全身から力が抜けていく。
意識が遠のいていく。
死が、もう目の前まで近づいてきている。
いやだ、死にたくない。
俺は、俺はまだ……。
◆ ◆ ◆
「は……?」
稀咲鉄太が気がつくと、そこはこぎれいなマンションの一室だった。
「俺は……死んだんじゃ……?」
稀咲はトラックに轢かれ、もう助からないほどの重傷を負ったはずだった。
しかし、今の彼は五体満足。特に痛みもない。
ひょっとしてここは、死後の世界なのか。
そう考え始めた稀咲だったが、頭の中に流れ込んできた知識がそれを否定する。
聖杯戦争。あらゆる願いを叶える聖杯を巡る戦いに、自分は参加者として選ばれた。
それを理解するにつれ、稀咲の口角がつり上がっていく。
「マジかよ……。こんなチャンスが転がり込んでくるとは……。
最後の最後で、俺にも運が回って来やがったぜ……!」
幾度も張り巡らせた策を破られ、最後の手駒だった「天竺」も壊滅。
宿敵である花垣武道との直接対決にも負け、敗北感だけを抱いて死ぬ。
そんな惨めな結末を迎えるはずだった稀咲にとって、これはまさに最後のチャンスだった。
「やってやるぜ……! 必ず聖杯を手に入れて……!
今度こそ日向を俺のものに……!」
「いいねえ、そのむき出しの欲望。
俺は好きだぜ、気が合いそうで」
突如、稀咲以外誰もいなかったはずの室内に二人目の声が響く。
一瞬面食らった稀咲だったが、すぐに状況を理解した。
「おまえが、俺のサーヴァントってやつか」
「おうよ。サーヴァント・ライダー。参上したぜ」
現れたのは、中世ヨーロッパ風の衣服をまとった、立派なひげの老人だった。
「ライダー……。乗り物で戦うクラスか。
それで、そういう服装ってことは……。船乗りか?」
「その通り。世界的に有名なんだぜ、俺は。
まあ今回の聖杯戦争はいろんな世界から人が集められてるらしいから、おまえさんの世界に俺がいたかはわからねえがな!」
「世界的に有名な船乗り……。
コロンブスかバスコ・ダ・ガマか?」
「おっ! 最初の方、正解!
どうやら俺の世界と近いところから来たみてえだな!」
「マジかよ。適当に言ってみただけなんだがな……」
豪快に笑うコロンブスに対し、稀咲は戸惑いを隠せない。
「コロンブスが、こんなに親近感の湧く面してるとは思わなかったぜ」
「カッカッカッ、褒め言葉と受け取っておくぜ」
「ああ、褒めてるぜ。こっちは正面からの力比べは苦手なんだ。
正義の味方の英雄様なんぞがパートナーじゃ、やりづらくてしょうがねえからな」
「正義の味方ねえ。たしかに俺はそんなガラじゃねえ。
強いて言うなら、金の味方だなあ!」
悪びれる様子もなく言い放つコロンブスを見て、稀咲は確信する。
戦闘力に関してはまだ未知数だが、性格的な面では自分とこの男は十分に相性がいい、と。
「俺は財のため! おまえさんは女のため!
お互いの目的のために、ベストを尽そうじゃねえか!
なあ、相棒!」
「ああ……。言われるまでもない」
稀咲は本来ならば、すでに詰んでいる。
このまま生きて元の世界に帰ったとしても、もう一度返り咲ける可能性など限りなく低い。
何が何でも、聖杯という超常の力を手に入れなければならない。
「やるしかねえんだよ……。これが、俺のリベンジだ!」
【クラス】ライダー
【真名】クリストファー・コロンブス
【出典】Fate/Grand Order
【性別】男
【属性】中立・悪
【パラメーター】筋力:C 耐久:B 敏捷:D 魔力:E 幸運:EX 宝具:A
【クラススキル】
対魔力:D
魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。
Dランクでは、一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
騎乗:B
乗り物を乗りこなす能力。騎乗の才能。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。
Bランクでは大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、幻想種あるいは魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなすことが出来ない。
【保有スキル】
嵐の航海者:B
「船」と認識されるものを駆る才能を示すスキル。
船員・船団を対象とする集団のリーダーも表すため、「軍略」「カリスマ」も兼ね備える特殊スキル。
不屈の意志:C
あらゆる苦痛、絶望、状況にも絶対に屈しないという極めて強固な意思。
肉体的、精神的なダメージに耐性を持つ。ただし、幻影のように他者を誘導させるような攻撃には耐性を保たない。
コンキスタドール:EX
スペイン語で「征服者」を意味する。大航海時代、航海の果てに未開地を征服した者のスキル。
未開の地への侵攻、支配、略奪、奴隷化などの手際を示す。
【宝具】
『新天地探索航(サンタマリア・ドロップアンカー)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1-30 最大捕捉:200人
最も有名な最初の航海が結実したもの。
彼の乗っていた旗船サンタマリア号が出現。接岸(陸地のど真ん中であっても)し、そして彼の指示に従い、為すべき事を為す。
これは「サンタマリア号よ、錨を下ろせ」という、船長としての略奪開始命令である。
【weapon】
銃、サーベル、鞭など
【人物背景】
大西洋を横断しキリスト教圏の白人として初めてアメリカ海域に到達した人物。
その知名度に反し、彼の出自も含めた前半生は謎に包まれている。
彼が西回り航路の着想・確信を得たのは1480年頃とされる。しかしそのための費用集めとパトロン探しが難航し、実際に出発するまでには長き時を必要とした。
1492年、ついにコロンブスは旗船サンタマリア号・ニーニャ号・ピンタ号の三隻で大西洋を横断。
同年10月12日、不安がる船員達に反乱を起こされる寸前でアメリカ海域へ到達しサン・サルバドル島を発見した。
【サーヴァントとしての願い】
金と名誉
【マスター】稀咲鉄太
【出典】東京卍リベンジャーズ
【性別】男
【マスターとしての願い】
人生をやり直し、今度こそ日向を手に入れる
【weapon】
なし
【能力・技能】
他人をそそのかし、いくつもの抗争を発生させてきた策略はかなりのもの。
一方、肉体的な戦闘力は不良の中では最底辺。
【人物背景】
東京卍會が巨大犯罪組織となる未来を作り、橘日向を死に追いやった元凶。
元々は優等生であったが同じ塾に通っていた日向に恋心を抱き、彼女の気を引くために不良へと転身。
様々な不良チームをそそのかして抗争を起こし、それを利用して成り上がろうとする。
改変前の歴史では東京卍會の幹部として君臨していたが、日向を振り向かせることはできず彼女の殺害に至っている。
しかし武道の存在によってその計画は狂い続け、最終的には直接対決で敗北。
逃亡中にトラックに轢かれて死亡するという、あっけない最期を迎えた。
参戦時期は死亡直前。
ロールはマンションで一人暮らしをしている、金持ちのどら息子。
令呪のデザインは、「卍」に斜めに横切る線を加えたもの。
【方針】
聖杯狙い
最終更新:2021年07月13日 20:26