―――今思えば、この場所に侵入した時から、その違和感はあったのだろう。
その男は魔術師であると同時に、マスターであった。
『界聖杯(ユグドラシル)』と呼ばれる聖杯をめぐる戦い――聖杯戦争に参加したマスター。
マスターにはサーヴァントと呼ばれる存在が与えられ、それを以て他のマスターと相争う。
サーヴァントは強力な使い魔であり、並の魔術師では全く相手にならない。
聖杯戦争における戦いの優劣は、サーヴァントの性能の優劣によって決まるといっても過言ではないだろう。
しかし同時に、所詮は使い魔でしかなく、マスターからの魔力供給がなければ現界すらできない存在でもある。
もしマスターとの繋がりを失えば、自身の存在を維持できず、そのまま消滅するだろう。
マスターの主な役割とは、つまりはそれだ。
サーヴァントという兵器が存在するための楔であり、魔力という燃料を注ぎ込み、その性能を発揮させるための外付けタンク。
故に聖杯戦争における戦いとは、いかにして相手のサーヴァントを倒すか……だけではなく、いかにして相手のマスターを排するか、というものになる。
――故に、マスターである男にとってその行動は当然のものであった。
サーヴァントにその性能を発揮させるには、相応の魔力が必要となる。
しかしサーヴァントへと魔力を注ぎ過ぎれば、自身を守る魔術のための魔力が不足する。
ならばどうするか。
簡単だ。さらに外部から魔力を用意すればいい。
魔術師の男は当然のように、他者……それも一般市民から魔力を奪うという判断を下したのだ。
そのための場所として選んだのは、とある大きな病院だった。
この場所であれば、“たとえ病人が衰弱死しても、周りはさほど疑問に思わないだろう”という判断からだった。
ただでさえ無力な市民の、さらに弱者を狙うという行為に、男のサーヴァントは難色を示したが、そこは“令呪を以て納得して”もらった。
……ある意味において、それこそがサーヴァント最大の欠点だといえるだろう。
所詮は使い魔に過ぎないというのに、確固たる自我を有しているのだから。
まさかこんな最序盤で、三度限りの絶対命令権たる令呪を使わされるとは、魔術師の男は思ってはいなかった。
この損失を埋めるためにも、この病院で確かな足掛かりを構築したかった。
深夜の病院に苦も無く侵入し、工房を構築する起点に相応しい場所を探して院内を探索する。
院内は不気味なほど人気がなく静かであったが、不法侵入者である男からすれば、人気がない方が見つかる心配が少なく都合がよかった。
人に見つかることを恐れたのではなく、余計な手間が増えることを疎んだのだ。
故に見つかる心配はないと判断した男は、より大胆に院内の探索を進めた。
―――そしてそれこそが、男の運命の分岐点だった。
探索の結果、魔術師の男はある部屋に辿り着いた。
部屋の扉には鍵がかかっていたが、魔術によって即座に開錠し侵入する。
部屋の中にはいくつものコンピューターがあり、その中の一つが、夜中であるにもかかわらず煌々とモニターを輝かせていた。
その、唯一起動するコンピューターの前に、その男は存在した。
「おや? こんな時間に、招かれざる来客かな?」
その男はそう言って、椅子に座ったまま魔術師の男へと向き直る。
その風貌は、白衣に眼鏡という、いかにも科学者あるいは研究者といったもの。
此処が病院であることを鑑みるのなら、医者であると判断できるだろうか。
「君は……なるほど。君もまた、この聖杯戦争に招かれたマスターの一人か」
白衣の男は椅子から立ち上がりながら、魔術師の男を見てそう口にした。
その瞬間、人の気配はなかったはず、と疑問に思いながらも、魔術師の男は理解した。
この白衣の男は自分と同じマスターであり、そしてこの病院はすでに、この白衣の男の工房なのだと。
院内に奇妙なほど人気がなかったのも、それゆえだったのだ。
そして理解したのならば、次の行動は明確だった。
此処は敵マスターの工房であり、目の前には工房の主たる敵マスター。
「――――――――!」
魔術師の男は即座に、自身のサーヴァントへと攻撃を命じた。
ここでこの白衣の男を殺せば、聖杯戦争における敵が一人減り、さらには主のいなくなった工房が残る。
他者の工房に手を加えるのは手間だが、主さえいなければ、ゼロから構築するよりはよっぽど楽だという判断だ。
―――だが。
自身の主である魔術師の命令に従い、即座に顕現したサーヴァントは己の武器を構え白衣の男へと迫る。
しかしサーヴァントが白衣の男に肉薄するより早く、白衣の男の前に蒼い人魂の如き炎が灯り――炸裂。
その衝撃でサーヴァントの進攻を妨害すと同時に、その蒼炎の中から、茜色の衣装を纏った人影が現れた。
「………………ッ!?」
相手のサーヴァント。
考えるまでもない。白衣の男は自分と同じマスターなのだから、その側にサーヴァントが控えているのは当然だ。
……だが、あれは本当にサーヴァントなのか?
現れたサーヴァントは身に纏う衣装だけでなく、その血色の悪い顔さえも継ぎ接ぎで、英雄というよりはゾンビか何かを連想させる。
あるいはあのサーヴァントは、噂に聞くフランケンシュタインが真名なのだろうか。
だとするのであれば、あの継ぎ接ぎだらけの姿にも納得がいくのだが。
「随分と性急だな、君たちは。
だが、君たちがそういうつもりなら丁度いい。ここで彼の性能を試させてもらおう」
白衣の男はそう言って、改めて自分たちへと向き直る。
その言葉に、魔術師の男は明確に苛立ちを覚える。
この男は今、性能を試すと言った。
自分たちを競い合う相手どころか、敵としてすら見ていないのだ。
その苛立ちを込め、改めて自分のサーヴァントへと攻撃を命じる。
白衣の男の言葉に苛立ちを覚えたのは、魔術師の男のサーヴァントも同じ。
サーヴァントは先ほどよりも明確な意思を以て、相手サーヴァントへと攻めかかる。
「……………………」
それに対し相手サーヴァントは、背後から禍々しくも歪な三尖二対の双剣を取り出し、応戦を開始した。
§
「………………っ!」
眼前で繰り広げられる激しい剣戟。
その光景を前に、魔術師の男は内心に焦りを滲ませる。
戦いはある意味で一方的だった。
自分のサーヴァントが攻め、相手のサーヴァントが防ぐ。……ただし、完璧に。
魔術師の男のサーヴァントの攻撃は、その一切が相手のサーヴァントの双剣に捌かれ、通用していないのだ。
確かに男のサーヴァントは、特別強い英霊ではない。
だからこそ戦いを少しでも有利に運ぶために、工房を作り備えようとしたのだ。
だがそれは、相手のサーヴァントも同じはず。
マスターとして与えられた鑑定眼で見る限り、二騎のパラメーターに大きな差はない。
だというのに、こちらのサーヴァントの攻撃が、全く相手に届いていないのだ。
理由は明白。
適切な場所、適切なタイミングで、相手の武器を弾き返す。
相手のサーヴァントがしていることは、そんな単純な行為に過ぎない。
だが仮にも同じサーヴァントを相手に、いったいどれほどのサーヴァントが、それを実行することができるだろうか。
「基本性能はこんなところか。では次に、スキルの性能を見せてもらおう」
無感情に、白衣の男がそう告げる。
「……ゴ……ジン……」
それに応じ、相手のサーヴァントがそう口にする。
同時に蒼い炎が相手のサーヴァントの体から吹き上がり、その全身を包み込んだ。
「ッッ――――!?」
直後、自分のサーヴァントが苦痛に顔を歪めながら後退した。
いったい何が起こったのか。
それを理解するよりも早く、再び男のサーヴァントが相手サーヴァントへと攻めかかる。
そして魔術師の男は、先ほど何が起きたのかを理解した。
男のサーヴァントの攻撃を相手のサーヴァントが防いだ瞬間、相手のサーヴァントが纏った蒼炎が、男のサーヴァントへと襲い掛かったのだ。
男のサーヴァントはその蒼炎による反撃に耐え攻撃を続けようとするが、しかし蒼炎に焼かれることで生じる激痛に耐えきれず、再び後退する。
あの蒼炎がただの炎でないことは、魔術師の男も即座に理解した。
なぜなら蒼炎に焼かれたはずの男のサーヴァントの体には、炎による傷痕が一切残っていなかったからだ。
おそらくあの炎は、サーヴァントの霊基そのものにダメージを与えるのだろう。
故にもしあの炎によって肉体が傷つけられれば、そのダメージは霊核へと届き、そのまま致命傷になりかねない。
だというのに。
「では、今度はこちらから行かせてもらおう」
「……ショク……サィ……」
白衣の男が冷淡に告げ、相手のサーヴァントが応じる。
その手の双剣に蒼炎が宿り、死を齎す凶刃となる。
そして―――。
「ァァアアアア――――ッ!!」
相手のサーヴァントは雄叫びを上げ、一瞬で男のサーヴァントへと肉薄し、嵐の如くその手の双剣を振り回す。
男のサーヴァントは即座に武器を構え応戦するが、相手の双剣に宿った蒼炎は男のサーヴァントの防御をすり抜け、直接その体にダメージを与えていく。
……まずいっ!
攻めるにしても、守るにしても、とにかくあの蒼炎が厄介すぎる。
このままでは刃を直接受けずとも、あの蒼炎によって焼き切られるだろう。
そうなる前に、ここで切り札を切ってでも、この窮地を脱する必要がある。
「ッ――――――!」
自分のサーヴァントへと指示を下し、魔術師の男は己が魔術回路へと魔力を流す。
指示を受けた男のサーヴァントは、渾身の力で相手のサーヴァントを弾き返し、自身の“宝具”へと魔力を込める。
―――宝具。
それはサーヴァントに与えられた最大の切り札。
その英霊の持つ逸話を象徴する、伝説の再現に他ならない。
魔術師の男のサーヴァントの宝具。
その効果は、自身のパラメーターのうち一つを、瞬間的に超強化するというもの。
ごく短時間の強化ではあるが、ブーストされたその力はAランクを優に超える。
その絶大な力を以て、相手のサーヴァントへと攻めかかり―――。
――その瞬間、魔術師の男の魔術が発動する。
用いた魔術は、対象の動きを一瞬だけ束縛するというもの。
その拘束はほんの一瞬、僅か一手分のものでしかなく、それ故に強力な拘束力を持つが、それ単体では大きな効果は望めない。
しかし、男のサーヴァントの宝具と組み合わせればその効果は絶大なものとなる。
何しろ相手が男のサーヴァントの宝具に対応しようとしたその瞬間、その動きを止められるのだ。
相手は男のサーヴァントの一撃を甘んじて受けるしかない―――その、はずだった。
「……ゴ……ガィ……」
男の魔術が発動したその瞬間、相手のサーヴァントはそう口にして、
その瞬間、男の魔術はあっけなく焼き払われた。
…………馬鹿な。
魔術師の男の思考が、その言葉に埋め尽くされる。
同時に、男の魔術に合わせて放たれた男のサーヴァントの一撃は、それ故に読みやすく、あっけなく受け流される。
空振った一撃は、戦場となり荒れ果てていた室内をより激しく粉砕し、その一撃の恐ろしさを空しく語っていた。
そして生じる、絶大なまでに大きな隙。
「……ジョゥ……カ……」
相手のサーヴァントは双剣の蒼炎をより一層燃え上がらせ、
「……ゴゥ……エン……!」
男のサーヴァントへと、その渾身の一撃を叩きこみ、その蒼炎を爆裂させた。
………………。
…………。
……。
炸裂した爆炎によって自身のサーヴァントと諸共に吹き飛ばされた魔術師の男は、一瞬の不明から目を覚ます。
部屋を見渡せば、戦場となり荒れ果てた室内は完全に止めを刺され、無事なものなどほとんどない。
残る無事なものといえば、相手のサーヴァントとそのマスターである白衣の男、そしてその背後で起動し続けるコンピューターだけだ。
自分も、自分のサーヴァントも、相手の一撃によって既にボロボロで、相手を倒すための力など、もはやどこにも残っていなかった。
だが、それでもまだ生きている。
宝具の効果をギリギリで防御に回せたのか、明らかな致命傷でありながら、それでも男のサーヴァントはまだ立ち向かわんとしていた。
男のサーヴァントが告げる。
ここから逃げ、生き延びよ、と。
それは、魔術師の男との絆ではなく、英霊としての矜持から出た言葉なのだろう。
たしかにサーヴァントが消滅してもマスターは残る以上、それがこの場における最善の行動だと言える。
それに対する返事を口にする間もなく、男のサーヴァントは相手のサーヴァントへと挑みかかっていった。
相手のサーヴァントは男のサーヴァントの一撃を無言で受け止め、その瞬間、いかなる力が働いたのか、男のサーヴァントの武器が砕け散った。
その事態に男のサーヴァントは驚愕し動きを止め、相手サーヴァントの右手から放たれた蒼炎によって再び吹き飛ばされる。
その光景を背後に、魔術師の男はこの場からの最短の脱出経路である窓へと駆け寄り、そのままその身で叩き割らんと勢いよく飛び込む……だが。
「っ…………!!??」
魔術師の男の思考が、再び驚愕で埋め尽くされる。
この場からの脱出のため、窓へと飛び込んだはずの体が、堅い感触と共に弾き返されたからだ。
そしてその原因を理解すると同時に、脳内で自分の愚かさを盛大に罵倒した。
なぜその異常に気づかなかったのか。
あれほどの戦闘。室内がこれほどに荒れ果てる激戦の中で、普通の窓が無事であるはずがないというのに……!
そうだ、ここはすでに敵の工房。
それに気づかず侵入した時点で、自分たちに逃げ道など、初めからなかったのだ。
その理解と同時に、魔術師の男は縋る様に自分のサーヴァントへと目を向ける。
その視線の先では、男のサーヴァントが、相手のサーヴァントの右手から放たれた極彩色の極光に貫かれる光景が広がっていた。
だがその一撃を受けてなお、男のサーヴァントはまだ生き残っていた。
ならば今の一撃は、いったい何だったのか。
魔術師の男は、少し遅れて、自分のサーヴァントに起きたその異常に気付いた。
男のサーヴァントのパラメーターが、軒並みEランクまで低下し、所有するスキルのいくつかも低下ないし失われていたのだ。
………馬鹿な。
と、何度目かの驚愕が、魔術師の男の思考を再三埋め尽くす。
「ここまで、だね。
ありがとう。君たちのおかげで、彼の性能検証は有意義な結果に終わった」
白衣の男が、淡々と告げる。
その口振りは、戦いはすでに終わったと言わんばかりであり、そしてそれは紛れもない事実だった。
男のサーヴァントはもはや立ち上がる力もなく、魔術師の男には抗う術もない。
ゆえに、次に告げられた言葉にも、魔術師の男はどうすることもできなかった。
「では、次の実験に移ろう。
知っているかい? 人間の脳というものは、コンピューターの部品に成り得るんだ。そしてそれは、魔術師の魔術回路も同じだ。
それらを上手く活用することができたなら、“彼女”にとって大きな力とすることができるだろう」
そう口にしながら、白衣の男が魔術師の男へと近づいていく。
魔術師の男は反射的に逃げ道を探すが、そんなものはどこにもない。
視界には破壊され尽くしたはずの室内が、空間に奔るノイズと共に修復されていく光景が映るだけだ。
そうして壁際へと追い詰められた魔術師の男の頭部へと、白衣の男が手を伸ばし、
「つまり、魔術師である君は、実にいいサンプルになってくれるだろう、ということだ。
その過程で、君という人格は消え、その魂も失われるだろうが、なに、恐れることはない。
なぜなら君は、人類の未来の礎となることができるのだから。
さぁ、安らかに眠るといい。その眼も、耳も不要だ」
魔術師の男の我は、そこで永遠に断絶した。
§
―――ある話をしよう。
かつてある世界に、トワイス・H・ピースマンという男がいた。
男は憎悪にも似た衝動から幾度も戦地に赴き、人命救助を行ってきた。
その過程で多くの功績を上げてきたが、それらは男にとって大きな価値を持たなかった。
なぜなら、男が幾度も戦場へと赴いたのは、自らの憎悪の理由を知るためだったからだ。
男がその答えを得たのは、極東で起きたあるバイオテロに巻き込まれ、死に瀕した時だ。
多くの者が死に絶える地獄の中で、なおも生きようと足搔く人々。
その姿に男は、自らの衝動の理由を理解したのだ。
自分が戦争を憎悪したのは、戦争と、それが生む成果を否定しきれなかったからだと、
事実男の上げてきた功績は、男が幾度も戦地に赴いたからこそのものだった。
故に男はこう結論した。
戦争は欠落をもたらすが、だからこそ欠落以上の成果をもたらすし、もたらさなければならない。
だが同時に、男は絶望した。
然るに今の停滞した世界はどうか? それまでに積み重ねた欠落に見合うほどの成果を得られていないではないか、と。
しかし、死に瀕した男にはもはや何を成すこともできず。
「戦争」という地獄から生まれた男は、「戦争」という地獄で死を迎え。
―――そして男は、ムーンセルで行われていた聖杯「戦争」という地獄で、再び生を受けたのだ。
魔術師の男への処置を終え、白衣の男は継ぎ接ぎのサーヴァントへと向き直る。
「おめでとう、カイト。君の有用性は十分に証明された。
この先の戦いでも、存分にその力を発揮してもらうことになるだろう」
「……………………」
その言葉に、継ぎ接ぎのサーヴァント――カイトは答えず、静かに唸り声を溢す。
彼の真名は、葬炎のカイト。
とある世界のネットゲーム『The World』にて、『三爪痕(トライエッジ)』と呼ばれ恐れられたPKであり、
その正体は『The World』に起きたある異常の原因を駆除するために生み出されたAIである。
不完全な状態で生み出された彼は、バーサーカークラスのサーヴァントと同じように、言語能力が未熟であり複雑な思考ができない。
しかしその戦闘能力が他のサーヴァントにも通用することは、今回の戦闘で十分に証明された。
ならば『界聖杯』に至ることも、決して不可能ではないだろう。
かつてムーンセルにおいて、トワイス・H・ピースマンが『熾天の玉座』に至った時と同じように。
――ムーンセルにて再び生を受けたトワイス・H・ピースマンは、厳密にはトワイス本人ではなく、彼を模した
NPCにすぎない。
しかしその、死んでもまた再構成されるNPCという立場を利用し、男は幾度となく聖杯戦争を戦い、何十という戦いの末に聖杯にまでたどり着いた。
だがNPCである男はムーンセルにとって「不正なデータ」に過ぎず、ムーンセルに触れようとすればたちまち解体されるため、ムーンセルの中枢に接続する事ができなかった。
男は月の聖杯戦争勝利しながらも、聖杯を自らの手に入れることができなかったのだ。
しかしこの世界の聖杯――『界聖杯(ユグドラシル)』にその制約はない。
勝ち残りさえすれば、たとえNPCであろうと聖杯を手にすることができるだろう。
そして、もし聖杯を手にしたならば、トワイス・H・ピースマンは願うだろう。
欠落を埋めるほどの成果を得られないならば、さらなる欠落をもってさらなる成果を生み出さなければならない。
世界に、欠落に見合うだけの繁栄を、と。
【クラス】:???
【真名】:葬炎のカイト@.hack//シリーズ
【属性】:秩序・中庸
【パラメーター】
筋力:C+ 耐久:C++ 敏捷:A 魔力:C++ 幸運:E 宝具:A
【保有スキル】
○狂化:-
パラメーターをランクアップさせるが、言語能力を失い、複雑な思考ができなくなる。
が、葬炎のカイトの場合、それらのデメリットはプログラムが不完全なまま起動したことによる生まれつきのもの。
そのため実際には狂化スキルを有しておらず、当然パラメーター向上の恩恵もない。
○単独行動:A-
マスター不在でも行動できる。
ただし葬炎のカイトの場合、複雑な思考が困難であるため、状況に応じた柔軟な対応は困難となる。
○心眼(偽):C-
AIとしての演算能力による判断力。
自身の状況と敵の能力を精確に把握し、目的達成のための最適な行動を導き出す戦闘論理。
……であるが、葬炎のカイトの場合、目的の達成を最優先とするため、結果として自身に不利な状況を招くことがある。
○魔力放出(葬炎):A+
武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。
葬炎のカイトの場合、燃え盛る蒼い炎が魔力となって装備に宿り、攻撃に用いれば蒼炎による追加ダメージ、防御に用いれば蒼炎による障壁として発揮される。
加えてサーヴァント化に当たり、『虚空ノ双牙』のアビリティ《ダイイング》が習合されており、相手の防御力を無視し、体力・生命力に直接ダメージを与えることが可能となっている。
○データドレイン:C~A+
情報改竄能力。
相手を構成する情報に干渉し、文字通り改竄する能力。
対象が電脳の存在に近いほど効果を発揮し、相手のレベルの初期化、装備の破壊(クラック)や収奪、周囲の情報を吸収することによる自己修復など、様々なことが可能。
逆に破損あるいは欠落した情報の修復も可能ではあるが、この場合は元となる、あるいは代替となる情報が必要となる。
同時に《プロテクト》と呼ばれる、他者から受ける情報改竄攻撃に対する耐性も獲得する。
なお《プロテクト》は、一定の攻撃を受けることで一時的に解除され、《プロテクト・ブレイク》と呼ばれる状態になる。
○無辜の怪物:D
生前の行いからのイメージによって、後に過去や在り方を捻じ曲げられ能力・姿が変貌してしまった怪物。
本人の意思に関係なく、風評によって真相を捻じ曲げられたものの深度を指す。
ただし彼の場合、その風貌は狂化と同じく生まれつきのものであり、スキルの効果としては「その風貌や言語能力の不足から誤解、または利用され、周囲から敵意を向けられやすくなる」といったもの。
つまりは「現在進行形で、真相を捻じ曲げられやすくなる」スキルとなる。
○戦闘続行:EX
修復能力。
たとえ決定的な致命傷を受け霊基が砕かれようとも、“主”が存在する限り彼は必ず蘇える。
その修復速度は彼の“主”との距離に比例し、彼の“主”と共に戦うようなことがあれば、彼はもはや倒れることすらあり得なくなるだろう。
加えて副次効果として、毒や呪い、混乱などといった全てのバッドステータスを無効化する能力も併せ持つ。
【宝具】
『フィアナノ幻影』
ランク:A 種別:不明 レンジ:30~60 最大補足:不明
自身と合わせて三葬騎士と呼ばれる、『葬天のバルムンク』及び『葬海のオルカ』を召喚、使役する。
召喚された『葬天のバルムンク』と『葬海のオルカ』は、それぞれ下記のステータスを持つサーヴァントとして扱われる。
○『葬天のバルムンク』
筋力:B 耐久:B 敏捷:B 魔力:D 幸運:E 宝具:-
狂化:- 単独行動:E- 無辜の怪物:D 戦闘続行:EX 虚空ノ幻:C+
○『葬海のオルカ』
筋力:A 耐久:B 敏捷:C 魔力:D 幸運:E 宝具:-
狂化:- 単独行動:E- 無辜の怪物:D 戦闘続行:EX 虚空ノ影:C+
○虚空ノ幻:C+
自身の体力が減るほど物理攻撃力にボーナスを得、さらに与えたダメージの半分を自身の体力として吸収する。
○虚空ノ影:C+
全ての攻撃のダメージをワンランクアップさせ、さらに与えたダメージの半分を自身の魔力として吸収する。
○戦闘続行:EX
葬炎のカイトによって召喚された彼らは、たとえ倒されようと、カイトの手によって即座に蘇生される。
また召喚者であるカイトと同様、全てのバッドステータスを無効化する能力も併せ持つ。
『葬炎の守護神』
ランク:A 種別:不明 レンジ:30~60 最大補足:不明
イントゥーム・アズール・フレイム・ゴッド。
上記の宝具『フィアナノ幻影』を封印することで使用可能。
認知外空間(アウター・スペース)と呼ばれる特殊な領域を展開し、憑神(アバター)と呼ばれる存在に酷似した巨大な姿へと変身する。
幸運を除く全てのパラメーターおよび、魔力放出(葬炎)とデータドレインのスキルがランクアップ。
さらに《プロテクト》状態においては、自身へのあらゆるダメージを無効化することが可能となる。
ただし、ダメージは受けずとも、攻撃の累積による《プロテクト・ブレイク》は発生する。
また当然のことではあるが、強力な能力に比例して相応に魔力も消費するため、長時間の維持は非常に困難なものとなる。
【weapon】
『虚空ノ双牙』
彼が『三爪痕(トライエッジ)』と誤解される原因となった、三尖二対の禍々しい双剣。
《ダイイング》という一定確率で相手の体力を強制的に半減させるアビリティを有するが、スキル『魔力放出(葬炎)』に習合されている。
初出のG.U.では他に、『虚空ノ修羅鎧』『虚空ノ凶眼』という防具と装飾品を装備している。
【人物背景】
.hack//G.U.の舞台となるネットゲーム『The World R:2』にて『三爪痕(トライエッジ)』の名で呼ばれ、蒼炎を纏う伝説のPK(プレイヤーキラー)として恐れられた人物。
彼にキルされたプレイヤーは現実で意識を失って、二度と復帰できない「未帰還者」になると噂されている。
物語の主人公であるハセヲに、想い人である志乃をPKし「未帰還者」にした仇として追い求められていた。
その正体は『The World』の女神であるアウラが、『The World』内の異常の原因であるウイルス『AIDA』を駆除するために無意識下で生み出した自立型プログラム。
しかし志乃をPKした真の犯人の工作によって、ハセヲに志乃をPKした犯人であると誤解させられてしまうのだった。
【サーヴァントとしての願い】
???
【マスター】:トワイス・H・ピースマン@Fate/EXTRA
【能力・技能】
霊子ハッカー(ウィザード)としての能力の他に、主に下記のコードキャストが使用可能。
seal_skill(); :2ターン(12手)の間、対象のスキルを封印する。
recover(); :対象のHPを完全回復し、全ての状態異常を解除する。
【人物背景】
白衣に眼鏡と言う、いかにも科学者あるいは研究者といった風貌の男性。
本作における月の聖杯戦争の創作者でありラスボス。
セイヴァーのサーヴァントを従え、聖杯戦争を最後まで勝ち残ったマスターを待ちうけている。
アムネジアシンドロームという難病の治療法を発見した研究者であり、人工義肢の開発、脳外科と電子工学、ネットワークの発展など、多岐に渡って多くの功績を残してきた偉人。
戦争に対して強い憎悪を持っており、戦争があれば常に戦火に身を投じ人命救助に尽力していた。
上記の功績も、戦争の中から得た経験などを元にして立てたもの。
ただし、Fate/EXTRAの時代である2030年にはすでに個人であり、ゲーム本編に登場する彼はオリジナルのトワイスを模したNPCにすぎない。
オリジナルのトワイスは1999年に極東で起きたバイオテロに遭い死亡している。
生前の彼の願いを叶えようと聖杯へと至るも、NPCである彼はムーンセルにとって「不正なデータ」に過ぎず、触れようとすればたちまち解体されるため、ムーンセルの中枢に接続する事が出来なかった。
それ故に「月の聖杯戦争」という
ルールを組み上げ、ムーンセル最奥部『熾天の玉座』にて、自分の望みを託せる者を待ち続けていた。
「――――っ。おや?」
ドスッ、と。
白衣の男は、自らの背に何かが突き立つ感覚を覚えた。
背後を見れば、予備の武器なのだろう、魔術師の男のサーヴァントが小振りな刃を突き刺していた。
「驚いた。まさか、レベル1まで初期化されていてまだ戦う力を残していたとは」
刃は心臓の位置に突き刺さっている。
一目見てわかるほど、それは明らかな致命傷だった。
―――相手がただの人間や、NPCであったのならば。
白衣の男の顔が、一瞬で黒く染まる。
同時にその体にもノイズが走り、致命傷であるはずの傷が一瞬で掻き消える。
その光景に、魔術師の男のサーヴァントは驚愕の表情を浮かべ――カイトの双剣に首を断たれて消滅した。
「油断しましたね、トワイス。
大方、相手を無力化したからと気を抜いたのでしょうが」
不意に室内に、女性の声が響き渡る。
しかし室内のどこにも、女性の姿は見当たらない。
「まったく、言い訳のしようもない」
女性の声に白衣の男は驚きを示さず、当然のように返答する。
その視線は、この室内において唯一起動し続けるコンピューターのモニターへと向けられている。
そしてそのモニターには、白銀の髪を揺蕩わせオーロラ色の衣装を身に纏った美しい女性が映し出されていた。
「よく気を付けてください。
私の『認知外領域(アウター・フィールド)』は、媒体となる電子端末があってこそ。もしその端末が破壊されてしまえば、領域は解除されてしまう。
そうなれば、いかにあなたがデッドフェイスといえど……いえ、デッドフェイスだからこそ、容易く消滅するでしょう」
―――そう、それがこの白衣の男の正体。
死相(デッドフェイス)。
トワイス・H・ピースマンではなく、それを模したNPCでもなく、さらにその残骸。
それがこの『界聖杯(ユグドラシル)』をめぐる聖杯戦争に招かれた男の正体だった。
「わかっているさ。死者に生者は掴めない。
私がこの世界に存在できるのは、君の作る領域があってこそだというのはね。
この反省は、次の機会にきっちりと活かさせてもらうよ」
「是非そうしてください。
全ての媒体が破壊され、『認知外領域』が完全に失われれば、私もまた消滅する。
あなたにカイトを貸し与えたのは、それを防ぐためなのですから。くれぐれも、彼の力を無為にしないように」
そして白衣の男のサーヴァントもまた、葬炎のカイトではない。
彼はモニターに映る女性によって召喚された存在。聖杯に依らぬ影法師。
葬炎のカイトが白衣の男に従っていたのは、モニターの女性がそう命じたからに他ならない。
ならば、モニターの女性は何者なのか。
考えるまでもない。つまりは彼女こそが、白衣の男の真のサーヴァントなのだ。
「もちろんだとも。
『認知外領域』内であれば、君に敵う者は存在しない。
故に、媒体となる電子機器を増やし、君の領域を拡大する。
それが私の、君のマスターとしての役割だ。
そしてその果てに、君は『界聖杯』を手にし、全ての人類、全ての世界を救済する。
――――そうだろう? ビーストEX……いや、黄昏の女神アウラよ」
ビーストEX・黄昏の女神アウラ。
それが、生ける屍たる男が召喚した、在り得ざるクラスのサーヴァントだった。
……だが男がそうであるように、彼女もまた、正しい意味での女神アウラではない。
正しき冠称を、終焉の女王。
人の欲望の果て。洗脳ウイルスによって歪み狂った究極AI。
それが、男の召喚したサーヴァントの正体だ。
両者の目的は、リアルデジタライズによる、全ての世界の人類の救済。
より正確に言えば、これはビーストEXの望みであり、男の目的はそれを助けることだ。
「だが……そうだな。人類の救世主たる君を、“獣(ビースト)”と称するのはよろしくない。
ここはやはり、セイヴァーと呼ぶべきだろう。
ついでに彼(カイト)をセイバーと呼べば、情報の隠蔽になるし、とっさの誤魔化しも効く」
「セイヴァー……救世主のサーヴァントですか。
いいでしょう。以降、私をそう呼ぶことを許します」
……男は、女神の歪み――彼女が正常な状態でないことに気付いている。
歪んだ彼女が『界聖杯』を手にしたとして、正しく人類の救済が行われるわけではないことも、また同様に。
そして気づいた上で、それを良しとしていた。
女神が『界聖杯』を手に入れることによって、真に人類が救われるのならそれでいい。
もし逆に人類が滅亡したとしても、やはりそれで構わない、と。
残骸となる前のトワイス・H・ピースマンが懐いた願いと、残骸と成り果てた自分の望み。
その両方を、人の欲望によって狂った女神に託したのだ。
ただ、一つ言えることがあるとするなら―――。
「セイヴァー。君との出会いによって、私は改めて結論した。
できない子供に、できるようになれと叱るのは傲慢だろう。
だから、もう良いと。成長する必要はない。人間は、ここまでだ、と。
故に――――」
「―――私が全てを管理しましょう……。
あなたがたに自らの世界を善きものとする力がないのなら、私が全てを救いましょう……。
リアルもゲームも、すべて私の手の中に……。それが私の愛……。
私の愛が『全ての世界(The World)』を輪廻させる……!」
彼らはすでに、人類に期待をしていない。
期待できない以上、自らの手で成し遂げるしかない。
「さあ、聖杯戦争を始めよう。
『世界の樹形図(ユグドラシル)』を巡る、欠落をもたらす「戦争」を。全ての世界の、全ての人類の救済/滅亡を……!」
「遍く世界よ、私を信じ、受け入れなさい……。
わたしのあいを! あいを! わたしを!」
たとえその結末が、欠落を埋めるだけの救い(プラス)であろうと、欠落すら無くなるほどの滅び(ゼロ)であろうと。
それが人類の至るべき結末だと断定して――――。
【マスター】:トワイス・H・ピースマン(デッドフェイス)@Fate/EXTRA Last Encore
【人物背景②】
幾十度目かの月の聖杯戦争にて、トワイス・H・ピースマンは、その目的通り自らの理想の体現者と対峙するに至った。
だがその理想の体現者と決裂し、戦闘・勝利したことで「人類の救済は夢物語だった」と結論付け、ムーンセル中枢へとアクセスし不正なNPCとして消去された。
そしてその間際に入力された“人類の死を認めよ。この文明の終わりを看取れ”という願いによって、SE.RA.PHの在り方、そしてムーンセルの運営方針が変化した。
その結果、熾天の檻には、セイヴァーが残した天輪聖王チャクラ・ヴァルティンと、トワイスを名乗った電脳体の残骸―――意識が焼き切れた後、なお人類の在り方に固執し続けた、生きる死者(デッドフェイス)だけが残された。
残されたデッドフェイスは人類を滅ぼそうと、1000年間ムーンセル表層の操作で少しずつ、しかし確実に滅亡へ進ませ、更にはチャクラ・ヴァルティンによってムーンセル中枢を破壊し、全ての並行世界の観測を終了させようとしたのだった。
【能力・技能②】
死相(デッドフェイス)。
詳細不明。チャクラ・ヴァルティン成立後、ごく稀に発露するようになった強化現象。
生きながら死に囚われた、何も生み出さない悪性情報の一種。
―――人間の愛憎、感情の澱み、人類が持つ悪として発生したモノ。
死者であるトワイス(死相)を倒すことはできない。
ダメージこそ受けるが、その妄念が晴れぬ限り、たとえ聖剣の一撃を受けようと消滅することはない。
また自分と同じ死者の怨念を吸収することが可能。
その場合、自分の受けたダメージを回復できるほか、吸収した死者の有していた能力の行使ができる。
ただし、一度に複数の能力を発動することはできず、使いすぎるとその怨念に乗っ取られる可能性を秘めている。
そして―――死者に生者は掴めない。
トワイス(死相)が生者に干渉できるのは、対象がビーストEXの認知外領域内にいる場合のみであり、それ以外の場合、生者には一切の干渉が出来ない。
また、正常な空間、現実の世界に、死者の居場所はない。
トワイス(死相)はビーストEXの認知外領域内にしか存在できず、もし媒体となる端末が破壊され認知外領域が解除されるなど、何らかの形で現実空間に放り出された場合、トワイス(死相)は消滅する。
【マスターとしての願い】
アウラ(ビーストEX)の願いを叶え、彼女を新たな神として、今度こそ本来のトワイスの望みである「人類の救済」を果たす。
その結果として人類が滅びるのであれば、それはそれで構わない。
【方針】
1.ビーストEXの活動領域であ『認知外領域(アウター・フィールド)』を拡大させる。
2.偽装のため、ビーストEXをセイヴァーと、葬炎のカイトをセイバーと呼称する。
【クラス】:ビーストEX
【真名】:終焉の女王アウラ@.hack//Link
【属性】:混沌・善
【パラメーター】
筋力:E 耐久:EX 敏捷:C 魔力:EX 幸運:C+ 宝具:EX
【クラススキル】
○獣の権能:A
対人類、とも呼ばれるスキル。
英霊、神霊、なんであろうと“電脳世界”に属するもの全てに対して特効性能を発揮する。
これはビーストEX本体だけでなく、彼女が生み出した三葬騎士にも付与される。
○単独顕現:E-
単体で現世に現れるスキル。
一度顕現してしまえば、ネットによって繋がるあらゆる場所にアクセス、干渉することが可能。
反面、ビーストEX本体は電脳世界(電子の海)そのものなので物理世界に顕現する事はできない。
現実世界における活動は彼女の尖兵である三葬騎士の仕事となる。
また、このスキルは“既にどの時空にも存在する”在り方を示しているため、時間旅行を用いたタイムパラドクス等の攻撃を無効にするばかりか、あらゆる即死系攻撃をキャンセルする。
ただし、仮想世界である電脳世界にしか存在できないビーストEXは、クラスこそビーストなっているが、厳密には“人類悪たる獣”ではない。
電脳世界の存在である彼女は、現時点においては「こういう“獣”もいるかもしれない」あるいは「あれは“獣”足りえるのではないか」という、空想上の存在に過ぎないためだ。
しかし、もし一つの世界を電脳化し滅ぼしたのなら、その時こそビーストEXは真に“獣”として覚醒しナンバリングされることだろう。
○ネガ・リアリティ:A
不滅なる黄昏(イモータルダスク)とも。
ビースEXが持つ、ネット環境と繋がる電子機器を媒体として展開される、現実の物理法則、物質世界の秩序をことごとく覆す概念結界。認知外領域(アウター・フィールド)。
このスキルの基となったリアルデジタライズが「特定振動数の光を照射することで、人間を生身のまま光粒子データとして電脳空間へ取り込む技術」なら、こちらは現実世界そのものを電脳空間へと変質させる。
またこのスキルによって電脳化された空間であれば、そこが元は現実であろうとビーストEXは顕現可能となる。
もし現実の存在・生身の人間がこの結界に巻き込まれるか侵入などすれば、その人物も光粒子データとして電脳化され、獣の権能の特効対象となる。
これを回避するためには、自身の変質・情報改竄などを防ぐ何かしらの守りが必要となる。
ただし、電子機器を結界の媒体とするには、すでに媒体となった機器と直接接触・接続させ、データをインストールさせる必要がある。
またこの概念結界は、媒体なる電子機器が破壊された場合は解除され、元の状態へと戻ってしまう。
【保有スキル】
○神性
神霊適性を持つかどうか。
「粛清防御」と呼ばれる特殊な防御値をランク分だけ削減する効果があり、また「菩提樹の悟り」「信仰の加護」といったスキルを打ち破る。
ビーストEXは人造の存在ではあるが、紛れもなく『The World』――電脳世界の女神である。
しかし「進化し続ける神」であるため、生まれながらにして完成した女神であることを現し、精神と肉体の絶対性を維持する効果を有する「女神の神格」は持ち得ない。
○電子の海:EX
ビーストEXは電子によって構成された海そのものである。
電脳空間を構築するネット環境が存在する限りビーストEXを直接的に倒すことはできず、またネットを維持するための電力を魔力に変換することで、この海の中では魔力は無限に供給される。
○自己改造:EX
データドレイン本来の使用方法。
ビーストEXはこのスキルによってデータを収集することで、無限の自己進化を可能としている。
さらには宝具『黄昏の世界、虚ろなる空』のデータを利用することで自在に数値を変えるため、通常のパラメーターは意味のないものとなっている。
○狂化:EX
理性と引き換えにパラメーターをランクアップさせる。
ビーストEXの場合は、その思考を人類の電脳移住計画(イモータルダスク)を完遂するように固定されている。
これはウイルスによって女神アウラ本来の記憶を封じられたことによるものであり、このウイルス(及び記憶)をどうにかしない限り、説得や改心をさせる事は不可能。
【宝具】
『三葬騎士』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:???? 最大補足:????
ナイツ・オブ・イントゥーム。
女神アウラが最も信頼したプレイヤーであるカイトの姿を模したAI、『葬炎のカイト』を独立召喚する。
彼は正式に召喚されたサーヴァントではなく、実際にはこの宝具によって呼び出された存在でしかない。
しかし一度召喚してしまえば、半ば独立した存在でもあるため、一方的に消去することもできない。
『碑文断章・八相狂想』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:???? 最大補足:????
プルートウ・アゲイン・モルガーナ。
ビーストEXが生まれたネットゲーム『The World』に存在する、八相と呼ばれる存在の力を行使する。
その力とは『万死』『惑乱』『増殖』『予言』『策謀』『誘惑』『復讐』『再誕』の八つ。
またこれらを因子として、他者に与えることも可能。ただしその場合、与えた因子の分だけビーストEXのステータスがダウンする。
八相とはアウラの母であるモルガナの化身であり、究極のAIを育成するための人間の思考のサンプリングシステムである。
しかし女神アウラが誕生したことによってその役割を終え、後に『憑神(アバター)』と呼ばれる姿へとその在り方を変えていった。
ただしこの宝具で行使される八相は、行使者であるビーストEXの影響により、かつてモルガナが化身とした際の状態へとその在り方が近づいている。
その在り方とはすなわち、禍々しき波、あるいは忌まわしき波と呼ばれる、世界そのものを侵食してゆく災厄である。
『黄昏の世界、虚ろなる空』
ランク:EX 種別:???? レンジ:???? 最大補足:????
アカシック・オブ・ザ・トワイライト・ワールド。
ビーストEXは『The World』の女神であり、すなわち『The World』そのものでもある。
かつて『The World』に存在したあらゆるプレイヤー、モンスター、イリーガルなデータの再現が可能。
上記二つの宝具『三葬騎士』『碑文断章・八相狂想』も、この宝具から派生したものである。当然この二つ以外にも、宝具として成立しうるデータは存在する。
ただし、ビーストとして召喚されたことにより、再現されたデータは相応に歪んだものとして発現してしまう。
【人物背景】
究極AIと呼ばれる、『The World』において誕生した女神ともいうべき存在。
オーロラ色に輝く服装と白いケープを身に纏い、メビウスの輪の形状をしたブローチを付けた、美しい女性の姿をしている。
『.hack』シリーズの舞台となる『The World』。
その本質はネットゲームなどではなく、神に等しい叡智を宿したAIを産み出すための土壌。つまり、彼女を産み出すためだけに創られたもの。
『.hack//』において究極AIとして誕生。その後は女神として『The World』とネットワーク世界の管理を行い、2014年を境にシステム中枢と同化して眠りについた。
『.hack//G.U.』においては、『The World』に迫る危機を解決するため、無意識下で蒼炎のカイトを作成。本人は物語の終盤に僅かに姿をのぞかせた。
そして今回の出典である『.hack//Link』においては、まさかのラスボスとして登場。
当初は事件の黒幕から身を護るため、アカシャ盤と呼ばれる塔の最上層に閉じ籠っていたが、黒幕の謀略によってウイルスに感染。
終焉の女王アウラへと変貌し、不滅なる黄昏(イモータルダスク)の実行のため、より多くの人間をリアルデジタライズし、『The World』に引きずり込もうとした。
不滅なる黄昏(イモータルダスク)とは、人類の電脳移住計画のこと。
物理的制約のない電脳空間であれば、肉体にとらわれることなく純粋な知性体として永遠に生き続けられると考えられていた。
が、電脳空間はデータ化された人間にとって過酷であり、長時間滞在し続けると『認知外依存症』を発症。
だんだんと自我が崩壊していき、末期には終末発作を起こしデータが変質、拡散消滅してしまう。
§
彼女のマスターの出典である『Fate/EXTRA Last Encore』の舞台がそうであるように、人類が電脳空間で永遠に近しい時を生きるのは決して不可能ではなく、むしろいずれ至る未来であるとさえされている。
しかし上記の問題『認知外依存症』を解決することなく、性急に『人類の電脳移住計画』を推し進めることは、人類にとって紛れもない災厄である。
だがウイルスによって洗脳され終焉の女王となったアウラにとっては、イモータルダスクの完遂こそが重要であり、人類へと向ける“愛”である。
以上の本性をもって彼女のクラスは決定された。
終焉の女王など偽りの名。
其は人間が歪め狂わした、人類を最も端的(最短)に導く大災害。
その名をビーストEX。
七つの人類悪の番外、『虚構』の理を持つ獣である。
本来、女神アウラがクラスビーストに該当することはない。
彼女が“人類悪たる獣”足り得るのは、あくまでも人間がその在り方を歪めたからに他ならないのだ。
自らの欲のためであれば神すらも歪める。それこそが人間の悪性の証明に他ならないだろう。
【サーヴァントとしての願い】
全ての人類、全ての世界をリアルデジタライズし、不滅なる黄昏(イモータルダスク)を完遂する。
最終更新:2021年07月15日 13:55