海賊房太郎&キャスター◆0080sQ2ZQQ


房太郎は経営する店の売上の集計、現金の精査を終えると戸締りを済ませた。
思わぬ予行練習になったな、と房太郎は息を吐く。自家用車に乗り込み、店舗を後にした。

(いつ見ても驚かされるな。本当に夜が明るくなった)

房太郎は明治時代の人間だ。
ガス燈などは既にあったが、街全体が光っているような明るさはない。
それに天を衝くビル群の数々。便利さを享受していたが、身を落ち着けたいと思う事は無かった。

(こうも整ってるんじゃ、俺の夢は叶いそうにないしな。戻るほうがマシだ)

房太郎には夢がある。
小さくても、己の王国を持ち、自分の事を子供や孫に語り継いでもらうことだ。
この場に招かれる前には遂げられなかったが、拾う神はいたらしい。
この度参加するのは金塊ではなく、界聖杯を巡っての殺し合い。
聖杯戦争、サーヴァント。御伽噺のようだが、この風景を見ては信じるしかない。

(白石の奴、ちゃんと語り継いだのか?)

この場で己を取り戻してすぐ、房太郎は自分の記録を探したのだが、見つからなかった。
自分と同じ、網走の脱獄囚だった男を思う。命がけで救ってやったのだが、その借りを忘れてしまったのか、それとも歴史の闇に俺共々消えたのか?
どちらでもいい。心臓が動いている限り、夢に向かって走るのみだ。


繁華街の外れにある病院。
勤め人がめいめいのアフターに向かう頃、独りの少女が扉を潜ったのを流は見た。
長い髪を後ろで括った、気の強そうな顔立ち。服の上からでもわかる均整の取れたスタイルは、周囲の男子の注目の的だろう。
もっとも、姿を消した先から魔の気配を感じなければ、流の興味を引いたりはしなかったが。

房太郎に招かれたサーヴァント、秋葉流は助けない。
妖怪と戦う光覇明宗の法力僧だが、人を守ることに使命感はない。
きっとひどい目にあうのだろうな、と予想しつつ黙って少女を見送った。

―流にーちゃん!

聞き覚えのある声。
死んだ後も心に焼き付いている、少年の眼差し。
思いやりと明るさを忘れず、自らにのしかかる運命に立ち向かっていた少年。蒼月潮。
あいつが今の俺を見たら、怒るだろうか?それとも悲しむだろうか?

(この場にいない奴の事なんかいいか、なぁ"とら")

流は夢など見たことが無い。
頑張らずとも大抵の事はこなせたし、流が実力を示すたび、周囲との軋轢が生まれた。
退屈凌ぎのために生きる、人生に対して決して本気にならないと決めたのだ。

今回も、ただの退屈凌ぎ。
マスターには魔術の心得は無いが、暇を潰すには十分な相手だった。

「なぁ、キャスターは聖杯を手に入れたら、何に使うつもりなんだ?」
「何って、聖杯に興味はねぇよ。面白そうな催しだったから、混ざりに来ただけさ。マスターが持っていきな」
「そりゃ通らない。お前に戦ってもらう事になるんだから、本格的に始まる前に分け前についても、話し合っておきたいんだ」
「って、言われてもなぁ…」

現界してすぐ、房太郎とラム酒のグラスを片手に酌み交わした。彼は流の夢を聞きたがったが、語るような夢など彼にはない。

「やり直したい過去とかないのか?会いたい奴は?」
「そういうのはねぇな。将来を誓った相手もいねぇ」
「へぇ、…じゃあ、終わったら座に帰るだけ?」

そんなとこだな、と肯くと房太郎の眼が光った。

「じゃぁ、暇なんだな?だったら、俺の家臣になってくれ!」
「…家臣?」
「俺はな、キャスター。王様になるのが夢なんだ。小さくても、果物売ったりして生計を立ててさ、そこで家族や孫に囲まれて暮らすんだ」

お前も来い、と房太郎は流に言う。
聖杯に掛ける願いが無いなら、受肉して俺の願いに力を貸してくれ。子供のような表情で、房太郎は流に手を差し伸べてきた。

「今時、王国なんて無茶だろ」
「あぁ、そのあたりは後で話すよ。この時代じゃなくてもいいのさ、元手があって言葉が通じるなら、何時代だろうとな」

あのマスターは潮とは違う。
陰に生きている者だ。陰から光に向かって駆けだしている者だ。
首尾よく生き残れたなら、同行するのもいいかもな。建国事業ほどの企てならば、「風の音」を聞かずとも済むだろう。






【クラス】キャスター

【真名】秋葉流

【出典】うしおととら

【性別】男

【ステータス】筋力C 耐久C 敏捷B 魔力A 幸運D 宝具C

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
陣地作成:D
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
”結界”の形成が可能。法力による捕縛結界を張ることが出来る。

道具作成:E
 魔力を帯びた器具を作成できる。
 逸話として持ち合わせていないがクラス補正により、仏具に破魔の概念を帯びさせることが出来る。


【保有スキル】
心眼(真):A
 修行・鍛錬によって培った洞察力。
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
 逆転の可能性がゼロではないなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

法力僧:A
 陰陽五行思想による法術、体術を用いて妖怪と戦う僧侶。
 魔的、霊的存在を感知する能力が向上。それの対象を攻撃する際、ランク分のダメージボーナスを得る。
 妖怪退治の組織の中でも、若くして獣の槍伝承者候補に選ばれた天才。

戦闘続行:C
 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、死の間際まで戦うことを止めない。
 死への恐怖を上回る、生の実感に対する渇望。

心に吹く風:E
 自分は本気を出してはいけない、という人生哲学。
 生前に辿った顛末により、Eランクにまで落ちている。
 流はスキルランク分、扇動や話術スキルへの抵抗にマイナス修正がかかる。


【宝具】
『月輪』
ランク:C 種別:対城宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:20人
 光覇明宗最強単独降魔捨法。高速回転する巨大な法力の弾を放つ。妖怪はおろか、甲板すら削るほどの破壊力を発揮する。

『隙間風吹く洋上の決闘(スピリット・ザ・ボンド)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1組
 二体で一体の妖、と呼ばれたコンビを分断させた逸話の具現。
 洋上に浮かぶ移動橋頭保の固有結界を展開し、対象の英霊と流自身を引きずり込む。
 結界に引き込まれた英霊は強制的にパスを遮断され、マスターは孤立させられてしまう。
 内部にいる間、流の筋力・敏捷・耐久がワンランクアップする。ただし、この宝具は死の状況を再現してしまう危険性を孕む。

 引き込んだ英霊が魔獣・怪物の属性を持つ存在であった場合、スーパーアーマー付与、霊格の破壊不可、さらに法力僧スキルによるダメージボーナスが消失する。



【weapon】
無銘:錫杖、無銘:独鈷、錫杖に仕込まれた鉄杭。
妖怪と戦う際に用いられる武具にして、法具。魔力を費やして補充できる。


【人物背景】
光覇明宗の法力僧。そのなかでも獣の槍伝承者候補に選ばれた青年。
幼いころから勉学においても運動においても、並外れた成績を残していた彼は、周囲との軋轢によって自らの才能を肯定する機会を持てなかった。
周囲の人間がどれほど努力しようと、勝っているのはいつも自分だった。努力を必要としないがゆえに、達成感も嬉しさも感じなかった。
持てあます才能を発揮する場を求めて、妖怪退治の法力僧となった流だったが、そこでも彼は天才であった。

他の伝承者とは異なり、槍に執着はなく、気ままに過ごしていた彼は槍に選ばれた少年「蒼月潮」と出会う。
彼に人柄に眩さを覚えつつも、自らを慕う潮の眼に耐えきれなかった彼は、人類に仇名す大妖「白面の者」の誘いに乗り、潮の前に敵として立つ。
潮にとりついた妖怪「とら」に倒されるまで、彼の心にはずっと風が吹いていた。


【聖杯にかける願い】
面白そうな催しだったから、呼びかけに応じた。房太郎が勝ち残るなら、ついていくのもいいかもな。



【マスター名】海賊房太郎(大沢房太郎)

【出典】ゴールデンカムイ

【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
素潜りの達人であり、水深200mを30分の間、潜りつづけていられる。


【人物背景】
網走脱獄囚の一人。55件以上の強盗殺人、ほかにも凶悪な犯罪を繰り返している重犯罪者。
木材を運搬する人夫として働いていたが、やがて人を水中に引きずり込んで金品を奪うようになった為、海賊と呼ばれるようになる。
家族を疱瘡で無くしており、東南アジアの小さな島に自分の国を作って王様になる事が夢。


【聖杯にかける願い】
自分の国を作り、死んだ後も自分の事を語り継いでもらう。

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最終更新:2021年06月11日 19:35