授業が終わり、寮の自室に戻る。
この学校の寮は、一人一人に個室が与えられるらしい。
どうやらこの世界の俺の家は、そうとうな金持ちのようだ。
あるいは、マスターに選ばれた俺に対する聖杯とやらのサービスか。
一人で策を練る場所は必要だろうからな。
いや、厳密には一人ではないが。

「さて、ここなら大丈夫だろう。姿を見せていいぞ」

俺は、霊体化していたサーヴァントに呼びかける。
程なくして、俺のサーヴァントが姿を現す。
前後逆に被ったキャップに、赤いジャケット。
その姿は、忘れようもない。

やつの名は、レッド。俺のライバルだ。


◆ ◆ ◆


「さて、現状を確認しよう」

マスターたる少年……グリーンは、宿命のライバルであり現在は自分のサーヴァントである少年……レッドに話しかける。

「俺の荷物は、部屋に置いてあった。
 だがモンスターボールは、全て空っぽだ。
 おまけにこの世界には、どうやらポケモンがまったく存在しないらしい。
 だから、野生のポケモンを捕まえて戦力にすることもできない。
 俺たちの戦力は、おまえのポケモンだけということになる」
「そうなるよなあ、やっぱり」

レッドは眉を八の字にし、頭を掻く。

「不服そうだな」
「今回はポケモンバトルってわけじゃないからな。
 相手も死人みたいなものとはいえ、ポケモンたちに人間を攻撃させるのはやっぱり抵抗あるぜ」
「だったら、なぜ召喚に応じた。おまえが来なければ、他の誰かがサーヴァントとして俺のところに来ていたはずだ。
 必ずしも、俺のサーヴァントがおまえである必要はない」
「水くさいこと言うなよ。おまえが死ぬかもしれないのに、ほっとけるわけないじゃん。
 ここで死なれたら、歴史変わっちゃうしさあ。たぶん」
「たぶん?」

レッドが付け足した言葉に、グリーンは引っかかりを覚える。

「たぶんとはどういうことだ。サーヴァントは肉体こそ全盛期だが、記憶は死を迎えた瞬間のものまで持っているはずだろう。
 おまえは、俺がどんな人生を歩むのか知っているはずだ」
「いやー、それがさあ……。なまじ、生前の知り合いに呼ばれたのが裏目に出たみたいで……。
 今の俺は、体も頭も『おまえの記憶にある俺』なんだよ」
「何……?」
「具体的には、ポケモンリーグでおまえと戦ったときの俺かな。
 別にこの時期が全盛期ってわけじゃなくて、今のおまえが最後に俺と会ったのがその時だからこうなったみたいだ。
 手持ちポケモンの構成も、その時のやつだしな」

レッドの説明に、グリーンはため息を漏らす。

「おまえなら、月日を重ねれば重ねた分だけポケモントレーナーとして成長しただろうに……。
 本来なら、もっと戦力になる状態で召喚されていたということじゃないか」
「なんだよ、今の俺じゃ不満か?」
「不満と言えば不満だが……。まあいいさ」

予想外の返答にきょとんとした表情を浮かべるレッドに対し、グリーンは言葉を続ける。

「その状態のおまえでも、俺に勝っているんだ。
 全盛期でなくても、強いことに違いはない。
 そのおまえが、俺と組むんだ。戦力としては十分だろう」
「なんだ、わかってるじゃんか」

明確に実力を評価され、浮かれるレッド。
だが、グリーンの方は真顔のままだ。

「だからといって、気を抜くなよ。
 俺たちが今から挑むのはポケモンバトルじゃない。殺し合いだ。
 そこをはき違えれば、即座に破滅することになりかねない」
「わかってるって。命の奪い合いなんて、したくないけど……。
 おまえが死ぬのは、もっといやだからな」
「ああ、せいぜい俺を生かすためにがんばってくれ」
「なんでそこでひねくれたこと言うかな!?」


白い町で生まれた、赤の少年と緑の少年。
二人がつかむのは虹色か、灰色か。

【クラス】アーチャー
【真名】レッド
【出典】ポケットモンスターSPECIAL
【性別】男
【属性】混沌・善

【パラメーター】筋力:D 耐久:D 敏捷:B 魔力:E 幸運:B 宝具:B

【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Eランクでは、魔術の無効化は出来ない。ダメージ数値を多少削減する。

単独行動:A
マスターとの繋がりを解除しても長時間現界していられる能力。
Aランクは1週間現界可能。

【保有スキル】
戦う者:A
ポケモンバトルの天才。
どんな不利な状況からでも、逆転の一手を導き出すことができる。
同レベルの「心眼(偽)」と「直観」を内包する。

【宝具】
『ポケットに入っちゃう友達(ポケットモンスター)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1-40 最大捕捉:10人
アーチャーが、共に数々の激闘をくぐり抜けてきた仲間たち。
今回の召喚では、ポケモンリーグでグリーンと戦ったときの6体が宝具となっている。
構成は以下の通り。

ピカ(ピカチュウ・Lv51)
フッシー(フシギバナ・Lv60)
ニョロ(ニョロボン・Lv61)
ゴン(カビゴン・Lv52)
ギャラ(ギャラドス・Lv48)
プテ(プテラ・Lv41)

【weapon】
「絶縁グローブ」
その名の通り、絶縁体で作られた指ぬきグローブ。
元々はロケット団幹部・マチスの装備だったが、彼を倒した際に戦利品として奪い、その後も愛用している。

【人物背景】
マサラタウンで育った少年。
当初は井の中の蛙であったが、オーキド博士やグリーンとの出会いでおのれの未熟を自覚。
ポケモン図鑑制作という依頼を受け、カントーを旅することになる。
その過程でロケット団やジムリーダーとの戦いを通して成長し、ポケモンリーグでグリーンを倒しチャンピオンとなった。
その後も数々の事件に遭遇することになるが……ここにいる彼は、それを知らない。

【サーヴァントとしての願い】
グリーンを生還させる。


【マスター】グリーン
【出典】ポケットモンスターSPECIAL
【性別】男

【マスターとしての願い】
元の世界への生還

【weapon】
ポケモン以外の旅の荷物をそのまま持ち込んでいるため、何か有用なアイテムを持っているかもしれない。

【能力・技能】
「育てる者」
ポケモン育成の天才。
おそらく、この聖杯戦争では活かせないスキル。

「心の目」
実体のないものを捉える技能。
物理攻撃無効の相手にも、物理攻撃を当てることができる。

【人物背景】
マサラタウン出身の少年で、高名なポケモン研究者・オーキド博士の孫。
長年の留学から帰ってきたばかりという設定のため、ゲーム版などとは異なりレッドの幼なじみではない。
当初は冷徹で機械的な思考の持ち主だったが、レッドと関わり続けるうちにその機転と熱意を吸収していく。
参戦時期はレッド編(単行本1~3巻)とイエロー編(同4~7巻)の間。

【方針】
生還優先

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最終更新:2021年07月01日 20:10