『大迷宮』ファーレード……それは、巨大な都市を育て上げる巨大な根っこと誰かが言った。
誰かは知らないが、そんな事を言ったのだ。
そこでは魔物を狩ってその内蔵などを売って過ごす狩人達が暮らしていた。
その内蔵は、保存食や新たな武器の材料として世界中から求められていた。
ファーレードの中は、毎日と言うほど姿を変えている。
なので、魔物を狩る物は、帰還の書物と言う使い捨ての道具を買って入るのが普通だ。
これは文字どおり、ある場所に帰るための書物である。
「これで幾つめだったけ?」
宝石を頭につけたゾンビを火球の呪文で倒して、魔法使いのエンデリックはその宝石を袋の中に入れた。
「いやー、汗でベトベト……」
気持ち悪いが、帰還の書物を使うほど疲れてはいない。そう思ってエンデリックは再び歩き出す。
目の前に巨大な池が現れた。
「ラッキー!」
大き目の三角帽と服を次々と脱ぎ捨てエンデリックは池へと入った。
チャプンと小気味いい音を立てて池の中で体を洗うエンデリック。
「極楽、極楽……」
そう言って、思いっきり池の中に潜り込む。次の瞬間、エンデリックの体が池の外へと出てきた。
「助けて!誰か助けて!」
見るとエンデリックの体を覆う液体が粘性を持ち始めていた。
ずるずると、池の水が引いていき、それにつられて、エンデリックの体も脱出できずに、
そのまま引きずられる。下のほうに開いていた穴が急に巨大化した。
ヒトデは胃を外に出すことが出来るというが、これも似たような性質持っていたのだ。
何者かが池に入ってきたら水を粘性化させて吸い込む。
これがこの魔物の
捕食方法であった。
ゴクリという音と共に、エンデリックは穴の中に吸い込まれた。
体内は、石のような壁で覆われていて、とても脱出できる様子では無かった。
エンデリックを覆っていた粘液は粘性がなくなりながら、黒く変色していく。
エンデリックは慌てて防御の呪文を唱えたが、魔力増幅が無く使う魔法などたかが知れていた。
魔力の壁から少しずつ液が流れ込み、エンデリックの体に触れた瞬間、エンデリックの体に激痛が走った。
その瞬間魔法の壁が砕け散り、エンデリックの体が液体に飲み込まれた。
「いやあああああああ!」
悲鳴一つだけ残して。
池は再び、無色透明の液体となって、満々と満ちた。新たな犠牲者が再びやってくるまで……。
最終更新:2008年05月18日 15:33