神楽坂風住

           -どんな時にも、笑顔が輝くキミだから、ずっと、隣で笑顔であって欲しいと僕は思う -

ある日記の1ページ       
-そこには一枚の写真が飾ってあった。-







≪いつからだろう、私の運命が変わったのは。そのとき、何があったんだろう。≫

ぼんやりと写真を眺めながら、少女は思う。
いつもと変わらない青い空。
何も変わらない青い海。
その二つが、肩を並べて向こう側に写っている。

・・・はずだったのに。





 机の上に置かれたひとつの写真立て。
 中には、可愛い犬の絵が描かれた、真新しい紙が入っている。
 雑貨屋で買っただろうと思われるそれには、その時はまだ、思い出が入っていなかった。

 少女がベッドから起き上がって、机に向かう。

今まで日記なんてつけたことがなかった。
一日の中で、何かついていないことが必ず一度は起こって、それをいちいち覚えてるのも、悔しい気持ちがしたし、
楽しいことや嬉しいことは、ついていなくてヘコんでる時に思い出すと余計にヘコむから、その時だけでよかった。

でも、あの時から。

バスケ部の先輩に告白された時から、ずっと何故だか急につけないと行けない気がして、
覚えていないといけないような、事があるような気がして。
それからずっと日記をつけている。

 今日の日記を、ほんの少しだけ磨り減った日記帳に書き込んでいく。

『今日の朝、少しだけ違う私がいたような気がする。
 でもって、何かが、私の中の何かが笑った気がする。この日をずっと待ち望んでたみたいに。
 それで、「遅かったぞ!」って、誰かが泣いてたような気もする。

 私も、ちょっとそう思ったかも。
 何だか分からないけど、そう思ったような気がする。
 一週間も学校休んで、久しぶりに顔を見せたと思ったら、急にあんなことを言い出すし。

 ・・ 私の運命って、どうやって変わったんだろう。
 ずっと運が悪かったのに、いい事なんて、その場限りで終わってたのに。
 アイツと会ってから、楽しいことがたくさんあった。嬉しいこともたくさん出来た。
 名前、呼ばれただけなのに、それがすごく嬉しくて、名前を呼ばれるたびに、楽しいことが起きて。

 これからも、それが続く様な気はしてる。
 二人で笑って、喜んで、楽しんで。
 辛いことは、半分ずつにするような、なんかそんな気。

 ・・・要するに、やっぱり好き。・・・なんだよね?』

 そこまで書いて、ふと手元に置いたさっきの写真を眺める。
 昨日までは、確かそんな気はしてなかったような気がする。
 数ページ、日記をめくって読み返してみても、そんな様なことが書いてある。

でも、どうやってもあの時、名前を呼ばれた時の嬉しさは、先輩に告白された時よりも嬉しかった。
その直感、信じてもいいよね。

 そこまで思い返してみて、もう一度日記とにらみ合う。
 そして、消しゴムで自分の文字の違うところを、一つずつ消していく。
 それで結局、全部消して、最初から書き直す。

『私、今日告白されちゃった。
 これで2人目だよ!ありえないくらいついてるよね!
 で、先輩には悪いけど、私は祐介を選んだ。後悔はしてない!
 私の名前をあんなに嬉しそうに呼んでくれる人いないし、私も呼ばれて嬉しかった。
 大好きだよ!』

 ここまで書いて、日記を閉じて、引き出しの中に大切にしまう。

あ・・・。ここにあったんだ。

 どこに行ってしまったのか分からなくなっていたミサンガが、引き出しの奥で引っかかっていた。
 思えば、これも先輩に告白されてから見当たらなくなったような気がする。

私の大切な縁、かな。

 ミサンガを右腕にしてから、外の窓に目をやろうとして、目の前の写真立てに気がついた。
 友達と一緒に衝動買いをしたけど、入れるものがなかった写真立て。

・・・よーし、今日の記念だ!
うん、これで絶対もう忘れない!

 写真の裏にマジックで決して消えないように文字を書いて、犬の絵を取り出して、思い出を入れる。
 やっと、本当の目的を果たした写真立てが誇らしげに机の上に立っている。


~神楽坂風住 ♡ 鷺坂祐介             
ずっと二人で隣で笑っていたい!!~




Illustrations By
akiharu国 橘さま
リワマヒ国  和子さま


最終更新:2008年08月15日 13:11
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