なぜこんなことになってしまったのだろう
最初にあの丸い大きな植物を見つけたのはユカだった
部活の帰り、甘い匂いに誘われて私たちは廃工場にいた
「新しいケーキ屋さんかと思ったのに…」
そう言ってユカは笑った
ユカとは小学校も中学校も一緒だった
明るく活発で誰にでも優しい女の子
輝くような笑顔、ほっそりした身体はしなやかで美しかった
ショートカットの髪がさらさらと風に流れる
誰もがユカに憧れていた、もちろん私もその一人だ
「それにしてもこれなんだろうね、ユカ」
「さあ?緑だし植物じゃない?」
甘い匂いを発するそれは確かに植物のようだった
ガレキを突き破りそびえ立つ太い茎、その先にはドラム缶を倍くらいの大きさにしたような袋状のものが付いていた
巨大な葉が一枚、ちょうど袋に蓋をするように生えている
根本からは葉とも蔓ともつかない緑のものが何本も伸び風に揺れている
これはどこかで見たことがある…何だっけ?
ガレキの山に登りユカが袋の中を覗き込む
「暗くてよくわからないな」
「あぶないよ、ユカ」
肉厚の赤い袋のふちに手を付き身を乗り出すユカ
「何の匂いなんだろ?」
つるりとユカの手が滑った
「あ!」
「ユカ!」
助けようと手を伸ばした私もまるで引きずり込まれるように袋の中に落ちていった
どすん!
「いったーい!重いー!」
「ごめん!ユカ」
折り重なるように私たちは袋の底に落ちた
袋の中は弾力に富み衝撃は大分和らいだが
私の体重を受けユカが不満の悲鳴をあげた
弾みで捲くれ上がったスカートからのぞくユカの白いふとももがまぶしい
「もう、一緒に落ちることないじゃん!」
「ゴメン、ユカ」
「怪我はない?ここから出るよ」
しかし、脱出は困難を極めた
袋の内側がヌルヌルした何かに覆われ登ることはできなかったのだ
ヌルヌルしたものは底にたまり小さな水溜まりを作っている
「おーい、誰かいませんかー!」
返事はない
「ねえ、ユカ、見て。ここ圏外だ…」
助けを呼ぶ手段もなかった
「ねえ、肩車してよ、手が届くかも」
「え…肩車?」
今は恥ずかしがっている時ではない
私は背を丸めユカのスカートの中に頭を突っ込んだ
ユカの甘酸っぱい香りに包まれる
部活の後の汗ばんだふとももが私の頬を挟む
すべすべした感触とユカの匂いに包まれて私はくらくらと倒れ込んでしまった
「キャ!いてて、危ないなあ…」
「ごめん、ユカ」
「気をつけてよ、でもホントに出られそうもないね」
私たちは空を見上げる
唯一見える葉によって切り取られたギザギザの空
私たちは本当にここから出られるだろうか
「怖いよ、ユカ」
「大丈夫だよ、明日になれば助けが来るって」
しばらく脱出を試みたがどれもうまくいかず、私たちはすっかりくたびれてしまった
今日はもうここで夜を明かすしかない
ユカが震える私を優しく抱きしめる
私もユカを抱きしめる、細い身体が震えていた
ユカも恐ろしいのだとわかった
私は柔らかく温かいユカの胸に顔を埋めて眠った
まどろみながら私はこの丸い大きな植物が何に似ていたか思い出した、「ウツボカズラ」だった
私が目を覚ました時、ユカはもう目覚めていた
青ざめた血の気の失せた顔に目だけが黒く輝いている
「ねえ、やっぱりここおかしいよ」
そう言って私に手を見せる
その手がボロリと崩れ落ちた
ユカも私も信じられないといった顔でそれを見つめていた
じわりと血があふれだした
「ああああああああああ!手が!手が!」
耳を覆いたくなるような悲鳴が響く
身を起こそうとした私は足に激痛を感じた
ああ、なんてことだろう
私の足首から先は溶けて無くなっていた…
私は片足ですんだがユカは両足首を失っていた
人形のように可愛いらしかった足は今は形を失いグズグズに崩れている
どうも、底に溜まった液、それに肉を溶かす効果があるようだった
「どうしよう、血が止まらないよ」
ユカは泣いている、顔色も蒼白だ
私はハンカチを取り出すとユカの傷口を縛ろうとした
ダメだ、傷口がボロボロ崩れてしまう
腕を縛り血管を圧迫して止血を試みる
私の足からは不思議と血が出なかった、痛みも薄れている
それもやはり底に溜まる液の作用のようだった
私はしばらくしてこの植物の策略に気付いた
麻痺性の分泌液で痛みを和らげ、消化酵素で肉を溶かす
暴れると身体が崩れるので獲物はおとなしく分泌液に身体を浸し死を待つしかない
止血はどうやら強力な血管収縮成分で行われているようだった
まるでかりうどバチが子に獲物を活きたまま喰わせるように
こいつは私たちをなるべく生かしたまま、養分にするつもりなのだ
ユカの方が侵食が速いのは寝る時ユカが下だったからに違いない
「うつぼかづら…」
「え?うつぼ…何?」
私は何故肉が溶けたのか、私たちはどうなるのかをユカに説明した
しばらく無言で私の話を聞いた後、ユカが口を開く
「知ってたの?知ってて教えてくれなかったの?」
ユカの瞳に燃えているものは紛れも無い「憎悪」だっだ
「聞いて…ユカ…!」
「来ないでよ!あんたなんか大ッキライ!」
私は狭い袋の中でユカに近づこうとするが、ユカはそれを許さない
ただ一本残った腕をぶんぶんと振り回す
ぐしゃり、袋の壁に腕が強く当たり、細い腕がトマトのように潰れる
「あああぃいいいぁあ!」この世のものとは思えない悲鳴があがる
腕から血を吹き出しながらぐねぐねと芋虫のようにのたうちまわるユカ
私は血の吹き出す腕を掴むと底に溜まる分泌液に無理矢理突っ込んだ
しばらく、呻いていたが痛みがひいたのかユカの体から力が抜けていく
「大丈夫?…ユカ?」
「離れて…離れてよ…!」
返ってきたのは拒絶だった
私はユカを永遠に失ってしまった、深い悲しみと喪失感
だが、考えてみればこれは最後のチャンスかもしれない
「ユカ、液から離れよ、溶けちゃうよ」
「ほっといてよ…!」
私は無言でユカを抱えおこすと
後ろから抱き上げるように抱え込だ
腕とすねから下を失ったユカの体は思ったより軽くそれは簡単にすることができた
もちろん、私の体の下にはカバンを敷き液には触れないようにしてある
「じゃあ、楽しもうか、ユカ」
私は微笑んだ
「何を…言って…」
私はユカのスカートに手を入れ大事なところをこね回す
「やだぁああああああ!」
じたばたとユカが暴れるが四肢の無い抵抗など意味をなさない
逆にそれが足の崩壊を早め、痛みでユカはついに大人しくなった
「はーい、ぬぎぬぎしましょうね、ユカ」
「やめて…」
私はユカのスカートに手をかける
腐食してぐずぐずになったそれは私が触れるだけでボロボロと崩れ落ちる
白いパンティと健康的なふとももがあらわになる
健康的といっても、もう膝から上までのことだけれども
ん?これは…
「痛かったんだね…ユカ
ユカの身体がびくりとすくむ
「しかたないよ、おもらししちゃっても」
「違う!」
ユカの首筋が真っ赤に染まり私から顔を背ける
黄色いシミのあるパンティをずりおろすと薄い毛に包まれた肉の丘があらわになった
ぴったり閉じた肉から桜色のヒダが覗く
私は肉を押し開くように何度もそれをこね回す
「やめて!やめてよ!やだ!誰か!誰か助けて!」
私はやめないし誰も来なかった
「ねえ、気持ちいい?気持ちいい?ユカ」
「変態…」
ぼそりとユカがつぶやく
「ええ?変態はユカの方じゃないかな?乳首勃ってるよ」
はだけたワイシャツから覗く柔らかそうな丸み
その先のピンクの乳首はぷっくりと持ち上がり
摘んでいじるとユカは歯を食いしばった
いじり回していた桜色のヒダは充血し
袋の底の液とは違うぬるぬるしたものを垂れ流し始めている
私の手はもうべとべとだ
「もう、いいでしょ…離してよ」
「そうだね、もう準備は整ったね、ユカ」
「何…?まだ何かするの?もうやだ…やだよ…」
「大丈夫…これで最後だよ」
私は部活のリレーで使うバトンを取り出した
「まさか…」
「答えて…ユカは処女?」
「ヒ…!」
バトンをユカの肉のヒダの間にあてがう
にゅるりとした感触とともにバトンは入り口を見つけだした
「くふぅ!」
ユカの歯がカチカチと鳴るボロボロと涙が零れる
「関係…ないじゃん…」
「そう…」
「あぐぅ…!」
手に力を込めるとバトンが少し飲み込まれユカが苦痛のうめき声をあげる
「いいの?ユカ?本当にやるよ」
ついにユカは屈服した
「処女…処女だよ!だからしないで!怖い!」
「そう…良かった…ユカの初めては私のものだね」
「そんな…!」
私は手に力を込めるとバトンをユカの中に押し込んだ
「ああああああ!」
きつく締め上げるユカの中を進むバトンが何かに突き当たる
しっかりとしただが頼りない処女膜の感触
私はバトンを握り直すと一気にそれを突き破った
「いたあああああい!痛いよおお!」
ユカが悲鳴を上げてのたうちまわる
泣きじゃくり涙を散らすユカに構わず私は何度もバトンをユカの中に突き立てた
ユカのあそこから綺麗な赤い血があふれバトンの動きで飛び散った
「痛い…痛いいい!」
おかしい、ユカは痛がるばかりで少しも感じてくれない
クリトリスをこねてみる
「くふううう!痛い!」
痛みの方が強いようだ
「しかたないな、ユカは…」
私はユカに挿したバトンを抜き取る
弾力のある肉から抜けたそれにはユカの血や体液がこびりついている
「ごめんね、ユカ。痛いのは嫌だよね」
「許して…くれるの…」
荒い息でユカがたずねる
まだ私を信じてくれる可愛いユカ
そんなわけないじゃん
私はバトンの筒を袋の底の液に浸すと手で片側の蓋をした
これで液がこぼれることはない
「ほら、ユカ。これで痛くないよ」
「嘘…でしょ」
ユカの身体が強張る
「暴れるとこぼれちゃうよ、顔にかかっちゃうかも」
ユカはおとなしくなった
液がこぼれないように肉の入り口にあてがう
ぽちゃりと液が揺れユカが身をすくめる
「やめて…お腹の中が…溶けちゃう…」
「いいじゃん、どのみちユカはもうダメだよ」
私はユカの肉の中にバトンを押し込んだ
「ダメぇえええ!あふぅ?」
明らかにユカの反応が違う
目がとろんとし、首筋が赤く上気している
私はバトンを激しくユカの中に出し入れする
「ダメ!…あん!…こんなの」
ユカの口から漏れるのは明らかに喘ぎ声だ
ユカは感じている
「嘘!どうして…!痛くない!こんなの…ダメ!」
「ユカ、気持ちいいって言って!」
「気持ちいい!気持ちいいよおお!」
びくりと身体を震わせユカが果てる
上気して脱力した身体を抱きながら私は深い満足を感じていた
荒い息を吐くユカの口から血が吹き出し目が裏返る
バトンの筒の部分から赤黒い液体がばしゃばしゃとほとばしり出る
液が内臓を溶かしたのだ
ユカは脱力し袋の底の液の中に転げ込む
こうなることはわかっていた
私は膝を抱えると助けを待つことにした
誰もこない
ばしゃりと突然水音がして死んでいると思っていたユカが動き出した
目も鼻も溶け赤い泥人形のようになったユカは
しばらくばしゃばしゃとのたうちまわると完全に動かなくなった
誰もこない
私ももうだめだろう
今まで起きたことをこの生徒手帳に記しこれから外に放り投げることにする
これを拾った人どうかこの丸い大きな植物には近づかないでください
とても怖い、ごめんユカ
…拾った手帳には不思議なことが書かれていた
「わたし」はかたわらの「兄弟」にこの内容について尋ねてみた
「何も不思議ではないさ
集団で暮らす生き物は自分の身の危険を仲間に報せようとする習性があるんだ
ハチとかもそうさ」
「兄弟」は答えた
そして緑色の細長い身体を手帳に巻き付けると「わたしたち」の丸い大きな胃袋にそれを放り込んでしまった
-「あの丸い大きな植物」了-
最終更新:2010年05月06日 02:44