晴れ渡った夜。にも関わらず星が少ないのは、満月が煌々と空を照らしているからだ。
そんな月明かりの下、家の寝室で眠る因幡月夜はふと目を覚ました。
生来の盲目の代わりに異常発達した聴覚と積み重ねた鍛錬が、彼女が眠る寮の中で起きる異常事態を悟らせたのだ。

─────何かが居る

何か、少なくとも生物では無い何かが、近所の家を訪問して回っている。

─────まだ此処に来るには時間が有りますね。

そそくさとベッドから出て着替え、亜鉛合金製の摸造刀を持って外へ出る。
待つことしばし、道のの角を曲がって“ソレ”は来た。
盲目の月夜には見えなかったが、“ソレ”の姿を見ずに済んだのは幸いだった。
“ソレ”はマネキン人形だった。マネキン人形が夜の街中を徘徊しているというのも異常だが、その目は異常などというものでは無かった。
赤い血の色をしたその目は、悪意そのものとでも言うべきものを湛えていた。
一目見てしまえば、長い間夢に怯えることになるであろうその怪物を、盲目の少女は見えないが故に─────ではなく異なる理由から怖れない。

「貴方が何者なのかは知りませんが、痛い目を見たくなければ降伏しなさい」

少女は盲目ではあるが、代わりに聴覚が異常なまでに発達している。数百m離れた人間の関節の駆動音すら聞き取れるほどだ。にも関わらず、目の前の相手からはなにもきこえなかった。
呼吸も脈動も、何もかも。骨の擦過音も筋肉の収縮音も。
それでも少女は怖れない。摸造刀を鞘に収めたまま佇んでいる。
人形が此処に来るまでに聞こえていた“移動する時の音”をその耳は精確に捉え、人形が一歩を踏み出そうとした刹那。閉じられていた月夜の瞼が開かれる、その下に有ったのは赤い紅い瞳。
しかし、其れを人形は認識し得たのだろうか、月夜の瞼が刹那の間も置かず閉じると、人形の頭が砕け散ったのだった。

「一体何なのでしょうか?感触は人形のものでしたが」

呟いて屈み込み、触ってみる。冷たい感触は確かにマネキンのものだ。
手に取ってしげしげと考え込んでいると、不意に横に女が立っていた。
己の耳に全く捉えられずに出現した女に驚愕した月夜に、女が蹴りを入れる。

「がはっ!?」

夜道を転がる小さな身体を見て、女が忌々しげに呟く。

「こんな餓鬼に私の使い魔が壊されるとはね」

なんとか立ち上がった月夜に向けてまっすぐ伸ばした手に魔力の輝きが宿る。

「まあ良いわ、あの人形よりも優秀な道具になりそう」

「ただの子供にしか見えんとは、大した英霊でもないな」

「何者だ!?」

真後ろから不意に聞こえた声に、女が驚愕して振り向き。

「その場に案山子の様に突っ立ったままとはな。阿呆が」

そのまま女の首は宙に舞った。

血を撒き散らし、二つの肉塊が路面に転がり、すぐに消えた。

後に残されたのは、月夜と長身痩躯の狼の様な気配の男。

「貴方は…」

「フン…異常聴覚に自顕流。斬った相手ばかりじゃ無いか。しかしこの場所は……生前の因果という奴か」

月明かりの元、盲目の少女と狼の如き男。死者と生者の剣の魔物は此処に出会ったのだった。

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【昨晩の女は魂喰いをしていたサーヴァントの様だな】

翌朝、付き添いの世話係が去った後、月夜に話しかけてきたのは、彼女のサーヴァント。

「全く、何処で魂喰いとやらをしようが構いませんが、私を対象にすれば、そに責任が世話役にいくのですよ。私、プッツンです」

何処ぞのサーヴァントが行った魂喰いの為に、町内の殆どが貧血と似た症状を起こして病院へと搬送され、残った住民も大事を取って仕事や学校をやすんでいた。
世間ではガス漏れだなんだと言っているが、月夜の知ったところでは無い。

「はあ…それにしても面倒な事に巻き込まれてしまいました。しかし何故私が巻き込まれたのでしょうか?戦闘狂の類か、強欲な人間だと思われているのならガッカリです」

月夜に応えず、彼女のサーヴァントは昨夜の事を思い出していた。
あの刹那に間合いを詰めた歩法。幕末に於いても通用しそうな速度の剣。盲目でありながら、人形の動きを精確に捉えてみせた超感覚と言っても良い聴覚。
斎藤の知る二人の剣客。瀬田宗次郎と魚沼宇水を思い出す。
特にあの剣、薬丸自顕流居合の“抜き”だろうが、あれ程のものは幕末の京都で飽きる程見て、そして斬ってきた薩摩の剣士達にもそうは居なかった。比肩し得るのは薩摩の人斬り半次郎ほか数名だろう。

─────この歳でこの剣腕か

このウサギ娘─────長い銀髪をツインテールにした髪形から適当に名付けた呼び名─────は、あの時代に生きていれば、時代に名を刻む事が出来る剣士だった。

「はあ……虎春(こはる)さんならノリノリでしょうに」

何時までも嫌そうにしているマスターを見てサーヴァントは愉快そうに笑った。

【何でも願いを叶える機会だぞ。乗る気はないのか】

「興味有りませんから。欲しい人だけで勝手にやれば良いんです。私を巻き込むのは迷惑です」

溜息と共に言葉を吐き出して、月夜はサーヴァントの方に閉じられた瞳を向けた。

「貴方は願いは無いんですか?やって来た以上は何か有るんでしょう?言っておきますが私はやりませんよ」

【俺にも願いなど無い。俺に有るのは、生前も死後も、悪・即・斬の三文字のみ。お前の様に何も願いを持たない者を巻き込んで、殺し合いをやらせる様な代物は紛う事無く悪。故に只斬るのみ】

生涯かけて貫いた信念を、死しても猶貫き通すと断言したサーヴァントを、月夜は無感動に見やった。

「お好きにどうぞ。私はやりませんよ」

【好きにやらせて貰う。と言いたいが本当にそれで良いのか?今の所帰る為の唯一の手段だぞ】

アサシンの言葉を聞いた月夜の顔は、まるで八月三十一日に夏休みの宿題の存在を思い出した子供の様だった。

「はあ……ガッカリです」

至極嫌そうに、残念そうに言う月夜。

【決まりだな】

「仕方ないですね。それでは今後の為に聞きますが、貴方のクラスと真名は?」

【アサシンのサーヴァント。斎藤一だ】

「と言うとあの新撰組の」

【そうだ】

「私は因幡月夜といいます」

こうして二人の剣士は聖杯戦争の舞台に立つ事になったのだった。





【クラス】
アサシン

【真名】
斎藤一@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-

【ステータス】
筋力:C 耐久:C 敏捷: B 幸運:C 魔力:E 宝具:C

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を絶つ。
完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい。

【保有スキル】

牙突:
生前にアサシンが到達した剣の理合い。戦術の鬼才、土方歳三が考案した左片手平刺突(ひだりかたてひらつき)を磨き上げ一撃必殺の技へと昇華した剣技。
全局面に対応すべく、複数の型を持つ。
素手でも強力な打撃技として使える。
この技はアサシン唯一人のみが使う剣技、その為ランクは付かない。
この技の使用時には、筋力と敏捷に++が掛かり、アサシンの筋力のランク以下の以下の耐久やスキルに依る装甲や障壁の類を無効化する。
使用時には視界が極端に狭まる。

千里眼:C
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。

心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

勇猛:C
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

貧者の見識:B 
相手の性格・属性を見抜く眼力。
言葉による弁明、欺瞞に非常に騙され難い。
陰謀渦巻く幕末の動乱を生き抜いた経験によるもの。

反骨の相:EX 
犬はエサで飼える

人は金で飼える

だが、壬生の狼を飼うことは

誰にもできん

己が正義にのみ殉じ、その為なら所属する勢力にも拘泥せず、己の信念以外のありとあらゆるものに縛られなかったアサシンの生涯。
カリスマや皇帝特権等、権力関係や魅了などといった精神系スキルを無効化する。


【宝具】
悪・即・斬
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:自分自身

アサシンが生涯貫き通した信念が宝具と化したもの。

私欲に溺れ、世の安寧を乱し、人々に災厄をもたらす者と対峙した時、真名解放とともに、全ステータスを1ランク上げる。
実際に対象となるものが、宝具の発動条件を満たしていると判明していない限り発動不可能。


孤狼
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大補足:自分自身

幕府が倒れようとも、新撰組が潰えようとも、己が奉じた正義に殉じ続けた。
世の安寧を脅かす者がいる限り、アサシンは剣を執り、その牙を突き立てる。
Cランク相当の戦闘続行と単独行動を常時発揮する。



【weapon】
日本刀・無銘:
無銘の刀だが、結構な業物

【人物背景】
元新撰組三番隊隊長で、明治の世には警官となり、世の安寧を乱し、人々に災厄を齎す者を斬り続けた。
史実通りなら
退職後、東京高等師範学校(東京教育大学を経た、現在の筑波大学)の守衛、東京女子高等師範学校(現・お茶の水女子大学)の庶務掛兼会計掛を務める[ことになる。

【方針】
聖杯戦争の中で悪を行う者を斬る。聖杯戦争の主催者も悪として斬る。

【聖杯にかける願い】
無い




【マスター】
因幡月夜@武装少女マキャヴェリズム

【能力・技能】
聴覚:
広い女子寮の中の出来事を完全に把握出来る

薬丸示現流抜刀術:
「抜即斬」と言われる駿速の抜刀術
達人剣士の剣技を見切れる主人公が2m位の距離から視認出来ない速度で、
地面に降りて抜刀して首筋に刃当てて納刀する。ということをやってのける。
踏み込みからして尋常な速度ではなく、移動し終わってから移動したのがようやく分かる速度

【weapon】
模造刀:
亜鉛合金製で重量はあるが強度が無い。

【ロール】
女子中学生

【人物背景】
元々女子高だった学園が共学になった際に男子生徒を恐れた女子生徒のための風紀組織、愛知共生学園“天下五剣”の中で最強と言われる剣士。
銀髪紅眼の盲目の美少女。中等部だが飛び級しているので実年齢は小学生並み。
異常なまでの聴覚と、神速の踏み込みと抜刀術の才を持つが、盲目なのは、優れた剣の才能を世に誕生させる為に父親に当たる男が行った近親相姦の所為。
その為に生来病弱。
基本他人と関わろうとせず、五剣の会議にも殆ど出席しない。
「ガッカリです」が口癖。普段は寡黙だが話出すとかなり長い。

【令呪の形・位置】
狼の形をしたものが右手の甲にある

【聖杯にかける願い】
帰りたい

【方針】
なるべく戦わないで楽して目的を叶えたい

【参戦時期】
本編開始直前


【把握資料】

アサシン(斎藤一):流浪人剣心7巻~最終巻まで

因幡月夜:武装少女マキャヴェリズム1巻と5巻

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最終更新:2016年09月03日 08:35