そこは何処かの会議室だった。
空気を弾く音が響く。髭面の男の胸が瞬時に刳り貫かれ、肩が同じ速度で不可視の獣に齧られる。
崩れ落ちる髭面の背後で、禿頭の男が恐怖に後退った。

 室内の床一面は血の海になっている。意を決した禿頭は銃口を殺戮者に突きつけるが、そいつが腕を振ると、銃口を向ける手が真っ赤に染まった。
再び小気味よい音が鳴り、男の手首から先が消失する。三度目の音が鳴り、禿頭は周囲の同僚たちと同じ運命をたどった。

 並ぶ肘掛け椅子の近くには既に事切れた者たちが寝転がっており、二人の男と同様に身体のどこかを抉られている。
下手人は自分。事態を呑み込めない者、逃げ惑う者、その場にいた全員の生命を奪い取ったのだ。



 そこはガラス張りの庭園だった。
青白く光る石造りの花々が姿を消した室内に黒い影が立っている。
振り向いたそれの顔は仮面で覆われており、描かれた表情以外は窺えない。自分は何事かを言い放ったのち、腕に巻かれた包帯を解いた。

 その行為は自分に限って言えば、一般人が銃火器のセーフティを解除するのに等しい。
勝ち星をまた一つ上げる歓喜と確信に顔を歪めて、自分は血の伝い落ちる腕を大きく横に薙いだ。




 中華服の男――魏(ウェイ)は現在、自宅から冬木の街並みを眺めている。
冷たい感じがする顔は整った造りをしていたが、左半分の巨大な火傷痕がその魅力を大きく損ねていた。
地獄門が出現した東京にいた彼は、見知らぬ土地で奇妙な戦いに参加することになった。聖杯、サーヴァント、令呪、魔術。オカルトの住人となった魏から見ても鼻で笑いたくなる。

312 :魏志軍&ランサー ◆0080sQ2ZQQ:2016/07/26(火) 18:21:54 ID:G2HMzbEU0
 唐突に気配が一つ増えた。
振り返ると若い男が座り込んでいる。端正な顔立をした美男子だが表情には生気がない。

「確認します。あなたが私のサーヴァントですか?」

「……ランサーだ」

 男は壁に背中をつけたまま名乗った。
ランサーは溜息をもらすと視線を魏から外し、どこか遠くを見始めた。
サーヴァントの様子に困惑しつつも、魏は投げる言葉を考える。

 使い捨ての命令権など当てにはできない。自分より力の無い相手に首輪を繋がれるのだ。さぞ不愉快だろう。
蘇ってまで成し遂げたい悲願があるなら、如何にマスターを出し抜くか考えるのが道理。
ならばサーヴァントと良好な関係を築く事、多くの情報を引き出しておく事が自身の生存に繋がるのであり、その為に必要なのは円滑な意思疎通だ。
まずは相手の逆鱗に触れないように、注意深く探りを入れていこう。

「この場ではっきりさせておきますが、私は聖杯を必要としていません。脱出―」

「―俺も聖杯はいらない」

 呆然となった彼は口を開ける。
おかしい。植え付けられた知識では、サーヴァントとは聖杯を求めて召喚に応じた者達のはずだ。
聖杯に興味がないと言うのなら、この男は戦いの場を求めてきたのか?魏は推測してみるが、目の前の脱力しきった姿からは戦意や殺気を一切感じない。

 黙考する魏の前で、ランサーは打ちのめされたように黙っている。

「…では貴方の目的を教えて頂けますか」

「俺の目的は、そうだな………お前の奥にある闇だ」

 首を動かした空虚な瞳が魏を捉えた。
ランサーは勢いをつけて立ち上がると、ゆらめくような足取りで近づいてくる。

「いい面構えだ、マスター。お前を駆り立てるものは何だ?」

 窓際に立つ男に顔を寄せるランサーの問いには、どこか陶然とした響きがあった。

――言うべきか?

 秘密にする事柄でもないのだが、この気だるげな男の言うままに動くのは釈然としない。
しかしランサーとの間に、不用意に溝をつくるのは避けるべきだ。

「……殺さなくてはならない男がいます」

「………」

313 :魏志軍&ランサー ◆0080sQ2ZQQ:2016/07/26(火) 18:22:42 ID:G2HMzbEU0
 名はBK201。電気の流れを自在に操る契約者。
契約者となった魏は、自分を無敵の存在と信じた。
力を手に入れてからはどんな相手だって倒すことができたし、警察にもマフィアにも一切恐怖する事が無くなった。
その誇りを打ち砕いたのが、あの晩に出会った仮面の契約者――BK201。

 痛みは傷となり、敗北の恐怖は屈辱となって心の底にへばりついた。
これを消し去らない限り、魏はどこにも向かう事が出来ない。

「殺せると思ってるのか」

「……」

 挑発的な物言いに、魏は口を一文字に結ぶ。

 勝敗はアンバーの態度から薄々察している。
年齢を対価に時間を自由に操り、BK201――黒(ヘイ)を守ろうとしている彼女が、彼を殺せる人間を案内役につける筈はない。
結果が分かり切っているからこそ、アンバーは気兼ねなく自分との約束を守る事が出来たのだろう……それでも、

「結果は問題ではないのです。ただ、戦わずにはいられない……!」

 素直に吐き出してしまった。適当に言いくるめればいい、とも思ったが、そうさせない力がランサーの瞳にはあった。
彼と会話していると、人気のない湖で愚痴を零しているような気分になる。

 聖杯に黒の死を願う、という選択も頭の片隅を過ったが即座に捨てた。自分の実力で勝利をもぎ取ってこそ意味がある。願望器など求めたことは一度だってないのだ。



「…ふふっふっふ」

「…?」

「あっはっはっはっ!!」

 ランサーは魏の答えを聞くと顔をわずかに動かし、まもなく明るい笑い声をあげた。
眉を寄せる魏から身を引き、躁病のように絶え間なく笑い続ける。

「何が可笑しい…!?」

「はぁぁ…、いいぜ、お前と一緒に行こう」

 魏が声を震わせると笑いを収め、表情をもとの気怠いそれに戻した。
ランサーは共に戦ってくれるらしい。彼が如何なる過程を経てその答えに辿り着いたかは知らないが、まずまずの成果を得られた魏は肩の力を抜いた。

 そうしたら次は情報収集に向かおう。有り難いことに魏のロールはフリーランスのヒットマンであるため、勤め人のように時間の制約がない。
来日して日が浅い為に取れる手段は多くないが、能力と経験でかなりの部分をカバーできるはず。見方を変えれば、聖杯戦争は黒の前座にうってつけとも言える。
聖杯を掴みとった暁には、アンバーの予知を覆すことだって不可能ではあるまい。


 気を取り直した魏は出掛ける準備を済ませるとランサーに声を掛け、自宅の玄関に歩を進めた。

314 :魏志軍&ランサー ◆0080sQ2ZQQ:2016/07/26(火) 18:23:28 ID:G2HMzbEU0
【クラス】ランサー

【真名】矢車想

【出典作品】仮面ライダーカブト

【性別】男

【ステータス】筋力D 耐久D 敏捷D 魔力E 幸運D 宝具B

ザビー(マスクド) 筋力B 耐久B 敏捷D 魔力E 幸運D 宝具B

ザビー(ライダー) 筋力C 耐久C 敏捷B 魔力E 幸運D 宝具A+

キックホッパー 筋力C+ 耐久C 敏捷B 魔力E 幸運D 宝具A+


【属性】
中立・中庸(秩序・善)


【クラススキル】
対魔力:E(C、C+++)
 状態によって変化する。
 矢車は魔術の無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
 ザビー・マスクドフォームは第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
 ザビー・ライダーフォームおよびキックホッパーはその特性から、Aランク以下の時間干渉をキャンセルできる。


【保有スキル】
精神汚染:D
 信念を捨てた自暴自棄で無気力な有り様。
 他の精神干渉系魔術を低確率でシャットアウトする。ただし同ランクの精神汚染がない人物とは意思疎通が成立し難い。


心眼(真):A
 修行・鍛錬によって培った洞察力。窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
 逆転の可能性がゼロではないなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。


完全調和:-
 低ランクのカリスマと軍略を内包する特殊スキル。生前の経緯から喪失している。

315 :魏志軍&ランサー ◆0080sQ2ZQQ:2016/07/26(火) 18:23:55 ID:G2HMzbEU0
【宝具】
『金色の栄光、今は遥か遠く(マスクドライダー・ザビー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 出現させたザビーゼクターとライダーブレスを使用して、仮面ライダーザビーに変身する。
 ザビー資格者は精鋭部隊「シャドウ」のリーダーを務めることになる。

 マスクドフォーム時は高い防御力を得るが、サーヴァントを相手取るには頼りない。
 キャストオフを行い、ライダーフォームに移行すると耐久力が落ちるがその分身軽になり、俊敏な戦闘を行う事ができるようになる。
 必殺技はゼクターを操作することで発動する「ライダースティング」。

 完全調和を捨て去ったランサーには必要ない代物。クラス補正によって押し付けられた栄光の残り滓。
 どうしても使わせたいなら、令呪一画を切るしかないだろう。


『地獄への道連れを探して(マスクドライダー・キックホッパー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 出現させたホッパーゼクターとゼクトバックルを使用して、仮面ライダーキックホッパーに変身する。
 マスクドフォームは存在せず、直接ライダーフォームに変身する。
 ゼクターはリバーシブルになっており、差し込む方向を変えるだけでパンチホッパーに変身できる特性を持つが、宝具化した現在は機能していない。

 パワーを向上させる特殊兵装アンカージャッキが脚部に備わっていることにより、多彩な足技を振るう事が出来る。
 必殺技はゼクターを操作することで発動する「ライダーキック」。


『昨日の自分より速く走れ(クロックアップ)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 マスクドライダーシステム・ライダーフォームの共通機構。上述宝具の展開中のみ使用可能。
 簡単に言うと一時的に超高速で行動できるようになる。

 全身を駆け巡るタキオン粒子を操作する事で、ランサーは時間流を自在に行動可能になる。
 同ランクの時間干渉への耐性を持たない限り、宝具展開中の彼を認識するのは不可能。

 自分の時間の流れが速くなることで、発動中は世界が静止しているように見える。
 単純な加速ではなく時間操作に分類されるため、展開中も攻撃力は変化しない。

 持続時間は短く、数十秒程度で自動解除される。自ら解除する事も可能。
 生前とは違い、発動させる度に一定量の魔力が自動消費される。マスターは令呪一画で魔力消費を回避できる。


【weapon】
宝具に依存。


【人物背景】
ZECTの精鋭部隊「シャドウ」の元隊長。
パーフェクト・ハーモニーを信条に掲げ、部下たちから絶対的な信頼を寄せられている。
スタンドプレーを重んじる仮面ライダーカブト・天道総司の抹殺指令に執着するうち、シャドウリーダーの資格を失ってしまう。
そののち、かつての部下の裏切りもあって組織から完全に姿を消した。

しばらく後、天道らの前に姿を見せた彼はパーフェクト・ハーモニーを捨てて、アウトローさながらに荒みきっていた。
自らを闇の住人と称するようになってからは、目についたワームやライダーに戦いを仕掛けるなど無目的に街を彷徨うようになった。


【聖杯にかける願い】

316 :魏志軍&ランサー ◆0080sQ2ZQQ:2016/07/26(火) 18:24:14 ID:G2HMzbEU0
【マスター名】魏志軍(ウェイ・チージュン)

【出典】DARKER THAN BLACK -黒の契約者-

【性別】男

【Weapon】
日本に来てから調達した拳銃やナイフなど。


【能力・技能】
「契約者」
"対価"と呼ばれる行動や現象と引き換えに、固有の超能力を行使できるようになった人々。
能力使用後に必ず支払う対価は「ホットミルクを飲む」、「茹で卵を食べる」といった容易なものから、「異物を咀嚼する」「指の骨を折る」といった重いものまで様々。

魏は自分の血液を付着させた部分をどこかに転送できる。所謂テレポートとは似て非なる、強度や材質などを一切無視した破壊の力である。自分には作用しない。
対価は「自ら血を流す」ことであり、両腕には無数のリストカット痕がある。

対価の支払いと能力発動を同時に行う稀有な契約者。


【ロール】
フリーランスの殺し屋。


【人物背景】
中華系マフィア「青龍堂(チンロンタン)」の構成員だった男。
組織の壊滅を望むボスの娘「アリス・王」と手を組み、ボス含む組織の主要メンバーを次々と殺害。組織の掌握を目論んでいた彼は最後にアリスをも裏切って殺した。

組織に潜入していた黒(ヘイ)の命を狙うも敗北。逃走した彼は契約者の組織「イブニング・プリム・ローズ」に参加する。
のちに黒の前に火傷痕を負った姿で現れ、雪辱を遂げるべく彼に再戦を挑んだ。


第24話開始直前から参戦


【聖杯にかける願い】
なし。脱出後に黒と再戦する。



【把握媒体】
ランサー(矢車想):
TVシリーズ49話。そのうち7話から登場、14話から32話の視聴はお任せします。上記状態の33話~48話を視聴すれば十分把握できると思います。
DVD、ブルーレイ、ニコニコチャンネルなどで把握可能。



魏志軍:
TVシリーズ。そのうちの9、10話および21話~24話。
DVD、ブルーレイ、バンダイチャンネルなどで把握可能。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2016年08月05日 22:17