東京にある一軒家、其処に、一人の青年が暮らしていた。
名は佐々木排世、冬木警察署に勤める刑事である。
齢22で巡査長になった実力者で、将来有望な人材であるとか。



その一方、佐々木排世は「喰種」であり、「マスター」でもあった。


◆  ◆  ◆


「ありがとうございました~。」
「ありがとうございます。」

病室の受付係に対して愛想よく挨拶を交わした後、自動ドアを開き佐々木排世は病院を後にした。
病院の外は薄暗く、道路を走る車のヘッドライトや電灯、建物のネオンが少し光り始めた時間帯にあった。
しかし時代は昭和55年、少なくともハイセが生まれるより少し前の年代だ。
持ってきたスマートフォンは圏外、インターネットだって使うことは出来ない。
そもそも、当時の価格でパソコンを買えるほどハイセは裕福ではない。
治療薬が大変高価で、パソコン代を貯金する金すら勿体無い。
それらの光に囲まれながら、ハイセはゆっくりとしたリズムで歩道を歩く。

(にしても、まさか僕が病気扱いなんてね……)

ハイセが与えられたロールは刑事でありながらも「ROS(Rc細胞過剰分泌症)」と呼ばれる不治の病に侵されている者、という扱いであった。
喰種が存在し無くとも、「Rc細胞」という存在自体は発見されているらしく、細胞の含有成分の検査も普通に行われていた。
昭和55年でありながらも、CCGが開発していたとされる技術はこの時点で既に応用されていた、と言う事になる。

(不知君の妹と同じ病気……か、なんか申し訳ない気持ちになるな……)

元の世界における部下の事を思い出し、ハイセは表情を曇らせる。
だが不知の妹の場合は本当に冗談にならないそうだ。
ハイセは部下から非常に信頼されているらしく、また直属の部下でもある不知のそう言った事情も知っていた。
そしてそれこそが彼の「クインクス」志願の理由だということを思い出すと、尚更申し訳ない気持ちになってしまう。

実際、ハイセは医者からの診断では「嚢腫や脳機能への障害こそ発生していないにも関わらず、食事だけは不可能になり且つRc値は類を見ない異常数値を叩き出している」
という前代未聞のケースであった、とされている。

今回来たのは、月に一度の定期診断と治療薬である「Rc抑制剤」を受け取るためにだ。
喰種が存在していないにも関わらず、どうして此処までRc細胞に関する研究が進められているのかは、ハイセにも全く分かりやしない。
だがとにかく、完治こそしていないもののRc細胞の抑制が出来ていることは確かだ、おかげで喰種であるハイセにも人間の食事が摂れる様になった。


(さてと、今日の夕食は何にしようかな……?)

そう考えたハイセは、気分転換を兼ねて右肩にかけているハンドバッグに手を突っ込み、ごそごそと音を立てて一枚の折り畳まれた紙を取り出す。
そしてそれをパラパラと開けば、自宅の最寄駅にあるスーパーのチラシが出てきた。
ハイセはそれに目を配り、駅の入口へと向かいながら限られた食費で買える食材を探し出す。
本当ならスマートフォンでやりたい所だが、時代が時代だ、こうするしかない。



◆  ◆  ◆


「ROS」は、存在と対症療法こそ発見されているもののその患者の数と治療法の浸透性はハイセのいた世界よりも低い。
首都圏ならまだしも、カネキが飛ばされた冬木市は関東からはかなり離れた土地にある。
幸いRc抑制剤を所持しているような病院が市内にあったから良いが、それでも市内最高の大病院であり且つ其処が市内唯一のROS治療場所であった。
其処に行くには電車を何度も乗継しなければならず、ハイセが電車を降りたのは夜7時頃になった。
それに買い物が重なると、駅構内を去ったのが8時頃になった。
其処から大凡15分が立ち、ハイセは漸く、生命の水を受け取る旅から帰還、自宅の扉を開いた。


この家は、明らかにハイセが住んでいたシェアハウスとは違う構造の家だった。
何せ年代が年代だ、あの様なデザインの住宅はこの時代には無かったのだろう。
聖杯戦争の仕組みとともに家の見取り図は完全にインプットされているが、やはりあの家が度々懐かしく思えて仕方が無い。
そんな事を少し回想しながら、買い物かごを両手に取ったハイセはダイニングルームの扉を開いた。

「戻ったか、マスター。」

クインクスのメンバーの代わりに、ハイセの家に住んでいたのは、頭に笠を被り数珠を首に括りつけた僧らしき人物だった。
しかしその格好は余りにも異様すぎる。
数珠には不気味な呪符が付いており、頭はまるでエジプトのミイラのように呪詛が書かれた包帯がぐるぐる巻きにされているという、まるで如何にも呪われていると周囲に言い聞かせるような悍ましい姿だった。
そして彼の名は「ランサー」、佐々木排世の元に召喚されたサーヴァントである。

そんな不気味な格好をしたランサーは、僧服姿を包んだ上着を脱ぐこともせずにテーブルに座り、フォークを手にとってケーキを食べていた。
気味の悪さを体現したかのような格好をしたまま人がテーブルに座って洋菓子を食べるのは、傍から見れば中々滑稽に見える。

「ランサー、またお菓子、コンビニで買って置いたよ。」

ハイセは袋から取り出した食材を冷蔵庫に仕舞い込みながらランサーに話しかける。
ランサーはどうやら大の甘いもの好きらしく、しょっちゅう甘いモノを食べていた。
特にチョコレートパフェは大好物だと言うが、生憎この時代では持ち帰られる手段が無い。
何せコンビニが普及したばかりの時代なのだから。

「そうか。」
「……でも甘いモノばかり食べ過ぎちゃ駄目だよ、糖尿病になり兼ねないし。」
「サーヴァントはその様な病は発症しない、それに我とて好きでこの様な食生活を続けている訳ではない。」
「え?」

ケーキを食べ終わり、フォークを置いて話したランサーの言葉に、ハイセは一瞬唖然とする。
言い訳かな、という考えも一瞬浮かんだが、どうやらそう言う訳でもないらしい。

「私の身体だ。どうやら、私の肉体は甘いモノを極端に欲しているらしい。
定期的に糖分を取らない限り精神が不安定になる様だ。」

機械的な口調ではあるが、しかしランサーの言っていることは真剣に感じられた。
とにかく、甘いモノを食べないと精神が安定しないらしい。
言ってみれば、極度の甘党、糖中毒というべきだろうか、そう言うレベルに至るまでランサーは甘食に飢えているという訳だ。
才子もそれなりに甘党ではあるが、何やかんやで他の食事もバランスよく食べている。
間違っても此処まで酷くはない。

ハイセが台所でランサーが平らげたケーキの皿を洗っていると、ランサーが声を掛けてくる。

「マスター、貴様は今だに戦う気はないのか。」

それを聞いたハイセは、表情を曇らせる。
幾ら普通の生活を続けていようが、ハイセが聖杯戦争に巻き込まれたという事実、それ自体は変わらないのだ。
そんな現実を見せつけるかのように、ランサーの顔を覆う呪符の隙間から垣間見る、紅い眼光はハイセを睨みつけている。

「先に言っておくが、我には如何しても叶えねばならぬ願いがある。
例え貴様が立ち塞がろうと叶えねばならん願いがな。」
「……僕の願いは、元の世界に帰ることかな。」

ハイセには、これと言って聖杯にかける望みなど無い。
そんな彼が強いて望むとしたら、所詮こんな物であろう。

「僕には、大切な人達が待っているんだ。だから僕は、僕の帰るべき場所に帰りたい。」

ハイセには、CCGでの沢山の仲間達がいる。

クインクスの仲間達が、暁さんが、有馬さんが、沢山の仲間達が、ハイセを待っている。
ならばハイセの願いは「元の世界」への帰還だ、こんな所でウジウジしている暇なんて無い。
クインクスの皆の事も心配だし、早く此処から脱出しよう―






―ねぇ、ほんとうに、それでいいの?はいせ。



きみにもほんとうは、ねがいがあるはずでしょ?


せいはいさえあれば、ほんとうにじぶんをしることだってできるのに。



ハイセの内に潜む■■■が、彼に向かってそう呟く。
彼がそれを聞いていたかどうかは、定かではない。
佐々木排世は記憶を失い、CCGの捜査官として生きてきた。
だが内に潜む■■■は、仲間の元に帰らんとジリジリと彼を侵蝕していく。


そしてハイセが喚び出したサーヴァントもまた、仲間を護ろうとした男に寄生した存在であった。
名は「魘魅」或いは「白詛」、文字通り、人を真っ白な姿で燃やし尽くす存在であった。
彼等に魂を燃やされた者達の髪の毛は、皮肉にも、嘗ての佐々木排世と同じ色であった。













【クラス名】ランサー
【出典】劇場版 銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ
【性別】無
【真名】魘魅
【属性】混沌・中庸
【パラメータ】筋力B 耐久C 敏捷B+ 魔力A 幸運C 宝具B


【クラス別スキル】

対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法等大掛かりな物は防げない。


【保有スキル】


戦闘続行:B
往生際が悪い。
致命傷を受けない限り戦闘を続行する。
例え次の入れ物に入り込んでも戦うことを止めない。


病原:A
病の元となる病原菌。
「変化」「騎乗」の複合スキルで、姿形を変えては様々な肉体に乗り移る。


呪術:C
ダキニ天法の一種ではなく、天人が開発した独自の術式である。
呪符を媒介にして呪詛を撒き散らす。


■色の魂:-
ランサーが乗っ取った肉体に残った■■の魂。
その強靭な精神力は、時折ランサーの行動を邪魔させる。
マスターとの共通点から付けられたスキルだが、彼の場合は■■の魂を押さえつけているため、精々が糖分中毒という形でしか現れない。



【宝具】


「蠱毒白詛」

ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

地球外生命体「天人」の内の一部が江戸の攘夷志士に対抗するために作り上げたナノマシンウィルス。
これに感染したが最後、頭髪の色素が抜け落ち身体機能が衰弱すると言った症状が起き始め死に至る。
無論治療法は見つかっておらず、存在しないとある時間では江戸を瞬く間に荒廃させてしまった。
ランサーは、大量の呪符を針の如く発射したり口から放った暗雲を対象に飲み込ませると言った形で、このウィルスを感染させる。
また、この宝具はランサーそのものでもあり、この虚無僧としての姿は飽くまでも「入れ物」に過ぎない。
「入れ物」を破壊したその瞬間にウィルスは新たな入れ物を媒介にして寄生していき、やがて種族を絶滅させる。
だが、これらのウィルスには複数のコアが存在し、それらのコアが全て破壊された瞬間、ウィルスは活動を停止し、ランサーは消滅する。
また、魔力供給が途絶えた場合でもウィルスは活動を停止し消滅する。






【Weapon】

「槍」
虚無僧が構えているそれに酷似した槍。
彼がランサーとして呼ばれた所以でもある。


【人物背景】

「蠱毒」と呼ばれる呪術を使って多くの星を滅ぼしてきた「星崩し」と呼ばれる存在。
攘夷戦争を集結させるために幕府に雇われ、攘夷志士に甚大な被害を齎したとされている。
しかし猛者揃いの攘夷志士集団には敵わず、滅したと伝えられている。

今回は、マスターであるハイセの影響である別の時空でのランサーが召喚され、その肉体も本来のそれとは全く異なっている。
その肉体は完全に侵蝕され制御する事に成功しているため、ランサーが生きている限り制御権を奪い返されることは決して無いだろう。


【聖杯にかける願い】

??????


【方針】

サーチ&デストロイ、状況次第ではマスターを乗り換えることも考える。





【マスター名】佐々木排世
【出典】東京喰種:re
【性別】男


【Weapon】

「ユキムラ1/3」
ハイセが愛用している「クインケ」で、有馬貴将が昔使っていたもの。
赫包が入ったスーツケースの取っ手にあるスイッチを押すことで、赫包がクインケを生成し出現する。
サーベル型の形状をしており、切れ味は抜群。





【能力・技能】

「半喰種」
人を喰らう亜人「喰種」の臓物を移植した人間。
「赫包」と呼ばれる臓器を持っており、其処から人の肉を「Rc細胞」に変え、
そしてRc細胞を使って「赫子」と呼ばれる血液で出来た捕食器官を形成する。
普通の食事は出来ない、無茶をすれば何とか食べられるが汚物のように
不味く感じてしまう。
基本的な身体能力においても人間を遥かに上回るが、戦闘力の殆どは「赫子」に大きく依存している。
因みにハイセが持つ赫子は背中から出る「麟赫」。
治癒能力と威力に長けるが反面非常に脆い、鉄骨の下敷きになって瀕死になるレベル。
また、彼は「赫者」と呼ばれる、喰種を喰らい続ける「共喰い」の末に進化した喰種である。
喰種の弱点である「赫包」も複数存在し、並大抵の攻撃は受け付けない。


  • クインケ操術
喰種の臓器を素材に作られた兵器「クインケ」を操る技術。
CCGの施設で講師を務めるほどには上達している。


  • 体術
有馬貴将に鍛えられた戦闘技術。



【人物背景】

真戸暁の元に送られた記憶喪失の喰種捜査官。
CCG最強の捜査官、有馬貴将の元で教育を受けてきた。
「有馬貴将を超える捜査官を作れ」という指令の元、赫包を移植した「クインクス班」のメンターとして活動する。
控えめで天然気味だが、根は面倒見の良いしっかり者。
普段はシェアハウスでクインクスのメンバー達と寝食を共にしながら訓練を続けている。
家事が得意で、彼の作る料理は「ササキメシ」という通称で評判になっている。


実は「喰種」でありながら捜査官である特例であり、もし彼の赫子が暴走した際には一時的に「喰種」と認識して処置しろとCCGでは命令されている。
有馬に拾われる以前の記憶を喪失しているが、一方で喰種だった頃の自分が時折フラッシュバックする時もある。





【聖杯にかける願い】


聖杯戦争から抜け出す?/己の過去を知る?


【方針】

勝ち残る、一般人及びマスターへの被害は最低限抑える。






【把握媒体】

  • ランサー(魘魅):映画一本、上映時間2時間


  • 佐々木排世:原作1~4巻
ハイセは少なくとも月山家襲撃より前からの参戦です。

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最終更新:2016年09月23日 18:08