これはとある魔界の貴族が持つ不思議な道具。
すくったものを美味なるデザートに変える力を持つ。
そして素材が優れたものであれば至高の味を楽しむことが出来るという。
今の持ち主が出した最高の素材の答えは・・・『美しい少女』

薄暗い森の中に中学の制服を着た二人の少女の姿がある。
片方の茶色味がかったショートヘアーで健康そうな細身の少女、遠野美香。
もう片方は黒いポニーテールと年の割りに発育のいい胸をした少女、水瀬唯。
二人はこの先にある穴場の心霊スポットだという洋館を目指していた。
「唯~大丈夫?疲れた?」
「うぅ大丈夫・・・疲れてはいない、怖いけど」
唯の表情は曇っており乗り気ではないことが伺える。
元々『夏を先取りして肝試し行こう!』という美香の強引な誘いでやってきたのだった。
「ほら、置いてっちゃいそうだし、手でも繋ごう」
美香は唯の手を強引に掴むと先へ先へと進んでいった。

「ふ~やっと着いた、それじゃ早速」
「待ってよ、美香ちゃん・・・なんか想像と違うんだけど」
美香は何が?という顔をするが唯の言うことも理解できる。
重苦しい造りの洋館、それは問題ない。
しかし、当然明かりはないが長年放置された建物にしてはそれは綺麗すぎた。
物語に出てくるようなツタの絡まった様子もなく、ガラスの割れた箇所もない。
「気にしすぎだって。入るのが嫌ならここで待っててもいいよ?」
美香は笑いながらそう言うと重い扉を開き、中へと足を進める。
一人でいることの方が怖い唯も渋々その後に続いた。

中もやや埃臭いが荒れた風はなく、僅かな調度品が並ぶだけの部屋を覗いていった。
「ん~、ちょっとがっかりかなぁ。こんだけ綺麗だと雰囲気もないし」
不満げな声を漏らす美香とは対照に非現実的ともいえる綺麗さを不気味に思う唯の足取りは重い。
そして階段近くの大きな扉を開ける、一階の部屋はこれで最後である。
「この部屋だけ広い!唯、奥まで入ってみよう」
「暗いんだからもう少しゆっくり歩いてよぉ・・・」
ズンズン進んでしまう美香の後を追って部屋の中に入る。

「え?えっ?どういうこと?」
美香のもとに唯が追いつきゆっくりと扉がしまると同時に部屋全体に明かりが灯った。
唯に至っては驚きに声をなくし、美香の服の裾をギュッと握りしめている。
『ようこそ我が館へ。大したお持て成しも出来ませぬが晩餐などはどうですかね?』
突然の声に困惑しながらも声のした方を向く二人。
そこに座っていたのは異常に大柄で肌が赤黒く、まるで人間ではないような風貌をした男。
「い、いえ、今はお腹もすいてないですし・・・あの、勝手に入ってしまって、すいませんでした」
美香は震えながらそう答えると唯の手を取り扉の方を向きなおす。

「そうですか・・・それは残念だ。ならばデザートだけお付き合いしていただきましょう」
そう言いながらゆっくりとした足取りで二人のもとへと近づいてくる。
「唯!走るよっ」
恐怖で足がすくんでいる唯を引きずるように走りだすが、扉に辿り着くことも出来なかった。
真っ赤な絨毯から伸びる真っ赤な触手、二人の体を必要最小限の箇所で拘束している。
「突然走らないでくださいよ、これから食事をするのに埃が舞ってしまいます」
「わかった、食べる、デザートだけなら食べてくから放してよ」
理解しえない現状から逃れたい一心でそう叫ぶ。
しかし、返ってきた答えは予想もしていないものだった。
「あなた方は食べる必要はありませんよ。食べられる側なのですから」

言葉の意味を理解できず声もなく固まる二人。
初めと変わらぬ足取りのまま二人のもとへ辿り着くと丁寧に制服を脱がせる。
「なっ何すんのよ、変態!」
「やめて・・・ください」
顔を真っ赤にして怒鳴る美香と俯き首を振りながら弱々しく懇願する唯。
手足を縛ったような状態のため完全に裸ではないが胸も股間も全て見えるようになると
異形の者は懐から一本のスプーンを取り出した。
二人は恐怖は消えないもののあっけに取られてしまった。
『食べられる』その単語から想像したのは鋭利な刃物、
しかし目の前にあるのはただのスプーンにしか見えない。

「まずはこちらにしましょうか」
美香の発育が不完全な胸にスプーンの先が触れ、音もたてずにすくわれる。
そのまま口に含むと僅かに酸味のあるゼリーのような甘みが溶けるように広がった。
「ひっ、痛いぃ・・・なにしたのよ、スプーンなんかでなんで私の胸がなくなってるの?」
「素晴らしい味ですよ、少々コクは足りない気もしますが爽やかな味だ」
賛辞の言葉を述べ次の部位を思案する。
抉られた胸からは血がしたたるが辺りには生臭いにおいはせず、むしろ仄かに甘い香りが漂う。
「ひぐ・・・美香ちゃんがぁ・・・誰か助けてぇ・・・」
痛みに歪む美香を見ることも出来ず下を向いて涙を流す唯。
その涙がポタポタとかかる柔らかそうな胸に魔族の手が伸びた。
「せっかく二人いるのですから食べ比べていきましょうか」
美香とは違い十分な発育をし自己主張するその胸は柔らかいが適度な弾力がある。
重力に従い僅かに下を向く乳房を手で支えるとスプーンいっぱいにすくいあげた。
口にいれた途端に広がる味はプリンのようだった。
滑らかな舌触りと芳醇な甘い香り、そして濃厚でコクのある味わい。
「これはこれは、さすがにこれだけのサイズですとコクが違う」
「痛っ!いや・・・いやいやいや・・・私のおっぱい食べちゃいやぁ」
大人しい唯は自分の大きな胸を恥ずかしく思っていた。
しかし、それと同時に美香が羨ましがるから自慢にも思い始めていた。
その胸が目の前の異形の化け物の口に消えていく、それは痛みとともに大きな喪失感を与えた。
魔族が手を離し支えがなくなると先端が下を向くとまだ膨らみ程度でしかなかった美香にはない
引きちぎられるような痛みを生み唯の苦痛の表情を濃くさせる。

「唯、唯!しっかりして!やめてあげて!唯は食べないで」
自分が強引に連れてきたせいで唯が辛い思いをしている。
それは欠けた胸よりも奥の奥をそれ以上に痛ませた。
自分を先に食べたらお腹いっぱいになって唯は逃がしてもらえないだろうか?
そんなのは到底無理と分かりつつも美香はそれにすがるしかなかった。
「私なら食べていいから・・・お願いします、私を食べてください・・・」
魔族の表情が驚きに変わる。
今までも2人以上を同時に食すことは珍しくなかった。
しかし、このように自分を食べるよう言ってきた娘は初めてだった。
「いいでしょう。そんなお願いは初めてだ、特別に聞き入れて差し上げます」
気にいる部位を探すように様々なところを掬い上げ口に運んでいった。
引き締まった二の腕は風味豊かなシャーベット
程よい張りの太ももは食感と香りが楽しいグミ
美しくへこんだお腹を贅沢に中まで掬えばフルーツタルトのような味わい
一口ごとに無残に削れていく体に苦痛の声をあげ顔を歪ませる美香と、
それを見ることすら出来ず声すらも聞きたくないかのようにすすり泣く唯。

「さて、次は・・・と」
スプーンの先をウロウロさせて行儀悪く目移りさせると美香の目の前でその先を止めた。
「ひっ、嫌・・・止めてよ・・・ひぃやあああああぁぁぁぁ」
先端を眼球の下に滑り込ませると次の瞬間スプーンの上には丸く艶やかな存在があった。
口に運びコロコロと舌で弄ぶとギュッと噛み締めた。
「おおお、これは!初めての味だ感動に値する!」
噛み締めた途端に口の中に広がる爽やかだがコクのある甘み。
数種類の果実を混ぜ濃縮したような味わいなのに一切の雑味がなかった。
「あぁそう・・・満足したなら・・・早く唯を放してよ・・・それと痛いからさっさと全部食べちゃって」
体を震わせ暗闇を湛える眼孔から涙の代わりの血のジュースを流しながら、
痛みで鈍る舌を精一杯動かして言葉を搾り出す。
「ああ、そういえば先に食べろと言っていましたね」
いやらしい笑みを浮かべると口元に手を当てる。
「しかし、あなたは美味しいのですが・・・酸味が全体的に強くて甘いものが食べたくなりますねぇ」
魔族は口元の手を離すと目線を唯に向ける。
「こちらのお嬢さんは逆に狂おしいほどに甘い蜜のような体をしていましたね」

スプーンは美香と同じ順番に唯の体を抉っていく。
柔らかい二の腕はマシュマロ
さらに柔らかい太ももは溶けかけのホワイトチョコレート
白く括れたお腹は豊かな味わいのティラミス
どこを食べてもコクのある甘みが口の中を満たしていく。
唯の悲鳴と助けを求める声だけが響きわたり、美香の酸味のある香りと唯の甘い香りが部屋中に広がっている。
痛みと出血と絶望で体力も気力も奪われた美香は時折呻くだけ。

そして今スプーンの先は唯の目の前にある。
「先ほどのお嬢さんの眼は特別素晴らしい味でした、あなたにも期待してますよ」
「や・・・やめて・・・やめ・・・・・」
恐怖で目を閉じ最後の抵抗とばかりに首を左右に振る。
その僅かな抵抗も片手で簡単に制されると、固く瞑った目を指で開かれる。
美香のものより黒目の範囲が広く吸い込まれそうな程深い色をした眼球がスプーンに乗っている。
魔族はその美しさを目で味わった後に丁寧に口に運ぶ。
しっかりと噛み締めると口中に深い深い甘みが充満した。
ミルクを想わせるコクのある甘さ、砂糖菓子のような強烈な甘さ、よく熟れた果実のようなずっしりくる甘さ。
甘みが目立つが舌を疲れさせない程度に優しい酸味も感じられる。
あまりの味に魔族は賞賛の言葉すらも忘れて口に残る余韻を楽しんでいる。
「うぅ・・・美香ちゃん・・・美香ちゃん」
唯の呼びかけに僅かに顔を上げその暗い眼孔を見つめる美香。
「私もお揃い・・・だね」
全身の痛みで歪む顔を僅かだが笑顔に変え美香に話しかける。
「私・・・美香ちゃんとならどこだって行くよ・・・怖いけど怖くない」
美香は唯の言葉に寂しげな笑顔を見せて血の気の薄い唇を動かした。
「そお・・・じゃあ一緒に行ってくれる?あの化けもんのお腹ん中・・・」
「うん」

食事を楽しむのは異形の男ただ一人。
部屋に響く声は最後の晩餐を惜しむような二人の少女のもの。
血の抜けた体は痺れ痛みを伝えるのをサボるようになり二人に最後の語り場を与えた。
甘みを楽しむと酸味と香りで舌の疲れを取りと交互になくなっていく二人の体。
もう肩から先はないけれどお腹の中でしっかりと手を繋いでいる気がする。
そう思わせるほどに二人の表情は安らかに・・・魔族の口の中に消えていった。

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最終更新:2010年05月06日 03:30