「つまんねえな、もう壊れちまったのかよ」

 暗がりの部屋。
 褐色の肌と日本人離れした銀髪を持った偉丈夫が、舌打ち混じりにそう吐き捨てた。
 そのすぐ後にベッドから床に投げ出されたのは、一糸纏わぬ状態に剥かれ、体の随所に陵辱の痕跡を残した若く美しい女だった。
 その瞳に、もう意思の光はない。
 性行為と呼ぶには暴力的すぎる陵辱の中で、彼女が二十年余りかけて築いてきた自尊心やプライドといったものは完膚なきまでに打ち砕かれていた。
 あるのはただ、絶望だけ。
 どうして自分がこんな目に遭わなければならないのかという、深いこの世への恨みの感情。
 そして、女の無念が何か奇跡を生むでもなく――ぐぎ、と嫌な音が鳴った。

 彼女を散々好き勝手に犯した後、ゴミのように放り捨てた見てくれだけは整った男。
 彼がその素足を振り下ろし、心の壊れた女の頚椎を文字通り踏み潰したのだ。
 彼は女で遊ぶことは好きだったが、玩具に逆らわれることと、壊れた玩具は嫌いであった。
 行為の最中に滲んだ汗を軽くタオルで拭ってから軽装に身を包み、死骸を放置して部屋を出る。
 時刻は丁度、午前零時を回った辺りを示していた。

 彼が滞在しているのは、彼の父親が所有する超の付く高級マンションの最上階だ。
 数年振りにこの日本へと戻ってきた"設定の"彼は、その父に無理を言って、最上階のフロア全てを貸し切り状態にして占領している。
 表向きには少々闇社会絡みの厄介事に首を突っ込むからと説明しておいたが、実際の理由は最早言うまでもないだろう。
 これは、彼――シュラが聖杯戦争に腰を据えて臨む為の拠点だ。
 この男も求めているのだ、聖杯を。人を人とも思わないその腐った魂で、黄金の杯に宿るという奇跡の力を思うがままにせんとしている。

「正直な話、ただ帝国に帰れるってだけでもありがてえんだがな」

 シュラは本来、死んだ筈の人間である。
 とある帝国の大臣の一人息子として生まれた彼は、その権力を悪用して非道の限りを尽くした。
 一度は帝国を出奔したものの、その後旅先でスカウトした手駒を連れて舞い戻り、組織したのは悪名高き秘密警察・ワイルドハント。
 彼らは大臣オネストの名を盾に私刑にも等しい大量殺戮と欲に飽かした陵辱、蹂躙を繰り返し、あらゆる国民から強い憎悪の情を買った。
 そうして動き出したのは、帝国に仇成す暗殺組織ナイトレイド――
 シュラは首尾よくそのメンバーを捕獲することに成功したが、それが彼の絶頂の終焉だった。
 捕らえた暗殺者に激しい拷問を加える中で気が昂ぶったシュラは暗殺者の人知れず構じていた一手に気付かず、その首を折られ呆気なく殺害された。

 ……次に目覚めた時、彼は聖杯戦争の舞台である、冬木市の中に居た。
 最初は、世界を渡り歩いて多くの知識を得た彼ですらも当惑を余儀なくされた。
 世界でも有数の先進国であった筈の帝国を遥かに上回る発展した文明。
 テレビやエアコン等、彼の世界では考えられない程の便利な道具の数々。
 そして、自分がこの街に迷い込んだ――もとい、招かれたその理由。
 全てを理解した時、シュラは笑ってみせた。

 何だよ、ビビらせんじゃねえ、と。
 あの糸使いに嵌められた時は本当に終わったと思ったが、蓋を開けてみればこの通り。
 地獄に落ちるどころか、新たに巨大な力を手に入れるチャンスが舞い込んできた。
 無論、これに乗らない手はない。
 ただ帝国に帰るだけでは、あまりに負け犬じみている。

「折角の楽しいゲームなんだ、思いっきり楽しませて貰うぜ。
 どれだけ好き勝手やったところで、最後に笑うのは俺達以外に有り得ねえんだからよ」

 そしてシュラには、聖杯を確実に手に入れられるという自信があった。
 その自信を後押しするのは、言わずもがなサーヴァントの存在である。
 シュラの召喚したサーヴァントのクラスは、彼らしいと言うべきか、アサシンだ。
 聖杯戦争のセオリーから考えれば、アサシンのサーヴァントは三騎士……セイバー、アーチャー、ランサーに比べて戦力としていささか劣る。
 しかしシュラのアサシンは、別格だった。
 怪物――と、いってもいい。少なくともシュラはそう思っている。
 あれは英雄などでは断じてないし、人類の害にしかならない。そんな存在だ。

 だが……だからこそシュラにとっては好ましい相手である。
 或いは、シュラはもう既に、その男の不思議な魅力の虜になっているのかもしれなかった。


「―――また遊んでいたようだな、シュラ」

 貸し切っている最上階の中でも、最も豪奢で上等な部屋。
 カーテンを閉め切り、電気の代わりに蝋燭の光だけが揺らめいている其処は、どこか幻想的な雰囲気すら漂う空間であった。
 その扉を開けて足を踏み入れると、アサシンの声がする。
 彼は日光を浴びることが出来ない。従って昼間でもこの部屋は常にカーテンを閉め切っている。
 日の光を浴びられない。そう聞けば、子供でもとある種族の名前を思い浮かべることだろう。
 シュラの住んでいた世界にも、腐るほどその種族を描いた物語が存在していた。

 アサシンは、"それ"だ。
 人ならざる不老不死の肉体を手に入れ、肉の代わりに血を啜る。
 昼に嫌われ、夜に愛された超越生命体。
 即ち―――『吸血鬼』。

「この日本って国は住み心地はいいけどよ、女はダメだ。
 帝国の女も大概だったが、あんまりにも脆すぎる。
 ちょっと殴って腰振ったらすぐぶっ壊れちまうんだもんよ、面白みがねえっての」

「フ……わたしも数多くの悪人を見てきたが、君の『道楽』はその中でも有数だな。
 その君が聖杯を手に入れたならどうなるか、考えただけでも恐ろしいよ……」

「……よく言うぜ。その言葉、そっくりそのまま返してやるよ―――DIO」

 DIO。
 ディオ。
 人間だった頃に遡れば、ディオ・ブランドー。
 それが、暗殺者を騙る吸血鬼の真名だ。
 DIOの性質は、改めて語るまでもなく"悪"。
 それも絶対的で、疑いようもないほどにどす黒い。
 シュラはかつて、欲に塗れた自分の父親オネストに「悪党としてはまだ敵わない」と感じた。
 オネストも相当な大悪党だったが、このDIOという男に比べれば遥かに劣った小物でしかない。
 それほどまでに、DIOは恐ろしい存在だった。悪逆を尽くし、死すら一度は経験したシュラですらも、この男だけは敵に回したくないとそう思う。

「君はやや欲望に忠実すぎるきらいがあるが、それでも優秀な男だ。
 もしもマスターが価値のない無能だったならさっさと鞍替えするか、わたしの力で洗脳してやろうかと思っていたが……それには及ばないようで安心したよ」

「そりゃどうも」

 そしてシュラは、DIOが最強たる所以を知っている。
 正しくは彼の宝具……その効果はまさに、驚愕すべきものだった。
 DIOは、彼だけの『世界』を持っている。
 その『世界』には何人たりとも踏み入ることは出来ず、また、認識することさえ許されない。
 DIOが世界を握っている限り、彼は最強のサーヴァントだ。彼ならば、聖杯を手に入れられる。


(さぁて――精々、楽しませてもらおうじゃねえか……!)


 悪と悪。彼ら邪悪が聖杯を握った時、きっと人は地獄を見る。


【クラス】
 アサシン

【真名】
 DIO@ジョジョの奇妙な冒険 Part3 スターダストクルセイダース

【パラメーター】
 筋力A 耐久C 敏捷C 魔力A 幸運C 宝具A

【属性】
 混沌・悪

【クラススキル】
気配遮断:B
 サーヴァントとしての気配を絶つ。
 完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。
 ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
吸血鬼:B
 石仮面の力によって永遠の寿命と強靭な肉体を手に入れた異形生命体。
 紫外線と波紋エネルギーを弱点とするが、それ以外の方法で撃破するには相当の痛手を与える必要がある。
 アサシンは生まれながらの吸血鬼というわけではなく、後天的に道具の力でそうなった存在であるためランクが下がりBランクとなっている。

カリスマ:C++
 軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
 カリスマは稀有な才能で、小国の王としてはCランクで十分と言える。
 しかし彼のカリスマは悪人、心に隙のある人間にのみ作用し、善人には高確率で嫌悪感を与えるのが特徴。
 また極稀に非常に強い忠誠心を芽生えさせる者が現れることもあり、相手によってその効果は大きく変わる。

吸血:B
 吸血行為。対象のHPダウンと自己のHP回復。

肉の芽:A
 吸血鬼であるアサシンの細胞を額に植え付けることで、相手に洗脳を施すことが出来る。肉の芽を植え付けられた人物はアサシンに強い忠誠心を抱くようになり、これを摘出するにはスピードと精密さが必要となる。
 魔術による洗脳ではなく、あくまでも肉体活動の一環としての洗脳であるため、対魔力のスキルでは無効化出来ない。肉の芽の解除には強い意思力こそが重要であり、要は強い意思さえあれば強引に解除できる。
 また、狂化スキルを持つバーサーカーのサーヴァントには無条件で無効化されてしまう。

【宝具】
『世界(ザ・ワールド)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大補足:1人
 サーヴァントとそれを従えるマスター以外には視認できない、スタンドと呼ばれる像を呼び出す。
 スタンド(傍に立つ者)の名の通りアサシンの至近距離に出現し、射程距離の範疇で自由に行動させることが可能。
 非常に優れた行動速度と好燃費を誇り、更にその真骨頂は『時を止める』という能力。
 魔力の消費と引き換えに世界の時間を停止させ、アサシンだけが止まった世界を認識、その中で行動することが出来る。『世界』のステータスは全てアサシンより一ランク高い数値となる。
 非常に使い勝手がよく、対処法を持たない相手ならば理解することさえ許さずに抹殺出来る強力な宝具だが、スタンドがダメージを負った場合、それは全てアサシンの体にフィードバックされてしまう。

『鮮血の継承(ファントム・ブラッド)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
 ただのちっぽけな人間だったディオ・ブランドーを不死の吸血鬼へと変貌させるに至ったきっかけの石仮面。
 既に吸血鬼であるアサシンには何の意味もない宝具だが、これを他者に使用した場合、被せられた相手は石仮面の骨針に貫かれて人間をやめ、吸血鬼に進化を遂げる。
 吸血鬼と化した者は人間であれサーヴァントであれ筋力・耐久・敏捷のステータスが上昇し、更に再生能力と強い生命力、吸血のスキルを獲得、日光と波紋エネルギーを受けると灰化するという弱点も共有される。

【weapon】
 ナイフを使用するが、基本的には自らのスタンド能力。

【人物背景】
 百年に渡る因縁の始まりであり、一つの世界が事実上の終わりを迎えるまで奇妙な物語をもたらし続けた悪鬼。
 その最期は仇敵の子孫を激怒させた挙句、完全敗北を遂げて死亡するという無様なものだった。

【サーヴァントとしての願い】
 現世へと復活し、空条承太郎を筆頭としたジョースターの血筋に復讐する


【マスター】
 シュラ@アカメが斬る!

【マスターとしての願い】
 聖杯戦争を楽しむ。聖杯の使い道は手に入れてから考えたい。

【weapon】
 帝具は所持していないのでなし。

【能力】
 常人よりはかなり高い腕っ節を持つ。

【人物背景】
 帝国大臣オネストの息子で、その立場を利用し暴虐の限りを尽くす外道。
 親を失った妻子を嬲り殺すなど人を人とも思わず、倫理観というものが完全に破綻している。

【方針】
 楽しむ。

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最終更新:2016年08月23日 17:05