その部屋にあたしが入居してからいくつかの奇妙な出来事が起こった
床においていたお菓子が翌朝には綺麗になくなっていた。
夜、買い物から帰って買い忘れがあったのでコンビニにいってたら
帰ったときには買い物袋から食料品があらかた消えていた。
床には買い物袋に入っていたはずの肉や野菜が転々と転がっていた。
そして、そのような状況を不審に思い、管理人に相談しようと思った翌朝
それは起こった。
「…ん…」
目が覚めたあたしは不思議な感覚を覚えた
体全体が変に涼しい
うっすら目を開けたとき、目の前に飛び込んだのは天井ではなく、壁だった
その壁に取り付けられていた鏡
そこに映っていたのは…
弓ぞりの体勢のまま手足が壁に埋まっている全裸のあたしの姿だった。
「!!!!」
叫びたかったが、声がでない。
悲鳴を上げてるはずなのに、ささやき声のようなにしかなってくれない。
何度も何度も叫んだが、それは変わらなかった。
目が覚めたあたしは壁の中に埋まった手足を引き出そうともがくが、
深く食い込んだ手足はビクともしない。
そのうち疲れ果てたあたしはぐったりと壁にはりついた体勢に身を任せるようになった。
「ん!…やだ…動けないの?」
あたしは刹那に湧き上がる尿意を感じた。
こんなところで…やだ…やだ!
全身をバタつかせたが、どうにもならなかった。
そして…あたしは噴水なさがらにおしっこを床に向けて漏らしてしまった。
あたしは泣いた…
かすれそうな声で…
泣き疲れたあたしは、そのまま夕刻まで全裸のまま過ごした。
そのうちに手足の指先の感覚がないことに気づいた。
手足の途中までは鮮明に壁に埋まった感触はあるのに、その先はまったく感覚がなかった。
その理由に気づくのはその夜だった。
「・・・おなかすいた・・・」
ぼんやりと思っていると、壁に埋まる両手足に電撃に打たれたような衝撃が走った。
「はうっ!」
思わず叫びをあげたあたしは両手足の感覚を受けて
壁に固定させた体を痙攣させた。
両手足は電撃のような快感とともに徐々に壁の中にめり込んでいくが、
快感にさいなまれるあたしはそれに必死になっていて気づかなかった。
「ああぁぁぁ!!!」
かすれるような音量でもかまわなかった
とにかく手足から走る快感を受け止める術がほしかった。
壁に張り付いたあたしの体は何度も跳ね、股間からは透明の液体が洪水のように溢れる。
何度も何度も快感によって突き上げられた。
そして、何度も何度も達して…気を失った。
そして、快感が静まったとき、夜はすっかり更けていた。
あたしの手足は付け根まで壁にめり込んでいることに気づいた。
ほっそりした腕も、しなやかな足も、むっちりした肉感を持った太腿も壁の中へ消えていた。
手足の感覚はもうない。
「あたし、この壁に食べられてるんだ」
それが、月の光に裸身を照らされるあたしが達した結論だった。
翌日
目が覚めたあたし。手足はやはり壁の中に消えたままだった。
「あたし、このまま食べられちゃうんだ」
そう思うとふと場違いなほど穏やかな想念が浮かんだ。
「次に食べられちゃうのって…お尻と…」
ふと股間に目をやる。
昨日漏らしてから、すっかり尿意は消えていた
それどころか、今朝から空腹も感じなくなった。
それより、食欲すらなくなっていた。
「そうよね…今のあたしはこの壁に食べられてるんだから。」
心のどこかで、壁に食べられるのを心待ちにしている自分がいた。
思い出すのは昨夜の、余りに強烈な体験だった。
「あれが…今夜もあるのかな」
そう思うと、壁すれすれに近づいている股間に潤むものを感じた。
「もう、こんな感覚を味わえるのも最後なのかな」
今日は、朝から妙に平穏な気分だった。
自分が食べられているのに…今夜を迎えると、お尻も腰も食べられるだろうに…
でも、それを心待ちにしていた。
はやく食べて欲しかった
そして、待ち望んでいた夜が来た
太腿から腰全体に電撃のような快感が走る。
「!!」
先日のそれとは桁違いの衝撃があたしの腰を揺らす。
徐々に太腿からお尻へと壁に食い込まれていくのを感じる。
「あ!ああああ!あた…し…た…食べられて!!!る!」
股間から溢れる洪水は止められない。
そのうちぱっくりと秘裂が開いた。
敏感なところが壁に触れる
「は…はいっちゃう!あたしの大事なところが…!」
脳髄まで響くような快感の衝撃とともに、乙女の部分が壁の中に食い込んでいった
「~~~~!!!」
もう、言葉にならない。乳房を振り回しながら、お尻と、膣が壁に埋まっていくのを感じていった。
何度もあたしは背筋をのけぞらせて空中を跳ね回った。
何度も何度も膣を壁にめり込ませた。
そして、何度かのうちに膣の感覚は壁の中へ消えていった。
そして…ふたたびあたしは気を失った…
翌朝
あたしの下半身は完全に壁の中に消えていた
鏡に映るあたしはまるでレリーフのようだった。
すっかり動かなくなった体。もう、自分が二本の足で立っていたことすら思い出せない
一昨日と昨日の快感が、記憶を洗い流していた。
「もうすぐ…あたしは消えてしまう…」
恐怖感はなかった
その夜。
胴体と肩から響き渡る快感はわずかに残ったあたしの体すべてを嘗め回した。
あたしは、あたしの体に唯一残った性感を感じる器官、乳房と乳首を
精一杯動かして、快楽を受け止めていた。
そして、充血した乳首を振り回しながら、快感におぼれていった。
食べられるのなら…消えてしまうのなら…せめて快楽の中で…
切ない視線は空中を泳ぎ、わずかに残った上半身は生の名残を全身で受けようとするかのように
動き回り、もはや残り少なくなった動く筋肉すべてで快感を受け止めていた。
昨日までなら、そのまま気絶していたかもしれない。
しかし、下半身を失った体は、快感への耐性を持ったのか、さらにあたしの体を高みへ上らせる。
それをあたしは何かに感謝した。
最後まで、快感を一滴残らず受け止めたかった。
上半身を食べつくされた後、あたしの後頭部が壁に触れる。
まるで、それが母親の胎内のようにしっくりとあたしの体を受け止めるのを感じた。
上りつめたあたしの快感におぼれる脳内に、それまで感じたことのない安楽が染み渡った。
薄れる意識の中、あたしの視界に入ったのは、首と乳房だけを壁から露出させたあたしの姿だった。
鏡の中に映る、月の光を浴びる首だけのあたしを美しいと思い…そのまま目を閉じた。
翌朝
部屋の壁は真っ白なまま朝の光を浴びていた。
床に広げられた液体は乾いて、その痕跡すらなくなっていた。
ただ、ベッドに広げられたパジャマとブラジャー、ショーツだけが
彼女がその部屋にいたことを物語っていた。
数週間後
住人が失踪した部屋に新しい住人が引っ越してきた
「うわぁ、綺麗な部屋。部屋も、壁も、凄く綺麗」
新たな住人となる女性は、鏡を壁に据え付けた。
「?」
彼女は背後に不思議な視線を感じた。
彼女の部屋に置かれたお菓子が消えはじめるのは、それから数日後のことだった。
最終更新:2008年08月07日 20:12