「言いたいことは変わらないよ」

 道路の真ん中の交差点。
 人通りが多いはずだが、誰もそこには近づけない。
 狂暴な笑みを浮かべる男に対して、困ったように警戒する少女が居るからだ。
 本来は、仲間と言うべき間柄である。
 主従という形の関係ありながら、そこには緊張感があった。そこに絆はあるはずなのに、張り詰めていた。

「俺と協力したい、だと。小娘」
「……うん。ここは一致団結すべきだよ」
「はん。俺を守護ると豪語し、実行してのけた本部じゃあるまいし……俺に言うことを聞かせられるとでも? 藤丸とやら」
 明るい髪をした、藤丸と呼ばれた女性の顔が歪んだ。
「確かに、あなたは強い。でも……未知の事態だ。それに好き勝手暴れると言うのはさすがに俺だって、完全に放置しておくことはできないよ」
「エフッエフッエフッ……ならば、令呪でも使うか?」

 令呪など、なんの意味など無いだろう。
 この男のエゴイズムの前では。それは当然の事実だった。

 絶対者が――そこには居た。
 男は、サーヴァントだった。
 獅子のような髪。
 黒い上下。浅黒い肌。
 はちきれんばかりの肉。筋肉。弩筋肉――である。

 その男はサーヴァントだった。
 クラスは……超雄(グランドメイル)である。
 元来、グランドクラスは7つのみ。その他のグランドなど存在しないはすだ。ましてやグランドメイルなど……

 矛盾である。
 破綻である。
 意味不明である。

 だが、彼はグランドメイルとしか言いようがないのである。
 彼が彼である根幹たる側面は、今回召喚されたグランドクラスであり、雄であるとしか言いようがなかった。
 そう――「オス」であることこそが、クラスその物なのだった……


 男の名は範馬勇次郎。
 人呼んで――地上最強の生物。

 その凶悪な闘気を感知したか、やってくる敵。
 いや、敵ではなく――
「クックック」
「来やがったぜ、餌が」
 凶笑。
 周囲の大気が、空間が圧に負けて歪むような光景に、全ての意志が一瞬呑まれる。
 人も――人ならざる者も。

(いけない。これ以上勇次郎をそのままにしておいちゃ……止めなきゃ! でも、どうやって……)
 藤丸立香の精神は非常に不安定になっていた。いつもとはあり得ないレベルで焦っていた。いつもと全くそのありようは違っていた。
 それは、傍に居るのが勇次郎だからだ
 頼れる相手でありながら、最大の脅威。
 離れることができないにも関わらず、最悪の爆弾。
 それが範馬勇次郎だからだ。

 ゴクリ、と藤丸立香はサーヴァントにハンドポケットをして向かう勇次郎の背中を見つめ唾を飲んだ。

 その日。
 偽りの東京は「範馬勇次郎」を知る。


 ●


 あの時。
 範馬勇次郎と戦った英霊、セイバーのクラスで現れた男は後にこう語る。

「まあ……もう死んでるから言わざるを得ないけどよ……」
「初めて知ったよ」

 想い返される巨凶、範馬の姿。
 その拳。
 その殺気。
 失われる闘志。
 そして――
「強かったなァ……恐ろしかったなァ。だから、俺はつい逃げかけた。ビビッて、悲鳴なんてあげちまった。それが――まずかった。ダメだった。やられちまったよ」

『ふん。戦意を失うとは蚊トンボにも劣る。貴様のようなやつは殺すまでもない――そうだな』
 セイバー(仮)氏の脳裏にいまだにこびりついた光景。




『雌めがッッ』
勃起する、地上最強の陰茎。
手慣れたように脱がされる、セイバーの衣服。鎧。
 愛撫ッ!
 挿入ッッ!!
 射精ッッッ!!!
「されちまったんだ――「女」にッッッ……!!!!」

「あれから座に帰っちまったんだけどよォ――見てくれよ俺の姿!」
 その姿は完全に女性のものだった。
「霊基どころか座の情報まで……女のコになっちまったんだぜェ!? あの、範馬勇次郎にヤられてからよッッ!!!???」


 ●


 マスター、藤丸立香は自身のサーヴァントを恐怖(おそ)れていた。畏怖(おそ)れていた。誰より、何より。神よりも――畏敬(おそ)れていた。
 惨殺現場のようにサーヴァントもマスターも蹂躙したこの範馬勇次郎は、何を思ったか続いて相手の男性サーヴァント……セイバーを強姦し始めたのである。
そいて。なにか神がかった力、宝具と思わしき効果によって、犯した「男」を「女」にしてしまったのである。

 男が、女に。
(つまるところ、いわゆる女的絶頂(メスイキ)ッッ!)
 しかし、それはあくまで肛門を用いた絶頂の比喩でしかないはずだ。
 にもかかわらずその犯された相手が女となったのは、勇次郎自身の認識、生きてきた独自の世界観にある。
 グランドメイル、範馬勇次郎。その体内には常人の10倍――いや、測定不可能なため最低でも10倍以上となる男性ホルモンが検出されていた。
 人間の域を超えその体内で分泌される男性ホルモン「テストステロン」
 それが常時彼の体内を駆け巡っているのだ。
 これにより、範馬勇次郎の見る光景は。

 老!
 若!
 男!
 女!

 そして――大英霊も……全部が異性ッッ!!
 全部がメス――なのである。

 同性愛者や両性愛者なわけではない。
 地上最強にとって自分以外の全ての存在は……犯しうるメスッッ!!!

 いわば――史上初。
 この世の全てを「性差別」する単体の強者!!!
「多数派(マジョリティ)」も「少数派(マイノリティ」」も纏めて弾圧する圧倒的「個(インディヴィジュアリティ)」!!!

 それがグランドメイルとして顕現した「範馬勇次郎」の強烈な超雄性であった。
 宝具は、彼自身の認識をほんの少し具現化したに過ぎない。
 彼にとっては、当然のものである世界観を。

 むくつけきセイバーであろうと、勇次郎にとってはメスなのであった。



「俺も……勇次郎に。メスに、されちゃったし……」
 頬を染めて言うこの藤丸六香、本来男である。
 元々の姿は黒髪である。
 女としての姿がしっくり来るけど。元来――男である。
 男で「あった」と言うべきか……?

 大事なものを無くした藤丸立香の聖杯戦争が始まった。

【クラス】
グランドメイル
【真名】
 範馬勇次郎@刃牙シリーズ
【パラメータ】
筋力A+++ 耐久A+ 敏捷A+ 魔力- 幸運C 宝具EX
【クラス別スキル】
 雄:EX
 男である。

【保有スキル】
 観察眼:A
 百戦錬磨の戦いの結果、鍛える意図も無いまま自然に研がれた観察能力。目に入ったものの内部構造やその弱点、病気などが手に取るように見えてしまう。
 腕力家:EX
 権力、財力、軍事力に対し腕力で全てをものにしてきたスキル。
 本来腕力で得られない価値のもの、腕力で比せぬはずの物を無理やり腕力で得てしまう。

【宝具】
『我以外皆異性也(ストロング・ワン)』
 ランク:EX 種別:対雌宝具 レンジ:- 最大補足:全生命体
 闘争と性を結び付けてきたグランドメイルが女性に対して圧倒的優位性を有する宝具。
 またグランドメイルにとっては全ての生物が女盛りであり性欲を抱いた対象の『女』を目覚めさせ手込めにすることができる。
 また、性行為などを行った相手を女性へと魂のレベルで変換させる。
 この世の全ての存在がグランドメイルの性的な蹂躙対象であり、彼にとっては全てが異性であるという世界が具現化した宝具。

【人物背景】
 地上最強の生物として生まれた男。推定40代。生まれた時自動的に全生命体の強さのランクが1つ下がり、大国の首脳がひそかに核保有を決意したと言う。
 大国と友好条約を結び、気に入らなければ大統領や首相官邸を単体で襲撃し暴力を加える地上唯一の「腕力家」である。
 傍若無人で粗野な生き方と暴力、そして性行為に奔放な生き方をし闘争とセックスを結び付ける言動をしきりに押しつけてきた巨凶だが、日々強くなっていく息子との会話や戦い、時間経過によってやや人格面の狂暴性が削れて行き、インテリめいた言動や説教じみた言葉も増えていった。
 最終的に親子喧嘩にて地上最強の座を放棄したが、なんだかんだ結局は「地上最強の生物」として呼ばれているままである。
 なお女性との子供が範馬刃牙とジャック・ハンマーの2名確認されているが、女性だけでなく老若男女すべてが性的な射程範囲内であることが明らかになった。
【サーヴァントとしての願い】
 英霊もマスターも聖杯もすべては俺の餌。喰うぜッ

【マスター】
 藤丸立香(男)@ Fate/Grand Order
【マスターとしての願い】
 どうにか戻らないとまずい。色んな意味で戻らないと何もかもまずい。
【能力・技能】
 レイシフトの適正を持つ。
 サーヴァントとの高いコミュニケーション能力。また、様々な実戦を経験しているため人間を超えてはいないもののそれなりに鍛えられている。
 礼装などは現時点において無いためほぼ魔術的なものは考慮するに及ばない。
【人物背景】
 カルデアに所属する高校生のマスター。人類史を守るため様々な時代、様々な状況を潜り抜けてきた。

 あくまで「この」藤丸立香は男である。

【方針】
 勇次郎にメスに……されちゃった。戻れない。どうしよう。

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最終更新:2021年07月18日 15:26