俺はアリウスを追いかけたかったが、アルルを今の状態で1人にするのはまずいと思い、この場に留まる。
「・・・・・・謝りに行かなくていいのか?」
「必要ないもん・・・・・・。悪いのはアリウスなんだから・・・・・・」
そう言いながらもアルルの目は潤み、声はかすれていた。
「じゃあ、アリウスの方から謝るまで許す気がないのか?」
「それは、その・・・・・・」
やはりアルルは正直だ。こういうことに意地を張り続けるのは無理らしい。
「アリウスが戻ってきたら一緒に謝ろう。あいつも許してくれるさ。」
「うん・・・・・・」
俺はアルルと一緒にアリウスが帰って来るのを待つことにした。
「・・・・・・・・・・・・よし、行くぞレオン」
「ワウッ」
待つこと2時間が経過した。が、アリウスが戻ってこない。
「ずいぶん遅いな。何やってるんだ?アリウス・・・・・・」
「そうだね・・・・・・」
「探しに行こう。もうあいつも頭冷やしただろうしな。」
「うん。行こう。」
そういって宿屋から出ようとした時だった。
「あら、お客さん。あなたのお仲間さんから手紙を預かってますよ」
宿屋の主人が俺達を呼びとめ、手紙を渡された。
「お仲間って・・・・・・アリウスのことか?」
「多分・・・・・・。とりあえずルーク、その手紙見てみようよ」
俺達は外に出て、アリウスの手紙を読んだ。
『ルーク、そしてアルルへ。
ごめん。俺はこのまま1人で旅を続けることにする。1人と言ってもレオンがいるけどな。
頭を冷やしきれてないかどうかはともかく、アルルを傷つけちまった。
反省の意味もかねて、迷惑かけたくないので俺は行きます。
ルークはこのままアルルと旅を続けるか、アルルを元の世界に帰してやって欲しい。
アルルは元々罰を犯してはいない。ミーティアさんに言えばきっと帰してくれるはずだ。
俺はこのままじゃ帰れないからな。1人で行くよ。
短い間だったけど、楽しかった。2人とも、元気で。
最後に。アルル、君を怒らせるつもりはなかった。それは信じて欲しい。
アリウス・S・ウェレスティ』
「そんな・・・・・・!?」
「くそっ、あのバカ野朗!!」
アリウスは自分1人で行ってしまったらしい。原因は手紙にもあるとおり、さっきのアルルとの喧嘩だろう。
「アルル、急いで追いかけるぞ!今なら追いつけるかもしれない!!」
「・・・・・・」
「アルル?おい、アルル!!」
「私・・・・・・行けないよ。もうアリウスに・・・・・・嫌われちゃったもん・・・・・・!!」
アルルは我慢の限界だったようだ。思いきり涙を目に浮かべている。
パチィッ!!
俺はアルルの頬を叩いた。
「痛・・・・・・!何するの、ルーク!!」
「誰が嫌われたって言ってんだ!!あいつはアルルを嫌ったんじゃない、アルルがアリウスをフったからあいつはショックを受けて出て行ったんじゃないか!!」
「私、アリウスを嫌ってなんか・・・!!」
「大嫌いって言ったのは誰だ?冗談にせよなんにせよ、愛してる人からそんなこと言われて平然としていられるやつがいるのか!?手紙の最後にも書いてあるじゃないか!これはアリウスが自分で全部背負ってる証拠だろうが!!」
「!!」
「それにな・・・・・・あいつは嫌がらせのためにレオンを連れてきたわけじゃない。お前の犬嫌いを治そうとしてわざわざ連れてきたんだ!その意図を考えずにアルルはアリウスに自分の不満を投げつけたんだ!!」
「そんな・・・・・・!アリウス・・・・・・アリウス!」
アルルはその場で座り込んで泣きじゃくってしまった。俺も言い過ぎたと思い、アルルが泣き止むまでその場で待つことにする。すると、どこからか小さめの野良犬が現れた。野良犬はアルルの方に歩いていく。
「ハッハッハッハ」
「あ、こらそっちに行くと・・・・・・!」
アルルは逃げもせず泣くままだ。犬はアルルのほうに近づき、
ペロペロッ
泣くアルルの目の近くを舐めた。アルルは最初は驚いたが、すぐに犬の方を見て、
「ありがとう・・・・・・」
と少し笑った。
「こんなにかわいいのに・・・・・・私は怖いなんて言っちゃったんだよね。今はもう全然怖くないのに・・・・・・」
「ああ・・・・・・。これでもう大丈夫か?レオンに対しても・・・・・・」
「うん・・・・・・ありがとう、ルーク」
「どういたしまして。さあ、行こうぜ。あのバカを連れ戻しに!」
「うん!私を置いて行くなんて許さないんだから!」
最終更新:2008年09月07日 22:50