シオニー・レジスはすべてを思い出した。
自分の故郷が既に滅んでいること。
結果的にその引き金を引いたのは自分であること。
反発するように独裁体制を引いたが、それすらも結局崩壊してしまったこと。
なぜ死んだはずの、というかまず死ぬはずだった自分が、こうして極北の島国で教師なんて仕事に興じていたのか。
どうやら、それは一重に『聖杯戦争』なる催しに選ばれたから、らしい。
知識は……ある。こうして思い出してから、なぜか頭に刷り込まれていた。
聖杯とは、万能の願望器。何でも願いを叶えることができる。
ならば……リモネシアも、復興できるだろうか?
脳裏に浮かんだその考えに、自嘲の笑みを浮かべる。復興?自分で滅ぼしておいて、救国なんて……本当、馬鹿みたい。
そんな願いを掲げられる身分か、自分は。
しかし、いくら悩むにしても、シオニー・レジスという人間がマスターとして選ばれた事実は変わらない。
そうなった以上、従者であり手駒であるサーヴァントは、すぐに召喚された。
「ーー問いましょう。
聖杯を望み、こうして私を狂戦士(バーサーカー)の位で現界せしめしマスターは……貴女ですか?」
その気品溢れる佇まいから、間違いなく相手は高貴な立場の人間だと、シオニーは見抜いた。
それと同時に、困惑した。
こうして目の前で名乗られたのにも関わらず、どうみても彼女は狂戦士(バーサーカー)には見えないからだ。
応答のないマスターに気を悪くした風もなく、バーサーカーは人を安心させるような愛嬌のある笑みを浮かべてこう訪ねた。
「貴方は日本人ですか?」
この時、何故かバーサーカーの目が赤く光ったように見えた。
「?…いや。違うけど」
シオニーは否定した。
日本で教職という役割(ロール)を押し付けられているが、当然、日本人ではないからだ。
「そうですか」
その答えを聞くと、バーサーカーは満足そうに頷き、そして消えた。
何てこともない霊体化だが、知識として知っているだけのシオニーは驚いた。
サーヴァントという神秘に驚愕するマスターを残し、バーサーカーは屋外で霊体化を解いた。
「あの、すいません」
そのまま通行人に話しかける。
「あ、外人さん? 珍しいねェー……なんでしょうか」
その男性はバーサーカーの日本人離れした風貌に驚いたようだが、快く応じてくれた。
人情のある反応に気を良くしたのか、ニコニコと笑いながらバーサーカーは訪ねる。
「貴方は日本人ですか?」
「?えぇ、まぁ日本生まれの日本人ですが……何か?」
怪訝そうな男性に、バーサーカーはさらに笑みを深くする。
その目は、赤く染まっていた。
「死んでください」
パンっ
銃弾が、男の脳天を吹き飛ばした。
いつの間にか拳銃を握っていたバーサーカーは、直ぐ様、硝煙の立ち上る銃口を向ける。
「貴女も日本人ですよね?」
パンっパンっ
買い物帰りだろうか、主婦らしき中年女性を撃つ。破れた買い物袋からジャガイモと玉ねぎが溢れる。今夜の献立はカレーだったのかもしれない。
「貴方たちも日本人ですよね?」
パンっパンっパンっ
下校途中なのか、学生服の三人組も撃つ。右側の背の低い青年は腹を撃ち抜かれ、仰向けに倒れた。となりの丸刈りの方はバーサーカーを指差し、「ひとごろしっ」と叫んで逃げ出そうとしたが、背中を撃たれて同じく倒れた。
最後のひとりは、唖然としたまま重工を突きつけられ、心臓を撃たれた。
さすがに周囲が騒ぎ始める。先程の青年と同じようにバーサーカーを指差し、「ひとごろしっ」と叫ぶ。すでに何人かが警察を呼び始めていた。
「やっぱり、日本人なんですよね?」
バーサーカーは拳銃をしまうと、今度はマシンガンを取り出した。
パパパパパパパパパパパッ
少年が、婦人が、老若男女、有象無象の区別なく、片っ端から撃ち抜いていく。
「日本人は、皆殺しですっ」
「なっ、なっ、なっ」
はっと我に帰ったシオニーは、とたんに真っ青になった。外を覗けば通りが血の海になっているのだ。当たり前だろう。
銃声と悲鳴が聞こえてくる。何をしているのかは嫌でも察しがついた。
「ば、バーサーカーっ!! 戻ってきなさい!!」
慌てて念話で止めにはいる。聖杯戦争という未知の事態の最中でも、さすがに虐殺はどういった結末をもたらすのかは明白だ。
弾圧、非難、制裁。
そのどれも、シオニーは御免だった。
『ごめんなさい… でも、日本人は殺さないと… 』
駄目だった。
何を言っても、それこそ癇癪を起こして怒鳴っても止まらない。というか話を聞かない。
しまいには『日本人は殺さないといけないんです』とやんわりとたしなめられてしまった。
まるで此方がワガママを言っているような言いぐさに、ぶちっ、と額に血管が浮き上がる。
「令呪を持って命じる--バーサーカー、虐殺をやめて、ここに戻って!!」
こんな序盤で使うことになろうとは、しかし、背に腹は変えられない。
右手から、手綱たる令呪が一画消失する。
そして、空間転移という奇跡をもってバーサーカーは帰還を果たした。
「…………」
その姿は、返り血で染まっていた。
純白だったドレスは赤く染まり、マシンガンを構えたその姿は修羅のそれだ。
「ひっ」
血塗れの姿にたまらず悲鳴をあげる。どれだけ殺してきたのかわからないが、少なくとも誰かがこの女の手によって殺されたのは確実だ。
「あ、貴女……いったい何を考えているの!!」
至極真っ当に怒り狂うマスターに、バーサーカーは……
「■■…ッ」
「へ?」
「■■■、■■■■ッ」
まるで苦悩するように、バーサーカーは頭を抱えて唸るだけ。
明らかにおかしい。さっきとは別の意味で、様子が変だ。
その姿からは、何だか理性が感じられない。
そして、おかしいと言えば自分もそうだ。
「な……に、これ」
体調がおかしい。全身が、怠い。
シオニーは虚脱感に身を任せ、そのまま床にへたりこんでしまった。
その症状が、明らかに増加した魔力供給によるものだと彼女は知らない。
シオニーは気づかない。
先程とは違い、バーサーカーは『普通に』狂っただけなのだと。
そして、彼女は狂ったなりに、大切そうに何かを握りしめていることに。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
ユーフェミア・リ・ブリタニア
【パラメーター】
宝具『我が愛しの騎士様』装備時
筋力D 耐久C 敏捷C 魔力D 幸運C- 宝具D+
狂化:EX時
筋力E+ 耐久D+ 敏捷D+ 魔力D 幸運C- 宝具B+
【属性】
秩序・狂
【クラススキル】
狂化:EX→C
バーサーカーは言語能力にこそ支障がなく、平常時は会話すら可能である
ただし、バーサーカーは保有スキル『無辜の怪物』と『精神汚染(ギアス)』に狂化が重なることにより、
その思考は"日本人を殺す"という風に固定され、損得勘定を一切無視して日本人を殺そうとする。その一点に限り、誰の言うことも聞き入れない。
日本人であるならば、実質的に彼女との意思の疎通は不可能である。
ただし、宝具『我が愛しの騎士様』を装備することによって狂化ランクが低下し、“普通のバーサーカー”となれる。
EXランク時は狂化による恩恵はないが、Cランク時には魔力と幸運を除く全パラメーターがワンランクアップする。
【保有スキル】
皇帝特権:E-
本来持ち得ないスキルも、本人が主張する事で短期間だけ獲得できる。
ただし、バーサーカーは自らの皇位継承権を放棄し、
死後は皇籍抹消の上で処刑されたと公式に記録されたため、このスキルは非常に不安定なものとなっている。
該当するスキルは騎乗、剣術、芸術、カリスマ、軍略、等。
無辜の怪物:A+
生前の行いから生じたイメージにより過去のあり方を捻じ曲げられ、能力・姿が変容してしまうスキル。
バーサーカーは日本人を大量虐殺し、ブリタニア人からも軽蔑される極悪非道の ”虐殺皇女” として歴史にその名を刻んでいる。
このスキルは外せない。
精神汚染(ギアス):B
錯乱した精神状態。バーサーカーの場合は、かつてかけられた「日本人を殺せ」というギアスそのものを示す。
何事においてもこの命令が優先されるため、第三者による精神干渉系の魔術を遮断する事が可能。
本来、精神汚染の所持者は同ランクの精神汚染を所持していない人物としか会話が成立しないが、バーサーカーの場合、相手が日本人でなければ低確率で一応の会話は成立する。
武芸の心得:C
皇族教育の一環としてか多少なりとも操縦技術は心得ている。
また、小型拳銃からマシンガンまでなら難なく扱える。ただし専門職には及ばない
【宝具】
『我が愛しの騎士様(ホーリー・ナイト)』
ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1
かつてバーサーカーが、自らの意思で選んだ英雄に贈った騎士の証。
これを所持することで、評価規格外の域にあるバーサーカーの狂化をCランク相当にまで押さえ込む事ができる。
ただし、理性を必要とする一部のスキル・宝具が使用不能もしくは制御不能となる。
さらに、狂化スキルも普通に機能するため、EXランク時よりも魔力消費が増加する。
『虐殺皇女(スローター・プリンセス)』
ランク:B+ 種別:対軍宝具 レンジ:200 最大捕捉:999
自身に[日本人]特攻状態を付加し、サーヴァント、マスター、NPCを問わず、レンジ内の『日本人』に該当するすべての人物のパラメーターをワンランク下げる。
またバーサーカーによる真名解放により、ナイトメアに騎乗した無銘のブリタニア兵を複数召喚し使役できる。
ただし、召喚されるブリタニア兵はサーヴァントではなく、バーサーカーの最も有名な逸話が再現されたものに過ぎないため、逸話における「日本人虐殺」という行動・行為しかとれない。
発動にはそれなりの魔力を必要とするが、レンジ内で死亡した『日本人』の魂はすべてバーサーカーの魔力に還元されるため、維持する上での燃費は良い。
なお、『我が愛しの騎士様』装備時は発動できない。
【weapon】
『ナイトメア』
"虐殺皇女"発動時にのみ騎乗可能。
ただし、ライダークラスの召喚ではなく騎乗スキル(バーサーカーの場合は武芸の心得が該当。もしくは皇帝特権による短期取得)も低いため、十全には使いこなせない。
『サブマシンガン&ハンドガン』
魔力で弾丸を補充可能。
サーヴァントにも有効だが、宝具ではないため武器としては心許ない。
ランクで表すならE-といった所。
マスターなら充分に通用するだろうが、サーヴァント相手なら、
せいぜい弾幕で牽制する程度にとどめておいた方が賢明だろう
【人物背景】
生前は最後まで特区が成功したと信じて逝ったが、死後に史上最悪の虐殺者として英霊の座に押し上げられたため自分が行った所業をすべて把握している。
彼女は絶望し、嘆いた。そして、すべてをやり直すために今回の召喚に応じた。
なぜバーサーカークラスでの召喚なのかと言うと、ユーフェミア自身がバーサーカーでの現界を望んだことと、マスターの縁によるもの。
罪悪感と後悔から、理性を棄て狂気に堕ちることで過去への懺悔になると考えたが、皮肉にもその選択が、彼女が最も嫌う虐殺者としての色濃い現界という結果に繋がってしまった。
さらに彼女のマスターであるシオニーは、祖国リモネシアを意図しなかったとはいえ自らの手で滅ぼしており、
さらにその後罪悪感と現実逃避から独裁者へと変貌を遂げた過去がある。
そういった『民衆のヘイトを一点に集めた権力者』という縁が、バーサーカーとしてのユーフェミア召喚の一因となっている
【サーヴァントとしての願い】
ブリタニア史上最悪の虐殺者としての記録の抹消。
【方針】
運用には若干の工夫と戦略が必要。
『我が愛しの騎士様』による狂化低下は能力強化の恩恵はあるものの、それでも単騎で戦わせるには凡庸の域を出ず、理性喪失による宝具とスキルが使えなくなるデメリットと明らかに釣り合わない。
かといって『我が愛しの騎士様』を解除させても、今度は狂化の恩恵がなくなり弱体化し、さらに思考が「日本人を殺す」に固定されるため制御不能という割とどうしようもなく扱いが難しいサーヴァント。
しかし全く扱えないという訳ではなく、『我が愛しの騎士様』装備時は"まともなバーサーカー"のためマスターの指示もちゃんと聞いてくれる。
宝具とスキル使用不可による火力不足はどうしようもないが、集団戦闘や乱戦など、ここぞというときに『我が愛しの騎士様』を解除させるなどの工夫で補っていく必要がある。
一番の問題は、日本人ではない相手にはどちらの狂化ランクでも決定打に欠けること。
『虐殺皇女』は宝具の性質上日本人にしか効果が及ばないため、そういった相手との戦闘では『我が愛しの騎士様』を装備させたままバーサーカーをけしかけるしかない。
しかし、お世辞にも白兵戦に向いている性能ではなく、さらに"普通のバーサーカー"ゆえに並のサーヴァントよりも戦闘による魔力消費は多いため、どちらにしろマスターの采配が求められる。
【マスター】
シオニー・レジス@第2次スーパーロボット大戦Z 破界編
【ロール】
教師
【マスターとしての願い】
リモネシアの復興
【能力・技能】
弱冠25歳で一国の外務大臣を務めていたあたり、恐らく相当なエリートだったのではないかとも取れるのだが、
作中あまりにもどうしようもない描写ばかりが目立つせいで、優秀な人材という印象は薄い。
【人物背景】
太平洋の小国、リモネシア共和国の外務大臣。25歳。
引っ込み思案で気弱な女性だが、国を何とか盛り立てたいという思いから、アイムやカルロスの口車に乗せられ「プロジェクト・ウズメ」を実施。
ガイオウの復活と引きかえに祖国を滅ぼしてしまうが、アイムらによって新帝国インペリウムの筆頭政務官に任じられる。
その後は次元獣やガイオウの圧倒的な力をバックに世界各国への侵略を始め、その性格も以前とは打って変わって傲慢で冷徹なものへと変わっていく
最終更新:2016年08月23日 17:08