17 :【オクトレディ】(1/4):2006/05/13(土) 00:42:52 ID:b0EYG269
ひとまず記念にSSを書いてみました。
山無し意味無しオチ無しですが、どうか御勘弁を。

とある異世界……カードに魔物や魔法を封印し使役することができるようになった世界。
カードの魔物を使役できる人間はカードマスターと呼ばれていた。

広い海、大きな空、焼けた砂浜、そんな中でカードマスター達の訓練は行われていた。
「このっ馬鹿野郎っ!不用意に怪しい所に近づくなと何べん言えばわかるっ!」
そう言って男子教官が思いっきり女子生徒のほっぺたを叩き罵り声を上げる。
(うわっ、あの教官、まただよ……一々うっさいこと言ってるんじゃないよ)(しっ、聞かれたら減点だよ)
「そこの喋ってる二人、減点2だ」
後ろを振り向きもせず教官はボードに記録を書く。
「まったくなあ……いいか、魔物封印のカードも万能ではない、その魔物の属性や種族に合った物を選ばないと大変な事になる……

(何度目だよ)(てめえの授業は聞き飽きた)(あーあ、はやくカードマスター認定試験受けたい……)
「後ろの3人減点1な」

「……まったく、あの鬼教官……いつもぶつくさぶつくさ……」
「そうだよ、『減点を返して欲しかったら何で減点されたかを100回書いて提出するように』って……んなことやってられないよ!」
「あーあ、同期はもう1回目の試験受けてるのにな……」
そう休憩時間中にもらしながら少女達は思い思いに教官への愚痴をこぼす。

試験官は《遠隔通話》のカードを取り出して使った。
魔法カードは基本的に使い捨てなので、安いカードはバラではなく束で売っていたりする。
《遠隔通話》は基本的に束買いが基本な継続ヒットカードである。
「どう?あなた達のクラスは?」
「駄目だな。魔力はでかい奴が何名かいるが、心構えがなってない……今回は全員落としてかまわんか?」
「まだ1週間よ。だいたい1週間目の試験で受かる子って前から試験してた子だけよ?だからせいぜいあの子達を教育しなさい
 彼女みたいな子を増やしたく無かったらね」
向こうからの声に仕方なく返事をして、教官は黙り込んだ。

18 :【オクトレディ】(2/4):2006/05/13(土) 00:44:53 ID:b0EYG269
「あっ、あそこで泳いでる人発見!」
そう一人が言って声を張り上げた。
「あのー、このあたりの海危険って聞いたんですけど、泳いでて大丈夫なんですか?」
「えっ?私この近くに住んでるけど泳いでで危険な目に合った事は無いわよ」
「だったら、私達も泳いで構いませんか?」
「ええ、どうぞたっぷり泳いでちょうだい」
「やりー!」「教官が帰って来れないように《魔法障壁》張っちゃえ!」「ついでにもうひとつえい!」
幾重にも砂場の周りに《魔法障壁》が張られて見張りの生徒も全員が遊びほうける。
「気持ち良いわよ……さああなたもいらっしゃい……」
一人取り残されていた少女に対して泳いでいた女性が声をかける。
「でもこのあたりの海には色んな魔物が出る可能性があるって……」
「あんなの先生の脅しだって。そんなことより気持ちいいよ!」
そう言って、残った一人に声をかける女子生徒たち。
「でも……」
残った少女がこわごわとしながら、海へと入ろうとした瞬間だった。彼女の足元に触手が巻きついたのは。
「きゃっ!」
小さな悲鳴を上げて、少女が海へと倒れこむ。
「うふふふふふ……お馬鹿さん……海は私達の住処。危険などあるわけありませんわ」
「「きゃああああああああああああああああああああああああっ!」」
声を張り上げて海で泳いでいた少女達が叫び声を上げる、海草が次々と生えてきて彼女達の体に腕へ足へ巻きつき、さらに無数
の魔物達が彼女達を取り囲むように現れ始める。
「さて、あの教官があなた達の作った魔法結界に戸惑ってる間にあなた達をカードマスターの卵どもを魔物のエサにしてあげますわ」

「助けて~~」「死にたくないよ~~」「教官~~もう約束破りませんから」
「泣いてわめいても無駄ですわ……まったくあの男が集めた人員なのですからすごい人材なのかと思えば……少し拍子抜けですわ

泳いでいた女性はぬっっと上半身を陸へと持ち上げてその異形の下半身を見せる。
巨大な蛸。それが彼女の下半身であった。それを陸に残っていた少女の体に絡み付ける。
その女性……名を【オクトレディ】は少女の足を蛸足の中心にある穴に入れる。
「痛い痛いよぉ……」
ずぶずぶと少しずつ少女の体はオクトレディの体内に入っていく。
「さて、魔法障壁が消える前に貴方を頂くとしましょう」
「残念だが、それは無理だ」
凄まじい轟音を立てて、魔法障壁が砕け散る。
「せっ先生!!」「すっ素手で魔法障壁を!」

19 :【オクトレディ】(3/4):2006/05/13(土) 00:47:10 ID:b0EYG269
生徒達が驚愕の表情を浮かべる。
「きっ貴様!!」
「出来は悪いがそれでも俺の生徒だ。守らせてもらうぞ」
超跳躍、【オクトレディ】に飛び蹴りを喰らわせる。食べられかけた少女が吐き出され、砂浜に転げる。
「先生、一体どんな魔法を使ったんですか!」
「魔法?否!これは鍛え上げられた自分の筋力!!」
そういいながら、先生はカードデッキを取り出す。
「そしてこれが俺の魔力だ!来たれ大地の魔獣!地を作る物【グランドン】!!」
カードが解き放たれ、その巨体が姿を現す。それと同時に海だった場所が砂浜へと変化し彼女達は海草と共に陸へと上げられる。

彼女達を縛っていた海草は、忽ちの内に力をなくし彼女達は用意に脱出した。
「さて、本来なら魔物はなるべく封印する所だが……」
「ひっ!!」
「俺の生徒達を計画的に襲った貴様を封印するだけならば、後々に禍根を残す……」
そう言って、先生はカードデッキに手を取る。
「全員!そいつから直ちに離れろ!手持ちの最強の魔物使うからな!
 鋼鉄の腕に鋼鉄のナイフ、刃は硬く、棘は鋭き!食える物なら椅子も食い!食えぬ物ならパンも食らわぬ……来たれ【機械蜘蛛
の料理人】!」
空間が歪み、その巨体が姿を現す。八本の足には様々な道具がついておりゆっくりとかしゃかしゃ唸りを上げる。その姿はまるで機
械の蜘蛛。
前足の二本を【オクトレディ】に振り下ろすと【オクトレディ】の足が切れる。
「ぎゃあああああああああああああああああああっ!」
声にならない叫びを上げている間に【機械蜘蛛の料理人】はその足をむしゃむしゃと食べる。ふむふむとしばらく考えたようなそぶり
を見せて、ゆっくりと体から液体を取り出す。
「DCS?」
少女の一人が疑問を抱くが誰も答えない。
「どうやら、貴様を食べる手段が決まったようだな」
そのねっとりとした液を【オクトレディ】の上にかけると、そのまま口へと持って行く。
【オクトレディ】が叫び声を上げる。
「助け……」
ぶちゃり。

20 :【オクトレディ】(4/4):2006/05/13(土) 00:49:17 ID:b0EYG269
「……先生の恋人も魔物に?」
「ああ、ひどい最後だったよ」
夜、キャンプファイヤーを囲んでの反省会。
協会からはひとまず、事件後の要報告と、これからの場所の変更が言い渡された。
「……元気一杯で、好奇心一杯だった。そのせいかな。後進がそうならないようにがんばるようになったのは」
そう言って言葉を区切る。
「でも、先生、魔法障壁破れるパンチが撃てるんだったら、【オクトレディ】もそれで倒しちゃえば良かったのでは?」
「あのなあ、万が一絡まれてデッキ落としてみろ、全員死亡だぞ。それでも良かったのか?」
その問に疲れたように答える先生。あっそうかと一同が納得しかける。
「ところで、先生あの先生の最強の魔物……【機械蜘蛛の料理人】ですけど、まさか先生がパンチ1発でのしてカードにした……とか
いうオチは無いですよね?」
恐る恐る女生徒の一人が聞く。
「まさか……あいつはラッシュを100回は当てただろ?《火炎球》も5枚使ったし、《治癒》は20枚全部使ったな……
まああんときは向こうから襲ってきたからな。自分でも良く勝てたと思うよ。 お前達も強い魔物を手に入れる前に自分も強くなれよ」

先生ごめん、私達先生みたいに強くなれない。女生徒達は全員があの魔物を手に入れることを諦めた。

その後彼女達は試験を全員合格した後、強いカードマスターになったと言われている。
只彼女達が武器を持っていたのは、師に追いつこうとする努力だったのか、師に追いつけない妬みだったのか判るすべは無い。

END


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最終更新:2008年08月07日 20:04