奴らだったら同盟を組む。で、襲ってくる奴らは迎え撃つ」

「困難な道だぞ、それは」

「それくらいわかってるよ、俺にだって」

「蘇生を願う気はないのか」

「え~~!…俺もさぁ、それは考えたんだけど……せっかく生き返ったのに殺し合いとか、やってらんねーだろ?」

 口調は冗談めいていたが、中身はもう少しシリアスだった。
ホーリーによるネイティブアルター狩りに反旗を翻した――主動ではなかったが――君島は戦いの中で命を落としたのだ。
意識が虚無に還っていき、次に目覚めたのはこの場所。1LDKの一室だった。

 記憶を取り戻してまず考えたのはアイツ――カズマと、彼と一緒に暮らしているかなみの事だ。
元来血の気の多いカズマのこと。自分の死を知り、暴走する事は容易に想像できる。
そうでないなら良し。そうなったとしても驚きはないが……運悪く死のうものなら、残されるかなみが不憫だ。

306 :君島邦彦&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ:2016/07/24(日) 19:06:13 ID:SFxhAoD60
 復活した以上は帰らなくてはならないと思うが、かといって復活した後まで殺し合いなど馬鹿馬鹿しい。
すんなり脱出させてくれないかなぁ……。陸地が指先ほども見えない洋上を、一人で漂っている気分だ…いや、二人か。

「…カズマならなぁ」

「カズマ?」

「!…あぁ、俺の、……ダチだ」

「ダチ…」

 聞かせるでもない呟きを、アーチャーは耳聡く拾った。
観念したように息をつくと、君島は語り始める。まともな姓すらない無法者の話を。甲斐性無しのろくでなしの、拳一つで全てに抗い続ける相棒の強さを。


 声をかけたのは自分から。度々仕事を持っていくようになり、そのうちつるむようになった。
一人の男として、あの迷いの無さが羨ましくなる事もある。こっちは無茶をした挙句に死んでしまったが、後悔はしていない。

 話を続けるうちに、過ぎ去りし日のカズマが思い出される。
一仕事終えた後の年相応の安堵。敵を前にしたケダモノの笑み。どうにもならないものに吼える怒りの表情。

 カズマならきっと迷わない。あれは媚びるような真似を何より嫌う男だ。
同じ立場だったなら、躊躇なく主催者に当たっていくのだろう。聖杯への未練を捨てきれないで足踏みしている自分とは違う。

――二人にもう一度会いたいが、殺し合いに身を投じる気はない。しかし脱出ルートなど本当にあるのか?聖杯を手に入れないまま、生きてロストグラウンドに降り立つ事など可能なのだろうか? どうせ進むなら確実に帰れる道がいい。だが一般人の自分が聖杯戦争に勝ち残る確率なんてどれくらいある?

話しているうちに、様々な懸念が君島の奥底から浮かび上がってきた。口には出さないが、二歩目をつける足場が見当たらないのが不安でしょうがない。


 小さな憂いを誇らしさでくるんだ声を、居間が吸い込んでいく。アーチャーは一切口を挟まないで、君島が語るに任せた。
話に聞き入るその目には、過去を懐かしむような色が浮かんでいる。




 アーチャーが次に口を開いたのは、話し終わった君島が立ち上がりかけた時だった。

「苦労してんだな、お前も」

「……おお、そうなんだよ!いつも自分勝手でさ」

 アーチャーの言葉に愛想笑いで応じる。二人で肩を組んで笑いあった事もあれば、意見が合わずに衝突することもあった。

 カズマは決断が非常に早い男だが、それは他人を顧みない態度に通ずる。
君島自身、ヒヤっとさせられた事は一度や二度ではない。その剛毅さを羨ましく思うが、やはり馬鹿だと思う。

「焦るなよ。道は俺が開いてやるから、お前の納得いく様にやってみな」

「頼もしい事言ってくれるじゃない。当てにしてるぜ、アーチャー」

 立ち上がった君島は人懐こい笑顔を向けた。今度はお調子者の彼らしい、自然な笑みだった。

307 :君島邦彦&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ:2016/07/24(日) 19:06:51 ID:SFxhAoD60
【クラス】アーチャー

【真名】シーザー・A・ツェペリ

【出典作品】ジョジョの奇妙な冒険 Part2 戦闘潮流

【性別】男

【ステータス】筋力C 耐久B 敏捷B 魔力C 幸運C 宝具A

【属性】
中立・善


【クラススキル】
対魔力:C
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。


単独行動:A
 マスター不在でも行動できる。
 ただし宝具の使用などの膨大な魔力を必要とする場合はマスターのバックアップが必要。


【保有スキル】
波紋呼吸法:A
 特殊な呼吸法によって、肉体にエネルギーを生み出す技術。
 習得者は治癒力の向上、耐久値の向上、攻撃時のダメージ増加、水面を自在に移動できるなど様々な恩恵を受けることができる。
 また、波紋は太陽と同質のエネルギーを持っているため、吸血鬼など日光を弱点とする相手に対しては通常よりダメージ増加量が大きくなる。


心眼(真):B
 修行・鍛錬によって培った洞察力。窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
 逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。


勇猛:B
 威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
 また、格闘ダメージを向上させる効果もある。


戦闘続行:E
 往生際が悪い。
 致命傷を負った後でもしばらくは現界可能だが、戦闘能力は激減する。



【宝具】
『綺羅星の爆弾(シャボンランチャー)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1~15 最大捕捉:10人
 波紋を流したシャボン玉を作り、勢いよく発射する技。
 このシャボン玉は高い強度を持ち、物体に接触でもしない限りは割れることが無い。
 炸裂する事で対象に波紋を流してダメージを与えるほか、大量に作り出す事で敵の動作を制限する事が可能。


『受け継いだ流体の刃(シャボンカッター)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~15 最大捕捉:10人
 祖父ウィルの技「波紋カッター」を参考にした宝具。
 高速回転する円盤状のシャボン玉を発射、敵を切り裂く。

 上述宝具同様の特徴に加え、プロテクター程度は容易く切断しながら対象の身体を切り刻むほどの威力を持つ。
 また弾速もシャボンランチャーと比較すると、格段に向上している。

 くわえてシャボンカッターはレンズの性質を持つ。
 滞空させておくことで日光を反射・集束させ、太陽光線を任意の方向へ照射する事が可能。


『これが最後に練る波紋(血のシャボン玉)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
 死の間際、ジョセフのために解毒薬を決死の覚悟で奪い取った逸話が宝具となったもの。
 霊核の損傷が50%を上回った時点で解禁。敵サーヴァントに接触する事で「形を持つAランク以下の宝具」を奪い取り、血で作ったシャボン玉に入れて飛ばす事が出来る。

 条件さえ満たしていればシャボン玉に収納する際に適当なサイズまで縮小されるが、納められる宝具は一種類のみ。
 宝具はアーチャーが奪い取った時点で本来の持ち主の支配下を離れ、シャボン玉から取り出した相手が次の担い手となる。

 シャボン玉には守護の概念が込められており、奪い取られた相手が宝具を取り返そうとする事を拒む。
 担い手は受け取った宝具の真名解放すら可能。マスターすら宝具の担い手にしてしまうが、その場合は相応の消費を覚悟しなければならない。



【weapon】
衣装に仕込まれている特殊石鹸水。


【人物背景】
かつて吸血鬼ディオにジョナサン・ジョースターと共に立ち向かった「ウィル・A・ツェペリ」の孫。
イタリア男らしいナンパ野郎だが、根は真面目で正義感が強く、一族を誇りとする好青年。

ジョナサンの孫ジョセフとは最初は反りが全くあわなかったが、柱の男との初戦での行動から彼を見直し、修行を通して無二の親友となった。
柱の男のアジトのホテル前でジョセフと意見が食い違い、単身ホテルへ乗り込んでしまう。

力及ばず敗北した彼だが、解毒剤入りのピアスを残った力で奪い取ると血のシャボン玉に入れて飛ばし、それをジョセフに託して死亡した。


【聖杯にかける願い】

308 :君島邦彦&アーチャー ◆0080sQ2ZQQ:2016/07/24(日) 19:07:24 ID:SFxhAoD60
【マスター名】君島邦彦

【出典】スクライド(TV版準拠)

【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
「フィクサー」
招かれる前は危険な仕事の斡旋で身を立てていた。
広い人脈に加えてコミュ力がかなりあり、ならず者の集まりであるネイティブアルター使いの連合を結成できる。


「意地」
時には弱音を吐く彼にも五分の魂。
右腕一本で理不尽に立ち向かう友の雄姿は、今も心の中に。


【ロール】
フリーター。


【人物背景】
近未来の神奈川に突如出現したロストグラウンドの崩壊地区で生きる青年。
便利屋の青年「カズマ」に仕事の斡旋をするフィクサーであり、彼が最も信頼する友人。

基本的にカズマとコンビで仕事をしており、主に頭脳労働を担当。

武装警察ホールド、およびアルター使いで構成された特殊部隊ホーリーの侵攻に苦戦するカズマの元に駆けつける最中、背中に銃撃を受けてしまう。
力を合わせて敵アルター使いが操る「ダース部隊」を倒した後、カズマの背の上で息を引き取った。

死亡後から参戦。


【聖杯にかける願い】
帰りたいんだけどさぁ……。



【把握媒体】
アーチャー(シーザー・A・ツェペリ):
原作漫画。コミックスなら5~12巻、文庫版なら4~7巻。
アニメ版なら第10話~第26話。


君島邦彦:
TVシリーズ全26話。退場する12話まででも把握は可能ですが、以降にも度々イメージとして登場するので、全話視聴を推奨します。
DVD、ブルーレイ、バンダイチャンネルなどで把握可能。

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最終更新:2016年08月05日 22:03