私には何でも相談できる親友がいた。名前は友香。
同じ吹奏楽部で優しい子だった……でも突然行方不明になった。

「あ!!部室に忘れ物したからとってくる」
「うん、じゃあ待ってるね」

その会話を最後に二度と友香の顔を見ることはなかった。


そして半年が過ぎたある日1人で練習を終え、部室を片付けていると、突然それは現れた

「っ!!!!!!」

天井にある人が通れるくらいの穴から「にゅーーーっ」と得体の知れない物が流れ出てきて大きくて黒いブヨブヨとした塊になった。
びっくりして私はしばらく立ち尽くしていた。
すると突然黒い塊がゆっくりとこっちに近づいてきた。
私は逃げようとしたけど、いつの間にか足にはべっとり黒いものがまとわりついていて逃げようにも足が動かない。

「いやぁ……。」

黒い塊との距離がどんどん縮まってゆく。
(こんな事なら早く帰るんだった……)
私は後悔していた。いつも遅くまで1人で練習していた。帰るのは9時位なので先生より後、鍵も渡されてる。警備の人もさっき帰ってしまった、つまりいくらここで叫ぼうが助けは来ない。

「来ないでぇぇ!!」しかしこの化け物は止まる様子を見せない。

いくらか抵抗してみたものの、足はべっとりと床にくっついてしまっていて取れない。
(こんな所で私はこいつに食べられちゃうのかな……)

私は恐怖で頭の中が真っ白になった。

「!!……ひぃぃ…」
突然足に感じるひんやりとした感覚。
恐る恐る下を見ると膝の下くらいまで黒い塊に飲み込まれていた。

「いやぁぁぁ!!食べないで!!お願いぃ!!」

パニックになり暴れまくるがそのせいで後ろに転倒してしまった。
「ベトッ」
「きゃっ!!」

背中が粘着質な黒い液体で床にくっついてしまったようだ。
気がつけばもう足は完全に飲み込まれてしまっている。さっきより飲み込まれるペースがあがったようだ。

腕も肘ぐらいまで包まれて全く身動き出来ないようになった。

「た…助けて………」
「ズブ…ズブズブ」
飲み込む速さが更に上がる。

「いやぁ…まだ死にたくないぃっ…」
大粒の涙がこぼれ落ちるが、それさえ黒い塊に吸収される。
飲み込まれていないのは体の前面と頭だけになったと思うと、突然引きずられる様に私の体が動き始める。すごく遅いけど、向かっているところは分かった。

黒い塊が出てきた天井の穴。

壁をナメクジみたいににゅるにゅる上がっていく、そして穴に引き込まれる。
かすかに穴から明かりが入ってくるものの、やっぱり暗い。

天井裏にはびっしり黒い塊がくっついていた。まるで私を待っていたかのように。
その中に何やら白い布のような物が見えた。

私は言葉を失う。
布のような物は……
友香の制服だった。

「じゃあ……友香は…コイツらに…?」

突然怒りがこみ上げてきた。
友香には夢があった。音楽の教師になるという夢が。しかし夢はこの訳の分からない化け物達に奪われてしまった。

私は友香と生きて会えると思ってた。
またふざけた話や好きな男の子の話をしたり出来ると思ってた。

こんな状態になっても何も出来ない自分が憎かった。
私は暴れまくった。今まで身動きできなかったのに、動くことができた。これが火事場の馬鹿力というものだろうか?

怒りにまかせバタバタと暴れる。すると古い校舎だから、天井の木が腐っていたらしく、天井が抜けた。

ドスン!

痛い!!でも体に張り付いていた黒いのは、ちょっとは残ってるけど、ほとんど剥がれてる。

(逃げなきゃ友香みたいに喰われる!!)

私は一目散に昇降口に向かって走る。
友香の事で涙が出そうになったけど、こらえた。


ずでん!!


私はいきなりこけた。靴の裏に少し残ってた黒いのが、床に張り付いたようだ。


「美月…」

「!!」

誰かに呼ばれた。


恐る恐る振り返る


……そこには全裸の友香の姿があった。

「友香……?……アイツに殺されたんじゃ……」

「死んでないよ。大丈夫……大丈夫だから」

私は信じられずにもう一度聞く
「本当に……本当に友香だよね?……」
「そう……私は友香。」

「友香ぁ!!」

私は靴を脱ぎ、泣きながら友香に抱きついた。

「寂しかった……友香がいなくなってからずっと……寂しかった……」

「ごめんね。心配かけて……でも……絶対に離さない……離さない……離さない」


「……どうしたの?………友香?」

「………」

返事がない。気味が悪くなって離れようとした。でも友香は離してくれない。
いや、私の体に張り付いていて離れられない。

「!?…離して!!止めてよ友香!!」

友香は黙ったままだ。……いや、友香じゃなくなったソレは私の体を包み込み始める。

「……やっぱり……お前か……騙したね……」

確かに話し方もおかしかった。いつの間にか黒くなった友香みたいだった物に包まれてゆく。私は何の抵抗もせずに大人しくしていた。コイツに飲み込まれてしまえば友香に会える。そんな気がしてたから。



やがて私の体は真っ黒い塊に完全に包まれて………




(友香!友香!!いるの?お願い出てきて!!)

(ここだよ。ここにいるよ。)

(友香!!会いたかった……)

(大丈夫。これからはずっと一緒だよ………そう……)




ず ー っ と ね

  • 終わり-


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最終更新:2008年05月18日 15:32