くぽっ くぽっ

 夕闇が空を支配し始める時間帯。
 ある高校の誰もいない筈の空き教室に、二人の人間がいた。

 一人はこの学校の数学教師、高尾。
 年齢は三十代か四十代ほどで、七三分けの髪形と眼鏡が特徴の冴えない中年男性だ。
 もう一人は夜之川しいな。
 この学校の生徒で、小柄で可愛らしく整った顔立ちは、まさに美少女であると言える。
 だがしいなの性別は女ではなく、男だ。
 女に間違えられることも多いが、彼はその度に訂正している。
 当人は別に性別を偽っているつもりはないが、一部の男はそれでもいいとばかりに熱を上げている。

「おお……っ!」

 教師と生徒。この二人は空き教室で何をしているのか。
 真っ先に考えられるのは、やはり勉強に関することだろう。
 だが違う。彼らはこの神聖な学び舎で――

「いいぞぉ、しいな……! うっ!」
「……ごくん。
 はい、フェラの分一万円とごっくんもしたので追加で五千円ください」

 援助交際をしていた。
 さっきまで高尾は下半身を隠すことなく曝け出し、しいなに陰茎を加えさせていたのだ。
 そして射精し、出した精液を彼に飲ませた。

 これが彼らの日常。
 しいなを買う人間はこの学校の中だけも他に何人もいる上に、外に出れば数十人単位の客がいる。
 高尾もまたその一人にすぎない。

「しいな。次は――ん?」

 次は本番を頼もうとした高尾だが、ここで彼はあることに気付く。
 しいなの右手に、怪我でもしたのか包帯が巻いてあるのだ。
 高尾は少し心配になり、しいなに尋ねた。

「しいな。その包帯はどうしたんだ?」
「ちょっと怪我しただけです。
 それより、もうしないんですか? なら帰りますけど」
「ああ、いや。今日は本番もしたいんだ。大丈夫かい?」
「まあ、いいですけど」

 高尾の問いを軽くかわし、しいなはズボンを下ろして下半身を露わにする。
 その様に高尾の陰茎は射精したばかりとは思えないほどいきり立ち、彼はしいなの尻穴にそれを挿入する。

 この日、高尾はしいなに中出しを二回行った。
 料金は本番一回につき二万円、生中出しならそれに五千円追加也。




 三十分後。高尾から合計六万五千円稼いだしいなは、足早に学校を去る。
 通学路は彼一人で、周りには誰もいない。
 そこに――

「調子はどうですか? Dear Master」

 一人の男が虚空から現れ、優し気な声でマスターに話しかけた。
 その男は、まさに老紳士と言った見た目をしていた。
 右目にモノクル、飾りのついたシルクハットに、19世紀のイギリス貴族のような燕尾服とフロックコート。
 更にその上に、血のように赤い深紅のトレンチコートを纏い、片手にはステッキを持っている。
 現代日本ではとても目立ちそうな彼は、サーヴァントだ。
 そしてマスターは夜之川しいな。彼はマスターであることを隠す為、右手に包帯を巻いている。
 先ほど、包帯を言及された時に触れてほしくなさそうにしたのは、周りからマスターであると気づかれたくなかったからだ。

 そして彼のサーヴァントは優し気な態度から想像もできないが、バーサーカーである。

「……どこで何をしていたんですか」

 そんなバーサーカーに対し、しいなは嫌悪感を隠さずに問い詰める。
 とても狂戦士のクラスを冠しているとは思えないように見えるが、彼は知っている。
 バーサーカーがどんなサーヴァントなのかを、彼はよく理解していた。 

「あなたを狙うマスターとサーヴァントがいましたので、殺してきました」

 満面の笑みを浮かべ、しいなの問いに答えるバーサーカー。
 殺人の報告に抵抗がないのは、現代日本人として恐ろしく感じるかもしれない。
 事実、しいなは少しだけ怯えた。
 だがバーサーカーの本質はそこではない。

「それにしても、やはりamazing(素晴らしい)……
 私、英雄を殺せる場所に来たのは、この戦争が初めてなんですよ。
 あのサーヴァントもまた最初、強い勇気と誇りを携えて私に向かってきました」

 誰も聞いてもいないのに、殺したサーヴァントについて話し始めるバーサーカー。
 これだけなら戦った敵を称えているように見えるかもしれない。だが――

「しかし、そんな相手も最後には私好みの恐怖(かんじょう)に染め上げてしまいました……」

 彼の顔に温和さはもう存在しない。
 代わりに浮かんでいるのは、同じ笑みだが醜悪さと狂気を示すような、まともな人間なら顔を背けるであろうおぞましい笑顔を浮かべていた。

「ああ、愛しい人よ……」

 ついにはマスターであるしいなすら無視して、一人陶酔するバーサーカー。
 しかしそれも仕方がない。
 なぜなら彼は、人類の中で一番悪意に満ちていると称された男。
 19世紀の英国を震撼させた「霧の殺人鬼」である、ジャック・ザ・リッパーその人なのだから。
 そんなバーサーカーを、しいなは全く信用していない。


 これはしいなの元にバーサーカーがやってきた直後の話。
 しいながバーサーカーの真名を聞いた時、彼は思わず令呪で自分を傷つけるなと命じてしまった。
 もし、普通のサーヴァントならこの命令に対し、酷く怒るか精神的に傷つくかのどちらかだろう。
 だがバーサーカーは違った。彼はただ、残念そうにしているだけだった。
 まるで、いずれやろうとしたことを先に潰されたかのように。

 なのでしいなは、バーサーカーに頼ると言う選択肢を捨てた。
 サーヴァント同士の戦闘は任せるほかないが、それ以外のことに関して、彼は彼なりに自分の身を守ろうと考えている。
 今日していた援助交際も、その為の軍資金稼ぎにすぎない。
 もっとも、彼の場合性行為に快楽を覚えたことなど一度もないが。


 殺人鬼を置いて娼年は一人歩く。
 その距離はまるで、二人の心の距離を表しているようだった。

【クラス】
バーサーカー

【真名】
ジャック・ザ・リッパー@終末のワルキューレ

【パラメーター】
筋力C 耐久B 敏捷B 魔力D 幸運C 宝具C

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
狂化:E-
理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
だがE-ではランクが低すぎる為、理性はそのままでより「痛みを知らない」状態になっただけである。
実の所、生前から肩が外れても問題なく自身で嵌め治せる程度には頑強なので、ほぼフレーバーテキストと化している。

【保有スキル】
精神汚染:C
精神が錯乱しているため、他の精神干渉系魔術をシャットアウトできる。
ただし、同ランクの精神汚染がされていない人物とは意思疎通ができない。

情報抹消:C
対戦が終了した瞬間に目撃者と対戦相手の記憶から、能力、真名、外見特徴などの情報が消失する。例え戦闘が白昼堂々でも効果は変わらない。
これに対抗するには、現場に残った証拠から論理と分析により正体を導きださねばならない。

投擲(ナイフ):C
ナイフを弾丸として放つ能力。

悪意:A+
とある戦乙女(ワルキューレ)曰く『人類の中で一番キライなクソ中のクソのゲボカス野郎』と言われるほどの悪意。
自身で考えた作戦を実行する際、成功する確率がランク分だけ上昇する。

【宝具】
『見せてください。あなたの心の色を』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:100 最大補足:???
当人曰く『神がくれたたった一つのgift』
バーサーカーの右目には、人の心を色として見ることができる。
基本的に彼は希望や勇気を美しく、侮蔑や優越感を醜く思う。
そして人の心が一番美しいのは恐怖一色に染まった時。
それを見る為に、彼は人を殺し続けていたのだ。

バーサーカーは愛を知らない。
誰かを愛したことも無く、誰かに愛されたことも無い。
それ故哀しみすら知らない。

もしも、誰かがバーサーカーに嘘偽りない愛を向けたとき、彼に何が起こるのか――

【weapon】
大バサミ
大量の投げナイフ
ワイヤー

【人物背景】
19世紀の英国を震撼させた「霧の殺人鬼」

元々は売春婦の子供であり、幼少期は劣悪な環境で人に差別されながらも、右目に宿った人の感情を色で見る能力を利用してやり過ごしながら暮らしていた。
それでも、自身に美しい心の色を見せる母に愛されている思っていた彼は自身を「世界一幸せ」と称し、シェイクスピアのソネット集を読むことを趣味にしながら生きていた。
だがある日、母が入れ込んでいた劇作家は成功を収め、美しい貴族の娘と結婚。
母は激昂し、バーサーカーに向かって「あんたなんか生まなきゃよかった!」と叫ぶ。
その時、あの美しい心の色はバーサーカーに向けられた愛情ではなく母だけの希望であり、彼は劇作家と母を繋ぐ道具でしかなかったことを理解した。
そしてあの美しかった母の心の色が徐々に醜くなっていくのを見たバーサーカーは、母を殺害。その時、バーサーカーは心が恐怖一色に染まっていく様を美しいと思った。
その後、バーサーカーは自身の父かもしれない劇作家も殺害し、それからずっと感情が恐怖一色に染まる美しい瞬間を見る為に生涯を過ごしていった。

【サーヴァントとしての願い】
感情が恐怖一色に染まる美しい瞬間を見る

【備考】
神VS人類最終闘争(ラグナロク)に関する記憶はありません。
しいなに令呪で『僕を傷つけるな』と命じられています。
【マスター】
夜之川しいな@キメセクに敗けた娼年

【マスターとしての願い】
死にたくない

【weapon】
なし

【能力・技能】
  • 同性との性行為
しいなは援助交際で同性とよくセックスをする。
その腕前はリピーターが続出するほどだが、当人はマグロ。
例えアナルセックスの最中であっても平然とTVを見ながら笑ったり、ソシャゲをプレイできるレベルの不感症。

もっとも、薬か何かで一度快感を覚えてしまえばド嵌りする可能性もある。

【人物背景】
外見は少女と間違えられるほど可愛らしい美少年だが、内面は無気力、無関心をいく男子高校生。
〇学生の頃から同性相手に援助交際をしており、容姿やテクニックから人気は高いが、相手がキモかったら勝手に料金を一割増しにするなど態度は悪い。
ただし金払いさえちゃんとしてくれれれば客は選ばない。本編では中年の教師から学校の後輩と、多岐にわたる相手を体を重ねていた。

なお、援助交際の理由は本編で描写されないが、おそらく遊ぶ金欲しさ。

【方針】
基本、戦闘はサーヴァントに一任するが信用していないので、自分の命は自分で守る。

【備考】
参戦時期は本編開始前です。
本編ではしいなの学年が描写されていませんが、本企画では高校二年生に設定しました。
令呪を一画消費しました。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2021年06月02日 20:18