古代文明において、人と神とは身近な存在であった。
大地に実りをもたらす神、恵みの雨をもたらす神、人々に祝福をもたらす神、そして
人々にさまざまな災いをもたらす神。
「神よ・・・偉大なる神よ・・・われらの願いを聞き遂げたまえ」
この国にはもう何日も雨が降らなかった、そして王は神に祈りを聞いてもらうべく、一つの方法を
執り行う、すなわち、生贄を神に捧げるのであった。
祭壇に寝かされた少女が手足を鎖でつながれている所から
この少女が自ら望んでここに寝ているのではない事を容易に想像することができる。
其れもその筈、美しい顔立ちにすらりとした手足、髪の黒さとは対照的にきれいな白い肌は、
この少女が後数年もすれば、きっと様々な男たちが求婚を迫りに来たであろう。
だが其れももうかなわぬ話であった。
「大丈夫よルティア、私が守ってあげるから」「・・・・ねえさん」
生贄には一人だけ傍らに誰かが付く事が許される。親や恋人がいないルティアは代わりに姉がそばに
付き添うことになった。
「ここに生贄を捧げわれらの忠誠の証といたします」そう言うと少女の着ているものを脱がせ
薄く持っていたナイフで少女の体を傷つける。「痛っ・・」少女はナイフが触れた瞬間体をピクリと震わせ
体を少しのけぞらせる、まだ膨らみきっていない胸の間に少し赤い線が走った。
少女を生贄の祭壇に乗せ儀式の終わった彼らはまたもと来た道を引き返してゆく。
「姉さん・・お願い・・・もう帰って」「なに言ってるのルティア!?・・大丈夫よ心配しないで・・・」
二人の少女が手を握り合うのと、夜の帳が降り始めるのは同じころあいであった。
辺りを静寂が支配し始めたころ。・・・・・・ズルリ、ズルリ。
何かが這う音が姉妹の耳に飛び込んでくる。
何が近付いてきたのか、姉妹の目に其れは飛び込んでくる。
其れは巨大な蛇であった。
「ひっ・・」悲鳴を上げたのは二人同時であった。
だが勇気を振り絞り体を動かしたのは姉が先だった。
「わあああ!!!!」隠し持っていたナイフを握り勇敢にも巨大な蛇に切りかかる。
「お、おねえちゃん!!」妹の声を後ろに聞きながら蛇の体にナイフを付きたてた。
カツッ!!カツ!!何度も蛇の巨体にナイフの刃を突き立てるが、硬い鱗に阻まれ
体に傷をつけることはできない、「この、この!!」か弱い力に非力な刃では奇跡でも起こらない限り
傷をつけるなど無理な話だ、「やめて!!お姉ちゃん逃げて!!」だが姉は妹を守ろうと、
奇跡を起こそうと、必死に刃を振るう。
だが、奇跡は起こらなかった。
「あっ!」パキン、小さな刃は、小さな音を立てて砕け散る。
其れをまるで待っていたかのように、神の使いの蛇はゆっくりと鎌首を落ちあげて、少女の頭を飲み込んだ。
「いやあああああああ!!!!!」悲鳴を上げたのは二人同時であった。
だが、手足をばたつかせ、蛇の頭を殴りつけて、必死に抵抗していたが、ゴキリと言う鈍い音と共に動かなくなったのは、
姉のほうであった。(もしかしたら・・・私を食べ終わったら満足して帰ってゆくかも・・・)
薄れ行く意識の中ぼんやりと姉は妹の身を案じていた。
「いやああ!!お姉ちゃん!!!おねえちゃああん!!!」
妹の叫び声を聞きながら、蛇はゆっくりと姉の体をズルズルと飲み込んで行く。
頭、肩、胸、腰そして最後完全に体が蛇の口の中に納まり、ゆっくりと蛇は
メインの生贄のほうを向き直った。
ズルズル、ゆっくりと蛇は祭壇の少女へと進む。
「ああっ・・・」恐怖のあまり声が完全に出なくなっている少女の体に鎌首を近づけると、
ゆっくりと舌でルティアの体を嘗め回しはじめた。「あっ!・・あくぅ・・」
そのたびに体はビクビクと反応を繰り返す、恐怖と寒さで、体が普通よりもだいぶ感じやすくなっていた。
やがて蛇は少女の足を咥えるとぶんぶんと、体を揺らす、バキン!硬い金属音を立て、少女の鎖は粉々に砕け散る。
そのままゆっくりと足から順に、生贄の少女を体へと飲み込んでゆく。
「あっ・・・ああ・・・」自分の体が飲み込まれていくのを見ながら少女はもはや抵抗する力を失い飲み込まれていくしかなかった。
ズルズル、美しい手足も、
ズルズル、小ぶりだが形のいい尻も
ズルズル、慎ましやかだが形のいい胸も
そして、美しい黒髪にふさわしい、端正な顔も
すべてが巨大な蛇の腹の中へと消えていった。

次の日、国は久しぶりの雨に大喜びに沸いていた。

そして生贄となった多くの少女達のために石碑が建てられて、数百年たった今でもこうして語り継がれているといいます。

終わり

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最終更新:2008年08月07日 20:11