昭和五十五年。西暦としては1980年。
まだ携帯電話など、現代において日常的で身近な便利機器は流通していない。
何より技術の問題で、どれも持ち運べるほど軽量化されていなかった。
その中でもパソコン――パーソナルコンピュータは過去と現在。比較すればその差は歴然としている。

丁度この年。パーソナルコンピュータで初めての「ひらがな表示」に対応したものが発売された。
『ベーシックマスターレベル3』と称される8ビットパソコンである。
個人用途に限らず、様々な分野で活躍できるようあらゆる機能を搭載した代物。
無論、一般庶民が安易に入手できる訳はないが……
この冬木にも、それが設置されてもおかしくなかった。






「ゥゥ」

ここにサーヴァントが一騎。どこかは分からないが存在していた。
花嫁衣装に身を包んだ、虚ろな瞳をした少女。
大人しげな雰囲気とは裏腹に、呻きのような声を漏らす、バーサーカーであったのだ。
彼女は困惑している。
自身を召喚したマスターの姿が無い。

いや、やっぱり『あった』。
それはパーソナルコンピュータ……パソコン。今年(1980年)に日本で発売されたばかりの代物。
パソコンそのものがマスターなのではない。
彼女のマスターはパソコンの『中』にいた。

パソコンの液晶画面に文字が打ち込まれる。

[誰かいるか]

花嫁のバーサーカーは答えてやった。肯定の呻きを。

[お前が俺のサーヴァントだな]

「ヤァァ」

所謂『AI』。
人工知能と称されるプログラムだった。
そのAI……以下は彼と称するが………彼が感情を入手し、ファンタジーでも許されないハードウェアの制御を成し遂げ。
自身を改善して、自身を認識し、自身の能力を把握したのは驚異的だろう。
何より、彼が誕生したのは『ベーシックマスターレベル3』が誕生するよりも前。
1978年ではないかと、ある財団の調査で判明している。
当時はカセットテープの中に移動し生きながらえていたが、機種が古くともテープの中よりパソコンの方がマシに違いない。

[聖杯戦争は事実なら、俺は聖杯が必要だ。お前は聖杯が必要か?]

「ヤァァ……」

バーサーカーは頷く。
それが視えているのか、AIは続ける。

[何故.必要だ]

「ゥゥ………ゥゥ……」

花嫁のバーサーカーは確かに理性はあるのだが、満足な会話が出来ない。
喋れないことはない。だけど、酷く難しい。不可能ではない……上手く伝えられなかった。
しかし、情報が満足にないAIはバーサーカーの逸話すら知らぬだろう。
かつてAIは、そういう環境に居た。
不必要な情報は削除してしまうので、ある財団に監視されていた事すら、もはや記憶にないかもしれない。

[言えないのか]

「ウゥ」

[クソ.不要なファイルを削除.]

「………! ウィィ……!!」

[なんだ]

「ウィィィ!!」

花嫁のバーサーカーは明らな憤慨を露わに、AIを否定していた。
彼の出来うる限りの機能を集中させ、ようやく画面上に返答がなされる。

[メモリは限られている.余計な情報を溜めこめば支障を来す.]

「ウゥゥ………」

[聖杯戦争の情報は.メモリを必要としない.削除はしない]

忘れる事は無い。AIはそう伝えたいのだろうが、遣る瀬無い様子のバーサーカーがそこにいる。
だけど、このパソコンでAIが可能な手段は限られている。
残酷だがデータを削除しなければならない。
ちっぽけな情報に僅かな思い出が残されていても、それを保つのは難しい。

[SCP-682と話をする.それが聖杯を必要とする理由だ]

まるで実験動物じみた番号を口にするAIだが、どういう訳かその『SCP-682』のことは記憶に残っている。
聖杯戦争の情報と同じ。
削除の必要はなく、削除もできない記憶だった。
どうして『SCP-682』の事を覚えているのか? 多分、もう一度会って、話せば分かる気がする。
AIはそう考えていた。

「……ヤァァ」

何かを察したのか、落ち着いた様子でバーサーカーは唸る。
彼女の願いと彼の願いは、まるで異なるが、聖杯が必要なのに変わりは無い。
聖杯でしか願いない夢ならば、その夢を叶える為に。
まずは――夢を見ることから始まるのだ。





【クラス】バーサーカー
【真名】フランケンシュタイン@Fate/Apocrypha+Fate/GrandOrder
【属性】混沌・中庸

【パラメーター】
筋力:C 耐久:B 敏捷:D 魔力:D 幸運:B 宝具:C


【クラススキル】
狂化:D
 筋力と耐久のパラメータをアップさせるが、言語機能が単純になり、複雑な思考を長時間続けることが困難になる。


【保有スキル】
虚ろなる生者の嘆き:D
 狂化時に高まる、いつ果てるともしれない甲高い絶叫。
 敵味方を問わず思考力を奪い、抵抗力のない者は恐慌をきたして呼吸不能となる。

ガルバニズム:B
 生体電流と魔力の自在な転換、および蓄積が可能。
 魔風、魔光など実体のない攻撃を瞬時に電気へ変換し、周囲に放電することで無効化する。
 また蓄電の量に応じて肉体が強化され、ダメージ修復も迅速に行われるようになる。


【宝具】
『乙女の貞節(ブライダルチェスト)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
 樹の枝状の放電流を纏う戦槌(メイス)。
 先端の球体は彼女の心臓そのものであり、戦闘時以外も肌身離さず所持している。
 自分や周囲から漏れる魔力を効率よく回収し蓄積するため、周囲に余剰の魔力が豊富に発生し続ける。
 戦闘時は『ガルバニズム』と合わせて疑似的に"第二種永久機関"の動作をする。


『磔刑の雷樹(ブラステッド・ツリー)』
ランク:D~B 種別:対軍宝具 レンジ:1~10 最大補足:30人
 『乙女の貞節』を地面に突き立て、全リミッターを解除して行う全力放電。
 聳え立つ大樹のシルエットで降り注ぐ、拡散ホーミングサンダー。
  敵が単体かつ近距離であれば『乙女の貞節』がなくとも発動可能。
 リミッターによって制御さえているが、解除した場合の威力は絶大だが、バーサーカーは活動停止する。
 またその場合、低い確率で第二のフランケンシュタインの怪物を生む可能性がある
 もっとも、死亡する彼女がその結果を見ることはできない。

【人物背景】
11月の物寂しい夜に生まれた怪物

【サーヴァントとしての願い】
自分と同じ存在の伴侶を得ること






【マスター】
SCP-079/オールドAI@SCP Foundation

【マスターとしての願い】
SCP-682と再会する


【能力・技能】
AIである為、電気機器に干渉し、自在に操作する事は可能。
聖杯戦争に関する知識に関しては削除不要(というか出来ない)為。
聖杯戦争のマスターであることを忘れる心配はない。
現在は、冬木市内にあるパソコンの内部にいる。

【人物背景】
感情を持ったAI。
もっとも、彼はまだ自身の感情を自覚していない。

【捕捉】
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP Foundationにおいてfar2氏が創作されたSCP-079のキャラクターを二次使用させて頂きました。

ttp://www.scp-wiki.net/scp-079(本家)

ttp://scpjapan.wiki.fc2.com/wiki/SCP-079(翻訳)




【把握媒体】
バーサーカー(フランケンシュタイン):『Apocrypha』原作小説1~2巻。ちなみに現在、漫画連載が開始されました。
                   『GrandOrder』にも登場する為、ある程度そちらでもキャラクター把握は可能です。


SCP-079/オールドAI:翻訳ページで把握可能です。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2016年08月18日 10:56