「あなたが、私の騎士…いえ、サーヴァントなのですか」
「……………」

エステリーゼ・シデス・ヒュラッセイン。
仲間からはエステルと呼ばれる少女は、自らのサーヴァントに尋ねる。
サーヴァントである青年は、エステルのことをじっと見つめて不思議そうな顔をしていた。

「あ、あの、何か…?」
「…あんた、どこかで俺と会ったことないか?」
「へ?あなたに…ですか?」

言われて、エステルはサーヴァントの男の姿をじっと見る。
薄い金髪に、黒い服の上に赤いコートを羽織っている。
年頃はユーリやフレンより少し下辺りという印象だが、しかしこのような知り合いはいなかったはず。
そうしてしばらく考え込んでいたエステルの脳裏に、一つのひらめきが浮かんだ。

「…あ!もしかして、ナンパ、というものですか?」
「…え?」
「レイヴン…旅の仲間が言ってました。『君、どこかで会ったことない?』と男の人が女の人に言うのは、ナンパの常套手段だって!」
「い、いやいや、そういうんじゃないって!」

エステルの言葉に、サーヴァントは少し顔を赤くしながら否定した。
その姿は、年相応の男の子と言った感じで、英霊という仰々しい肩書とは程遠いものであった。

(仲良くなれそうな人で、良かったです!)
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「あ、自己紹介がまだでしたね。私はエステリーゼ・シデス・ヒュラッセイン。親しい方は、エステルと呼びます」
「えっとじゃあ…よろしくな、エステル」
「はい!」

サーヴァントはエステルと呼ぶと、彼女に手を差し出した。
それに対してエステルも嬉しそうに手を出し、握手をしてきた。
エステリーゼとエステル、どちらで呼ぶべきか一瞬迷ったのだが、どうやらこっちが正解だったらしい。

「それで、サーヴァントさんのお名前はなんというのでしょうか?」
「俺か?俺は…バーサーカーだよ」
「それはクラス名ですよね。本当の名前が知りたいです」

エステルの要望に、サーヴァントは困った顔をする。
何か、言えない事情でもあるのだろうか。

「あ、あの、何か言えない事情があるのなら、無理には聞きませんよ?」
「…あー、いや、言いたくないわけじゃないんだ。ただ…知らないんだ」
「知らない?」
「ああ、どうにも俺、生前の記憶を失ってるみたいでさ。自分の真名すら、分からないんだ」
「ええ!?じ、自分の名前も、です?」
「ああ、そうみたいだ、全く、困ったもんだ」

そういいつつ、サーヴァントの態度はとても困ったようには見えない。
記憶を失っていることに不安を感じている様子もなく、むしろ憑き物が取れたような晴れやかな表情をしている。

「うーん、それならなんて呼びましょうか。バーサーカーってクラス名で呼ぶのも味気ないですし…」


「ライゼ」


「へ?」

サーヴァントのつぶやきに、エステルはキョトンとする。

「俺のことは、ライゼって呼んでくれないか?」
「ライゼ…ですか?」
「ああ…記憶はないはずなのに、真名じゃないはずなのに…なぜかこの名前が、しっくり来るんだ」
「なるほど…その気持ち、少し分かるような気がします。私も、エステリーゼって名前なのに、仲間と旅をしているうちに、エステルって呼ばれ方の方が、しっくり来るような感覚があります」
「仲間との旅…か」

サーヴァント――通称ライゼの脳裏に、いくつかの顔がぼんやりと浮かんだ気がした。
その内の一つは、なんとなくエステルに似ていて、だけど髪の色は違っていて…
「ぐっ!?」
「だ、大丈夫ですかライ…」

突然胸を抑えだしたライゼの顔を覗き込んだエステルは、ゾッとする。
ライゼの顔が…獣のような獰猛さを感じさせるものに変貌していた。

(そういえば…ライゼさんのクラスはバーサーカー。まさかこれが、狂化!?)

「ライゼさん!ライゼさん!」

エステルは必死にライゼに向けて呼びかける。
しばらくすると、ライゼはエステルの声に気づいたようにハッとすると、その顔から狂気は消え、そしてその場に倒れて気を失った。

「ライゼさん…」

倒れたライゼの介抱をしながら、エステルはこの世界に連れてこられてすぐ、脳裏に流れ込んできた情報を思い出す。

[バーサーカー…狂戦士の英霊。理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル、でしたね。どうしてライゼさんが…]

エステルは考え、そして一つの仮説にたどり着いた。

「もしかして…記憶が、関係してるんです?」

ライゼは記憶喪失のサーヴァントだ。
もしかすると、彼が記憶を失っているのは、狂気を抑えるためなのではないだろうか。
そして、エステルとの会話の何かが記憶の琴線に触れ、狂気が暴走しかけたのではないだろうか。

「…いえ、決めつけるのは早いですよね」

狂人と聞いて、エステルはザギという人物を思い出した。
ライゼが、あの人と同じタイプの人間だなんて思いたくない。
ついさっきまで、気さくに仲良く話していた人が、残虐な精神を隠しているなんて、思いたくなかった。

「ライゼさん…私、あなたのことをちゃんと知りたいです」

記憶が戻るとライゼの狂気が強くなるかもしれない。
それでもエステルは、彼のことを知りたいと思った。
彼のことを知り、見極めたかった。
そして、彼に隠された真実が残酷なものだったとしても…それでも、彼と友達になりたい。

『よろしくな、エステル』

気さくで優しい彼の姿が、嘘だと思いたくないから。

【クラス】バーサーカー
【真名】リアン(本人未認識。仮の名のライゼを名乗る)
【出典】Lost Heaven
【性別】男性
【属性】秩序・善

【パラメーター】
筋力:C(※1) 耐久:D 敏捷:B 魔力:E 幸運:D 宝具:C(※2)

※1 初期パラメータ。記憶を取り戻すごとに上がり、完全に記憶を取り戻すとAになる。
※2 初期パラメータ。完全に記憶を取り戻すと宝具が増え、ランクもAになる。

【クラススキル】
狂化:E(初期)
 本来であればセイバークラスの適性を持つが、過去に人体実験を受けた改造人間とされた経験からこのスキルが与えられた。
 記憶の封印により狂気は抑えられている。
 記憶が解放されるごとにランクが上がっていき、制御が難しくなっていく。最終上限はA。
 また、狂化時のパラメータは完全に記憶を取り戻した時と同等のものとなるが、宝具は使用不能になる。

【保有スキル】
剣技:C(初期)
 セイバーに劣ることのない剣技…は記憶を失う前の話。
 記憶の解放と共に強化され、最終上限はA。
 ただしそれは、狂化の進行も意味している。

二回行動:E(初期)
 文字通り二回連続で行動するスキル。
 これまた記憶の解放と共にランクが上がる。
 完全に記憶を取り戻してランクAになると、発動率100%となる。


【宝具】
『奥義・修羅一閃』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大補足:1
 敵単体に対して、防御力無視の連続攻撃を叩き込む。

『奥義・義剣絶翔』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~100 最大捕捉:1000
 狂化を克服し、なおかつ記憶を完全に取り戻さなければ発動できない隠し宝具。
複数の敵に対して、防御力無視の強力な攻撃を行う。

【weapon】
神剣ヴェルンディア

【人物背景】
かつては王女を守る騎士であった男、リアン。
しかし運命の歯車は少しずつずれ始め、絶望の末に記憶を失った彼はライゼとして新たな人生を始める。
しかし運命の歯車は再び動き始め、ライゼはリアンとしての過去に向き合う。
旅の末、リアンとして、ライゼとして剣を取り最後の戦いに挑んだ彼は、愛する人と共に消滅した。

それから数十年。始まりの丘で再び記憶を失った彼は、ライゼとして再び生きる。同じく記憶を失った運命の少女、リーンと共に―

【サーヴァントとしての願い】
失った記憶は気になるが、そこまで執着はない。
とりあえず今は、マスターを守る。

【マスター】
エステリーゼ・シデス・ヒュラッセイン@テイルズオブヴァスペリア

【マスターとしての願い】
聖杯を求める気はなく、元の世界に帰りたい

【能力・技能】
剣術や魔法で戦闘を行う。
魔法は光属性攻撃や回復・支援術という僧侶系のものが多い。
武器は剣の他に杖も使えるが、何気にこの武器スタイルもライゼが似てると感じた人物と同じである。

【人物背景】
通称エステル。
テルカ・リュミレースの帝国を治める帝国の皇族の血筋を引く皇女で、次期皇帝候補として擁立されている。
性格はおっとりとしていて、皇族ながら偉ぶったところがなくむしろ控えめ。
城の外に出る機会があまりなく、その影響か読書が趣味で、それにより様々な知識を得ている。
彼女が蘊蓄を語る時のフキダシは通常と形が変わり、エスペディアとファンの間で呼ばれている。
バーサーカーの解説のカッコが変わっているのはこれの再現だったりする。

【方針】
ライゼのことをちゃんと知り、友達になりたい。

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最終更新:2021年06月19日 23:32