人間が世界で一番最初に出会ったエルフはアヴァリであり、彼らの中には人間に対して友好的な者達もいたが、大部分は人間を避けるかまたは人間に対して敵対的な姿勢をとった(人間に伝わる物語によると)。こういった古の時代において人間とエルフがお互いにどういう名前を与えていたかは、ベレリアンドの伝承の匠達が人間たちと面識関係になった時でも殆ど思い出されることはなかったし、今の世においては最早知る由もない。エルフたちはドゥーネダインからはニミール(Nimîr、美しきもの・the Beautifulの意)と呼ばれていた。⑱
ノルドールがモルゴスとの戦のためにベレリアンドに帰還するまでに、エルダールはどんな種族・種類の人間とも出会ったことはなかった。シンダールはナンドールが来訪するまで、彼らが存在しているということすら知らなかった。ナンドールはヒサイグリアの向こうの東の地を彷徨く奇妙な人々(彼ら自身見たことのない)の噂だけを齎した。彼らからの定かならぬ話を聞いたシンダールは、その'奇妙な人々'というのは減衰したアヴァリか、クウェンディの紛い物として生まれた、メルコールの被造物である、オークに関係するものであると結論付けた。しかしノルドールは既にアマンにおいて人間のことを耳にしていた。彼らの知識は第一にメルコールから齎されており、彼の悪意によって歪められたものだったが、アマンから追放される前にヴァラールから真実を聞き知ったため、ノルドールは新しく来る者達もまた、与えられた恩寵と運命は異なるものの、イルーヴァタールの子であり、彼らと同種にあたるということを知っていた。そこでノルドールは、このイルーヴァタールの子である第二の種族に名前を与えることにし、彼らをアタニ(Atani、第二の民)と呼んだ。他に彼らが考案した名前としてアパノーナール(Apanónar)'後に産まれし者'や、ヒルドール(Hildor)'後に続く者'がある。
ベレリアンドにおいてはアタン(Atan)、複数形アタニが最初に最もよく使われた名前であった。しかしノルドールとシンダールによく知られた人間が、エルフの友にあたる三家となってから長い時間が過ぎるにつれ、このアタニという名前は三家に関係した特別な名前となっていったため、山向こうに住まう者達や遅れてベレリアンドに来た者達といった人間種に対して、通常用いられることは殆どなかった。このエルフの友(覚書19、p.412)は時折伝承の匠たちからはヌーナタニ(Núnatani、シンダリンではドゥーネダイン)'西方の人間'と呼ばれ、この単語はドゥーネジル(Dúnedhil)という名前 ―戦において(p.378)同盟関係にあったベレリアンドの全エルフに対しての名前― に釣り合うよう作られた。元々は中つ国西部に対しての言及だったのだが、ヌーナタニ・ドゥーネダインといった名前は、後にアタニの子孫であるヌーメノーリアン、遙か西方の島ヌーメノーレへと居を移した者達に対してのみ用いられるようになった。
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