草木も眠る丑三つ時という言葉があるが、現代において人間が起きていない時間などほぼない。
 それでも、流石に学校の校庭ともあれば人はおらず、辺りを照らすものも月と星だけになる。

 ここはとある高校の校庭。そこには、願望器たる聖杯を奪い合う二人のサーヴァントがいた。
 一人はセイバー。鎧を身に纏い剣を構える男は、一目で西洋系の英雄だと見て取れる。
 対するサーヴァントはランサー。手に槍を持った男は中国系の英雄だと一目で分かる。

 聖杯戦争。それは読んで字のごとく、聖杯を求め戦う戦争のこと。
 戦争。すなわり戦い。ならば必ず勝者と敗者が産まれる。
 この二人の戦いもそれは変わらない。
 そして、どちらがどうなるのかの答えは、次の瞬間映し出された。

「はああああああ!!」

 先手を取ったのはセイバー。
 彼は勇猛果敢にランサーの懐に潜り込み、そのままの勢いで剣を振るう。

 これを追えるサーヴァントはいないだろう。
 これを躱せるサーヴァントはいないだろう。

 ランサーが並のサーヴァントであれば、この時点で彼は消滅し、聖杯を手にする資格を失っていたに違いない。
 並であれば。
 だが現実は違う。


 ドン


 一瞬、重低音が辺りに響いたかと思うと、そこにあったのは

「あ、あぁ……」

 上半身と下半身が分断された、セイバーの姿だった。
 何をしたのか、と問われれば答えは簡単。
 ランサーは、懐に潜り込んだセイバーに対し、自身が持っている槍を無造作に振るっただけ。
 それだけで、空気を割く重低音があたりに響き、セイバーは両断された。

 これはセイバーが弱い故に起きた事態か? 否!

 セイバーも人類史に残る英雄として、ひとかどの存在である。
 彼には才があり、経験があり、そして試練があった。
 だからもし、敵がこのランサーでなければ、彼は未だ聖杯を手にする資格を有していただろう。

 だがこのランサーは並の英雄ではない。
 英雄と呼ばれる人物はその時点で並外れているが、彼はその中でも更に並外れている。

 それもそのはず。なぜなら彼が生きた時代は西暦200年代の中国。
 後に三國時代と呼ばれたあの時代は、サーヴァントになるうる人物が山ほどいた群雄割拠だった。
 その中でなお、誰もが最強と認めた男がいる。

 その男の名は、呂布奉先。
 そして彼のランサーこそが、その名を冠した男である。




「終わった?」

 セイバーが消滅したとほぼ同時に、校舎の陰から一人の少女が現れる。
 ショートの金髪で朗らかな笑みを浮かべる可憐な美少女だが、先ほどまで戦場だったこの地に平然と足を踏み入れている時点で並の少女ではないことは明白。
 彼女の名は田中ぷにえ。
 ランサー、呂布奉先のマスターであり、魔法の国のプリンセスだ。
 そんな彼女は、ランサーの顔色を見て話しかける。

「つまらなさそうね」
「……」

 ランサーの顔は、酷く退屈そうだった。
 事実、彼は退屈だった。

 ランサーは二つの目的があって、聖杯戦争にやって来た。
 一つは聖杯を手に入れる為。
 もう一つは、退屈を紛らわせるほどの強敵と出会うためだ。

 呂布奉先は最強と謳われた男。
 だがそれは、自身と互角に戦える存在がいないことを意味する。
 ランサーは、それがたまらなく嫌なのだ。

「まあ、私としては障害が少ないに越してことはないけど」
「……」

 一方、ぷにえの言葉は酷薄だ。
 だがランサーはマスターである彼女に反感を抱いては居なかった。

 彼女は口でこういい、事実そう思っているもののランサーに配慮し、なるだけ敵サーヴァントをあてがってきたのだ。
 その中には間違いなく一線級の存在もあった。

 ただ、ランサーを満足させるには、ほど足りなかっただけだ。

「あぁ、退屈だ……」

 だから思わず、ランサーはそう愚痴る。
 そんな彼にぷにえは問う。

「ところでランサー。あなた、聞きそびれてたけど聖杯に何を叶えてほしいの?
 私は、自分の王位を守るために聖杯を確保するつもりなのだけど」

 人に質問する前に先に、自身について話す。
 その道理の通り、彼女はまず自分の願いを明かした。

 ぷにえは魔法の国のプリンセスだ。
 だが元々は別の血筋の人間が王位を持っていたものを、彼女の母が力で簒奪したという過去がある。
 おかげで元魔法の国王の娘に恨まれているのだが、それをぷにえは気にしていない。
 正統性とは力で掴み取るものと、信じているがゆえに。

 とはいえ、誰かが聖杯を使って王位を簒奪する可能性も存在する。
 その可能性を潰す為、聖杯を確保したいというのがぷにえの願いだ。

 対するランサーは、天に指を掲げたかと思うと、こう言った。

「我は、天(そら)にいる神と戦う」
「そう……」

 ランサーの返答に対し、ぷにえは言葉を詰まらせる。
 彼女にとって、彼の願いは正直理解の外だ。
 命を狙われることはよくあるが、戦いの為に生きたことはない。

 だがぷにえはランサーの願いに口を出さない。
 これほどの強者を聖杯戦争時のみの部下にするには惜しいが、自分の下につくなど決してないと理解しているが故に。


【クラス】
ランサー

【真名】
呂布奉先@終末のワルキューレ

【パラメーター】
筋力A 耐久A 敏捷B 魔力D 幸運D 宝具A

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
対魔力:A
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Aランクでは、Aランク以下の魔術を完全に無効化する。事実上、現代の魔術師では、魔術で傷をつけることは出来ない。

【保有スキル】
騎乗:A
Aランクでは幻獣・神獣ランクを除くすべての獣、乗り物を乗りこなせる。
赤兎馬を乗りこなせる彼に、乗れない獣などいるものか。

武の求道:A
地位も名誉も富も女も無視して、ただ一心に武を磨いた者たちに付与されるスキルの一つ。
ランサーに自殺衝動が生じない限り、戦闘能力が向上する。

退屈:A
威圧、混乱、幻惑といった精神干渉を無効化する。
デメリットとして、ランサーを退屈させない強敵が100ターン以上現れないと、聖杯戦争に見切りをつけたくなり、自殺衝動が生じる。
だが彼にも聖杯に叶えてほしい願いがある故に、自殺衝動はあれど自殺はしない。
ランサーが心から歓喜するような強敵と出会えたならば、一度生じた自殺衝動は解除される。

カリスマ:E
ランサーの強さに敵味方問わず、誰もが魅了される。
彼もそれが嫌ではなかったが、心を満たしたこともなかった。

【宝具】
『方天戟』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:3 最大捕捉:1
ランサーが扱う槍。
本来なら宝具となるような代物ではないが、彼は生前本気を出すとすぐに武器を壊してしまう。
その為常に代わりを何本も用意していた逸話から、魔力を消費すれば無制限に方天戟を取り出せるようになった。

『天喰(そらぐい)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1ー500 最大補足:???
ランサーが生前生み出した技。
槍の先端を持ち、全力で振るうだけだが、彼の人間離れした握力と腕力が生み出すその威力は大気を割くほど。
ただし、完成したこの技を彼は生前、敵に使ったことはない。
これが無くとも、呂布奉先は三國最強だった故に。

【weapon】
方天戟

【人物背景】
三國時代最強と謳われる「中華最強の英雄」。
幼少期から最強を求め戦い続けてきたが、やがて自身は己の時代において最強になったと悟る。
その事実に気付いた彼は退屈になり、絶望。最後には自ら死を選び、曹操に処刑されることを選んだ。

【サーヴァントとしての願い】
天(そら)にいる神と戦う。

【マスター】
田中ぷにえ@大魔法峠

【マスターとしての願い】
魔法の国の王位が脅かされないよう、聖杯を持って帰って管理したい。

【weapon】
  • プリンセスロッド
野菜に意思を持たせたり、人や生物を召喚することができる。
魔法の呪文は「リリカル・トカレフ・キルゼムオール」
ちなみに、三節棍にも変形する。

ただし、所有者が決まっているというわけではないので、うっかり奪われると大変なことになる。

【能力・技能】
  • 魔法
野菜に意思を持たせたり、人や生物を召喚するなどできることは多彩。
ただし、前述のプリンセスロッドを持っていないと使用不可。

  • 肉体言語(サブミッション)
魔法の国では魔法を無効化するアイテムが多いため、肉弾戦技術も必須。
そこでぷにえが選んだものが関節技。
「打撃系など花拳繍腿(かけんしゅうたい)、関節技(サブミッション)こそ王者の技よ」とは本人の弁。

ただし、別に打撃技が使えないということもなく、作中ではカポエラを披露したこともある。

【人物背景】
魔法の国のプリンセス。可愛い風貌で男を悩殺できるが、実際は冷酷無慈悲なマキャベリスト。
力こそ正義を信条とする民主制嫌い。
自らの道を阻むものは、姦計や肉体言語で叩き潰す。
また、結構舌が肥えていて歯に衣着せぬ言い回しをする。
困っている友達を無償で助けたりする友達思いな面や、自らを暗殺しようとした妹や友人を許す甘い面もある。
弱点はキャベツ畑人形とドM。

【方針】
ランサーの望み通り、強敵をさがしてあげる。

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最終更新:2021年06月18日 22:16