ある所に人魚がいました。それはそれは美しい顔立ちをしており、数多の人間を魅了していました。
ある所に吸血鬼がいました。それはそれは美しい顔立ちをしており、数多の人間を魅了していました。
ある所に少女がいました。それはそれは美しい顔立ちをしており、数多の人間を魅了していました。

ある所にドラゴンがいました。それはそれは恐ろしい姿形をしており、数多の人間を食らい尽くしていました。

3人のうち最初に手にかかったのは少女でした。
巣に連れ去られた少女は叫びます。助けて。食べないで。
ドラゴンは聞く耳を持ちません。まずは足から食べました。少女の悲鳴が響きます。
鋭い牙で柔らかい腿肉を削ぐように抉ります。牙を沈めれば沈めるほど悲鳴は大きくなります。
ドラゴンはその悲鳴が大好きでした。そして大好きだから知っていました。その悲鳴はすぐに聞こえなくなることを。
案の定、右の腿肉を抉り食べきった辺りから悲鳴は弱々しくなり、左の腿肉を空にした後はもうその体を細かく痙攣させるだけでした。
ドラゴンは知っていました。この人間は死に掛けているということを。
だからドラゴンは責め方を変えます。ドラゴンが一番好きな―断末魔の悲鳴を聴くために。
まずは邪魔な服を爪で剥ぎ取ります。現れたのは少女の年齢に少々不釣合いな大きく丸みの有る乳房。
その右の乳房を、ドラゴンは思い切り食い千切りました。
先ほどまでの綺麗に澄んだ悲鳴ではなく、濁った、死を生温く、リアルに感じさせる。そんな悲鳴を少女は上げました。
間髪を入れずドラゴンは左の乳房を食い千切ります。1オクターブ跳ね上がった悲鳴がドラゴンを興奮させます。
口の中にある、もはやただの脂肪の固まりとなってしまった物体を一度少女の腹の上に落とします。
そして、脂肪の固まり、少女の柔らかい腹筋や内臓、少女の儚い生命、それらをそのドラゴンは―

一気に食い破りました。

ドラゴンの好きな、甘美で、儚く、生温い断末魔の悲鳴が巣の中に響き渡りました。
その悲鳴はほんの数秒ほどで途絶え、巣の中には静寂が訪れました。
ドラゴンの目に映るのはビクビクと痙攣している美しい少女の哀れな姿。
それも数十秒ほどで止まり、少女の目からは完全に命の灯が消えました。
それを確認してから、本格的に“食事”を開始します。
肉を食べ、骨を砕き、血を舐め、残ったのは恐怖と絶望に彩られた美しい生首のみ。
ドラゴンはそれをじっくりと眺めます。じっくりとじっくりと。宴を思い返すように。
どれほどの時間が流れたでしょうか。不意にドラゴンはその首を口に入れ、あっさりと噛み砕きました。
肉と骨が口の中で転がります。ドラゴンの頑丈な牙によって、少女の美はぐちゃぐちゃに砕かれます。
やがて、全てを腹に収めたドラゴンは少女を喰らい尽くした場所を見据えて、こう、思いました―


「足りない―ってね」

「ははは、傑作だろう?人を一人喰らい尽くしてまだ足りないのかって」
「だがね、違うんだ。足りないってのはそういうことじゃない」
「命の炎、それが消える短さ。そう、その少女ではそれが絶対的に短く、足りなかったんだ」
「単純に言えばアレだ、『悲鳴が聞きたい』そういうことなんだ」
「命を喰らっているという実感である悲鳴を、もっと長く、もっともっと永く聞き感じていたいんだよ」
「ふふふ…ああ、そうそう、この話はまだ途中でね。それも吸血鬼の話がまだ書けていないんだ」
「人魚の話はもう出来てるんだ。ただ…まぁ正直今した話と変わらない、ただの食事日記さ」
「ちょっと違うのは…ああ、あれはちょっと生臭かったな、人間の部分はかなりおいしかったんだが」
「正直強さはは人間とどっこいって所だな。いや、人間以下かもね。最後の悲鳴が少し物足りなかったよ」
「でも、そのドラゴン…ふふ…そう、そのドラゴンが人魚を食べ物に選んだのには訳があってね」
「人魚の肉には不老不死の効果がある―そんなウワサを聞いてね。是非とも試してみたいと思ったんだ」
「ん?どうしたんだい?おいしかっただろう、その…ステーキは」
「なにしろ僕がまず試食して味を確かめたんだから…ねぇ」
「ま、これにて人間の話は終了だ」
「ここからは新しい話を紡ぐ時間だ。なにしろ吸血鬼と遊んだことはなくてね、少々ケガをするかもしれないが…」
「遊びは本気でやるから面白いんだ、そうだろう?」
「手足を2、3本?いでからは楽しい楽しい食事の時間だ…ふふ、とても楽しみだよ」




「それじゃ―吸血鬼の話を始めよう」

  • 続きはー? -- (名無しさん) 2008-12-18 21:21:35
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最終更新:2008年08月07日 20:11