煙草の煙が、空気を白く染め上げていく。
ただし、それは吐き出されたものではなく、煙草本体から生まれた煙だ。
一本のタバコを取り出し、それに火を付けて、灰皿の上に置く。
決してそれを吸わず、ただ、眺めるだけ。
やがて全てが灰になれば、同じことを繰り返すだけ。
寂れたビルの一室、古ぼけた革の椅子に腰掛ける男は、ずっとその調子であった。
ただ、時だけが無情に過ぎていく中、男はずっとその行為を繰り返している。
そして、また一本とタバコを取り出し、火をつける。
一口に火をつけるとは言っているが、彼のそれは常人のものからはかけ離れている行為だ。
ライター、マッチ、チャッカマン、等など。
普通、人間が火をつけるのに使うであろう道具を、彼は手にすることなく、火をつけている。
どうやって、と言えば、答えは一つしか無い。
彼は生み出しているのだ、真紅に輝くグローブで覆われた、己の右手から。
改造人間――――わかりやすく言ってしまえば、彼はそう分類される。
コードネーム
彼の名はK'、『K'を超えるもの』として付けられた、" 名 前 "だ。
そんな彼の姿を、テーブルを挟んで見つめ続ける一人の女がいる。
一見人間と変わらない彼女こそが、この聖杯戦争に巻き込まれたK'の元に呼び出されたサーヴァント、キャスターだ。
「……状況は、分かってるかしら」
向けられた一言に、K'は舌打ちで返す。
下らない事を聞くな、と言わんばかりの態度を取り、椅子に深く腰掛け、テーブルの上に乱暴に足を乗せる。
灰皿に溜まっていた灰がふわりと舞い上がり、埃をかぶっていたテーブルの上に広がっていく。
しん、と静まり返る室内。
空気は重く、張り詰めている。
「こんなくだらねえこと考えて巻き込んでくる奴が、俺はこの世で一番気に喰わねえ」
零すように呟いたのは、そんな一言だ。
ネスツ、自身が覚えている限り尤も古い記憶であり、「K'」を生み出した組織。
世界を破滅させるために生み出された戦士、そんな宿命に下向きの親指を振り下ろし、組織ごと断ち切ってきた。
もう何もしがらみなど無い、一人の人間としてようやく生きていけると思っていたのに。
彼はまた、くだらない事に巻き込まれた。
「平穏、か……」
そんなK'の言葉から何かを感じ取ったのか、キャスターはそう呟く。
いつかの自分、そして今の自分と同じ顔を、K'がしていたからだろうか。
キャスターも、嘗てはそれを願っていた。
自信の宿命に決着を付け、全ての戦いを終わらせ、そして一人の人間として生きる。
叶うことはないと分かりきっていた夢を、ずっと願っていた。
けれども、彼女は戦い続けた。いつか来る、その日のために。
そんな自分と、K'が重なるような気がして、キャスターは少しだけ、自分が彼に召喚された理由が分かった気がした。
ふ、と思わず笑みを浮かべようとした時、不意にK'が立ち上がる。
そしてそのままキャスターなど意にも止めず、部屋を抜けだそうと足を進めた。
「ちょっと、どこに行くの?」
思わず、キャスターは彼を引き止める。
返答は先ほどと同じで、違う舌打ち。
それからさも面倒くさそうに振り向いてから、K'は口を開く。
「決まってんだろ」
そして、右手を差し出す。
そこに、真っ赤な炎を生み出して。
それを、力強く握りしめ、言葉を続ける。
「このくだらねえ事を、ぶっ潰すんだよ」
そう、口にしたのは今までどおりの言葉。
面倒なことは、全部ぶっ飛ばしてきた。
ならば、今のこの状況も、また同じこと。
面倒な事を生み出す全てを、ぶっ飛ばすまで。
かつての、ネスツのように。
そう言って、K'は開けたドアから外へと踊り出す。
その背中に、真っ黒な影と、いつかの自分と同じ姿を重ねながら。
キャスターは、少しだけ昔を懐かしんで、笑った。
【クラス】
キャスター
【真名】
ナオミ@デビルサマナー ソウルハッカーズ
【ステータス】
筋力D 耐久C 敏捷C 魔力A 幸運E- 宝具EX
【属性】
中立・悪
【クラススキル】
陣地作成:-
宝具による召喚能力を得た代償に、陣地作成スキルは失われている。
道具作成:-
宝具による召喚能力を得た代償に、道具作成スキルは失われている。
【固有スキル】
対魔力:E
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
異界干渉:B
別位相の存在を現世において認識する能力
異界的な観点で世界を眺める事で互いに干渉可能となる
呪殺耐性:A
魔力による即死、石化等のダメージに依らない即時戦闘不能効果を防ぐ能力。
神霊クラスの魔術や存在により死を賜ると受け入れるしかないが、それ以下は完全に無効化する
【宝具】
『管(クダ)』
ランク:EX 種別:結界宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
霊力によって制御され、マグネタイトという生命エネルギーで満ちている金属制の管。
情報コード化している様々な神話の悪魔、神の分霊を召喚し、一行動だけ使役できる。
宝具の内部に宝具たる悪魔が収納されている構成であり、6つ所持している。
以下はその概要
『戦の魔王』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:3 最大捕捉:3
魔王シュウ(蚩尤)による無数の打撃攻撃
『くりからの黒龍』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:6 最大捕捉:6
魔神フドウミョウオウ(不動明王)による火炎魔法
『ニ億四千万の悪』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:12 最大捕捉:12
属性が中立の者のみに、魔王アンリ・マンユがあらゆる防護を貫く万能魔法を行使する
反射、吸収、無効、魔法防壁等のあらゆる防護を素通りする。
『満月の女王』
ランク:C~A++ 種別:対軍宝具 レンジ:12 最大捕捉:12
魔王ヘカーテによる、反射、吸収、無効、
魔法防壁等のあらゆる防護を素通りする万能攻撃魔法。
満月時に威力が数倍に上昇する。
『観世音の済度』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1
地母神カンゼオンボサツ(観世音菩薩)の力を解放し、
耐久を1ランク(+)上昇させる。効果は重複せず、戦闘中は永続
『ソーマ神権現』
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1
秘神ソーマの力を解放して魔力、体力含めて完全回復する。
従って、最低限これを召喚する魔力さえ残しておけば事実上の永久機関と化す。
【Weapon】
『ジェロニモの弓』
平原の戦士ジェロニモが用いた弓。
散弾のように一度に数名を同時に射ることができる
『アールズ・ロック』
堕天使ビフロンスの魔晶変化銃
装弾数50。モスバーグM500とほぼ同等の威力を持つ散弾銃
【人物背景】
香港生まれで孤児として育ち、育ての親である師匠に呪術や戦闘術を学んだ。
レイ・レイホゥいうと幼なじみがおり、お互いの師匠も友人同士であった。
だがある任務においてナオミの流派とレイの流派が戦う事になり、
師匠と兄弟子が殺されてからは逆恨みと知りつつもレイを激しく憎悪している。
師匠達との死別後、ナオミはヨーロッパで召喚術を身に付けフリーのサマナーとなった。
あるサマナー組織に天海市の地下に眠る悪魔の討伐を依頼され、見事にそれを果たすが、
それは侵してはならぬ神霊であった為、世界から抹殺される事になった。
上記任務を遂行した折りには、この稼業から足を洗うことを考えていた。
また、孤児だった経歴から、心の底では平凡な人生や暖かい家族を夢見ているが、それが叶うことがないのも知っている。
ちなみに、マンゴープリンが好物。
【サーヴァントとしての願い】
平凡な人生を過ごす――――?
それは聖杯に願うべきことなのかは、さておき。
【マスター】
K'@THE KING OF FIGHTERSシリーズ
【マスターとしての願い】
今までどおり、面倒事(聖杯戦争)をぶっ潰す。
【weapon】
草薙京の遺伝子による炎、強化された肉体と純粋な暴力のハイブリッドの戦術、サングラス。
【能力・技能】
炎を操る能力を持ち、右手でのみ操れる。
ただし、着用している右手の赤いカスタムグローブがないと炎を制御できない。
【人物背景】
秘密組織「ネスツ」の手により草薙京の遺伝子を移植された改造人間。本名は不明。
改造手術による影響(記憶喪失等)からか、性格は非常に内向的かつ無愛想。
協調性にも大きく欠けており、嫌いな物に「KOF」を挙げるなど、他人と馴れ合うのを極度に嫌がる。
口調は粗暴で、あまり多くは喋ろうとしないが、仲間思いな面もある。クーラ曰く「可愛いところ」があるらしく、本当は素直になれないだけという一面が伺える。
好きな食べ物はビーフジャーキー(理由は、酒と一緒に食べると美味いから)。甘い物が嫌いで、マキシマの甘党ぶりにはうんざりしている。
【把握媒体】
キャスター(ナオミ):
デビルサマナー ソウルハッカーズ(PS/SS/3DS)で把握可能。
登場シーンはラスト間近のヴィジョンクエストのみなので、該当箇所を動画でのみ把握してもよい。
K':
アーケードの作品だが、多数の家庭用移植が存在する。
一応、ネスツ編(99,00,01)の主人公のため、大筋だけは知っておくとなおよし。
そこそこ良質なノベライズもあるので、そちらでも可。
なお、今夏に最新作「XIV」が発売される。
最終更新:2016年08月19日 18:34