姉は言いました。
「おかあさんは、おおきなイヌに食べられた」
妹は言いました。
「おとうさんは、おおきなネコに食べられた」
村の人たちは、それを信じませんでした。
次の日。
姉は言いました。
「となりのおばさんは、おおきなイヌに食べられた」
妹は言いました。
「となりのおじさんは、おおきなネコに食べられた」
村の人たちは、それを信じませんでした。
1か月後。
姉は言いました。
「村の女は、おおきなイヌに食べられた」
妹は言いました。
「村の男は、おおきなネコに食べられた」
小さな女の子は、それを信じました。
1か月と数分後。
姉は言いました。
「女の子は、おおきなイヌに食べられた」
妹は何も言いません。
信じる人も、信じない人も、ここには居ません。
数年後。
姉は言いました。
「女は皆、おおきなイヌに食べられた」
妹は言いました。
「男は皆、おおきなネコに食べられた」
信じる人も、信じない人も、この世界には居ません。
数年後と数十分後。
姉は何も言えません。
「……………………」
妹は言いました。
「お姉ちゃんは、大きなイヌに食べられた」
そして世界に残されたイヌは、姉の首を抱えながら、一粒の涙を流した。
最終更新:2010年05月05日 22:22