これは、夢だ。
目の前に在るのは、ぬらりとした気持ちの悪い光沢を持つ触手を幾つも生やした化け物。なんだこれは、なんだ、これは。信じたくない。こんな物が存在するなど、信じてなるものか。そうだ夢か、これは夢だ。夢ならば仕様が無い。そういう事か。
「これは、ゆめ。」
長い濡れ羽色の髪を汗ばんた肌に幾筋と張り付かせ、引き攣った笑みで少女は呟く。
これは、夢だ。
目の前に在るのは、ぬらりとした気持ちの悪い光沢を持つ触手を幾つも生やした化け物。なんだこれは、なんだ、これは。信じたくない。こんな物が存在するなど、信じてなるものか。そうだ夢か、これは夢だ。夢ならば仕様が無い。そういう事か。
「これは、ゆめ。」
長い濡れ羽色の髪を汗ばんた肌に幾筋と張り付かせ、引き攣った笑みで少女は呟く。
「……ぎ、ッああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッッ!!!!!??」
ぶち、ごちゅ、じゅる。
少女の内臓を喰いちぎりながら、触手はどんどん上ってくる。内側から捕食される少女は、有り得ない激痛に声を張り上げて叫ぶ。しかし助けがある筈もなく、少しずつ自分が食われている事もわからず、痛みで気を失いそうになってまた痛みで意識を戻す事を繰り返していた。
「ぎい、あ、あが、がぁ……あ゛あ゛あ゛ッ、あ!!」
何かが、何かが私を犯している。何かが私を殺している……!!!
わけがわからなかった。何故私がこんな目に。ああ、痛い、痛い、どうしてたすけてくれないの、どうし……………………………………助けて?
一体、誰が?
その瞬間、少女の口から触手が飛び出した。
少女の身体はびくん、びくんと痙攣している。目はぐるりと上を向き、鼻や耳、口からも血と真っ赤な泡を流す。もう、自分の意思で身体を動かす事は不可能だった。
抵抗の無くなった事に気付いた化け物は、身体を貫いていた触手を引き抜き、手首を縛っている触手をぐいんと動かし少女の身体を口元へ運ぶ。
さぁ、ご馳走だ。
適当に1口目を齧る。少女の身体から左脚が消えた。
もう一口。もう片脚。
更に一口。少女の胸から下。
もひとつ小さめに一口。少女の手のひらに収まるか収まらないか程の白い乳房が噛みちぎられた。
もう意識は残っていないのに、一口齧るごとに少女の身体はびくんと跳ねる。しかしそんなもの、この化け物には見えはしない。ただ思うままに飯を食っているだけなのだから。
最後の一口で、少女の身体は消える。……いや、全てではない。
最後まで柔らかな肉を堪能した後、化け物がぺっと吐き出した頭蓋骨だけが、最期まで夢だと信じていた、生贄の少女が遺したものだった。
最終更新:2023年10月07日 08:23