■行動内容
移動後、以下の【優先順位表】01~39の優先順位に従って対戦相手を探す。
より番号の小さい方(優先順位表の上の方)の相手に優先して戦いを挑む。
(例:01と02が同じ場所にいたら、01の方に優先して戦いを挑む)
また、【優先順位表】18~39の敵から対戦を挑まれた場合はできる限り避ける。
ただし、18より番号の小さい敵と戦えそうにない場合は、やはり番号の小さい方(優先順位表の上の方)を優先して戦う。
1戦目に勝利した場合は可能な限り連戦する。
連戦時はHPが少ないキャラ優先で連戦する。HPが同じ場合の優先順位も以下の01~39に従う。
【優先順位表】
【行動提出SS】
「わわっ、遂に始まったー!! ううー、でも皆強そう……。私、一体どこにいって誰と戦えばいいんだろう……」
世界格闘大会は、開会式が終了するやいなや、すぐさま一回戦開始のゴングが鳴らされた。
この大会、主催側は一切マッチメイクなどを行わない。
各選手に告げられたのは、一回戦の開催期間と、試合を行うことを許可された六つの試合場の場所のみ。
どこへ移動するのか、誰と対戦するのか、その全てが選手の自由に委ねられている。
更に、期間中であれば何戦しようとも構わない。(無論、体力が続く限りではあるが)
実に自由な大会であると言えたが、紅虎にとっては、この形式はややハードルが高かった。
格闘家としても、また人間としてもまだまだ未熟である彼女には、そもそも今回のルールの意図がまだ良く把握できていない。
どこへ移動すれば自分が有利なのか? どう行動すればより優勝に近いのか?という、基本的な指針がまるで分からないのだ。
彼女が文句なしの強豪格闘家であれば、とにかく単純に戦いを挑むだけでも優勝へと進むことができるだろう。だが、先にも書いた通り彼女はまだまだ未熟者。何の策もなしに戦いを挑むのは無謀そのものである。
実際、開会式での説明を聞く限り、この大会のほとんどの格闘家は紅虎よりも強そうに見えた。
闘いの年季が入ったベテラン、という説明があった格闘家などは全体の約3分の1程もおり、「流石は高名な世界格闘大会だ!」と紅虎は関心したものである。
しかし当然そんなベテランたちはほとんどが紅虎より実力は上であろう。
自分などすぐに倒されてしまうのではないか……そんな不安も増幅されていき、紅虎はますまず身動きが取れなくなっていた。
そんな時。
(……え、何これ? 日本の歌?)
紅虎の耳に、突如音楽が聞こえてきた。
一体急に、どこから聞こえてきたのか。
(えっと、何これ? あれ、でもこの歌どこかで聞いたような……)
あたふたと周囲を見まわす紅虎。しかし音の発生源は自分の周囲にはなさそうである。
そもそも、この音、注意深く聞くと、外から聞こえてくるものではない。
むしろ、自分の内側から……。
(えーっと、あ……これだ!)
紅虎は自分の体をあちこち手探りし、ようやくそれを見つけ出した。
そう、その音は他でも無い、紅虎の体内から発せられていたものだった。
いや、正確には紅虎のチャイナ服の内部。
胸元の近くに描かれた「虎の顔」。その裏側が隠しポケットとなっていたのだ。
紅虎は自分の胸元に手を入れ、その音を発していた物体。一個の小型スマートフォンを取り出した。
(こんな物がこの服についていたなんて……。そういえば何か最近胸が重くなったなー……って)
ちなみに、紅虎の胸は女性としておよそ平均サイズである。
(ちょっと大きくなったのかな? って思ってたんだけど……って、そうじゃない! えっと、これどうすれば……)
- 僕らにどんな世界が道なき道の先にまってる〜♪ ----
(わわわわ! 歌がどんどん流れてくる! あ、画面に文字が映っている! えっと……日本語表示? 「トラー」 あ!お師匠様だ! 「電話に出る」……えっと、これを押せば……?)
中国の貧しい家庭で生まれた紅虎は、スマートフォンなど持ったことが無い。
そのため、どう扱えばよいのかが中々分からなかった。
戸惑っている間にそこから発せられる歌が彼女の焦りを加速されたが、どうにかこうにか、彼女は正しい操作を行うことができた。
そしてようやく歌が止み……。
「ガウ! ガウガーウ! (紅虎! 聞こえるか!)」
「(この声……!) あ、お師匠様!」
スマートフォンから歌に代わって聞こえてきた音声は、まぎれもなく彼女の師匠、トラーの声であった。
「ガオガウガーオ (良かった、無事に出られたようだな)」
「お師匠様…これは一体?」
「ガウ……ガウガウガウウ(うむ……、この大会、お前ひとりで行動するのは不安だろうと思ってな) ガウガオガオガオ、ガウガウウガオガオ(こうしていつでもアドバイスできるよう、お前に渡したその服に連絡用のスマートフォンを潜ませておいたのよ)」
「お師匠様、凄い……。ありがとうございます!」
耳元から響く、師の声。独特の言語であるが、数か月、師と共に修業した紅虎はようやくそれを理解できるようになっていた。
師の元を離れて日本へと発ってから、まだ一か月も立っていない筈だが、その声は妙に懐かしくも感じる。
見たこともない異国で戦いに挑まんとする紅虎の心に、師の言葉は今、大きな力となった。
※※※※※ 作者注:めんどくさくなったので以下、虎のセリフも普通にします。 ※※※※※
「さて、紅虎よ。早速本題だ。開会式の様子は私も友人にモニターしてもらって確認していた。」
「友人?」
「以前にも説明したことがあるかな? 日本に住んでいる刑事だ。そのスマートフォンなども彼からの貰い物だ。だが、今はそんなことはどうでもいい。紅虎よ、どうやら強敵揃いのようだな」
「はい、師匠……。私どうすればいいか」
「魔人による世界格闘大会なのだ。その程度のことは想定の内だ。予想より『逸脱者』と呼ばれるものは少なかったが……。残念だが、それによってお前が序盤の内にまともに戦えるような相手は更に少なくなっただろう。はっきり言ってお前は早期敗退も覚悟せねばならない」
「ううっ、そんなー。」
「落ち着け。それでもできる限り最善の手は打たねばならん。そうすることで少しでも優勝の確率を高くすることができる。わしも前回そうすることで準優勝という結果を得たのだ。 セコイ、などと揶揄したものもいるがな」
「お師匠様……」
師の励ましと、彼の語る武勇に頼もしさを覚える紅虎であった。
「さて、紅虎。お前は腕もまだ未熟だが、頭もまだまだ弱い。繰り返しになるが、それでは、このサバイバル大会を勝ち抜けまい」
「は、はい……!」
「そこでしばらくはわしがフィクサーとなり、お前の活動指針を示してやろう。そのスマートフォンの画面を見よ!」
紅虎は耳元からスマートフォンを放し、自分の顔の前へと掲げた。
すると、画面が切り替わり、そこには人の名前の一覧がずらっと映し出された。
見ると、それは全て開会式で聞いた名前、この大会に参加する選手の名前であった。
「えっと、これは……」
「わしが作ったこの大会でお前が戦うべき対戦相手の『優先順位表』だ」
「優先順位……?」
「うむ、開会式で聞いた情報に加えて、わしが独自に調べ上げた対戦相手の
プロフィールから、お前がなるべく戦った方がいい相手を上から順に並べてある。39人分、全員な」
「39人全員!!?」
「順位付けの細かい説明はキリがないので省くが……、とにかくお前はその順位表に従って行動すればよい。どうだ、簡単じゃろう」「は、はい……」
「それから18番より下の相手が挑んで来たらなるべく戦うな。今のお前ではその辺りから勝つのが難しくなってくる……。無論、それより上の魔人にも勝ち目が高いとは言えないのだが……、それでもまだ勝てる見込みがあると言えるのはその17人ぐらいだろうとわしは見た」
「は、はい……(こ、細かくてよく分からない〜〜!)」
「それから移動先はとりあえず『砂浜』にしておけ。細かい原理は良く知らんが、そこで戦うと連戦がしやすいらしい。おそらく集まる魔人も多いだろう。その順位表の上にいる魔人とも遭遇しやすいはずだ」
「砂浜……、分かりました!」
「うむ。それから、連戦はできる限り行っておけ。今のお前はとにかく戦うことで経験を積まねばならん。傷つくこともあるだろうが、それに耐えてこそ道が開ける」
「はい! 任せてくださーい!」
「良い返事だ。それから、連戦するときはその順位表を参照する必要はない。とにかく弱った奴を優先的に狙え。特に瀕死の奴がいたらとにかく積極的に止めを刺しに行くのだ」
「え、えっと……、わ、分かりました……」
「返事が小さいな? まあいい。では紅虎。長くなったが、この辺で一度電話を切る。後の戦いはお前の実力と、天のみが知る、というところだが……、わしはいつでも見守っておるぞ」
「お師匠様……」
「では、できれば二回戦でまた会おう」
ガチャッ……。
そして師匠、トラーの声は消えた。
手に持ったスマートフォンには、ただ師が送った39人の『優先順位表』が残るのみである。
「えーっと、とりあえず砂浜か……」
師の言葉を胸に、紅虎はいよいよ戦いの舞台へ進む。
「で、この優先順位表と……えーっと、01番、超時空軽空母『綾鷹』DEATH、02番、迷ド探偵たまき ……この人たちを上から順にとにかく探す……、えっと04番の人とかが先に見つかったらどうするのかな……? んっと……んっと……」
果たして紅虎は一回戦、師の教えに従い、最適の相手と戦うことができるのか?
それもまた、天のみが知ることである……。
最終更新:2013年10月23日 10:44