あたしは全裸で金網の上に乗せられていた。
全身がぼんやりとした感覚に覆われ、動きたくても体が動かない。

金網にうつ伏せにされたあたしの前に積み上げられた薪と、それにくべられようとする火が見えた。
「やめて…あたしが焼けてしまう」
どこか呆然とした思考のまま目の前の炎を見つめるあたし。

闇の中を歩くと突然、闇の中から現れた手に体を捕らえられ、
暴れる余裕すらなく全裸にされた、いや、いつのまにか全裸になっていたあたしは
祭壇の上に用意された金網の上に乗せられた。

そして今、あたしは祭壇の上でバーベキューのように焼かれている。


熱い…

あたしの下で燃え盛る炎、それにあぶられてあたしの体からにじむように汁が出はじめる。
肉汁が落ち、体の表面に次第に焦げ目ができでいく。

やがて、誰かがあたしの体をひっくり返したとき…



「ピピピピ…」

いつもの目覚まし時計の音。
あたしの目の前に飛び込んだのはいつもどおりの部屋。
「夢か…でも、なんかリアルな夢だったなあ」
夢の記憶を記憶の片隅に追いやりながら着替え始めた。
その体はいつもより心なしか黒ずんでいた。
その日の夜


あたしは全裸のまま皿の上に乗せられていた
体のあちこちに焦げ目をつくり、表面からは美味しそうな香りがたっていた。

しかし、体はまったく痛みを感じていない。
「夢?」
昨日の夢の記憶がぼんやりと蘇った。

目の前に大きな女性が現れた。手には大きなナイフを持っている。
その大きなナイフがあたしの胸に触れる。
「へぇ…この娘の胸、結構大きいのね」
そういいながらフォークであたしの胸を突き刺したまま、胸を切り分けてゆく。
一所懸命首を振るが、声がでない。
そのまま切り分けられた胸が少しずつ大女の口へ入ってゆく。
切り口からは湯気とともに豊富な肉汁がこぼれ落ちる。
それに満足するようにあたしの胸を食べてゆく。

とても美味しそうにあたしの肉を食べてゆく表情を呆然とみあげるあたし。
まったく感覚のないまま切り刻まれる胸を見て、
「やはり夢なんだ」
と思いなおす。

自分の胸がすべて食べられ、ナイフがお腹に到達したとき…

「ピピピピ…」

目覚まし時計の音で目が覚める。
どこか違和感を感じながら着替えようと服を脱いだとき
「…!!」
あたしは静かな悲鳴を上げた。
あたしの胸が、なにもなかったようにまったいらになっていたのだ。
まるで、切り取られたように…


その日の夜、見えない影に脅えながら眠りについた。
夢の中

胸を食べられたあたしのお腹にナイフが突き立てられる
「いや!やめて!」
消えてしまった胸を思い出してあたしは叫んだ。
しかし、大女はそれを無視してあたしのお腹を切り裂く。
見ていられなくなってあたしは目をそらした。
ぐちゅ…ぐちゅ…
お腹をかき回される音とともに、あたしの内臓が食べられてゆく。
徐々におなかの中が軽くなってゆき…

「ピピピピ…」

目が覚めた。あわてて上着を脱いだあたしの目の前には
えぐられたようにへこんだお腹があった。
まるで中身をすべて引き抜かれたような。

その日一日あたしは何も食べることが出来なかった。


その日の夜、あたしは寝ないように必死でおき続けた。
深夜までテレビをみて、眠らないように必死で目を開けていたが…


いつしか意識は暗転していた。

すっかり見慣れてしまった食卓の上、
その上であたしは胸を切りとられ、お腹を食べつくされた姿を晒していた。

大女が次に手を伸ばしたのはあたしの足だった。
「いや、あたしの足が!お願い!やめて!」
無駄だとわかっていても動かない両足を必死でばたつかせる。

それを押さえつけるようにフォークを突き刺し、太腿を切断する。
切り取られて捧げもたれたあたしの足は、大女の口で肉を手羽先のように肉をはがされてゆく。

あたしはそのとき、確かに片足の感覚が失われたのを自覚した。
とてもおいしそうに豊富な肉の食感を味わう大女。

それを見たあたしは抵抗する気力も失われつつあった。

翌朝。テレビの前で突っ伏していたあたしは立ち上がることができなかった。
右足がなくなっていたからだ。
その日からあたしは外に出なくなった。

そして、夜を迎えるといつの間にか意識が暗転しては四肢を食べられる日々がつづいた。
右足に続いて左足が食べられて、大女の口に消えてゆく。
両手は、細身で身が少なかったからか一度に食べられた。

それから、昼と夜の区別がなくなった。

おきていても、両手足がなくなってしまい、食べることも出来なくなった体では
横たわっているしか出来ないからだ。

「もうすぐね。やせ細っちゃわないうちにたべちゃわないと」

夜、どこかからそんな声が聞こえるとともに、意識が暗転した。

「もう…どうにでも…して」」
あたしの首に当てられるナイフをみて、大女にそうつぶやいた。

「貴方の体、とっても美味しかったですわよ」
大女が切り落とされたあたしの首をナイフで切り取りながらそういった。


「世の中、いろんな動物がいるよね。草を食べる動物に、お肉を食べる動物。
でも、あたしはちょっと違うの。」

切り落とされた首。ゴロリと転がるあたしの首に追いかけるようにフォークをつきたてる。

「あたしが食べるのは…」

あたしは宙に浮いたような感覚と一気に変わった視界のなかで、大女の声を聞いた

「夢」

そういうと、目の前の大女の姿が変わった。
急にずんぐりとした形になり、表面は毛むくじゃらになり…

首だけになったあたしを口のなかに入れた時、目の前にいたのは
バクそのものの姿をしていた。


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最終更新:2008年05月19日 11:39