これは二柱の悪魔の話。
恐れ知らずで臆病な悪魔と、ぐずでまぬけな悪魔の話。
曇天の街を二柱の悪魔が征く。
二柱の片割れは主人(マスター)で、もう片割れは従者(サーヴァント)だった。
◆ ◆ ◆
「ねー、ねー、ぼっさん! ワシ、お腹めっさ減ったわ。そこの豚足買ってーや!」
背中の羽を器用に動かし、ふよふよと空中を漂っていた犬面にメタボ体型の珍妙な生物が声高に叫ぶ。
「誰が『ぼっさん』だ。わたしのことはマスターと呼べ」
それを横目で睨みつけるのはピンク色の長髪に網タイツのような服を着た美丈夫である。
男の名はディアボロ。イタリアを牛耳るマフィア『パッショーネ』のボス――だった男だ。
隣の謎生物はアザゼル篤史。どこかのマスコットキャラに見えて実は悪魔。
――そして聖杯戦争におけるランサークラスのサーヴァントだ。
アザゼル篤史はディアボロのことを「ぼっさん」と呼ぶ。
どうやらディアボロの「ボ」から呼び名を取ったらしい。
単刀直入にディアボロはアザゼル篤史のことを嫌っている。
まず理由の一つとして挙げられるのが、サーヴァントにあるまじき弱さだからだ。
ランサーといえばクー・フーリンやロムルスなどの英霊が名を連ねるクラスではなかったのか。
ここでディアボロは嫌なことを思い出し、顔をしかめた。
また二つ目の理由としては、下品だ。
ディアボロもマフィアのボスだ。多少の下品ならまあ目をつむらないこともない。
だが、アザゼル篤史の下ネタはくどく、そして度が過ぎていた。
最初に聖杯にかける望みを聞かれた時に「永遠の絶頂が欲しい」と答えたら、「テクノブレイクやんwww」と小一時間いじられた。
ここでディアボロは嫌なことを思い出し、顔をしかめた。
次に三つ目の理由としては、うるさい。
サーヴァントのくせにあれやこれやを欲しがり、コンビニでエロ本を立ち読みしては「これが本当の勃ち読みや!」などと全く面白くもないギャグをかましてくる。
ここでディアボロは嫌なことを思い出し、顔をしかめた。
四つ目の理由からディアボロは数えるのをやめた。
とにかく虫が合わないのだ。
見るとアザゼル篤史は霊体化して見えないのをいいことに豚足を勝手に屋台から引き抜いて食べていた。
ディアボロは舌打ちを打つと、くるりと踵を返す。
――刹那、ディアボロの姿が二重にぶれ、『そばに立つもの(スタンド)』が姿を現す。
彼のスタンドは『キング・クリムゾン』。時を飛ばし、未来を予知する能力を持つ。
空の雲はちぎれ飛んだ事に気づかず、消えた炎は消えた瞬間を炎自身さえも認識しない。
結果だけを残すという無敵に近い能力を持っているのだ。
だが、ディアボロはその力を、自身のサーヴァントを置いてきぼりにするためだけに使用しようとしていた。
「あれ、ぼっさん、どこに行ったんや? センズリでもこいとるんか~?」
アザゼル篤史は失礼極まりない言葉を放つ。
「これは『試練』だ……。過去に打ち勝てという『試練』と俺は受け取った」
ディアボロは恥辱に身を震わせながらそのまま路地裏の人混みに紛れ込もうとした。
しかし。
「あ! おった! んも~、ワシのことが恋しかったんちゃうか~?」
アザゼル篤史は意外と目ざとかった。
「過去はバラバラにしても股の間から千本ミミズのように這い出てくるんやで?」
アザゼル篤史は豚足臭い息を吐きながらディアボロに絡んでいく。
「クソ、離れろ……」
ここでアザゼル篤史をスタンドで攻撃し、消滅させることは容易い。
だが、腐ってもランサーのサーヴァントだ。
この先の戦いをキング・クリムゾン一本で乗り切っていけると思うほどディアボロはおめでたい思考回路をしていなかった。
また、令呪を使うというのもあまり乗り気にはなれなかった。
令呪といえば魔力をブーストするのに使うのが一番である。重要な戦局で貧弱なアザゼル篤史を強化するのに使いたい。
別にめちゃくちゃウザいだけで裏切りを画策しているわけでもないアザゼル篤史に対して令呪を一画切るのはどうしてももったいなく感じてしまっていた。
「そういえば、ぼっさん。これ、何に見える?」
するとアザゼル篤史は突然麻雀の牌を取り出した。
何も書いていない、白い牌である。アザゼル篤史は目を細めてニヤニヤと笑っていた。
もう明らかに「パイパン」と言わせようとしているのが丸わかりだった。
ディアボロはそれはそうとして、一、二発くらい殴るのはいいかなと思い直した。
【クラス】
ランサー
【真名】
アザゼル篤史@よんでますよ、アザゼルさん。
【ステータス】
筋力:D 耐久:A 敏捷:D 魔力:C 幸運:E 宝具:D
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
対魔力:D
魔術に対する抵抗力。
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
【保有スキル】
無辜の怪物:A---
生前の行いからのイメージによって、後に過去や在り方を捻じ曲げられ能力・姿が変貌してしまった怪物。
本人の意思に関係なく、風評によって真相を捻じ曲げられたものの深度を指す。このスキルを外すことは出来ない。
アザゼル篤史の場合は悪魔であるため、メリットしか存在しない。
ただし悪魔を弱体化させる術である『ソロモンリング』の効果を受けているため、享受できるメリットは僅かである。
淫奔:C
アザゼル篤史の職能。性的な本能やフェロモンを操る能力。
性器の大小・ホルモンバランスの操作、女性の月経や性的関係の看破などに加え、人間のフェロモンを過剰分泌させて多くの異性を虜にすることができる。
応用で一組の男女を恋に落とさせる使い方も可能だが、アザゼル篤史自身が下級悪魔であるためランクはそこまで高くはない。
【宝具】
『THE END OF SON(ジ・エンド・オブ・サン)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1~9 最大捕捉:1
平常時に体内に満たされているエロパワーをすべて放出し、世界中から集めた性欲を萎えさせる負のパワーを相手にぶつけて性的不能にさせるという最悪の宝具。
威力は大きいが、ダメージのフィードバックがある、隙が大きい、そもそも戦闘時に性的不能にしたところであまり意味がないなどの理由であまり有効なものではない。
【weapon】
『性槍セクスカリバー』
三叉の性槍。カリバーなのに槍である。
腐っても悪魔の武器なのでそこまで弱いものではないが、扱いが乱雑な上にアザゼル篤史の技量が未熟なためほとんど役には立たない。
【人物背景】
見かけは犬面でセミロング、メタボ体型の下級悪魔。趣味はセクハラ。
関西弁で喋り、お笑いにはこだわりがある。翼があるため飛行も可能。
基本的にいい加減で懲りない性格。
学習能力が低く、仕事に関係ないことに集中するなど要領も悪い。
【サーヴァントとしての願い】
ハーレムを作り上げる。
【マスター】
ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険
【マスターとしての願い】
全ての過去を精算する。
【能力・技能】
『キング・クリムゾン』
【破壊力 - A / スピード - A / 射程距離 - E / 持続力 - E / 精密動作性 - ? / 成長性 - ?】
この世の時間を消し飛ばす「キング・クリムゾン」と、頭部に付いたもう一つの顔で十数秒先の未来の映像を見られる補助能力「エピタフ」を持つ人型のスタンド。
キング・クリムゾン発動中は、他の者の視点から見ると、何か行動をしようと思ったらいつの間にかすでに行動を終えているというように見える。
エピタフは自分の能力がこの先に起こす実際の動きを見ており、的中率は100%である。この運命が、キング・クリムゾンの能力を使うことで例外になる。
【人物背景】
イタリアの裏社会を牛耳るギャング組織「パッショーネ」の頂点に君臨するボス。
人物像は組織内ですら謎とされ、徹底的に秘匿されている。
いくつもの偽名を使っているが、その本名は「ディアボロ」である。
「帝王」を名乗り、自身の永遠の絶頂を脅かすものを許さない。
二重人格者で「ドッピオ」という名の気弱な少年の人格が内在している。
なお、今回ドッピオは少なくともこのディアボロの中にいるという形では聖杯戦争に参加していない。
【方針】
帝王として、聖杯を手に入れる。
ランサーとは早急に縁を切りたい。
最終更新:2021年06月03日 21:06