夜。暗い部屋で、人形を抱いて震える少女がひとり。

「えぇ……何ですかこれぇ……? 地獄の責め苦かなんかですか……?」

 彼女は、記憶を取り戻した。聖杯戦争のマスターとしての記憶と知識。
そして生前の、死後の、多くの記憶を。彼女は悩み苦しんでいた。

 どこかの地獄に落ちそうなことは、いろいろしてきた自覚がある。
多数の人々とその子孫の人生を、自分のせいで狂わせたとも言える。
たったひとりのエゴのために、たったひとりを殺すために、
二千年以上も「死」の研究を積み重ねさせ、呪いを蓄積させたのだ。

人を呪わば穴ふたつ。覚悟はしていたが、なんと皮肉な地獄だろう。
よりによって聖杯戦争の、マスターに任命されるとは。

「そりゃ、英霊になるほどのことはしてませんけど……うぅ……」

 あの時、自分がサーヴァントになることができたのは、
自分の弟子たちの子孫の村が特異点になっていたため。聖杯が存在したためだ。
今回は、そうではない。擬似的に再現された東京で、聖杯を得るために戦えという。
罪滅ぼしをせよということか。こういうのは地獄というか、どこかの宗教でいう煉獄というやつではないだろうか。

『安心して。僕がいるよ』

 不意に、空中に金色の光の粒が集まり、鈴が鳴るような声と共に、輝くような美青年が姿を現した。
華奢な四肢五体、繊細な指、水色の髪、天使じみた寛やかな服装。頭上には光の輪。
少女は、直感的に理解した。彼は自分のサーヴァントだと。

『はじめまして、こんにちは。僕は「キャスター(魔術師)」のサーヴァント。
真名は「普賢真人」だよ。今後ともよろしくね』

「あ、はい! わ、私は『徐福』です。よろしくお願いします」

 深々と頭を下げる。神聖で善良なオーラが伝わってくる。
真人。すなわち神仙だ。不死不滅にして不老の存在。少女がかつて、殺そうとした存在。

『マスター……徐福ちゃん、って呼んでもいいかな。
ええと、なんだか聞いたことのある名前だけど?』

 キャスターは首を傾げた。

「は、はい。本人です」


 情報を交換し、互いの心の中を少し覗く。やはり彼は仙人だ。
正確には、三千年前に起きた『殷周革命』で命を落とし、封神され、
英霊の座に記憶された存在だ。後の世には仏教で普賢菩薩として崇められたという。

『斉の道士、もとい方士か。ひょっとして、それで僕と縁があったのかな。太公望を知ってる?』
「は、はい。もちろん」
『彼とは幼馴染の友人なんだ。キミの方術も、彼に遡るものもあるかもね』

 キャスターは莞爾と微笑んだ。
虞美人様とはタイプが違い、蘭陵王に近い女性的な美青年だ。妙な縁がある。

『それで、キミは聖杯に何を望むの? 願い次第では協力するよ』
「……あの、特にないので、どうしようかと」

 正直な意見を述べる。虞美人様を殺すために積み重ねたことは、水泡に帰した。
そもそも彼女が死を望んでいないなら、無理やり押し付けるのは良くないことだ。
じゃあ、それを抜き去った私に、何が残るのか。何もない。
聖杯で彼女やマシュちゃんを召喚することはできるだろうが、今さら合わせる顔もない。
一体全体、自分は何のためにここにいるのか。

『そう。じゃあ、人助けをしよう』
「え」

『キミは、少なくとも悪人じゃないことはわかる。
努力家で頑張り屋で、ちょっと思い込みが激しいけど。
そして僕は平和主義者で、争いを好まない。
それなら、巻き込まれて困っている人たちを助ければいいんじゃないかな』

 キャスターは膝に抱えた球体をさすりながら提案した。
少女は……頷く。もしも虞美人様やマシュちゃんがこの場にいたら、そうするかも知れない。
不死者を殺す方法を求めるよりは健全だろう。

「わ、わかりました。私が、今度は、誰かの命を救う役に立つのなら!」


【クラス】
キャスター

【真名】
普賢真人@封神演義

【パラメーター】
筋力E 耐久D 敏捷C 魔力A 幸運C 宝具A

【属性】
中立・善

【クラス別スキル】
陣地作成:A
 魔術師として、自らに有利な陣地な陣地「工房」を作成可能。
崑崙山脈の九宮山に洞府「白鶴洞」を構える高位の仙人。

道具作成:A
 魔力を帯びた器具を作成可能。
宝貝(パオペエ)「呉鉤剣」を作成したとされるが、作成には相当の時間と材料が必要。

【保有スキル】
真人:A+
 道を体得した高位の仙人であること。
崑崙山脈に洞府を構え、殷周革命に際して封神され、肉体を捨てて不死不滅の存在となった。
後世には普賢菩薩として信仰を集めた。神なので「神性」を含む。

佛理學者:A
 世の理の解答、菩提(智慧)に至らんとする菩薩が纏う守護の力。
対粛清防御と呼ばれる“世界を守る証”。
物理攻撃、概念攻撃、次元間攻撃等をある程度削減し、精神干渉を無効化する。

佛顔三撫:A
 敵対サーヴァントが精神汚染スキルを保有していない場合、
相手の戦意をある程度抑制し、話し合いに持ち込むことができる。
聖杯戦争においては、一時的な同盟を組む際に有利な判定を得る。
平和主義で争いを好まないが、合理的なのでいざとなれば容赦はしない。
三度断ればブッダも怒る。

【宝具】
『太極符印(タイチィ・フーイン)』
ランク:A 種別:対物理宝具 レンジ:1-50 最大捕捉:50
 師匠・元始天尊より賜った宝貝(パオペエ)。
バスケットボールを一回り大きくした球形の超高性能電脳(コンピュータ)。瞬時に出し入れが可能。
全体がタッチパネル式の画面になっており、両手の指で抱えて操作する。
周辺の地図情報や位置情報を表示したり、敵の攻撃パターンを解析・演算して味方の攻撃にフィードバックさせたり、
特定の相手の鼓膜を振動させて音声を秘密裏に伝達したりと極めて汎用性に富む。

 また、周囲の元素や原子、物理法則を操作して魔術じみた現象を起こすことができる。
自分や味方の周囲に斥力を発生させて物理攻撃を防いだり、水分子を電気分解して吹雪や氷山を瞬時に消滅させたり、
原子核をぶつけて小規模な核融合を起こすことすら可能である。おそらく放射能も操作して無害化できる。
甚だチートであるが、核融合を気合で耐えたり、攻撃がめちゃくちゃ強くて斥力をぶち破るような存在にはどうしようもない。

『呉鉤剣(ウーコウチェン)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-50 最大捕捉:20
 弟子に授けた宝貝(パオペエ)。話によっては彼自身も振るう。
雌雄一対の鉈めいた広刃の刀で、投げつけると敵を斬って手元に戻ってくる。  

 なお搭乗型飛行ロボット兵器・黄巾力士も彼の宝貝だが、でかいので持って来れなかった。
頑張れば召喚できるかも知れない。

【Weapon】
 宝具(宝貝)。戦闘は得意ではないが、やむを得ず戦う時は知略をもって戦う。

【人物背景】
 藤崎竜の漫画版『封神演義』に登場する人物。CV:緒方恵美/島崎信長。
古代中国の二大仙人界のうち、西方の崑崙山脈の仙道を統べる元始天尊の直弟子にして、
その幹部たる「崑崙十二仙」の末席に名を連ねる。
仙人となるまでの経緯や生い立ちは一切不明だが、12歳で崑崙に来た太公望とは同期。
彼と親友となり、幼馴染として共に遊び、学び、導いた。
数十年の修行で仙人の資格を得、九宮山白鶴洞の洞主となった。

 外見は女性と見紛う華奢な美少年/美青年。
物理学を好み、性格は争いを好まぬ平和主義者で自己犠牲的。
敵とは極力話し合いで解決しようとするが、合理的で責任感は強く、三度説得してダメなら容赦はしない。

【サーヴァントとしての願い】
 特になし。

【方針】
 弱者を守り人助けをする。敵とも話し合い、相互の理解を求める。

【把握手段】
 原作漫画。彼が登場するのは物語の中盤、仙界大戦編から。


【マスター】
徐福@Fate/Grand Order

【Weapon】
 特になし。「不死殺しの仮面」は消滅している。ぐっ様人形はある。

【能力・技能】
 一応魔術師(方士)なので一通りの魔術(方術)は使える。念を込めた人形作りが得意。

【人物背景】
 秦の始皇帝の命令を受けて不老不死を探求し、三千人の弟子を率いて東海の彼方に航海に出た方士・徐福本人。
FGO世界では女性で、片目隠れの黒髪少女。
出発直前に出会った仙女・虞美人に惚れ込み、不老不死を殺すことを研究すると密かに誓う。
日本列島に漂着した後、とある山奥に村を作って研究を始めたが、研究の完成を見ることなく寿命で逝去した。しかし……。

 基本的には善人で、努力家で頑張り屋で思い込みが激しく、
他人を憎悪したり、自分が巻き込んだ人々の頑張りを無碍にしたり出来ない性格。
虞美人を熱狂的に信奉しているが、彼女の意志を尊重してもいる。
迷惑をかけた人にはちゃんと謝れる良い子である。予想外のことが起きるとはわはわする。

【ロール】
 引きこもり気味のチャイナ系コスプレ少女。たぶん女子高生。

【マスターとしての願い】
 特になし。虞美人と再会したいが、聖杯を作ってまで彼女を召喚するのは気が引ける。

【方針】
 人助け。聖杯獲得を望まない、話が通じそうなマスターを見つけたら仲間にする。

【把握手段】
 原作(FGOサマーキャンプ2020)。

【参戦時期】
 消滅後。

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最終更新:2021年06月30日 22:47