「素晴らしい」
薄暗い路地裏で、パチパチと拍手の音が鳴る。
「......」
男は拍手の主を訝しげに睨みつけていた。
「きみは召喚されるなり、すぐに己の欲望に身を任せた。主人である私に意思疎通を図るよりも早くね」
男の傍には一つの肉塊が転がっていた。涙を流し、その実った果実からはピンク色の先端を曝け出したかつて「女」だった肉塊が。
その塊から溢れる赤い液体と白の粘液を見れば何があったかは語るまでもないだろう。
「どんな人間にも感情というものがある。犯罪を犯す時にはとりわけそれが顕著になりやすい。それが興奮にせよ後悔にせよ、だ。だがきみは違った。まるで息を吐くかのように拳を振るい、間食のインスタントラーメンの如く貪り、飽きればそのナイフを突き立てる。常人では決してできない行いだ。悪の権化とも言い換えられる」
賞賛してるのか小馬鹿にしてるのか、男はますます声の主への感情を募らせる。
「召還されたのがきみで良かったよ。きみのような純粋な悪こそ、私に仕える資格がある。共に、この戦いを愉しもうじゃないか、バーサーカー」
声の主は優しい声音で語りかけつつ己の掌を差し出す。
主の挙動や言葉は、彼と同じ種の者ならば嫌悪を抱かずむしろ心地の良いものだった。
「...お前、誰に指図してんの?」
だが、バーサーカーは違った。主と相対した時から、あたかも自分が主人だという上から目線な言動が癪に触っていた。
「なに調子こいてんだこのクソ親父!今の超ォォ~~~~~ムカツクわぁーーーーッ!!」
バーサーカーは恫喝と共に側のゴミ箱を蹴り飛ばし、中身をブチまける。中からはネズミや蛆、ゴキブリが湧き出すが男は意にも介さずナイフを強く握りしめる。
「おめーみたいなイキってる奴が1番ムカツクわ」
眼前でナイフをチラつかせられるも、主はニコニコと微笑むだけで一寸の恐怖すら見せない。
それが尚、バーサーカーの腹の虫を刺激し殺意をますます滾らせる。
「オラァァァ!!死ねやァァ!!!」
一喝と共にナイフは振り下ろされる。
主がこのまま抵抗しなければ間違いなくその心臓を貫くだろう。
キンッ
しかし、突き立てられたナイフから金属音が鳴り響くも、主からは一切の血が流れていない。
金属板でも仕込んでたか、と判断したバーサーカーは一歩退くも、しかし時既に遅し。
「きみは確かに素晴らしい。しかし、噛み付く相手を間違えてはいけないよ」
ボコボコと主の腕が蠢き、その形状が変化していく。
なんだこれはと驚く間もなく、主の腕が煌めきバーサーカーへと振るわれる。
その正体が金属であることに気がついたのは、バーサーカーが壁に減り込んだ後だった。
立ち昇る砂煙に、ゴミ箱に群がっていた虫が、ネズミやネコが巻き込まれてはたまらないと一斉にその場を離れていく。
「ほう、これでもピンピンしているとは流石は英霊というだけはある」
コキコキと首を鳴らしながら壁から出てきたバーサーカーに、主は称賛の言葉をかけるも、バーサーカーは主を睨みつけるだけでそれ以上動こうとすらしない。
「どうやら私をマスターとして認めてくれたようだね」
「...ッチ 」
バーサーカーは舌打ちと共にナイフを仕舞う。
主の言葉通り、彼に服従を誓ったーーー訳ではない。
先ほどのやり取りで理解した。このマスターとの戦闘は割に合わないと。
故に今だけは矛を収めるーーーが、それで彼の殺意が収まった訳ではない。
この聖杯戦争を勝ち抜いたら必ず殺す。バーサーカーは苛立ちを胸に、この気に食わないマスターと勝ち抜くことに決めた。
「......」
そんな不満気なバーサーカーを見ながら主は思う。
こんな男は初めてだと。
主はバーサーカーを殴りつけてから、密かに脅しをかけていた。彼が持つ能力の一つ、強力で凶大な『悪意』のプレッシャーとでもいうべきものだ。
これを受ければ、一般人はもちろん現場慣れした警官ですらまともに動けなくなる。
これが効かないとすればそれは、異なる種である『魔人』のような者たちくらいだろう。
だが、バーサーカーは効く効かない以前にそもそもこの脅し自体を『認識できていなかった』。
魔人ですらそれ自体は認識できていたというのにだ。
それはバーサーカーが英霊だからだろうか。否、それ以前の問題ーーーバーサーカーが自分と同レベルの『悪』だからではないだろうか。
同じレベルの『悪』であれば、悪意のプレッシャーなど感じなくて当然。それ故にバーサーカーは悪意を感じ取ることが出来なかったのだ。
「...シハ、シハ、シハ」
かつて奪った笑い声を漏らす。
実に面白い。この聖杯戦争、できれば支配する側で傍観したかったが、たまにはこの手で血と臓物を贄に器を満たすのも悪くない。
それに、ニュースを見る限り、あの子もこの街に来ているようだ。
あの六面体の箱で自分がここにいることをアピールしているのか、それとも以前のように全てを忘れてまた自分を探すという無意味な自己満足に浸っているのか。あの子がいまどういう状況かはわからないが、ひとまずは探し出すべきだろう。
そして、ついでにNPCとして復活していたリコの自殺を今度はちゃんと見届けてあげよう。気が向いたらだが。
悪意の権化達が消えた路地裏。
そこに残された女性や窒息したネコネズミの肉塊は言外に訴えていた。
次は、お前だと。
【クラス】バーサーカー
【真名】パコさん
【出典作品】パジャマな彼女
【ステータス】
通常
筋力C 魔力E 耐久D 幸運B 敏捷C 宝具:B
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
狂化:A+
全能力を向上させるが、マスターの制御さえ不可能になる。
【保有スキル】
直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
戦闘続行:C
往生際が悪い。
ブチギレ:EX
なにかの拍子で突如ブチ切れる。
特に突き飛ばされたりした日には対象に地獄を見せることだろう。
【宝具】
『漆黒の殺意(オメーみたいな英霊気取ってる奴が一番ムカツクわ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:英霊1体
英霊のみに有効。パコさん若しくはマスターの指定したサーヴァントにこの宝具を使用すれば、相手の英霊としての保有スキル・宝具を短時間(少なくとも5分以上)使用不可にできる。
また、英霊としての『補正』もなくすことができるため、これを使われた英霊は生前の頃のステータス且つ宝具を使用できない状態で、英霊であるパコさんと戦うハメになる。
『スウェーバック』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:己のみ
両腕を交差させ、不意打ち気味に迫り来る得物にすら目を一切逸らさずにかわすことが出来る。
基本的には己の魔力を消費し大概の攻撃をかわすが、令呪を一画使えばかの『刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルグ)』のように必中の武器であろうともよけることができる。
【weapon】
【人物背景】
『パジャマな彼女』に登場する名無しのモブキャラ。
登場話数2話、コマ数は50コマにも満たないという登場期間の短さに反して、今まで和気藹々としていた作中の空気をぶち壊した彼の存在は多くの読者を困惑と恐怖に陥れた。
簡易的に述べると
- 道行く一人で行動している人に通行料金5万円などとふっかけ、好みのタイプの女であれば「おっしゃパコろーぜ」と朝飯食いに行くような軽さで車に連れ込みパコろうとする。
- 相手が嫌がると突如キレだし自分(相棒)の車をガンガン蹴り始める。
- 脅した相手を慣れた手つきで車に乗せ連れ去る。
- 襲った相手がTVに出てると知るやいなや、恐れを微塵も抱かずますます興奮する。
- 「殺すぞマジで」と脅しかけるのがもはや脅しではなく宣告。
- 殺すと決めれば、一切の躊躇いがなく心臓を突き刺しにいき、刺した後も一切怯えず笑みを浮かべる。その際相方にはドン引きされている。
など、作中屈指のクレイジーさを見せ付ける。
また
- 車を蹴りで傾ける
- 不意打ちを難なく避けて逆に返り討ちにする
- スウェーバックが素人ではなくプロのそれ(腕を交差するクロスガードをすることで万が一自分に攻撃が当たってもダメージを最小限に抑え、相手の武器から一切目を逸らさずに見据えている)
- 相手が倒れた後も勝ち誇るのではく、まずは相方と共にボコボコにすることで抵抗を封じる。
- ナイフを一瞬で逆手に持ち替える。
など戦闘力も高い。
※『パジャマな彼女』はウシジマくんでもジョジョでもなく少年ジャンプのラブコメです
【方針】
好きにやり、好きに犯り、好きに殺る。
【聖杯にかける願い】
特にないが聖杯を手に入れられたら受肉し元の世界に帰還しあのクソガキ共(目覚計佑たち)をぶち殺す。
マスターは機会があれば殺す。
【マスター名】シックス
【出典作品】魔人探偵脳噛ネウロ
【性別】男
【weapon】
別に使う必要もないが、武器商人らしくいつも携帯している。
武器商人であるため携帯電話ひとつで調達可能。
機関銃からステルス亜音速のステルス機までなんでもござれ。
(ただし部下が運ぶ時間は相応にかかるのでご注文はお早めに)
【人物背景】
「定向進化」から産まれ、人類から進化した「新しい血族」の長。
悪意の「定向進化」から生まれた、悪のカリスマとでもいうべき究極の卑劣男であり、人の嫌がる、苦しむ、絶望する様を見ることを誰よりも好んでいる。究極のサディストでもある。
例
- 仕事を失敗した部下に自殺を求める際、拳銃自殺ではなくノコギリのようなもので自分の腹を徐々に裂いていくように命令する。理由は「罰なんてどうでもいいが、単に君がそれで死ぬのを見たいだけ」。尚、部下が腹を掻っ捌き始めても、シックスは葛西とのお喋りに夢中で一切目を向けず、部下が死ぬ様子になど興味はなかった。
- 「6」という血文字を書かせるためだけにどこかの家族を人質にとり、父には致死性の毒を飲まなければ家族を殺すと脅し自らの吐血で「6」を書かせ、その家族には「きみたちの父親は君たちを見捨てて逃げた」と告げて絶望と憎しみの中でその命を絶たせた。
また、世界屈指の軍需企業の会長でもある。
【能力・技能】
体内の細胞と合金を結合して、体内から強固な金属を生み出すことができる。足から刃物を生やすことも可能。
彼の部下である、「DR」、「テラ」、「ヴァイジャヤ」、「ジェニュイン」、葛西善二郎の五人、通称五本指の力を操ることができる。
「DR」=ありとあらゆる水の流れを一目で見抜くことができる。
「テラ」=土地の状態、強度、構造を見抜くことができる。
「ヴァイジャヤ」=植物の特性、毒性、調合結果など、植物に関してあらゆる情報を本能的に感じ取ることができる。
「ジェニュイン」=群集の心理を弄び、思いのままに扇動することに長けている。
葛西善二郎=炎の流れを含む全てを自在に操ることが出来る。
尚、上記の「五本指」の能力は己の体内から生み出すものではないため、土地の状態、施設の有無などで大いに影響する。
見たものを瞬間的に記憶できる力。空を舞う複数のプリントの詳細を正確に読み取るという超人染みた芸当も可。
シックスにとって一番重要な器官は脳であり、心臓を破壊されても体内の金属の制御が乱れるだけで死には当たらない。つまり、脳さえ残っていれば死ぬことはない(本人談)。
ただ、自動再生能力は有していないため、バラバラにされれば窮地に陥ることは間違いない。
【ロール】
非合法的な武器商人。裏社会では有名だが、表の世界ではまったく知られていない。
【方針】
聖杯戦争を思う存分に愉しむ。願いは特には決めていない。
最終更新:2021年05月31日 20:48