夜間の海の底で動いている一つの光源。
彼女がこの世界に召喚されたスタート地点は、何処かの海底であった。

「聖杯戦争というのに呼ばれて連れてこられたみたいでゲソが……
 どうしてこんな所から始まるのでゲソ」

なぜ彼女は海底で問題なく過ごせているのだろう。
彼女の見た目はほぼ人間だが、その白い服に包まれた体は発光して周りを照らしている。
光の回らないところへはイカのような帽子の下の水色の髪……、いや触手がうねり周りの様子を探っている。
彼女の名はイカ娘。元の世界では深海から人間の住む陸上へやってきた侵略者。

「海の底で独りぼっちは寂しいし怖いじゃなイカ。
 誰かいないでゲソか……?」

なぜこのような海底を彼女は泳がなければならないのか。
彼女の物語の舞台になった地は、東京都からは残念ながら外れていた。
さらに言えば、東京の海岸はほとんどが人工的なものにされており広い海水浴場を作る余地すらない。
この世界でのロールは元の世界での立場に近いものが基本的には用意されるが、
海の家の従業員というロールは用意し難く、海底からの侵略者の方にロールが当てられるに至った。

「夜の海は見通しが効かなくて嫌でゲソ……」

いくら海が本拠地の生物とはいえど、その膨大な生態系の中では一欠片に過ぎない。
開けた海底でイルカやシャチといった天敵に発見されてしまってはひとたまりもない。

しかし彼女が抱く感情は、恐怖よりも寂しさ方が大きいのが本当のところだ。
海の家れもんにて、多くの人々と関わり人間との生活の楽しさや暖かさを知ったからこそ、
この海底での一人ぼっちの状況に孤独感を抱くようになっている。
そうでなければ、常に発光して独り言を吐くなどするわけがない。
感情が生物としての生存本能を上回ってしまっていた。

彼女が目を凝らすと遠くに自分の放つ光を反射する大きめの構造物が見えた。
とにかく自分の身を隠したくてか、人工物の中に入りたくてか、そこを目指し向かい始める。

「あれはもしかして船じゃなイカ。
 大きな船を作れるのに結局は海の底に沈んでしまうなんて、人間は海の力には勝てないのでゲソね」

一方で周りを強く照らせるほどの光は他の海の生物を寄せ付ける。
いつの間にか好光性の生物達が彼女の周りを泳ぎ始め、一群を形成していた。
集まった小魚はプランクトンを食べ、大型の魚は小魚を食べている。
それを見た彼女が食物連鎖に恐怖を感じ始めた頃には、もう遅かった。
ふと後ろを振り返ると黒い生物が目に入る。
さらにはどんどん大きく見えてくる。迫ってくる。

そして巨大生物は口を開けて人型に噛み付き、千切ってしまった。
光が近くで当たると黒と白のコントラストがはっきりした体色があらわになる。
イカ娘が最も恐れる水棲生物の一つ、シャチだ。
シャチはイカ娘を人間としてではなく、獲物のイカと認識したらしい。
しかし獲物の噛みごたえがないことに困惑し少し動きを止める。

「食べられたくないでゲソ!!」

イカのイカスミは粘度が高く、水中でもしばらくは霧散せずとどまる。
暗い海底では囮として十分な役割を発揮した。
イカ娘は沈没船まで、決死の勢いで触手を広げ水を噴射し泳いだ。

沈没船はもともと人間が使用するために作られただけあって、シャチの入れそうな大穴は存在しない。
中には白骨化した死体なども残っているが、
イカ娘にとってはただの死体など怖くなく、その身に迫る生物の恐怖だけが怖い。

「これで一安心でゲソね…………えっっ」

シャチは頭がよく、少しぶつかれば沈没船を壊せる可能性があることを知っていた。
沈没船は長く海底にいたせいか脆くなっており、衝撃の度に破片が飛び散ってくる。
水中でくぐもったドンドンという音と衝撃が襲いかかる。破壊されてしまうのも時間の問題だ。

「来ないでゲソ!」

船の隙間から触手を出して必死で叩きつけるが、噛み切られてしまった。
地上では丸太を切断できる威力の触手も、海中では水の抵抗で威力が弱まり叩きつけは有効でない。

「助けてでゲソ!!」

こんな場所に放り出されてそのまま食べられて終わるなんて嫌だ。
地上侵略の使命のためか、元の世界の人々と再び会いたいからかは分からず、
しかし彼女は助けを強く願った。

「ああ……」

遂に壁が大きく崩れ捕食者の姿が顕になる。絶体絶命。

「お願いだから誰か助けてでゲソ……」

本能的な恐怖に触手が限界を超え再生し反射的な防衛行動をしようとする。これなら助かるかもしれない。
しかし……いまだに現れなかった彼女のサーヴァントが、それより前に応えた。

◇◇◇◇◇◇◇◇

『ほら、じゃあさ……元気になったら、また沈没船を一緒に冒険しよ?な?』

『スービエ……最後に名前を呼んで……あなたがつけてくれた私の名前』

『俺の愛するリル……俺のたったひとつの宝物のリル……なあ頼む……!
 死なないでくれリル……』

『スービエ…………いっぱい……いっぱい……幸せをありがとう』

◇◇◇◇◇◇◇◇

聖杯戦争に俺を呼んでくれたマスター。
リルと同じ、大海に生まれた純真な少女。
きっとそれが、マスターとサーヴァントの間の縁だ。

聖杯を獲りに行くパートナーとして申し分ない!

◇◇◇◇◇◇◇◇

「サイクロンスクィーズ!!」

光とともに召喚される、槍を振り回す青い長髪の男。
槍は水の流れを生み、それは荒れ狂い渦を巻きながら船の外へ。
捕食者を巻き込んでも収まらず、水流はさらに強さを増していく。
遂には海面を飛び出し、竜巻へと変貌を遂げていった。

◇◇◇◇◇◇◇◇

「聖杯戦争に呼ばれたサーヴァント、ランサーだ。助けに来てやったぜ、俺のマスターさん?」

渦潮が収まってゆき、イカ娘の光が照らす白い気泡が解けていく中でランサーは向き合う。

「た、助かったでゲソ…………。
 そ、そう。私はマスターとしてここにいて、お前が私のサーヴァントでゲソね」
「ゲソってなんだよゲソって……」
「わ、私は海の使者のイカ娘だから、人間と違って話し方もイカみたいになるのは当然でゲソ」
「お、おう、そうかい」

自分の世界のモンスター達だってまともな喋り方をするよなと思いランサーは困惑した。
……まあ重要でもないので受け入れた。

「不思議とお前の後ろから触手の気配を感じるんでゲソが……。
 もしかしてお前は隠れイカ男なんじゃなイカ?!」
「君も俺に真の姿があると感じることができるようだな。
 人間じゃない海の生き物だからかねえ?」
「まあこの触手がイカとかタコとかかは俺もよくわかってねえが、イカ男というのは的を射てるな。
 イカしたイカ男のランサー様! なんつって」
「やっぱりイカ男でゲソね!同族に遭ったのは久しぶりでゲソよ!嬉しいでゲソ!」

イカ娘は頭の触手を伸ばしてランサーの手を握ろうとする。

「それが触手なのかよ……まあ頭に触手ってのも、それはそれで便利だしな」

ランサーは触手を手で握り返す。
イカ娘はランサーの後ろに感じる触手も自分の触手を握り返してくれているように感じ、目を輝かせ感激だ。

「喜んでるとこ悪いんだが、さすがに俺とお前は同族じゃあないと思うよ。
 俺は昔からこの姿だったわけじゃないからね」
「そうなんでゲソ?! ちょっとがっかりじゃなイカ……」

イカ娘の触手がへなへなとへたり込んだ。

「ごめんごめん。君のイカ娘は名前だけど、俺はイカ男って名前じゃあない。
 俺の真名は、スービエ。よろしくな」

今度はランサーが、イカ娘の人間としての手を引き握った。

「俺を知ってる奴が参加してたら名前は隠したほうがいいし……まっ、ランサーとでも呼んでくれ」
「ランサーのスービエ、よろしくでゲソ」

そのとき、先程の戦闘でギリギリ持ちこたえていた壁が急にどしゃっと崩れた。

「わっ!驚いたでゲソ!そういえばさっきのシャチはどうなったでゲソか!?」
「少し手加減したからな。だいぶ目を回すだろうが……怪我までは、してないだろ。そのうち立ち直る。
 危険な目に遭ったんだからもう近づこうとも思わないさ。群れでいたなら、そっちにも伝わるだろう」

ランサーは腕を組んでカッコつける。

「ま、あんな大きな海の生物だって、七英雄でサーヴァントの俺には敵わん」
「ランサーがすごく強いのはわかったでゲソ!でも、あいつは本来は敵のいない最強の捕食者でゲソ!
 もう少し痛い目見させたほうがいいでゲソよ!ざまあみろって言いたいでゲソ!」

ランサーはすこし驚いた表情を作る。その感想はちょっと予想してなかった。

「いーや、これ以上はいいさ。痛めつけたり命を取ることはないと思うな」
「どうしてでゲソ?!」
「俺の彼女も言ってたんだが、海っていうのは誰のものでもないと思う。
 そりゃ生き物は食べたり食べられたりもするけど、それぞれが必要な分だけだ。
 みんな少しずつ他に迷惑を掛けながらも、みんながそれを跳ね返したり受け入れたりして共存して生きてるだろ」
「う、うーん……?」
「だから、そういう感情で傷つけたりすることはないんじゃないかねえ。
 俺も昔は大海の覇者とか名乗って海を好きにできると思ってたりしたこともあったけど、変わったよ」

イカ娘は少し考え込むと、やがて答を出した。

「そうでゲソね!私はこれから地上を侵略して人間を支配するんだから、相応しい寛大な心を持つ必要があるでゲソ!」

侵略、支配という言葉にランサーが大きく反応した。

「お、君も人間を支配する侵略者なのか。
 俺もワグナス達七英雄の仲間と一緒に、俺たちを陥れた奴らへの復讐の使命のもと、
 人間たちを支配して利用しようとしたりしたなあ……」
「復讐……物騒でゲソね。もしかしてそれがランサーの聖杯にかける願いなのでゲソか?」

イカ娘は少し引くような表情だ。

「いや、確かに復讐は成し遂げられなかった。
 少しずつ思惑は違ったけど、それでも仲間たちと全力をかけて動いたのに……だめだった。
 けど、もういいさ。皆には悪いけど、俺は別の生きがいを手に入れたから」

ランサーは昔を思い起こしながら思いに耽る。

「俺の願いは、使命を果たそうとする中で出会い、そして愛した、たった一つの宝物……リルとともに、
 復讐なんて考えることもない平和な世界に生まれ変わって楽しく安らかに暮らすこと、それだけさ」
「一緒に生まれ変わる……?どういうことでゲソ?」
「人間たちに殺された、リルは。……そして、俺も」

イカ娘は驚きながら、沈痛な表情に変わっていく。

「そんな……海を汚す人間たちはそんなこともするでゲソか……?
 私の周りは優しくて面白い人ばかりだから、想像がつかないでゲソ……」
「……人間はとても冷たく怖い一面も持っている。
 自分たちと異なるものを恐れ、排除しようとする……獣のようになって」

ランサーの表情が一瞬変わる。目の奥に怒りと絶望の炎が点ったかのようだ。
イカ娘は少し驚くが、それを見たランサーはすぐにおどけて見せた。

「ま、少なくとも俺の世界の人間はそういうものだったと俺は思ってる」
「そ、そうでゲソね!世界が違えば人間の性質も違うのかもしれないでゲソ!」

ランサーはイカ娘はきっと自分の想像もつかないような平和な環境にいたんじゃないかと、少し思った。
まあイカ娘だってテレビで残酷な人間の話を見たりもするが、やはりそれでは実感がなかった。

「恋人さんのことは、その、かける言葉が思いつかないでゲソ……」
「君が気に病むことじゃない。それより、もっと君のことを話して欲しいな」

ランサーはイカ娘に微笑みかける。

「それなら、その……私の叶えたい願いは……」
「うんうん言ってみて!聞きたいなーー!!」

ランサーが拍手して囃し立てる。イカ娘は沈痛な気持ちが変わり、恥ずかしくなってきた。

「……私は地上を侵略して、人間を支配する使命を持っているでゲソ。
 海を汚す人間たちを成敗したいのでゲソが、それがなかなかできないのでゲソ」
「それはいい願いだな!海は誰のものでもないけど、汚しすぎると色んな生き物が生きられなくなるからなあ!」

ランサーは明るくイカ娘の願いを褒めた。イカ娘はつられてもっと話したくなる。

「それに私は強くなりたいでゲソ!まず今の所力で絶対に勝てない人間が一人いるんでゲソ」
「うん、強い人間ってのは本当に強いからねえ……」
「鍛えて考えて本気で挑めば勝てるのかもしれないでゲソ。でも、勝てたところで自然の生き物とか災害とか、
 人間の兵器とかもっと恐ろしい脅威が世界にはあるのでゲソ。強くなければ人間の支配は務まらないでゲソ!!」

「マスターはなかなかいい願いを持ってるねえ!他にも考えてみなよ!」
「えーと、エ、エビを一生好きなだけ食べたいでゲソ!」
「エビ!? そうだねエビとっても美味しいもんねー。好きなだけ食べられたら幸せだね!」

完全に立ち直ったイカ娘は、今度は悩みだしてしまった。

「考えると叶えたいことがいっぱいあるでゲソ~~!どうすればいいでゲソ?!」
「でも単純な話、聖杯で叶う願いは一つと決まってるわけじゃないかもしれないでしょ?」
「……そうでゲソね!できることなら、できる限りの願いを叶えるのもいいでゲソ!」

ランサーはイカ娘が立ち直って、楽しいことを考えてくれて嬉しくなる。
そんなランサーに今度はイカ娘が問うた。

「それなら、ランサーは欲が無いでゲソ!他に叶えたい願いも何かあるんじゃなイカ!?」
「え、そうだなあ……そうだ、俺や仲間たちの力を認めて頼ってくれたワグナスの下で、
 人々のために戦うのは大変だけどかけがえの無いやり甲斐のある日々だったなあ!」
「私も地上での人間たちとの生活は結構楽しいと思ってるでゲソよ!
 ランサーにも楽しく過ごせる人達がいるんでゲソね!」
「おう!長い時間の中でみんな性格は変わっちまったりしたが、
 吸収の法を使う前に戻れればまた皆楽しくやれるのかもな!」

もはや二人は、笑い合い触手を取り合って楽しく沈没船の中で泳ぎ回っている。
暗闇の水の中を光る触手がうねって周りを照らし、水の流れも壁に映し出されて幻想的ですらある。

「もっともっと叶えたいこといっぱい思いつきそうでゲソ!楽しくなってきたでゲソ!」
「そうだそうだ、願いは多く、夢は大きく持って行こうじゃないか!」
◇◇◇◇◇◇◇◇

孤独が怖かったイカ娘は、自分の味方であり明るいランサーとすぐ打ち解けた。
楽しく願いの情報を共有した後は、状況を把握する時間だ。二人は落ち着いて話している。

「ところでここはどこでゲソか?
 一度水面から周りを見てみたでゲソが、遠くに明かりがまとまって見えたでゲソ。
 きっと島が近くにあると思うでゲソよ」
「俺もわかんねーよ。聖杯から与えられた知識だと東京という地域の何処からしいが、
 俺のもといた世界にはそんな場所はなかったからな」
「東京はもちろん知ってるでゲソ!
 テレビでもよく流れてる日本で一番の都会でゲソよ!」
「知ってるのか?俺は詳しくねえから、マスターの知識が頼りだぞ」

ところがイカ娘は不安な顔であった。

「でも……東京にこんな、海原の中に島のあるところなんてあったでゲソか?」
 これはどういうことでゲソ……? よくわからないじゃなイカ」
「俺も頭を使って考えるのはそんなに得意じゃないんだよね……。
 まーあ、どこかしら島に行って、現地の奴らに聞くしかないんじゃないか?」

二人はまだ気づいていない。
ここが東京のなかでも島嶼部と呼ばれる地域であり、こんな所に配置される参加者はほぼいないであることに。
二人が今いるのは、小笠原諸島父島近海の、アメリカとの戦争で沈んだ昔の沈没船の中の一隻であった。

「そんなにネガティブに考えるなって!
 俺達の領分は水中なんだから、山奥がスタートだったりしたら目も当てられなかったはずだろ!」
「たしかにそうでゲソね!とりあえずこの沈没船は侵略完了して私の物でゲソ!
 次は近くに見える島を侵略するでゲソ!」
「いやいや俺のおかげだよ……。まあいっか。
 島を回って他の参加者共を叩いていくわけか。腕が鳴るぜ」

ここで二人は完全にやる気になった。

「私とランサーの力なら他の参加者がいようと、海に囲まれた島の一つくらい簡単に侵略できるでゲソ!」
「そうだな!海がテリトリーの俺達が、海に囲まれた小島で負ける道理がねぇよ!」

意気が空回りしているということに二人はいつ気づくのであろうか。

◇◇◇◇◇◇◇◇

イカ娘は沈没船の無事だった一角で、海藻を布団にして眠っている。
一度はやる気になったものの、沈没船にたどり着くまで行動し放しだったイカ娘に夜の間休息するようにランサーが提案したからだ。
最初に上陸する場所をどれかに決めるにしても、明るくなってよく様子を見てからのほうが都合が良い。

ランサーは外敵が寄らないように、イカ娘のそばに立って船の外を警戒している。
サーヴァントには基本的に睡眠は必要なかった。

(このマスターを吸収の法で取り込めば力も令呪も奪えて強くなれるんじゃあないか?
 いや……そんなことは絶対にしない。リルと同じような大海に生まれた女の子だ。そんなことはしたくない)

(それに、純朴なこの子だってワグナスやリルと同じように俺を俺として受け入れ認めてくれるのかもしれない。
 この子は純朴なままでいるべきだ。必要とあれば俺が手を汚す。
 もしも聖杯で願いが一つしか叶わないなら、諦めてもらうことにはなるかもしれないけどな……)

ランサーは一人思案をしながら、夜更けは過ぎていく。

◇◇◇◇◇◇◇◇

◇◇◇◇◇◇◇◇

『……ワグナス、ようやく解ったぞ。
 ……これが……憎悪と復讐の心か』

スービエの心の底に点った憎悪と復讐の炎は、今は燃え上がってはいない。
しかしその残り火は燻っている。
聖杯戦争は多種多様な参加者が願いを踏みにじり合い、そこには憎悪も多く渦巻く。
彼の心の中にその炎が再び燃え上がる刻は、何時だろうか。

『皇帝いいいいいいいい!!!!
 …………許さんぞ…………』

◇◇◇◇◇◇◇◇

◇◇◇◇◇◇◇◇

人外の生物であるイカ娘も夢を見る。
今いるのと同様に海の底に沈んだ船を、天からの目線で見ているような夢だ。

そこに人間の姿をしたランサーが、中を探り宝探しでも楽しもうとやってきた。
後ろからついてくるのは光の当たる海の流れのようなヒラヒラした服に、貝やサンゴの装飾もつけた女の人。
きっと、この人がランサーの恋人さんなんだろう。

この女性にはなんだか本能的に自分の天敵である大型海獣類と似た恐怖を抱かされるが、
ランサーと楽しそうにしている姿を見ると興味をそそられ、また気分が落ち着いてくる。

そこに感じるのは、自分が人間たちと紡ぐことができた異種族間の楽しい交流生活と似たような感覚だった。
きっとこの女の人との良い思い出があるから、ランサーも復讐という使命より優先したい願いを持ったんだ。
自分だって地上を侵略する使命よりも、地上で関わった人々との楽しい生活を続けたい…………。
…………いやそんなことない、絶対ないでゲソ!

◇◇◇◇◇◇◇◇

スービエたち七英雄のいた世界では、古代人達が環境を改変過ぎたり、
生物の摂理に反して永劫生きる術である同化の法などを使い出したためそれを自然の摂理は排除しようとした。

自然に反するうえ自然を破壊していく古代人達を滅ぼすために現れ出したモンスター達。
古代にて七英雄はそのモンスター達を滅し、人々を守るため立ち上がった。
すなわちスービエとイカ娘は大本を辿ると正反対の立場に当たっている。
そしてスービエは今の姿になるまでに多くのイカやタコなどの水棲系モンスターを取り込んできた。

不幸にか幸いにかどちらか知れず、考えることが得意でないスービエはまだその事実に気づいていない。
イカ娘も学習能力、計算能力は高いが常識があまり備わらないため考えることは得意でない。
しかし二人の間にはこのような火種も燻っているのだ。

◇◇◇◇◇◇◇◇

【クラス】ランサー
【真名】スービエ
【出典】SaGa THE STAGE‐七英雄の帰還‐
【性別】男性
【属性】混沌・中庸

【パラメーター】
筋力B 耐久B 敏捷C 魔力D 幸運C 宝具B

【クラススキル】
対魔力:D
 一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
吸収の法:A
 七英雄の秘術。
 倒した敵を吸収し力や能力を得ることを積み重ね、人外の力へ至る。
 サーヴァントとして召喚されたため、これ以上吸収しても姿については元のまま固定となっている。
 また精神面が吸収した者の影響を受けて変質してしまう恐れがあるという。

怪力:B
 一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
 使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。

大海の覇者:A
 ランサーは今まで水棲生物のモンスターを吸収してきたため、
 頭足類のような触手を持った姿を手に入れ水中での活動が得意となった。
 強い意志でモンスターの力を抑え込むことで、外見的には人間の姿で過ごすこともできる。
 ごく普通の一般人(やステージの観客)は、ランサーが本気で戦ったり表に出そうとしない限り真の姿に気づくことはない。

【宝具】
『全てを飲み込む荒れ狂う海(メイルシュトローム)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:1-80 最大捕捉:200
 肉体を引き裂くような激流や津波を作り出す。
 魔術ではなく技であり、腕力により槍か触手を振り回すことで作り出している。
 陸上だとどこからともなく水を呼び出し津波とするような形で使用するが、
 水上や水中に比べて威力が1ランク分低下、レンジ、最大捕捉も上限が半分以下になる。

『俺の愛するリル、共に永遠に(ユア・マイン・リル・ハルフール)』
ランク:A 種別:対人宝具(自身) レンジ:- 最大補足:-
 海の主の娘の骸を召喚して吸収の法を用い、
 肌は白く髪は触手になり、下半身が鯨のようになった第二形態へと真の姿を転身させる。
 筋力、耐久、敏捷、魔力がそれぞれ1ランク上昇するが、幸運はEへと低下してしまう。
 スキルも対魔力がB相当、怪力がA相当、水棲生物がEX相当になる。
 また武器がAランク相当の神秘を内包する海の主の娘の角となる。

 一方で性格も変化し、属性が混沌・悪に変化し勝つためには手段を選ばなくなってしまう。
 願いも皇帝や古代人、海の主の娘を迫害した人類など自分を苦しめた者達への復讐へと変化する。

 基本的にこの宝具は使いたがらない。一度発動させると自力での解除は不可能。
【weapon】
 原作の第一形態は素手だけど、外伝作では槍使いとして設定されている。
 もともと第二形態では槍(海の主の娘の角)を使うので特に違和感はない。
 原作で内部データ的に装備してるのが市販最強武器の黒曜石の槍なので、
 サーヴァント状態で装備してるのもたぶん黒曜石の槍あたり。

  • 体術
 原作での触手の一撃は語り草になるほどの高ダメージで盾防御が成功しても即ダウン級、
 他にもそれ以上に強力な体術技の千手観音を放てたりと徒手空拳でも十分戦える。
 触手を巻き付け締め付ける攻撃は、血流を阻害し麻痺させる効果がある。

  • 水技
 水棲系のモンスターを吸収して得た技。
 得意技は小規模な竜巻や渦潮を起こし相手を中心に巻き込む、サイクロンスクィーズなど。
 また水技と同系統のため電撃も使用可能。単に放ったり槍に電気を帯びせたりして攻撃する。

【人物背景】
太古の古代人たちの文明があった時代、古代人たちは同化の法という術を用いて永遠の命を紡いでいた。
そんな中で同化の法を使うまもなく人間を殺すモンスター達は増殖を続け、大きな脅威となっていた。
モンスター達から人々を守るために神官であったワグナスの呼びかけの元、7人の面々が集まった。
7人は同化の法を変質させた吸収の法を用いて、モンスターを吸収し人外の力を手に入れモンスターを討伐し、彼らは七英雄と称されるようになる。

しかし権力や身分を重視し欲に塗れた大神官の策謀により、七英雄は市民からモンスターと同化して怪物になったと蔑まれ恐れられ、
さらには大災害から別次元に逃れるために用意された次元転移装置を利用されて別次元へ追放されてしまう。

スービエは七英雄のリーダーであるワグナスの従兄弟。
腕っぷしが強く王国の兵士として街に派遣されていたが、
軽い性格で女癖が悪く、男達からは恨まれ街の風紀を逆に乱す有様だった。
しかしワグナスだけはその力を見出し、自分たちと一緒に戦ってほしいと招集してくれた。
スービエはワグナスの同志でありたい、それだけの感情で七英雄となった。
そして、別次元へ追放ののちワグナスの古代人への復讐の感情にも付き合うことになった。

元の世界へ戻ってきたときには古代人たちは別次元へ旅立っており、
七英雄も数多の次元を旅した結果性格が変質し各々別行動になってしまったが、現代人を利用して各々の思惑を進めていく。
スービエは空を支配するワグナスに付き合って海を支配しようとしていたが、人間に迫害されていた海の主の娘と恋仲になる。
しかしバレンヌ帝国の皇帝が伝承法という力を手にしたことにより、人々を脅かしていた七英雄は次々と討たれてしまう。
スービエは海の主の娘にリルと名前をつけ愛し合っていたが、リルは皇帝に殺されてしまいスービエは本物の憎悪と復讐の心を手に入れる。

スービエはリルを吸収し皇帝の率いる舞台と決戦を挑み、大きく苦しめるも討たれてしまう。
最後に抵抗をやめて殺されるのを選んだように見えた理由はわからない。
吸収されてわずかに残っていたリルの優しい心、親を殺されても復讐を望まなかった心がスービエに復讐を止めさせたのか、
あるいはスービエ自身がワグナスにずっと付いてきて復讐にまで付き合ってしまった虚しさを自戒したからなのか。
その後はもしものために七英雄全員が亜空間に保管していた本体も討たれ、七英雄は完全に消滅した。

七英雄の帰還で描写されてない部分は、改変部分を除いて原作(SFC、アプリ版)のロマサガ2で補って構成。
七英雄については設定について詳しくまとめて考察されたサイトも多いので、参考にできます。

【サーヴァントとしての願い】
海の主の娘を復活させて、楽しく過ごした日々を取り戻したい。
自身は七英雄の仲間たちともども吸収の法を使う前の姿で復活し、彼らともモンスターの脅威のない世界で楽しくやりたい。

【マスター】
イカ娘@侵略!イカ娘

【マスターとしての願い】
地上を侵略して人類が海を汚すのをやめさせるでゲソ!
エビを一生好きなだけ食べたいでゲソ!
千鶴やシャチにも負けないくらい、自然災害や兵器にも対抗できるくらい強くなりたいでゲソ!
……でも、とりあえずは生きて元のように海の家に戻りたいでゲソ。

【能力・技能】
イカとしての能力を使える……が、その力は少々常識を超えている。
髪の部分は触手となっていて、伸び縮みし力も器用さも高い。切られても1日足らずで復活する。
口からイカスミを吐く。植物にかけると異常に成長するなど効能は謎。
ホタルイカのように発行できるが、彼女はまんべんなく全身をかなりの強さで光らせる。
腕輪を操作することで体重が変化する。
服は特殊な素材なのか汚れは簡単に落ち、傷ついても再生する。
上陸したばかりなので人間的な常識は持ち合わせておらず変な思考や行動をすることもあるが、
潜在的な知能はかなり高く数学の難問を解いたり、英語を短時間で覚えたりした。

【人物背景】
海を汚す人類を成敗するため、人類を侵略しようとする海からの使者。
しかし最初に上陸した海の家「れもん」の壁を壊してしまったところ、弁償の借金返済のため働かされることになる。
その性質は純真で世間知らず。好奇心旺盛で色々なことを学ぶ。好物はエビ。
人類の人口を1000人程度だと思ってたり、人間の技術をよく知らなかったりとあったが、
地上侵略は大変だと思うものの諦めてはいない。

【ロール】
海を汚す人類を成敗するため、人類を侵略しようとする海からの使者。
残念ながら海の家とは特に関係はない。

【方針】
自分とランサーの願いを叶えるため、積極的に闘い聖杯を取りに行く。
人間を殺すつもりはない。負かした相手は奴隷として使ってやる。

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最終更新:2021年07月18日 15:29