『試合終了!ピッチャー弐戦、完封勝利―!』

その日、東京ドームは熱狂に包まれていた。
1軍に昇格したばかりのルーキーが、12奪三振の完封勝利を収めたのだ。
そのルーキーの名は、弐戦 一(にせん はじめ)。
勿論今日の試合のMVPは彼であり、試合が終わりヒーローインタビューが行われる。

「弐戦選手、今のお気持ちを誰に伝えたいですか?」

インタビュアーの問いに、弐戦はフッと自嘲するような笑みを浮かべると言った。

「そんなのいねえよ、こんな偽物の世界に」
「え?」
「俺を待っててくれる家族は…妹のなぎさは、ここにはいねえ!」

そういうと弐戦はインタビュアーのマイクを奪い、叫ぶ。

「俺、弐戦一は、今日限りで、引退します!」
「え、えええええ!?」

弐戦の突然の宣言に、周りがざわつく。
そんな周囲の様子を気にすることなく、弐戦は続けた。

「聞いてるか、聖杯戦争のマスター!俺はお前たちを倒して、聖杯を手に入れる!」


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「ふー、やっと帰ってこれた。全く、マスコミのしつこいのなんの…」

夜、突然の引退宣言に押し掛けるマスコミを追い払った弐戦は、自宅へと帰ってきた。

「まったく、とんでもないことするやつだね、うちのマスターは」

霊体化を解き姿を現したサーヴァントが、呆れた声で言う。
そのサーヴァントは、赤い髪に露出の激しい格好をした女性。
その名はナナリー・フレッチ。
アーチャーのサーヴァントだ。

「いいんだよ、こんな偽物の世界でヒーローになったところで嬉しくもねえ」
「それはいいとしても、自分が聖杯戦争の参加者だって、バラすこたあないだろうに」
「この方が効率いいだろ?こっちから出向かなくても、向こうから来てくれる」
「全く、後先考えないのは、カイルを思い出すねえ…」
「まあともかく、メシ頼むよ、ナナリー」
「はいはい、ちょっと待っておくれよ」

そういうとナナリーは、キッチンに立ち、夕飯の準備を始める。
そんなナナリーの背中を眺めながら、弐戦は言った。

「…すまないな、ナナリー」
「ん?どうしたんだい?」
「数日過ごしてみて、分かった。あんた、人殺すの、好きじゃないだろう?」
「…まあ、あんま気分のいいものではないね。だけど、サーヴァントになった以上、相応の覚悟はしてるさ」
「…バカげた願いかもしれない。それでも俺は、あいつの…なぎさとの約束を果たしたいんだ」

弐戦の言葉に、ナナリーは初めて彼と会った時のことを思い出していた。


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弐戦一。
彼は、東京読売ジャイアンツの二軍選手だった。
友人の矢部と共にノー天気な野球ライフを過ごしていたら、球団社長の松戸 拳(まつど こぶし)から1年で結果を出さなければクビだと言われてしまった。
そして同じころ、妹のなぎさは病気で入院しており、その病状は芳しくなかった。
しかし、妹は病気と闘いながらも健気に兄である弐戦のことを応援していた。
そして、毎回試合の直前にお願いをしてくるのだ。

『頑張ってるところ見せてね』

『試合に勝ってね』

弐戦はそれらのなぎさのお願いをこなしつつ、着実に成長していった。
それと共に、なぎさの病気も少しずつ回復していった。
そして、9月の中旬。
なぎさの、手術の日がやってきた。
この手術の結果次第では、なぎさは退院できるかもしれないという。
手術に対して不安を漏らすなぎさに対し、弐戦はいつものようにお願いを聞いてあげると約束した。
なぎさのお願いしてきたこと、それは…

『三振12個取って』

それは、とても難しいお願いだった。
だから弐戦は、いつも以上に気合を入れて試合に臨んだ。
しかし…手術の直前に行われた試合で弐戦が取った三振の数は…11。
どうしても、あと1つを取ることができず…弐戦は初めて、なぎさとの約束を破ってしまった。
そしてそれを裏付けるかのように、なぎさは手術の甲斐なく入院を続けることとなってしまった。

その後弐戦は、無事球団社長から認められ、矢部と共に一軍に上がった。
しかし、1軍に上がってからも弐戦の胸中には…あの日のことがわだかまりとなって残っていた。

「俺…聖杯を手に入れるよ。なぎさの為に」
「妹の病気を治すために、かい?」

話を聞いたナナリーは、つまらなそうな顔をしていた。
彼にも、幼くして死んだ弟がいた。
だから、目の前のマスターの気持ちは分かる。
しかし、その為に聖杯に頼るのだとしたら…失望だ。


ナナリー・フレッチ。
彼女には、重い病気を抱えた弟、ルーがいた。
アタモニ神に頼れば、奇跡の力でルーを治せる可能性があったが…彼女はそれを拒否した。
神の力に頼らず、苦しくとも人間として生きるために。
その結果ルーは死に、彼女は悲しんだが、自分の選択に後悔はない。

こうした経緯から、ナナリーは聖杯という存在にアタモニ神と同じものを感じ、頼る気になれなかった。
だから、目の前のマスターが聖杯に頼って妹の病気を治そうというなら、協力するつもりはなかった。
しかし、弐戦の願いは、ナナリーの予想とは違っていた。

「俺、過去に戻って、あの日の試合をやり直したいんだ。なぎさとの約束を…果たしたい」

弐戦の願い。
それは妹の治療ではなく、過去のやり直しだった。

「…本当にその願いでいいのかい?聖杯の力があれば、妹の病気だって治せるかもしれないよ?」
「確かに、そうかもな。だけどそれは…病気と闘ってきたなぎさを、バカにしてる願いだと思うんだ」
「!」

ナナリーの脳裏に、弟の姿が浮かぶ。
ルーは最後まで、病気と闘い、精一杯生き抜いた。

「なぎさが病気と闘ってたのに、俺はノー天気に2軍でくすぶってた。なぎさが手術をがんばろうとしてるのに、彼女の願いを叶えてやれなかった。なぎさががんばったのに、俺は…がんばりが足りなかった!」

「バカな願いかもしれない!やり直しなんて都合のいい話かもしれない!それでも俺は…なぎさとの約束を今度こそ果たしてやりたいんだ!」

弐戦の言葉に、ナナリーは腕を組んで考え込む。
しかし、やがてその口元にニッと笑みを浮かべると、言った。

「…あんた、いい根性してるよ!分かった、協力してやるよ」


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(ロニ、カイル、リアラ、ジューダス、ハロルド…これはある意味、あんたたちへの裏切りかもしれないね)

時は戻って現在。
夕飯を作っていたナナリーは、かつての仲間たちを思い出す。
ナナリーたちは、エルレインの歴史改変を食い止めるために旅をしていた。
そして弐戦の願いは、まさしくその歴史改変だ。

(だけどさ…あたし、あいつのこと、応援したいんだよ。妹の為に、がんばろうとしてる兄貴をさ)

弐戦の願いは、過去のやり直し。
本人が言ったように、それは都合のいい願いかもしれない。
しかし彼は、あくまで自分の力で過去を変えようとしている。
神や聖杯の力ではなく、人間としての自分の力で妹との願いを叶えようとしている。
そんな彼の姿に…かつての自分たち姉弟を重ねてしまった。

(弐戦…今度はしくじるんじゃないよ。あんた自身の、人間の力で…妹の約束を、叶えてやりな)

【CLASS】
アーチャー

【真名】
ナナリー・フレッチ@テイルズオブデスティニー2

【パラメーター】
筋力B 耐久C 敏捷D 魔力C 幸運D 宝具B

【属性】
秩序・善 

【クラススキル】
対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法等大掛かりな物は防げない。

単独行動:C
マスター無しで現界を保つ能力。
Cランクなら、マスターが死んでも1日は現界を保てる。

【保有スキル】
騎乗:E
「さっそうと軍馬を操り、百発百中の弓の腕を持つ」という逸話から与えられたスキル。
ただし俗説もとい没ネタの為、ランクは低い

母性:C
面倒見がよく子供の面倒を見ていたことから与えられたスキル。
子供に対して、パラメータが下がる。
相手が幼いほど下降値が高くなる。

【宝具】

ワイルドギース:B
種別:対人 レンジ:1~50 最大補足:100
炎を投げて太陽を作り上げて、無数の炎の矢を放つ秘奥義。
ただし太陽は擬似的とはいえ本物であり、一定時間その場に留まる。

【weapon】
エデンズファイア

【人物背景】
かつて歴史を改変し神の支配による世界を作り上げようとしたエルレインの野望を止めた一行の一人。
弟のルーは病気で亡くなっている。
アタモニ神の奇跡の力があれば病気が治る可能性があったが、人間らしく生きることを選んだ彼女たちはそれを良しとしなかった。
姉御肌な性格で、故郷の村で子供たちの面倒を見ている。

【サーヴァントとしての願い】
マスターの願いを叶えるために戦う。


【マスター】
弐戦一(にせん はじめ)[パワプロ2001サクセス主人公]@実況パワフルプロ野球2001

【マスターとしての願い】
聖杯の力で過去に戻り、妹との約束を果たす。

【weapon】
強いて言えばバットとボール。

【能力・技能】
プロ野球選手として鍛えた運動能力。

【人物背景】
東京読売ジャイアンツの二軍でくすぶっていたところを球団社長から1年で結果を出せと言われる。
病気の妹の為に試合の前に毎回約束をしていたが、大事な手術前の試合でその約束を果たすことができず、妹のなぎさは入院を続けることとなった。
その後無事1軍に上がった後も、約束を果たせなかったことを後悔している。

【方針】
インタビューを聞きつけてやってきた他のマスターを迎え撃つ。

【備考】
参戦時期はサクセスクリア後。
ロールはプロ野球選手だったが、引退を宣言してしまった。

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最終更新:2021年07月01日 20:17