刻々とその姿を変える地下迷宮。昨日壁だった場所に部屋がでることも珍しくはない。
でも、用心して、帰る為の巻物を手に持つ位はしておくべきだった。
数時間前にここを通った時は、何もなかった。
出会った魔物が思いの外手強く、傷を負って引き返すと、ここができていた。
休息のつもりでこの部屋の様な空洞に入り、道具袋を降ろした。
この時、部屋の奥にいたこと、そして道具を全て袋に入れていたことがまずかった。
突然部屋が震え、入り口が塞がれた。
慌てて入り口だった所に駆け寄ると、今度は道具袋が床に沈んでいくのが見えた。
そして私は、宿の一人部屋程の広さしかない空間に取り残されてしまった。

恐怖を感じる間もなく、再び部屋が震え、次の瞬間、私の両足首は床に沈んでいた。そして、徐々に体が沈んで行く。
靴や足具の隙間から、砂が入り込んでくるのに似た違和感を感じる。
砂に触れられた私の素足が、ほてる様に熱くなってゆく。
また部屋が震えてバランスを崩してしまう。
丁度、尻餅をついた格好になってしまう。足は、既に膝下まで沈んでしまっている。

体が沈んでいくにつれ、熱った足の爪先から、力が抜けていくのがわかる。
皮膚がふやけ、ぽろぽろと崩れていく。熱いが痛みはほとんど感じない。
筋肉の筋が一本一本体から離れ、床一面に広げられていく。
骨が、水に浸けられたビスケットの様になるのが感じられる。
腰から下は沈んでしまった。砂は服の隙間から私の皮膚に、そして膣などから体内へと侵食していく。
沈む速度が上がり、急速にに体が広げられて行くのがわかる。
膣から侵入した砂が、私の子宮を満たす。
秘部の熱が、回りの臓器へ広がっていく。自分の内側の組織の形がわかる。
腹の中身が少しづつ外へ広がる。秘部も子宮も腸も、全部同じ様にほどかれていく

くびれを維持するのが大変だったウエストも、少し大きかったヒップも、原型を留めていない。
脚も、腰も、全てが細い糸になり、部屋の床や壁に編み込まれていく、
そんな錯覚がおこる。

胸や両肘が沈んだ頃から、言い様のない満腹感が私を支配し始める。
既に胃も腸も無いに。
肺ま既に砂で満たされ、広がり始めているが、不思議と苦しくはない。
まるで、私がこの部屋という生き物になったようだ。

首も、自慢の唇も、砂に埋もれてしまった。
声が聞こえてくる。一つではない。

アジハマアマアダッタナ…
ヒトリジャクイタリナイ…
ツギハモットニクヅキノイイコガイイワ…

もう無いはずの腕に感覚が戻る。
今触れているのは、私の頭だ。砂に埋もれていく髪の一本一本が感じられる。

頬や唇を触ると、簡単にほどけてゆく。舌がほどけてゆくにつれ、血の味か広がっていく。

そうか、私ってこんな味がしたんだ…

ソウヨ、オイシイデショウ…
ヤミツキニナルゼ…

もっと食べてみたい…
眼球は変わった味がした。直ぐになくなったけど、部屋の内部が四方からみわたせるようになった。
頭蓋骨の中身を味わっていると、頭に霞がかかった。

次に目が覚めると、空腹感に襲われた。部屋の入り口が空いていて、外の景色が見えた。
私と同じ位の女の子が部屋に入ってきた。周りの誰かが入り口を閉めた。

おいしそう…

いつの間にか、私は彼女の足首を掴んでいた。
あの味がした。

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最終更新:2008年05月18日 15:33