その主従は追われていた、他の陣営のサーヴァントにではない。

この世界の住民であり、とある犯罪組織の構成員たち。
聖杯戦争には関わらないであろう者たちが何を思ったか、襲撃してきたのだ。

サーヴァント同士の戦闘中にも関わらず、マスターを狙って乱入してきた彼らは双方の陣営に銃を乱射、
さらにはマスター目掛けて車を突っ込ませてきたのである。

「すまないライダー、完全に油断していた」

「それはこっちのセリフだぜマスター、まさかこんな手で来るとな」

魔術により身を守っていたことが彼らの明暗を分けた、一人は車に轢かれるも引きづられるのは避けた。
先程まで争っていたもう一人のマスターは避けられずにそのまま轢かれ、無残な姿となって死亡していた。

炎上する2台の車を見ながら、生き長らえた方のマスターは即座にその場から離脱しようと動き出す。
狙ってきた理由が未だ不明だが、おそらくは別のマスターかサーヴァントによる差し金なのは間違いないと考え、
騒ぎとなった場所からできるだけ遠ざかなければならない。

ライダーに身体を預けて何とか離れたマスターはようやく一息ついて落ち着くことできた。

(ひどい手傷を負ったが何とか生き残ることはできた。
 相手の正体は気がかりだが、それは後回しで構わないだろう。まずは拠点に戻り、傷を癒やさねば…)

そうしてこれからの動きについて考えようとし始めたときだった。
突如ライダーが焦った表情で立ち上がり、少し遅れてマスターも顔をしかめてライダーと同じ方向に目を向けた。
その先にいたのは女性のような細面した男のサーヴァント、だがその見た目とは裏腹に纏う殺気は尋常とは言えないほどのものだった。

「おや、どうなさいました? 随分とひどい有様ですが」

「ここで別のサーヴァントか…!」

「マスターはそのままじっとしててくれ、ここは俺が何とかする」

遭遇を避けたかった状況でサーヴァントと遭遇したことに痛手を感じるマスター、そしてライダーはそんなマスターの前に出て謎のサーヴァントと対峙する。
負傷したマスターを背負った状態で逃れることは難しい。
ならばここで倒すか、そうでなくても負傷させて撤退させるだけでも今はいい、いやそもそも相手との戦闘を避けられるのならそれが一番だ。
ライダーは目の前の脅威に対してどう対処するかを思案をしつつ、相手の出方を伺っていた。

だがそんなライダーの動きに特に思う様子もなく、相手のサーヴァントはそのまま品定めをするように彼らの様子を観察していた。

「なるほど、マスターは重傷のようですが、サーヴァントの方は問題なさそうですね」

直後に何かを察したライダーは守りを固めた。
瞬間、ライダーに斬撃が飛んで来たのを理解した。
気づけば向こうはすでに剣を抜いており、戦闘は始まったのだと気付き、すぐさま体勢を立て直す。

「貴様…!」

「初撃は防ぎましたか、まあそうでなければ張り合いがありません。
 前哨戦とはいえ、ふるいにかける一撃で終わってしまうのは興が削がれますからね」

そうして彼は値踏みを終えたとでも言うようにライダーの評価をする。
少なくとも斬り合えるくらいに出来る存在ではあるようだと。

「――では改めて、僕と一戦交えてもらいましょうか」

そしてこの日、また一騎のサーヴァントが脱落した。


――万次郎は廃れて廃墟となったボーリング場で一つの報告を待っていた。

そうして廃墟に携帯の着信音が響き、電話に出ていた部下が少し会話をし、彼にマスターを2人始末したとの報告をした。

家族を人質にこの世界の一般人を脅し、捨て身で車を突っ込ませる計画は思った以上の成果を出したようだ。
いくらサーヴァントを連れているとはいえ、マスターに隙が全くないわけではない。
他の陣営との戦闘が始まれば否が応でもそちらに気を引かれてしまう。
それから不意打ちで動きを封じ、車で轢けば跡形もないだろう。

最も全てのマスターがそれで始末できるとは思っていないし、
サーヴァントによってはさほど苦もなく迎撃だろうが、それでも目障りな存在は消していた方がいい。
手を組むとしてもその程度の相手ではどの道この先を生きてなどいけないだろう。

どんな悪事にも手を染めることに躊躇いなど全くない、むしろそれをやりたいと思っているのが今の自分だ。
遠慮はいらない、この場所に守ると誓ったかつての仲間たちはいないのだから。

そんな彼のもとに背後から一つの気配が近づいき、姿を表す。
今回の聖杯戦争で万次郎が召喚した彼のサーヴァントである。

「戻ったんだな、アーチャー」

「戦果はまずまずと言ったところです。まだ斬り甲斐のある相手とはやり合えていませんが、
 ここからさらに減っていけば自ずとそんな相手が残っていくでしょう」

先ほどライダーを切り捨てたサーヴァント――アーチャーは自身のマスターに近況報告を行なった。

「なるほど、どうやらマスターが狙った主従と僕が見つけたライダーが被ったみたいですね。
 何かに追われてた様子だとは思いましたが、道理で」

先の戦闘について一人納得するアーチャーとそれを見る万次郎。
彼はアーチャーにしばらくの間、威力偵察をするように指示を出していた。
英霊との戦いを望んでいたアーチャーはこれを承諾、
利用できそうな戦力を持つ相手を探すのと同時にアーチャーの欲求もある程度満たせるようにした。

ただ威力偵察の対象に関してはアーチャーに一任しており、万次郎の同じ狙いになるとは限らなかった。
つまり先の一連の流れは単なる偶然で狙った連携ではなかったのである。

「何かそちらで不都合なことでもありましたか? 少しくらいなら僕も融通を効かせようと思ってはいますが」

「しばらくお前に任せると言ったのは俺だ、今のところは別に気にしなくていい。
 ただこれから先、他の陣営と手を組むこともある中で気ままに斬り続けるのは難しくなる。
 ある程度の配慮はするけど、度を越すようならこっちも考えを変える必要が出てくる」

そう言って万次郎は釘を刺すようにアーチャーへと視線を向ける。
強者どもとの殺し合い、それを最優先に動くアーチャーがこちらの事情など無視するなど十分にあり得ることだ。
この剣鬼はマスターと極上の獲物なら後者を優先して動くと考えている。

そんなマスターの様子を見てアーチャーは笑いを浮かべながら答えた。

「呼んでいただいた義理もありますし、そう簡単に貴方を斬り捨てることはありませんよ。
 いくら単独行動があるからと言ってもマスターがいるといないとでは違いが大きいものです。
 わざわざ自分の力を落とそうとする真似を僕はする気がしません。
 ですが以前にも言った通り、余りにも僕の道を邪魔するようでしたら、その時はその時です。
 なので精々上手く使ってくださいよ、マスター。貴方の願いを叶えるためにも、貴方の手腕を見せ所てください」

そう言ってアーチャーはそのまま霊体化して去って行き、万次郎はそれを見届け、元いた世界のことについて考える。
最悪自分がここで死んだとしても、自分を追って武道が危険な目に遭うことがなくなるだろう。
彼にとってこの聖杯戦争は絶好のチャンスであり、そして救いの可能性であった。
彼が取りこぼしてしまった分も、界聖杯があれば自分が掬い上げ、彼の背負った荷の重さを軽くすることが出来るのだ。

「タケミっち、今度は俺が戦う番だ。待っててくれ、必ず俺がみんなで幸せになる世界を掴んでみせる。それが――」

――俺のリベンジだ。

叶うはずがないと思っていた未来を欲した、一人の男が空を見上げた。


【クラス】
アーチャー

【真名】
壬生宗次郎@神咒神威神楽

【属性】
中立・中庸

【ステータス】
筋力:C 耐久:D 敏捷:A++ 魔力:E 幸運:B 宝具:A+++

【クラス別スキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

【固有スキル】
心眼(偽):A
直感・第六感にとる危険回避。
虫の知らせとも言われる、天性の才能による危険予知。
視覚妨害による補正への耐性も併せ持つ。

縮地:B+
瞬時に相手との間合いを詰める技術。多くの武芸者、武道が追い求める歩法の極み。
単純な素早さではなく、歩法、体捌き、呼吸、死角など幾多の現象が絡み合い完成する。
最上級であるAランクともなればもはや次元跳躍であり技術を超え仙術の範疇となる。
またアーチャーは体裁き、虚実のずらし、刹那の単位で死角へ滑り込む視線誘導の技と魔的な勘、
洞察力――それら総てを動員して、相手の視線を躱すことで、自分の位置を特定させなくすることができる。

戦闘続行:A
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

剣鬼:A+
尋常ではない殺気の放出、アーチャーの剣は殺気の塊だからこそ意が読めない。
放射している殺気の密度が常軌を逸して濃すぎるため、攻撃に伴う意がその殺気に紛れて消されている。
達人になればなるほど重要になる読み合いが、アーチャーには通用しない。
またこのスキルはアーチャーの剣鬼としての常軌を逸した精神を表しており、精神干渉の類を高確率でシャットアウトする。

首飛ばしの颶風
対人魔剣。最大捕捉・6人。
石上神道流に伝わる上位の技の一つだが、本来は直接的な殺傷力を持つものではない。
この技は殺気を対象に叩きつけることで気勢を削ぐのが目的なのだが、驚異的な殺意を有するアーチャーは、
剣気と融合させて物理的な殺傷力を有する斬風、つまり遠当ての技として昇華している。
その特性から、言うまでもなくアーチャーの殺意が高まるほどに威力は増すため、彼がもっとも頼りにしている技の一つであり、彼の代名詞と言っていい。
難点としては、放つ殺意の量に応じた溜めを要することだろう。

【宝具】
『経津主神・布都御魂剣』
ランク:A+++ 種別:太極宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
アーチャーの「ただ一振りの刃でありたい」という渇望を具現化した切断の概念そのものであり、剣戟の究極形といえる太極。
『求道太極』と呼ばれるそれは己が願った法則・世界を自分の内側に永久展開すると言われている。
宝具を発動した彼は肉体のみならず視線・念波・生気・空間・精神・寿命・運気・法則・魂など有形無形を問わず万象あらゆるものを斬滅できる。

ただし今回の聖杯戦争では適性クラスであるセイバーで呼ばれてない影響により、斬る対象と狙いを定めたモノに自ら振るう刀で触れる必要がある。
またこの宝具の発動による魔力消費は激しく使えるのは一日に一回のみであり、それ以上の使用には令呪が必要となる。

【weapon】
愛用している刀

【人物背景】
女性のような細面と、丁寧で物静かな態度が印象的な剣士。
しかし、遠慮が無い性格の為、口を開いて語る言葉は基本的に毒が利いており、初対面の相手の度肝を抜くほど。
その本性は、強者を斬ることにしか興味と価値を見出せない人格破綻者であり、彼と一度剣を交えた者は例外なく命を落とすとされる剣鬼。
ただ一つの弱点として女性の色気に哀れなほど免疫がない。
初期は「自分以外の総てを切り殺し、己が最強の剣士であることを証明する」という自己愛と滅尽滅相を極めた目標していたが、
紆余曲折を経て「全てを斬る刃だと意味が無い」と気付かされて覚醒し、その願いとは決別した。
ただ強者と戦って斬り捨てるという斬り合い殺し合いを好むその物騒さは最後まで変わっていない。

体捌き、殺しの嗅覚、ずば抜けた第六感により彼我の身体の能力差に関係なく戦闘することが可能。
具体的には、海の上を走ったり、相手の視線を避けながら零距離で斬撃を放つ程。

殺気を飛ばすのでアーチャー。

【聖杯への願い】
聖杯にはない、様々な英霊と斬り合うことを目的にしている


【マスター】
佐野万次郎@東京卍リベンジャーズ

【マスターとしての願い】
黒い衝動を消して過去に戻り、死んでいった大切な人たちを取り戻し、タケミっちや東卍の皆と一緒に幸せになる

【weapon】
普通の銃を所持してる

【能力・技能】
喧嘩の強さに関しては作中一であり、「核弾頭みたい」と形容される威力を誇るその蹴りで
多くの相手を一撃で沈め、足を両手で掴まれても人間ごと吹き飛ばせる。
また圧倒的な不良としてのカリスマ性を持つ。

【人物背景】
東京卍會の総長である少年、通称「"無敵"のマイキー」
その小柄から想像出来ない程の類稀なる格闘技術を持っており、喧嘩では百戦錬磨の実力者。
良くも悪くも無邪気な性格の持ち主であり、タケミチ曰く「不良だけど悪人ではない」。
芯の通った人物ではあるが無意識に周囲の人間に依存しており、
近しい人間に危機が及ぶと精神的に不安定になる一面を持ち合わせる。
本人曰く自らの中には「黒い衝動」が潜んでおり、それが抑えられなくなると周りを巻き込むと考えた万次郎は、
東卍の仲間たちから離れ、「関東卍會」を創設し総長の座につく。
そして現代では賭博、詐欺、売春、殺人どんな犯罪でも裏にはその組織がいるといわれ、
警察でも内情を把握できないほどとになった「梵天」の総長として君臨する。
今回の万次郎はその頃からの参戦、界聖杯の存在はまさに彼にとって天啓であった。

【方針】
聖杯狙い、願いを叶えるためならどんな手でも使う。
与えられたロールは凶悪犯罪組織のトップ。
組織もサーヴァントも他陣営も全て利用していき、どれだけの犠牲が出ようが願いを叶えるつもりである。

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最終更新:2021年07月14日 22:13