ねぇ、こんな話知ってる?
正門から続いてる桜並木、その中でも一番大きな樹。
アレは生屍桜(いかばねざくら)って呼ばれてるんだって。
え?「屍桜(しかばねざくら)じゃないのか?」って?
いやいや、この学園の7不思議では生屍桜なんだよ。
何年か、あるいは十何年に一度、この学園の在学生から行方不明者が出るんだけど、
その翌年の春には必ず、真っ赤な花を咲かせるんだって。
そう。
まるでその「居なくなった誰か」の血をすすったかのように。
そしてその話は終わる。
ほぼ真っ暗だった室内には再び明かりが灯され、
その場に集まった少年少女は互いの顔を見合わせて安堵のため息をつく。
「しょっぱなから怖ぇ話が来たな、おい」
「今の話、ホント?」
「まさか。ありがちな卒業生の誰かが流し始めた噂じゃないの?
行方不明者なんか出たら警察だってほっとかないし。」
「ううん、あたし聞いたことある。お母さんがここの卒業生だったんだけど、
入学した年に真っ赤な桜が咲いたんだって。」
ざわざわと話声が聞こえるが、次に話をする少女が準備を始めると自然と静かになった。
そして再び明かりは落とされる。
じゃあ、ボクはこの話をしよっか。
音楽室のピアノとか、ベートーベンとかは有名だけど、この学園の音楽室には「怪人」が居るらしいんだよね。
おっと、怪人と言っても変質者とかじゃなくて。
なんでも「会った人間と同じ姿」をしていて、でも鏡写しのように左右逆さまじゃない。
で、もしもそこで「誰?」なんて聞いたら・・・・・・・・・・・
顔の皮を剥かれちゃうんだって。
はい。おしまい。
しかしこの話は結構有名なのか、たいして恐怖は煽れなかったようだ。
もっとも、「皮を~」のくんだりで悲鳴を上げた者がまったく居ないわけではないのだが。
「良子、今悲鳴上げたのお前か?」
「ち、違うもん!あたしじゃないもん」
「他に誰が居るんだよ?一番怖がりの癖に」
「うるさい!ほっとけ」
「あて!殴るな!!」
今夜、集まったのは9人。
次の学内新聞で「7不思議」を取り上げる新聞部部長以下5人
及び「面白そうだから」などとのたまって付いて来た4人
男女比1:2などとなっているメンツだった。
夜の校舎で肝試し兼7不思議の調査となっていて集まった(不法侵入)
のだが、7不思議を全部は知らない人間ばかりだったので急遽予定を変更して
「7物語(簡略式)」が開催されることになったのだ
そして物語は3つ目となる。
じゃあ、今度は俺の番だな。
あー、まあこの話はどこの学校にでもあるし、知らないやつは居ないと思うが、
13階段の話にしようか。
北校舎、南校舎に2つづつ、計4つの階段があるわけだが、
そのうちのどれか一つは屋上へ続く階段はごくごくたまに、13段になってることがあるらしい。
まあ、普通ならここでそれを上ったヤツは死ぬとか、うやむやで終わったりするものだが、
うちの学園の場合、「異次元階層」に飛ばされるらしい。
まあ、階段を上ったその先は「幻の5階」に続いていて、
階段を上っても降りても屋上や4階にはたどり着けず、
永遠に「幻の5階」をさまよい続けることになるんだとか。
はいは~い。サクサクいくわよ~
この後、肝心の「7不思議の調査」・・・・おっと「肝試し」が控えてるんだから。
と言うわけで今度は言いだしっぺの私ね。
え~っと、理科室って南校舎の1階にあるじゃない?
実はその理科室には秘密の地下室の入り口があって、大戦中にはそこで怪物の研究をしていたらしいわ。
どっちかって言うとその地下研究所をカムフラージュするために校舎が建てられて、
そこでは今も狂気に取り付かれた科学者が怪物の製作に励んでいるんだって。
ま、ホントだったらなかなか根性のある爺さんよね。
50年以上研究してるんだから。
じゃ、次さっちんね。
面白いの頼むわよん♪
ええ!?
え~~~~~~~~っと。
じゃあ、美術室の仮面の話でいきますぅ。
美術室にはぁ、十数年前までぇ、「鬼の仮面」なんてモノがあったそ~なんですけどぉ、
って部長ぉ、急かさないでくださいぃ。
とにかくその仮面は本物でぇ、十数年前にふざけて被っちゃった人が発狂したとか何とかでぇ
でも有名な人の作品なんで捨てられずにぃ、今じゃ美術準備室で埃かぶってるそうですぅ。
う~~ん、なんか他にあったっけ?
ああそうそう、屋上って鍵かかってるじゃん。
しかも鍵が行方不明で今じゃ誰も屋上に行く事はできないんだけど、
時々その屋上で人影が見えるらしいな。
そいつ、なんでも裏山に埋められた人間の亡霊で、
体を求めて夜な夜な学校ん中を徘徊してるんだと。
取りは俺か。
誰か他にやりたいやつ・・・・・と言うか最後の一つ知ってるヤツ居るか?
かなり前の事だ。鶏の飼育小屋に誰かが紛れ込ませたのか、一羽だけ雌鳥が居たそうだ。
そして毎日卵を産んでたらしいんだが、小屋掃除の当番がその卵を持っていっていい事になってたんだと。
しかしだ。雌鳥にしては面白く無かっただろうな。
産んだ卵を片端から持っていかれるのだ。
当番はその雌鳥にかなりの猛攻を食らってたそうだ。
それでも持っていく猛者は必ずいたようだが。
そして、雌鳥は最後の手段に出た。
ある日突然、ぱったりと卵を産まなくなったそうだ。
そうして数日後、腹を食い破られたようになった雌鳥の死骸があったそうだ。
当時、一羽しか居なかったはずの雌鳥用の敷居内に「真っ赤なヒヨコ」を数羽残して、な。
ま、そゆ事。そのヒヨコ、腹を食い破った時に雌鳥の血を浴びて真っ赤に染まってたんだと。
それからというもの、時折小屋の鶏が「何か」に食い殺されるそうだ。
TO BE CONTINUED NEXT
最終更新:2008年05月18日 15:37