この場にいると言う事、それ自体が間違いである。この東京で意識を取り戻した時に、彼女が思った事はそれであった。
ヨーロッパの生まれである彼女には、縁遠い街だと思っていた。足を運ぶ事も、ないだろうとも思っていた。
ただ、同僚……いや、同胞という言葉の方が適切か。兎に角、ペペロンチーノを名乗る、旅好きの話好きが語っていた、諸々の特徴は事実だったのだなと認識した。
まずい空気、生ぬるい気温、行き交う車と自転車、多種多様なフランチャイズの外食屋、便利なコンビニエンスストア。何から何まで、話の通りだった。

「ヴァルハラ……な訳はないか。俗すぎるものね……」

 ヴァルハラ。北欧の死生観が語る所の、勇ましく戦った戦士達が死後、やがて招かれる場所である。所謂天国、所謂浄土、所謂エリュシオンの園だ。
勇者の魂を導く見目麗しいワルキューレによって招かれる場所で、其処は人間の世界のどんな建造物よりも絢爛豪華な宮殿があるとされ、
極上の料理と美女の持て成しを心行くまで楽しめる。この上、何をしても死なない環境の為、好きなだけ戦いに明け暮れる事が出来る、まさに烈士勇者の為に用意された楽園なのである。

 古ノルドの血を引く母親に、寝物語に北欧の神話の話を聞かされてきた、『オフェリア・ファムルソローネ』は、逝きつく先は其処が良いと思っていた。
話を聞くにヴァルハラは男の為の場所、男尊女卑の体現、と言う風な気がしなくもなかったが、それでも、オフェリアにとって耳に馴染む死後の世界はヴァルハラであった。
だったら其処の方が良いと、彼女は思った。それに――その世界であるのならば、かの女神が。愛そうか殺そうかと言っておきながら、結局、愛する事を重んじた山の女神(スカディ)が、いるかも知れなかったから。

 当て所なく夜の町を彷徨い歩くオフェリア。
電信柱に張り付けられている標識から推測するに、23区ではなく、都民が言う所の郊外の地であるらしい。
不思議と、日本の漢字の意味が理解でき、ネイティヴレベルの文法も、その地で10年以上も住んできた者の如くに習得できていた。
界聖杯(ユグドラシル)、と呼ばれるものの力なのであろうか。

 解っていた。この地に、スカディの姿もなければ、彼女の手足であるワルキューレ達の雄姿もなく。
他のクリプターの姿も気配も見られない、感じられない。……キリシュタリアと言う名前の、愛していた男の姿も名も、感じ取れない。
行けどもそこは、東京だった。日本国の首都であり、世界に名だたる経済都市。アジア随一の大都会、東京都でしかないのである。

「……」

 己の手のひらをじっと、オフェリアは見つめる。そして、見つめたその手で、巻き付けられた眼帯に触れ、頬に触れ。
その手はスルスルと、胸元まで折りてきて、下腹部の辺りで止まった。我が身だった。オフェリア・ファムルソローネ。
ゲルマンの地に連綿と続く魔術の家系の娘。類稀なる魔術の才を授かって産まれ、更には世にも珍しい宝石級の魔眼をも授かり、極めつけにひなに稀なる優れた容姿をも与えられた、天を二物を与えずの格言は嘘なのだと確信させるに足る、恵まれた女性。それこそが、彼女なのだ。

 その自分が、何故、生きている? どの面を下げて、生きている。

 クリプター。それが、今の彼女を表す身分である筈だった。
人と神が共に在る事が出来る世界を目指す者達、とでも言えば、成程何とも神秘的なヴェールに包まれた魅力的な集団に思える事だろう。
だが実際には、クリプターの誰もが、己をそのような選ばれし者共であると、自己陶酔している輩はいなかった。
オフェリアは当然、クリプターの首魁であるキリシュタリアも、あのカドックやベリルですら、そうと思っていないだろう。
程度の差こそあれ、実際にクリプターの事をオフェリアや他の者はどう思っているのか、それは共通していた。人類の平和と存続に唾を吐いた裏切り者、だ。
新たなる世界の為に、異星の神やら何やらの、得体の知れない連中の要請を受け入れ、今の世界を旧い世界だとして滅ぼして……。それは、この世の如何なる天秤でも図れぬ大きさの罪であり、重大な、背信行為ではあるまいか。

 世界から行き詰まり(デッドエンド)と認識され、剪定され、そのまま滅ぶを待つしかなかった、ifの世界の北欧をオフェリアは思い出す。
慈愛と寛大さを持ち合わせた女王、彼女に仕える忠実な3人のワルキューレ達、キリシュタリアが走狗として重用しているいけ好かない褐色のランサー。
滅びの大火を司る巨人を宿した英雄、君ならあの恐るべき巨人をも御せると信頼を寄せる思い人、やって来たカルデア。自分よりも――ずっと良い方向に成長したマシュ・キリエライト。
差し向ける戦力に屈さぬカルデア。斃された英雄、目覚めた炎(スルト)。それでもなお諦めず粘るカルデア。命を賭して、虹の橋をその砲塔から掛けた砲兵(ナポレオン)。
魔眼と大令呪を引き換えに、全ての破滅を食い止めようとする自分。退けられる大火。そして、親友になりたかった少女に看取られる最期。

 目を瞑ると走馬灯のように、剪定されるはずだった北欧での情景が結ばれる。実際それは、走馬灯と言っても間違いはないだろう。
何故ならオフェリアは、既に死んでいる。己の命を繋ぎ止める大令呪と言うカードを切った影響もあるし、例えそれを切っていなくとも、
脳と密接にリンクしている魔眼を潰した以上、死ぬ事は避けられなかったのだ。そして事実、彼女は死んだのである。

 きっと、グランドオーダーを成し遂げたあのマスターと、マシュ、カルデアは、オフェリアが担当していた北欧を越えたのだろう。北欧は……剪定されてしまったのだろう。
彼らは、消えぬ焔と凍てつく氷雪に覆われた北欧を踏みしめ、次の異聞帯へと進むのだろう。それが、出来るだけの意思の強さが彼らにはあるのであるから。
対して、オフェリアの方は、紛れもない敗残者だった。北欧の異聞帯を成長させ、キリシュタリアから言い渡された『台風の目』となり得るスルトの制御すら失敗し。
何一つとして、役目を果たせなかった。元々参加する予定であった、人理修復の使命だって、レフ・ライノールの爆弾によって果たせずにいる。何につけても、成せた事がない。

 罪深きこの身が何故、東京の地に降りたっているのか理解出来ない。
界聖杯(ユグドラシル)を巡る聖杯戦争、頭の中に刻み込まれた知識が、理解を拒む彼女を助けるかのように流入してくるが、そういう問題ではない。そもそも知識だけならば、聖杯戦争の事は知っている。
死ねばヴァルハラどころか、導かれるのは女王ヘルが統治する永久凍土の冥府・ヘルヘイムしかあり得ない程、罪に塗れたオフェリアが、何故二度目の復活の機会を与えられ、
剰え聖杯を求めて殺し合えと言われているのか理解不能だ。もっと、もっとマシな人材がいたであろうに。選ばれたのが、彼女だったのである。

「駄目なサイコロを振るう神ね」

 偶然と言う事象は賽子を振るう神のイメージで表象されるが、きっと、神が今回振るった賽子は安物だったのだろう。
そうでなければ、もっとマシな……それこそ、今回の機会をずっと喜びそうなベリルや、世渡りの上手いぺぺ辺りを選んでいるだろう。

 潰された魔眼は元に戻り、健在の状態。身体のコンディションは万端。回路も全て好調。
しかも、今までオフェリアの身体にあった、『自分は誰かに生かされている』と言う感覚。即ち、大令呪の縛りもない。正真正銘、今のオフェリアはグランドオーダー前の万全の状態。
聖杯戦争を臨めるだけの状態は、成程、誂えられていると言う訳だ。……尤も、今のオフェリアは、聖杯戦争を進める上での要……令呪も、サーヴァントも。所持していない状態なのであるが。

「今この瞬間に襲われたら、ひとたまりもないわよね」

 実際それは、事実だった。
オフェリアは一般人ではない。魔術、取り分けて降霊術と召喚術に造詣が深く、加えて、現代では実在すら疑われるレベルの希少性の宝石級の魔眼を宿した魔術師である。
同じ魔術師が相手なら、負ける可能性は少ないであろう。実際、クリプターではなく、嘗てAチームと言う集団に所属していた時は、マスター適正においても、魔術師としての才能においても、
オフェリアの才能は上位のそれであった。相手がサーヴァントでも、相性次第では持ちこたえられる。それ程までに、戦闘に於ける彼女の天稟は目を見張るものがあった。
と、言っても、相手がサーヴァントともなれば、やはり彼女単体では凌ぎきる事は難しい。死、或いはそれに準じる結末の可能性しか、見えないのだ。
だから、今この瞬間が、彼女を殺せる絶好の機会。しかもこの世界には、自分に纏わりつく炎の姿もない。彼女の言う通り、この瞬間を狙われたら……、と言う奴であった。

「――っ」

 歩みを止め、直ぐに周りに目配せを始めるオフェリア。
巧妙に隠されてはいる、だが蛇の道は蛇だ。同じ魔術師の目は欺けない、人払いの術が掛けられている。
どうやら、魔術師のテリトリー……陣地に入り込んでしまったらしい。近隣にあるのが民家や、町工場等の小ぢんまりとした住居である事から考えるに、規模はそれ程大きくなかろう。
初めから小さめの規模を考えて作られた陣地か、あるいはこれから拡大して行くのか。それは解らないが、此処はもう、相いれない考えの可能性がある同門の腹の中である。油断は出来ない。

 重心を巧みに動かして、足音を立てずに移動するオフェリア。呼吸も最低限、まばたきすらも一分に一回。相手によっては、その瞬きの音すら捉える地獄耳がいる事を想定している。
そうやって気配を殺して移動する事、数分。下手人のアジトを見つけた。やや大きい、車やトラックが数台分は駐車出来る面積の町工場だ。
オフェリアは知らないが、自動車の整備工場である。その中に、侵入する必要性はなかった。道路から、工場の敷地内、ガレージの外の野外駐車スペースで、その光景は繰り広げられていた。

 風体からは魔術師には見えない、まるで野盗か、チンピラ、ゴロツキにしか見えない若い男の後ろに、ゆったりとしたローブを纏う誰かが影のように従っていた。
そのローブの誰かが、サーヴァントであるのだろう。実際、サーヴァントである事を如実に示す、ステータスがオフェリアの網膜に映し出されていた。
マスターであろう男の足元に、血を流して死んでいる作業服の男が転がっている。身体の一部を大きくえぐり取られていたり、焼かれて死んでいる者もいる。
魂食いされている事を、オフェリアは見抜いた。魔術師としては恥ずべき行いであるが、その手の矜持を理解していない事は、相手の風貌を見ればよく分かる。

「ひっく……あっぐ……!!」

 子供が、マスターの男性の足元で、屈んで泣いていた。女の子である。年齢で、6歳とか、7歳とか。その辺りの年齢だろう。

「どうよ、キャスター。魔力は漲ってるのかい? 8人殺ってる訳だけどよ」

 野卑そうな声。ベリルの方が、まだマシだった。

「魂喰いが魔力の足しになる手段なのは間違いないが、元より、急場しのぎの意味が強い。この程度の量、一回の戦闘で容易く使い切ってしまうぞ」

「チッ、地道な作業だなぁオイ。まぁいいさ、勝てば良いんだ勝てば。界聖杯って奴の為なら、この程度、安いモンだろ」

 思えば、カルデア時代に於いても、クリプター時代に於いても、オフェリアの周りには魔術師が多かった。
つまり、サーヴァントを使役する上での心得を、理解している者が殆どであったと言う事だ。そもサーヴァントとは、使い方を間違えれば銃やナイフなど及びもつかない意思を持つ兵器と化す。
その、兵器にもなり得る意思を持つ存在との付き合い方やルール、それらは徹底して教育された。尤も、召喚と降霊に造詣の深いオフェリアには、今更と言うべきものだったが。
……その心得を理解していない者が、サーヴァントを使役すれば、ああ言う無軌道な真似に走るのだろう。聖杯戦争のセオリーとしては間違ってないだろうが、それでも、眉を顰める行為なのは、間違いない。……オフェリアに、それを言う権利があるのかは疑問だが。

「抵抗しなけりゃ、痛いのはすぐに終わる。諦めてくれや」

 言って男は懐に差していた、オフェリアの二の腕程もある長いナイフを取り出し、それを少女の首筋に当てようとする。

 無視して、この場を去る、と言う選択肢もオフェリアには取れた。
彼らは今、彼女の存在に気付いていない。此処を後にして、知らぬ存ぜぬを、貫く事。それが、命を失わずに済むと言う点から見れば、最良の判断であったろう。

 ――そのような事を考えていた時、オフェリアは、異聞帯の北欧の女王である、スカディとの対話を思い出していた。
彼女はあの世界に息づく子供達の事を深く愛し、家族構成の事も全て覚えていた。そして、世の不条理と残酷さを知らぬまま、ヴァルハラに導いてやっていると、語っていた事もまた。
子供達の事を語る時の、彼女の、凛然凛冽とした話し方と立ち居振る舞いの中に、例えようもない哀しみがその瞳の中を過っていた事を、オフェリアは見逃さなかった。
スカディは、あの異聞帯に生ける人々を深く愛していたのだ。そして、総数にして一万人程度の僅かな人類を生かす為に、間引きを主とした方策しか取れなかった自分に対して、呆れていたのだ。
リソースがない故の悲劇だった。無い袖は振れない、この真理は、神を以てしても変えられないと言う事だった。

 ――私は……――

 二度死に、二度、生き返った女。
無様に生き永らえ、何も成せず果たせずして、死んだ女。恥だけの生涯だった。

 死ぬ事など、思っていた程、大したものじゃない事を、オフェリアは知っている。
だったら――ここで、何かを成して、死ぬのも悪くはないなと、彼女は思う事にした。

 パチンっ、と、フィンガースナップを弾かせながら、オフェリアは整備工場の敷地の中に、わざとらしく足音を立てて侵入した。
勿論、マスターの男と、キャスターのサーヴァントは気づき、バッとこちらの方に顔を向けた。

「誰だテメ――」

 其処まで言った瞬間、チンピラ風の男が吹っ飛んだ。
凄い勢いで後方へと吹っ飛ばされ、背後数m先に駐車されていたファミリーワゴン車、そのリヤのスライドドアに激突。
クッション代わりになったドアは簡単にひしゃげ、ガラスの破片が雲母のように煌めいて中空を舞った。北欧に生きる魔術師の嗜みであるガンド、オフェリアが放つそれには、高い物理的な干渉能力が付与されている。人の身で受ければ、当たり所によっては即死だ。

「貴様ッ!!」

「私は、それが輝くさまを視ない(lch will es niemals glǎnzen sehen.)」

 キャスターが何か呪文を紡ごうとするが、そうはさせないと、眼帯を解くオフェリア。彼女の方が、速かった。
キャスターの動きが、止まった。まるで、そう。生きたまま羽や胴体にピンを刺された、昆虫のように。目を見開き、驚きの表情を浮かべるキャスター。

「魔眼かッ」

 その通り、オフェリアに授けられた宝石級の魔眼、それを彼女は『遷延の魔眼』と呼ぶ。
不気味な目だった。およそ、人類に授けられる目ではない。血のように赤く、結膜の部分がまるで万華鏡のような虹色に輝いている。
知識に疎い者が見れば、世にも珍しい奇病か何かだと思うであろう。だが、この目こそが、魔眼たる所以。サーヴァントですら射貫く、驚異の力を秘めたイーヴィル・アイなのである。

「逃げなさい、お嬢ちゃん」

 努めて優しく、怯えている子供にそう告げる。
優しく、出来ているだろうか。両親からは大切に育てられはしたが、それは、世間一般の人間が思うような愛され方ではなかった。オフェリアは、子供に対する適切な接し方など、解らない。

「うぇ……?」

 自分に声を投げかけて来た者に、少女は顔を向ける。涙と鼻水で、顔はぐちゃぐちゃだった。

「速く!!」

 そして、その優しくすると言う余裕は直ぐに失せた。オフェリアの一喝に驚いた少女は、身体を一瞬硬直させるも、すぐに、この場を逃げ出し始めた。
それで良い。遷延の魔眼は確かに強力な魔眼ではあるが、直接的な殺傷能力を持たない。あくまで、都合の悪い事実を引き延ばしにする事に長けている能力に過ぎない。
今はキャスターの動きを止められても、展開次第で、この膠着など簡単に打ち破られる。

 ――そう、このように。

「ガッフ……!?」

 それは、不意に叩き込まれた衝撃だった。背面に叩き込まれた、鈍く重い一撃。感触は、人の身体よりは固く、鉄よりも柔い。
木だ。木のような物で殴られた感覚。その強い一撃で、彼女はうつぶせに倒れ込んだ。それと同時に、遷延の魔眼でピン止めされていたキャスターの動きが解放され、自由になる。
うつぶせになったオフェリアは、自発的に立ち上がるよりも早く、自分を殴った何者かの手によって引きずり起こされ、羽交い絞めにされてしまう。
それが、木製のゴーレムのようなものだと、後ろを見ずとも彼女は気づいた。全身くまなく、人間身体の感触がなく、樹木の感覚であるからだ。

「……驚きだな。そのような魔眼が、現世の人間が授かり得るとはな。その上、魔力も潤沢だ。下手に金属で殴って、死なれるよりは使い出がある」

 キャスターのサーヴァントは、オフェリアの特質である魔眼と、豊富な魔力量を見て、利用の算段を考えているらしい。
間違った判断ではない。魔術師の多くはきっと、このキャスターと同じような事を考えるであろうから。

「マスターが死んだと言うのに、今更皮算用? もうすぐ、貴方は消滅するわよ」

「馬鹿め、魔術師でもないマスターに対し、キャスターが何も一案を講じないと思っているのか」

「いってえええ~~~だろうがよォ!!」

 ワゴン車の後部席で今まで倒れていた、チンピラのマスターが、ドスの効いた声を張り上げて、のそりと外に出た。
口の端から血が流れているが、動く分には支障がなさそうだ。骨も、見た所折れている様子はない。肉体的なダメージを、行動不能にならない程度に負った、と言う所か。

「護符位は持たせてあげているのね」

「当たり前だ、そうでもなければ危なっかしくて見てはおれん」

 なんて事はない、オフェリアもやっている手だ。防護機能を持たせた礼装を、忍ばせていたから無事だっただけの話である。
あのマスターの場合は、キャスターが作り上げた、物理的な防御力を高めさせる代物を所持していたのであろう。

「このクソ女が……!!

 睨みを効かせてマスターが此方に近づいてくるが、オフェリアは何も怯えた様子も、臆した様子も見せない。
ただ、冷ややかな目で眺めるだけだった。が、すぐに見るべきものが何もないと判断したか、目線を外した。興味すら、ない。

「マスター、この女は利用価値が高い。この女の目……魔眼と言うのだがな、これを摘出したい。俺達の助けになるし、魔力も豊富だ。吸い上げれば有益な結果を得られる」

「そうしろ。そうでもしなきゃ気がすまねぇ。……それでよ、キャスター」

「む?」

「その魔眼とやらも、魔術とやらも、今この瞬間からこいつが使えなくなるように出来ないのかい?」

「今すぐは無理だ。少なくともまずは魔眼の摘出から始めねばならん。それが一番脅威だからな」

「そうかい。だが……ま、片目がなくなったとしてもよ、ご丁寧に眼帯があるんだからよ。それで空いたメンタマの所隠せば、大丈夫だろ」

 舐めまわすように、オフェリアの顔や身体を眺める男。

「なかなかどうして、顔も体も良い女じゃねぇか。気に入った、俺のテクで可愛がってやるからよ」

 つくづく、救えない性分の男であるらしい。蔑むよりも先に、笑ってしまった。嘲るような、笑み。

「何笑ってる」

「好きにすればいい。戦士、兵士。明日を生きられるか解らない男達に、生中な倫理観何て通用しないわ。征伐先の女が犯された事例何て、洋の東西呆れる位見られるもの」

 血気昂る男たちが、征服を終えたその土地で、女性を見つければどうなるか。
勿論、そんな事、今更説明する為に筆を取るまでもない事だった。それについて、肌の色だとかお国柄だとか、時代だとか受けた教育の質だとかは一切関係ない。人の、サガ、本能の問題である。

「どうせ貴方達、聖杯戦争を勝ち残れはしないものね? 良いと思うわ。どうせこれから良い事なんて起こらないのだろうし。私の身体で、良い思いでもして……死ぬ間際に、それしか良い事がなかったと絶望してなさいな」

「テメェ、ぶっ殺すぞ!!」

「犯すのじゃなくて殺すの? 間近の方針も定められないようじゃ、とてもじゃないけど勝ち残る生き残る以前の問題ね」

 胸倉を捕まれるオフェリア。これも、行為としては減点だ。いや、減点どころか失格だ。聖杯戦争の参加者として迂闊にも程がある。
襟を掴まれれば、その掴んだ腕ごと圧し折る技を持つ武芸者も、その腕を斬り落とす礼装を仕込んである魔術師も、この世には大勢いると言うのに。「勝手に触れるな!!」と、キャスターだけは気づいているらしく、マスターに一喝していた。

「お、お姉ちゃ……」

 少女の声が、聞こえて来た。
自分を羽交い絞めにしている木製のゴーレムの更に後ろ。振り向こうにもこれは出来ない。聞き間違えじゃなければ、先程逃がした女の子の声だ。

「な、なんで戻って来て……」

 色々、理由は思い浮かぶ。
人払いが及んでいる範囲は結構広かった。誰も人がいないので、不安になって戻って来たのかもしれない。
或いは、此処が近所だからじゃない可能性もある。襟を掴んでいるマスターに拉致され、本来の住所の近くじゃない遠く離れた場所が、此処なのではないかと言う推測も立つ。
だが、少なくとも今は戻って来る局面じゃない。何処かに逃げて、人に助けを求める局面であった筈だろう。これでは態々、この主従の魔力の糧になりに来たようなものである。

 現状を認識して、少女が、泣き始めた。
もう事態が終わったものだと、認識していたのだ。オフェリアが、悪い人たちを倒しているものだと思って、安心していたのだ。
蓋を開けてみれば、オフェリアは生殺与奪を完全に握られた状態で、いつ、命から操まで、何もかも失ってもおかしくない状況だった。
状況が好転するどころか、寧ろ悪くなっていると言う事実に、少女は泣いた。咽び泣くような泣き方。何時だったか、日曜日を迎えたくなくて、ベッドの奥で一人で泣いてた時も、あんな感じだったな、と。オフェリアは、場違いにも思ってしまった。


.
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 子供の、泣く声が聞こえる。俺の苦手な、子供の泣き声。

 昔から、赤子が泣いた時、どうすれば良いのか解らなかった。
難しい事を考えるのは性に合わなかった。そう言う事を考える事が仕事の奴は、別に居ると割り切って、敵対する奴らを殴りに行くのが俺の仕事だった。
殴るしか能のない奴、俺の腐れ縁であり……友人だった男は、そう俺の事を言っていた。そうさ、俺はそういう男だ。

 だから、俺とドゥルガの間に産まれたミスラが泣いたら、混乱してしまうのだ。俺が抱けば、泣く声が強くなるんだ。
自分でも、何故出来ないのだと何度思ったか解らない程、俺は子供をあやすのが下手だった。妻が……ドゥルガが抱けば、すぐにミスラは泣き止んだと言うのに。

 野菜が苦手な娘だった。
夕食の時、ドゥルガが見ていない隙にそっと差し出された、皿の上のニンジンを食べると、その事をドゥルガは叱りつけてくる。
だが、俺が代わりに食べれば、ミスラは笑顔になるのだからしょうがない。

 ミスラは、笑顔の似合う娘だった。家の中、家の外、丘の上、花壇の近く。何処でもアイツは、良い笑顔をする。
だが俺は、ミスラを安心させる事は出来ない。泣きわめくアイツをあやして笑顔にする事は、遂に俺には出来なかった。気付けばミスラは、一人前の巫女になっていた。
俺に出来る事は、殴る事、戦う事。……不義に対して、怒る事。それしか能のない男が、娘に対して約束出来る事など、一つしかない。ミスラを泣かせる奴を、殴りに行く。それだけだ。

 子供の、泣く声が聞こえる。
ミスラの声ではない。そして、声の色から、かなり差し迫った状況にある事が、解る。
俺が、サーヴァントなる存在として呼ばれている事は理解している。だが、行く気がない。見れば、俺には相応しくなさそうなマスターだ。
より、良い仲を築けそうなサーヴァントはいるだろう。態々、俺が行く事もない。そう、俺は思った。思ったのだ。

 ――その女の子は何も関係ないわ、逃がしてあげなさい――

 ――そうは行くかよ。この場を見られてるんだ、見逃す訳ねぇ。それに……どうも、その娘に見られながらの方が、アンタ、良い反応しそうだからよ――

 ――……ゴミね――

 頬を、平手打ちされる音。更に、泣くのが強まる娘。

 昔……ずっと昔。
ミスラに似た子供を、俺の力が足りないばかりに、死なせてしまった事を思い出した。
言葉も通じない、考え方も違う、そしてそもそも、大局を考えれば死んだとて何の意味もない命。それでも、俺にとっては、心残りだった命。

 良いか、違うぞ。
俺は、子供の泣く声が我慢できないから。泣き止んで欲しいから、其処に行くのだ。お前の為じゃない。

 ――『アスラ』が怒るのは、愛娘の為なのだ。お前の為じゃないぞ、マスター。


.
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 ズゥン、と言う地響き。そして、緩く、それに応えて震える地面。
バッ、と、キャスターとマスターが、背後を振り返ると、それはいた。

 赤銅色の肌に、灰色の髪の男だった。
磨き上げた銅のような皮膚だ。ガレージの電気の光が当たっているが、肌に、金属光沢のようなものが浮かび上がっているのは、目の錯覚ではない。
筋骨隆々、と言うのは彼の為にある言葉であろう。露出されている上半身は、実に見事なもので、この世の全てのボディビルダーや格闘家が裸足で逃げ出す、
機能性と芸術性が高いレベルで組み合わさった至高のそれだ。磨き上げられ鍛え上げられたその肉体に、余分な贅肉も脂肪もない。岩か鋼かの如き威容を見る者に覚えさせる、切磋琢磨された肉体の究極系のようであった。

「……」

 無言。腕を組み、周りを一瞥する、赤銅の肌の男が、何を考えているのか解らない。
沈黙が場を支配する。その中に在って、少女の泣く声だけが、うるさい程に、良く響いていた。

 右手に、魔力が収束して行くのを感じる。令呪、それが刻まれる感覚だ。
アレが、自分のサーヴァントなのかと、オフェリアは愕然とする。理由は簡単、そのステータスの高さである。
桁違いだ。当初自分が引き当て、望外の喜びを示していた、シグルドのステータスですら及ばない程なのである。
これと比してしまえば、目の前のキャスターのサーヴァントが、可哀そうな程であった。

 バーサーカーの姿が掻き消える。それと同時に、オフェリアの身体から羽交い絞めにされていると言う感覚が消滅、そのまま地面にへたり込む。
ゴトゴトと、何かが地面に落ちる音が聞こえて来た。目の前に転がって来たその破片から、それが、破壊された木製のゴーレムだとオフェリアは気づいた。
いつの間にか、ゴーレムの背後に回っていたバーサーカーが破壊した事までは、彼女も解る。……まさかその方法が、ただの頭突きであった事までは、知るまいが。

「こ、こいつ、強――」

 一瞬のスピードで、へたり込むオフェリアの前に立ったバーサーカーが、チンピラ風のマスターの頭頂部に手を置いた。
よく見るとその両腕には、肘までを覆う金属製のガントレットのような物で覆われていて、しかも、かなり可塑性と柔性が高いのか。人間の腕そのもののように、自由に動かせるようであった。

 グッと、バーサーカーが圧力を込めた、瞬間。
「いげっ」、と言う意味不明の言葉を上げて、チンピラの頭部はメキメキと音を立てて、その首ごと、臍の辺りまで一気に沈んだ。
まるで胴体が水になったかのようであったが、当然そんな事もなく、筋肉も骨格も内臓も、存在する状態。その状態から、頭を無理やり臍まで物理的に押し込んでしまったのだ。
必然、死ぬ。今のマスターの状態は、位置関係の都合上キャスターのサーヴァントの目にしか映らないが、その様子は壮絶な物。
目から、鼻から、口から。大量の血液を零したチンピラの顔が、臍の辺りで苦悶の表情を浮かべて虚空を眺めていて、胴体には両の肩甲骨より内側に、谷が出来上がって其処から大量の血液と折れた骨、内臓が露出しているのだ。余りのグロテスクさに、サーヴァントは思わず、吐き気を覚えた。

「お前ェっ!!」

 最早、消滅は免れぬ。自分は此処で脱落するだろうが、死なば諸共。
キャスターのサーヴァントは、オフェリアを道連れにしようと術式を編もうとするが、それよりも遥かに速く、認識不能の速度で懐に入り込んだバーサーカーが、
その顎にアッパーカットを叩き込んだ。衝撃で、顔が上を向いた、では済まない。凄まじい速度で衝撃を叩き込まれた影響で、キャスターの頭部が破裂してしまったのだ。
筋肉、皮膚、骨格、眼球、歯、舌、脳。それら一切は、原形すら留めずにその場に飛散。ガクガクと、強い痙攣を起こした後に、キャスターのサーヴァントは背後に仰向けに倒れ、そのまま光の粒子となって消滅してしまった。

「びええええええぇぇぇぇぇぇ……!!」

 全ては終わったが、それを子供に認識する事は出来ない。
蹲って泣き続ける少女の方に、オフェリアは目線を向ける。そしてその後で、一瞬の内にサーヴァントとマスターを屠ったバーサーカーの方に目線を向ける。困った顔をして、オフェリアの方を、彼は見ていた。

「オイ……泣き止ませろ。出来るだろう」

 低く渋い、男の声。本当に、困った様子でオフェリアに言っていた。

「わ、私だってあやせないのよ……」

「女だろうお前は」

「女だからって出来る訳じゃないわよ、もう!!」

 オフェリアが強く反発したその言葉に対して、更に泣く声が強まったので、彼女はより狼狽するしかないのであった。


.

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 結局オフェリアが、慣れない様子で子供を何とか泣き止ませ、交番の近くまで連れて行った。
その過程で、あの少女はこの町の住民ではなく、その二個隣りの町の住民であった事を、女の子の口からオフェリアは知った。
良かった、と思う。あの自動車工場の誰かの娘ではなくて、である。そうだった場合、この娘は心に傷を負うであろうから。

 別れ際、少女は「お姉ちゃんは行かないの?」と聞いて来た。
行ける訳がない。地面に倒れて土埃がついて、無遠慮に頬をはたかれた所が、赤い跡になっている。これで交番に行けば、要らぬ事を根掘り葉掘り聞かれるだけだ。

「行かなくちゃいけない所があるのよ。……それじゃあね」

 そう言ってオフェリアは、急いでその場を後にした。
お姉ちゃん、と呼ぶ声が聞こえて来たが、それに後ろ髪を引かれている時ではない。オフェリアは無視して走り去り――。
今、誰もいない市内の公園のベンチで、腰を下ろし月を眺めているのであった。

「何処か、行く当てでもあるのか」

 実体化をするバーサーカー。
意思の疎通が出来る、と言う点に先ず驚く。狂化を付与されステータスを上昇させる代わりに、理性を失ったクラスだと言うのに。
そう言うのもあって、Aチーム時代、召喚したいサーヴァントのクラスでバーサーカーは除外していたし、実際殆どのメンバーはこのクラスは除いていた。……尤も、そのクラスを望んだ奇特者が、一人いたのだが。

「この世界には、ない。元の世界には……元の、世界には……」

 あるのだろうか。自分の席も居場所も。……いや、居てもいいのだろうか?
世界を裏切り、唾を吐き、クリプターとしても落第した自分に、居て良い場所などあるのだろうか?
黙り込むオフェリアを見下ろし、バーサーカーは口を開いた。

「ないのか?」

 そう、ない。しかし――

 ――そうだ、進め。踏み出していけ。迷ってもいい。悩んでもいい。だが止まるな、進め――

 ――後ろに進んでもいいさ。ただ、止まるな。退くな。戻るな――

 ――胸を張れ、オフェリア。オマエは、ただ、あるがままで美しい――

 我が身に求婚して来た砲兵の言葉が、リフレーンする。ジョセフィーヌを妻とし、多くの妻と浮名を残した、恥知らずの皇帝の微笑みが思い浮かぶ。
素気無くフッたオフェリアに、最後まで愛を主張し、そしてそのサーヴァントとしての活動を、勇気と希望の虹霓(ビフレスト)を繋ぐと言う行為を以て停止させた、フランス皇帝ナポレオン。

「なくても、進むわ。私達は、歩むのだけは、止めなくて良いらしいから」

 立ち上がり、何処かへと進もうとするオフェリアの背を見て、アスラは言った。

「だったら、お前の目の前にある障害を殴って退かしてやる。俺もそれぐらいしか、出来ないからな」

「……プロポーズ?」

「馬鹿言うな、俺には妻がいる。とっとと、こんな催しを終わらせて帰りたいだけだ。着いてくる気などなかったが……子供の泣く声がうるさくて、やって来てしまったぞ」

「意外と優しいじゃない、貴方」

「黙れ」

 舌打ち。

「貴方の真名って……何なの? 名前ぐらいは、共有しておかないとダメだから、聖杯戦争じゃ」

「……アスラ」

 仏教や、バラモン教神話に語られる所の、怒りと戦いの神か。
変な縁もあったものだと、オフェリアは思った。アスラは、神々ですら手を焼く怒りに燃える、制御不能の存在だったと言う。
自分も、ほんのついさっきまで、制御不能の巨人に振り回されていた存在だった。今度こそ、あんな事にならないよう、オフェリアは、祈るのであった。





【クラス】

バーサーカー

【真名】

アスラ@Asura's Wrath

【ステータス】

筋力EX 耐久A+++ 敏捷A+ 魔力B 幸運B 宝具B

【属性】

中立・善

【クラススキル】

狂化(阿修羅):EX
バラモン教、仏教の伝説に説かれる所の、アスラないし阿修羅の名を冠しているにも関わらず、意思疎通自体は可能であり、それどころか高度な会話だって可能。
だが、一度その怒りが許容量を超えれば、如何なるマスターでも制御不能の怪物と化す。

【保有スキル】

憤怒の化身(阿修羅):EX
仏教、バラモン教の説話で言う所の、阿修羅ないしアスラそのもの。尽きる事のない怒りと、戦闘に対する意欲の象徴。
極限域の勇猛・怪力・戦闘続行・無窮の武練を兼ね備えた複合スキル。戦闘中このスキルが発動すると、相手に逃げられるまで、際限なく筋力ステータスは上昇し続ける。
また、バーサーカーは己の怒りの感情を魔力に変換する事が出来、この魔力を戦闘及び、サーヴァントとしての自分の存続に補填する事が可能である。

単独行動:EX
マスター不在でも行動出来るスキル。上述のスキル、憤怒の化身が発動している限り、このスキルは適用され、宝具の仕様すら可能となる。

魔力放出(怒炎):A+
バーサーカーの怒りが可視化され、エネルギーを持つにまで至ったもの。橙色の焔の形をとる。
専ら、攻撃及び機動力の向上に用いられ、拳に纏わせて殴りつける、ブースター代わりにして空中での姿勢制御や急加速、飛び道具として射出するなど使い方は様々。

終焉の担い手:A
終わりを運ぶ者、破滅を呼ぶ者、結末を齎す者。その世界観、或いは神話体系に於いて、破壊や滅びや終局を担っているか。或いは、担ったか。
本来であれば神霊の振るう権能に相当するスキルであり、勿論の事、権能相応の力を発揮する事は、サーヴァントにまで零落した身では不可能である。
そのため、一挙手一投足に粛清防御を貫く貫通効果が付与され、相手を破壊する、抹殺すると言う行為の全てに有利な判定を得る程度の効果にこれは留まる。
ランクAは同スキルに於ける最高峰。一つの神話体系に関して、破壊神として君臨しているか、或いは一つの世界ないし世界観の滅びを齎した者のスキルランクである。
バーサーカーは当該世界観に於ける宇宙・万物・万象の創造主を屠り、新しい世界の礎を作り上げた。

神性:C
神であるか否か。バーサーカーは真名をこそアスラであるが、しかし、仏教の説話が語る所の阿修羅王、バラモン教が説く所のインドラ(帝釈天)に反旗を翻した神霊アスラではない。
彼の正体は西暦に換算して数万年にもなろうかと超遠未来の技術に寄りて作られた改造人間、サイボーグである。
故に神性など持ちようがないのだが、神として崇められていた時期があった事、そしてその期間が優に千年を超えるスパンであった事から、このスキルを得た。
その性質上、神性特攻は受けるし、機械などの特攻効果も受けてしまう。

【宝具】

『六天金剛(アスラズラース)』
ランク:B+++ 種別:対人宝具 レンジ:2 最大補足:30
バーサーカーの怒り、或いは意思に呼応して発動する宝具。発動すると、世に語られる阿修羅の伝説同様、六本の金属の腕が発動する。
腕が増え、攻撃能力が倍増する、ただそれだけであるが、それ故に手が付けられない程強力。破壊される事があっても、再生は可能。

……現実的に、バーサーカーに登録されている宝具の中で、発動が出来るラインはこの宝具までである。以降の宝具は、発動に埒外の魔力が必要になるか、そもそも使用不能の二種類に分かれる。

『修羅、天を拒め(否天)』
ランク:EX 種別:対人~対界宝具 レンジ:測定不能 最大補足:測定不能
バーサーカーの怒りが許容範囲を超え、暴走した際に発動する宝具。ランクEXとは厳密には、この宝具が発動した時の値を示す。
発動するやバーサーカーの肉体は、髪先からつま先に至るまで黄金色の極光を放つ、獰猛なヒトガタの姿に変貌する。
背中からはマグマを練り固めたような橙色に輝く、バーサーカーの肉体よりも何倍も大きい巨大な腕が生えてくる。
この宝具が発動したバーサーカーは、ただでさえ異常の域にある身体能力が更に跳ね上がるだけでなく、最低でも対国、最大で対星級の威力と熱エネルギーを内包した、
高エネルギーのビームや光球を放ち、相手を撃滅する戦法を取る。そのエネルギー攻撃の威力は、トップサーヴァントが保有する対国、対界宝具と比しても遜色がないどころか、容易に上回る。

現在は、バーサーカーの理性によって発動を制御している状態だが、万が一発動してしまえば、理性を失ったままに、上述の威力の攻撃を放ち続ける怪物と化す。
最大の弱点は、その魔力消費。バーサーカーが怒りによって自家発電できる魔力の量よりも、この宝具を維持するのに必要な最低限の魔力の方がはるかに上であり、これらの両立は不能。
更に、マスターとしては極めて優秀なオフェリアの魔力量を以てしても、この宝具を維持するのは一分とて不可能な話であり、早い話、発動すれば消滅が確約する宝具と換算しても間違いはない。

『八極炉』
ランク:EX 種別:対城宝具 レンジ:測定不能 最大補足:測定不能
バーサーカーの胸部に組み込まれている炉心。金色の、お椀上の機械である。
その正体はバーサーカーが生きていた世界において、因果要塞と呼ばれる惑星以上の大きさの巨大要塞を稼働させる、大量のマントラを制御する為に開発された特殊装置。
後述の宝具が発動する為に必要な宝具であり、聖杯戦争に召喚されたサーヴァントに際して、この宝具の性能は平常時の魔力消費が大きく低減されることと、
怒りのエネルギーによる魔力回復の量が向上する程度に留まっている。この宝具が破壊ないし発動を止められた場合、上述のメリット効果は全て消滅する。
また、先の宝具と、後述の宝具による平時の魔力消費を賄える量以上の魔力は、この宝具は生めない。

『輪壊者、事象の地平を踏め(アスラ=マズダ)』
ランク:EX 種別:対『界』宝具 レンジ:測定不能 最大補足:測定不能
発動不能。厳密に言えばいつでも発動可能な宝具であり、先に述べた宝具・否天が子供のおふざけに見えるレベルの宝具だが、発動しようとすれば最後。
この宝具に変身する過程の魔力消費でバーサーカーは消滅し、マスターは魔力の急激な喪失で即死する。いわば究極の出オチである。事実上、発動は不可能であり、考えないものとするべき宝具である。

【weapon】

拳足:
文字通り。バーサーカーは相手を殴る、蹴る、と言う戦い方を好む。

【人物背景】

魂に宿る真言の力『マントラ』を用いた高度な科学技術と精神的な宗教文化を併せ持つ、神国トラストリムに生を授かった神人類。
その中でも軍人階級に在り、己の身体を今でいうサイボーグと化させた者達。その中でも特にマントラへの適合力が高く、その適合力と戦闘能力を買われた、八神将。
アスラは、その八神将の一人であり、怒りのマントラを象徴する人物である。
同胞の裏切りによって反逆者の汚名を着せられ、娘と妻、そして自身の命まで奪われるも、死すとも尽きぬ怒りを魂代わりに、一万二千年の時を越え現世へと甦る。
その怒りの赴くままに、同胞を殺し、友と戦い、地球の意思を殴り飛ばし、そして、万物の創造主をも破壊した男。

【サーヴァントとしての願い】

そもそもサーヴァントとして来る必要性も、来る気すらなかった。……まぁ最後までマスターの為に、戦うか

【基本戦術、方針、運用法】

キミ何処のオリ最強系サーヴァント?と言いたくなるようなふざけたステータスとスキル構成と宝具構成の持ち主。
多分10年以上前のFate二次創作の時代でもEXランク3つはなかったと思うんですけど(名推理)
とは言っても、4つある宝具の内2つは発動不能と言うか、発動すれば死ゾの代物の為、現実的に使える宝具は2つしかない。
その上、怒りゲージが溜まると発動不能の2つの宝具の内1つが強制発動の為、事実上消滅する機会が他のサーヴァントに比べて1つ多いとんだ厄モノサーヴァント。
基本的に近接戦闘では敵はないが、サーヴァントとして呼ばれた枷の為、原作並に頭の悪い戦闘は出来ない。



【マスター】

オフェリア・ファムルソローネ@Fate/Grand Order

【マスターとしての願い】

今はない。ただ、進むだけ

【weapon】

【能力・技能】

降霊術、召喚術:
オフェリアが修め、得意とする魔術

遷延の魔眼:
『宝石』ランクの魔眼。未来視の一種で、あらゆるものの可能性を見る事が出来る。
そして、その一度見た「能性を魔力を消費することで『ピン留め』が可能。この「ピンで留める」とは、都合の悪い可能性の発生を先延ばしに出来る能力である。
相手の自己強化、他者強化に干渉して強化すると言う行為を無効化するのは勿論の事、行動出来ると言う可能性をピン止めして行動不能にさせる事も出来る。
また可能性が見えるという事は、ある種の未来視でもあり、起こり得る可能性をもとにして、自身がどう動くかも選ぶ事が出来る。
弱点は、自身から遠すぎる可能性には干渉することはできない事。作中ではこの弱点の故に、レフ・ライノールの用意した爆弾での死から逃れられなかった。
また、魔眼の対象になった者が『別の可能性の自分』が存在できない程に『精神を固定する』と同じく可能性に干渉できなくなるということである。

【人物背景】

カルデアが嘗て用意していた生え抜きメンバー達、所謂Aチームとしてカルデアから選抜された優秀なマスターの一人。
高い戦闘能力と優れた才能、またその魔眼の故に、キリシュタリアからの信頼も厚く、戦闘に於いては彼女の方が分があると認めていた程。
しかし、人理焼却に際して、レフ・ライノールの用意した爆弾によって一度は死に、その後、クリプターとして蘇り、カルデアと敵対した。

原作第2部2章終了後より参戦

【方針】

元の世界に戻る。居場所がなくても、それでも、進む。進めと、言われたから

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2021年06月23日 21:09