友達がいた。
 気が弱くてどんくさく、とにかく要領の悪いやつだった。
 敬語が苦手で余計に考え込む面倒くさい性格をしていて、けれどいざという時は誰よりも優しい女の子。

 中学校に上がって、新しい出会いがあって、それでもなんとなくだらだらと付き合いが続いて、
 高校、大学と一緒に過ごし、大人になってからも腐れ縁の友達でいるものだと疑いもしなかった。
 それが間違いだったのかもしれないと初めて気付いた時、
 あれほど一緒に過ごした友達の背中は、もう届かないところに行ってしまっていた。

 あいつは要領が悪いから――自分がいなければ何もできないと、そう思っていた。
 でも、自分の前から去っていったのはあいつの方だった。
 自分が握り締めていた手を離すまでもなく、手は、あっちから離された。

「はぁ」

 漏れる、吐息。
 そういえばあいつは、星が好きなやつだった。
 小高い丘の上から日が落ちかけた空をぼんやり見上げて思い出す。
 灰色の空に星はない。それらしいものは、どこにも見当たらなかった。

 この空は、自分の知る空ではない。
 空だけじゃない。
 この世界の何もかもが、自分のいた世界とは全く違うものであるらしい。
 らしい、というのは、未だに私が現実を受け止められていないからだ。

「弱いなあ……私」

 聖杯戦争?
 並行世界?
 英霊同士の潰し合い?
 ……そんなの、知ったことじゃない。
 私は、身の回りの悩みのことで手一杯なんだから。
 そんなことに気を回している余裕なんて、とてもじゃないけどないんだよ。 

 いくら悪態をついても、誰も待ってはくれない。
 世界は、時間は、私を放ったらかしにしたまま進んでいく。
 星が好きだったあいつなら、どうするだろうか。
 ……きっと散々迷って慌てふためいて、それでも最後には聖杯を拒むような気がする。
 そもそもあいつは、今何をしているのだろう。

 中学校への進学を境に疎遠になったかつての親友。
 彼女のことを思い出すと、ちくりと胸を刺す痛みがある。
 胸の中にあるのは空寒い答え。

 私がついていないとダメだと決め付けて、
 友達として付き合っていた時間の全てが、私の独りよがりでしかなかったという「答え」。

「ねえ、私さ……どうすればいいと思う?」

 丘の上で空を見ているのは、私だけじゃない。
 思わず二度見してしまうような派手な格好をした、あいつと同じ色の髪をした女の子。
 いや……少し濃いかな。それに性格も、あいつとは全然似ても似つかない。

「ねえ、ライダー」
「知らないわよ、そんなこと」

 問いかける言葉は、にべもなく切り捨てられた。
 日常のまま続いていく世界にやっと現れた非日常も、やっぱり都合よく答えを与えちゃくれない。

「あんたの問題は、あんたが解決しなさいな。私が手伝ってあげられるのは荒事だけよ、マスター」
「……そっか。ごめん、ライダー」
「あーもう、面倒臭い子ねぇ」

 ライダーはやきもきするように、頭をぼりぼりと掻く。
 見た目はアイドルのように可愛いけど、この人は結構女子力ってやつに乏しい性格をしていた。

「決めるのはあんた、戦うのは私。
 ……言い方を悪くすればどっちでもいいのよ。私はサーヴァントなんだから、マスターに従うのは当然だしね」

 聖杯戦争、それが私の前にやって来た非日常の名前。
 七騎のサーヴァントによる戦いの末に現れるという聖杯を使えば、あらゆる願いが叶えられる。
 そもそもそれを手に入れなければ、この世界から帰ることが出来るかどうかすら怪しいとこの少女は言っていた。
 彼女は、ライダーのサーヴァント。真名を、蛇崩乃音。
 知らない名前だったけど、別な世界の英雄や偉人らしいしそれも当然か、と納得した。
 私は何も知らない。ライダーが強いのか弱いのかも、まだ戦ったことがない今ではさっぱりだ。

「でも、あんたが望む通りの働きはきっちりしてあげる。
 願いを叶えるにしろ、聖杯を壊すにしろ、ちゃんと期待された分は働いたげる。
 だから……もうちょっとどっしり構えなさい。そんなんじゃ、勝てる勝負も勝てないわよ」
「はは……ありがと、ライダー」

 私はまだ迷ってる。
 聖杯を使うことは正しいことなのか、
 自分が生きたい、帰りたいというだけで、他人の願いを踏み躙っていいものなのか。
 それとも、やっぱり間違っているのか、いまだに決めかねてる。
 でも、この戦いを諦めることだけは――嫌だ。

 ついこの前まで笑い合ってた友達に会いに行く勇気さえない弱虫な私でも、
 おもいっきりまっすぐに、この聖杯戦争にぶつかっていけたなら。


 きっと、仲直りの勇気くらいは出ると思うから。



【クラス】
ライダー

【真名】
蛇崩乃音@キルラキル

【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷A 魔力B 幸運B 宝具B+

【属性】
秩序・善

【クラススキル】
騎乗:A-
 乗り物は人並み程度のものしか乗りこなせない。
 だが彼女は自身の宝具である極制服の超常的な特性を我が物としている為、このランクとなった。

対魔力:D
 一工程による魔術行使を無効化する。
 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。


【保有スキル】
忠義の柱:A
 信じたただ一人の主へ誓った固い忠誠。
 主以外が発する「カリスマ」の効果を無効化し、いかなる場面においても精神的屈服を喫することがない。
 余談だが、彼女以外にこのスキルを持つ者は少なくともその同胞に三人存在おり、他三人はA+の最高ランクである。
 しかしライダーは主――鬼龍院皐月の部下ではなく、「理解者」となることを望んだ為、このランクとなっている。

勇猛(音):C
 威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
 本来は格闘ダメージを向上させる効果を生むスキルだが、彼女の場合は極制服の性能が上昇する。

吹奏楽部:A
 吹奏楽のジャンルに部類される楽器を十全に扱いこなすこと。
 Aランクは部長クラスの奏者を意味し、配下として極制服で武装を施したマーチングバンド隊員を呼び出し、使役することが可能。
 隊員の戦力は総じて低いが、それだけに魔力消費が小さくて済む利点を持つ。

【宝具】
『極星・奏ノ装』
ランク:C+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:1000人
 ライダーが着用する三つ星極制服。奏の装・グラーヴェ。
 物質化した音符による弾幕攻撃や牽制攻撃、接近する相手にはスピーカーから重低音を利用した破壊音波を発生させて退けるなどオールラウンダーな立ち回りをすることができる。
 彼女のモチベーションに合わせて曲や攻撃がエスカレートしていき、それにつれて「ブレスト」へ変形する。
 変形形態には他にも「ダ・カーポ」「奏の装・改」があり、後者を使用するためには魔力の消費が必要。

『極星・最終奏装』
ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:1000人
 前述の第一宝具である三つ星極制服の、最終形態たる姿。
 火力、速度を初めとした各性能が段違いにまで向上しており、最終楽章の名に恥じない猛威を奮う。当然、魔力消費の度合いも上がっているため注意が必要。
 宝具開放には令呪一画の使用が不可欠で、使用後は元の極制服に戻すことは不可能となる。
 開放後、更に令呪を用いてブーストすることで宝具の性能を増幅できる。

【人物背景】
 本能字学園文化部統括委員長。鬼龍院皐月に仕える、本能字学園四天王の一人。
 皐月との間柄は幼稚園からの幼なじみであり、四天王の中で付き合いが断トツで古いため彼女の心情を一番理解していると自負する。

【サーヴァントとしての願い】
 聖杯に託す願いはない。あくまでサーヴァントとして、マスターのあおいの決断に従うつもり。


【マスター】
あおい@放課後のプレアデス

【マスターとしての願い】
元の世界に帰りたい

【weapon】
なし

【能力・技能】
後にドライブシャフトの魔法使いとなる――はずだった少女。
星空を駆ける出会いをする前に、彼女は聖杯に見初められた。

【人物背景】
進学先の別れた友人のことで鬱屈としたものを抱えている。
聖杯を使ってまで叶える願いはないが、やはり元の世界には帰りたい。
ただ、その為に聖杯戦争へ乗るかどうかは悩んでいる。


【把握媒体】
ライダー(蛇崩乃音):
 アニメ全話。

あおい:
 同じくアニメ全話。外伝小説もあるにはあるが、こちらは必須ではない。

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最終更新:2016年08月05日 22:23