「さて、名も知らぬマスターよ。最期に言い残すことはありますか」

その日、模倣東京にあるその場所で。
一人のマスターがその命を散らそうとしていた。

「ねえよ。そんなもん」

答えるマスターは大男。
丸太のような太い腕にツーブロックの髪型、現代的なジャージの上から着こんだ鎧が特徴的な偉丈夫。
しかし今は追い詰められ、傷つけられ、膝をつき、眼前に立つ白銀のランサーを睨め上げている。

「俺はただ、生きて帰りてぇだけだ」
「そうですか。
 ですが他のマスターは皆殺しにしろ、というのが我がマスターの望みです」
ランサーの背後――はるか後方で何やらわめいている己のマスターをちらと見遣り答える。

三叉槍を振り上げるランサー。
瀑布の如く振り下ろされるそれは、鍛え上げられた大男の肉体を粉砕するだろう。

「あなたの生きる意志に敬意を表し、一撃にて葬って差し上げます」
「……うるせえよ」

思わず目を瞑り、槍が振り下ろされるのを待ってしまう。
己の運命を呪い、遂に再開できずじまいとなった母に思いを巡らす。

――戦国時代から帰って来たと思ったら、わけのわからねえ戦争に巻き込まれて。
――アメフトで鍛えた体も全然通用しなくて。
――逃げを打ってもあっという間に追いつかれて。

――チクショウ、恨むぜ。運命ってやつをよ。
――母ちゃん…すまねえ。また唐揚げ食いたかったよ。
――俺が死んでも…チクショウ……母ちゃん。


「弓隊! 構えぇ!」


聞き覚えのある声。
もう二度と聞くことは敵わないと思っていたその声が、大男を現実に引き戻す。


「射てーーー!!!」


号令と共に放たれた10本の矢がランサーのマスターに飛来する。
舌打ちと共にランサーが駆け、マスターをかばい矢をはじく。
「ラン……」
「黙って。舌を噛みます」

言うが早いか、ランサーは何事かしゃべろうとする己がマスターを抱えて走り去っていった。




弓が射られた方向に顔を遣る。
そこに立つ、黒い靄のようなものに覆われた9人と、覆われていない一人の人影。
一本結びの眼鏡女子にお団子頭の女子、凛々しい顔つきの優男――。
大男はその全員に見覚えがあった。

やがて9人の人影が霧散し、靄に覆われていなかった一人がこちらに近づいてくる。

「あなたがピンチに陥っているのが見えて…英霊の座から…飛び出してきちゃいました」

近づいてきたその人物の顔を見て、大男の口から「ははっ」と乾いた笑いが漏れる。

自分よりも20cm小さい身体。
肩にかけた弓、背負った矢筒。
信長に斬りつけられた額の傷を隠す鉢金。
頬には不破に刻まれた傷。
現代的なTシャツの上には自分のものと同じ意匠の鎧。


「お久しぶりです。高橋さん」

戦国時代に残り、徳川家康の代わりとなったその人物は、慣れた口調で男の名を呼んだ。

「馬鹿野郎…。
 俺にとっちゃお前と別れたのは、つい昨日のことだぞ……西野ぉ……」


二度と相まみえることはないと思っていた相手との早すぎる再会に、高橋と呼ばれた男は涙をこらえきれず、瞼を覆う。
その右手には赤い令呪が刻まれていた。



【クラス】
アーチャー

【真名】
徳川 蒼@群青戦記

【ステータス】
筋力D 耐久C 敏捷C 魔力E 幸運C 宝具EX

【属性】
秩序・中庸

【クラススキル】
単独行動:D
 マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
 マスターを失ってから半日間現界可能。

対魔力:D
 一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力

騎乗:B
 大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、幻想種あるいは魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなすことが出来ない。

気配遮断:C
 サーヴァントとしての気配を絶つ。完全に気配を絶てば発見することは難しい。
 ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
カリスマ:C
 軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる。

軍略:B
 多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。自らの対軍宝具行使や、逆に相手の対軍宝具への対処に有利な補正がつく。




【宝具】
『先の世の歴史を知る者』
ランク:EX 種別:対史宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
アーチャー、ライダー、キャスター、アサシンのクラス適性を持つ徳川蒼がどのクラスで召喚されても使用できる宝具。
歴史的知識を武器に戦国時代を生き抜いた逸話が宝具となったもの。
召喚された時点で『徳川蒼主従が参戦していなかった場合にこの聖杯戦争がどのような経緯・結末を辿るか』を歴史的知識として知っている。
高い知名度補正を受けているサーヴァントや目立った活躍をしたサーヴァントについてはその真名や宝具をも知ることができている。
ただし蒼自身が『史実』と大きく異なる動きをする、もしくは他者にさせると歴史は歪み、この知識が用を為さなくなっていく。
この宝具を十全に扱うためには『史実』の大筋を変えないよう立ち回る必要がある。

『二町越え届く矢文』
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:220 最大捕捉:200人
信貴山城の戦いに於いて二町(約220m)離れた森好久の本陣に矢文を届けた逸話が宝具に昇華されたもの。
『二町以内の距離にある』『味方または敵の陣地』に対し『無生物を狙って矢文を放った』場合にのみ発動し、条件を満たしていれば因果を逆転させて的中させる。
的中した後は味方陣ならステータス上昇のバフを、敵陣ならステータス下降のデバフを撒く。
デバフはCランク以上の『軍略』もしくは『カリスマ』で無効化できる。

『星徳隊(縁深き良き友)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:1~100 最大捕捉:50人
徳川蒼が戦国時代に於いて率いた星徳高校の面々を召喚する宝具。アーチャークラスでの召喚のためランクが下がっている。
通常時は弓兵隊のみ、真名開放を行うことで盾隊、槍隊、投石隊、遊撃隊を追加で召喚できる。
彼らは英霊ではなく礼装に近いものであるため、蒼が指揮を執らなければ基本的に動くことはできない。また、蒼の心情的な理由により松本考太と瀬野遥は召喚されない。

【weapon】
  • 和弓
  • 弭槍(はずやり)
  • 忍者刀
  • 大蛇丸(馬)

【人物背景】
スポーツ強豪校・星徳高校弓道部に所属していた高校二年生。幅広い歴史知識を持つ歴史マニア。
ある日突然、学校丸ごと戦国時代にタイムスリップした彼らは生きて現代に帰るために戦国武将を相手取って戦う。
学校に攻めてきた羽柴秀吉と出会い、戦いの末、未来の知識と弓の腕を買われ秀吉の下で星徳隊大将として多くの戦いに従軍する。
西野達より先にタイムスリップし『戦乱の世を終わらせない』ために歴史を歪めていた不破の謀略により徳川家康 対 上杉謙信という史実にない戦いが起こり、家康が死亡。『天下泰平』の志を託される。
不破から「歴史を修正すれば元の時代に帰れる」ことを告げられた蒼は徳川の家督を相続。
家康の仇である上杉謙信と協定を結び自分たちの手で本能寺の変を起こした。
軍略の師である竹中半兵衛、信長の護衛であった森長可、蘭丸兄弟を討ち取り、信長との決戦に臨み勝利した。
ほとんどの現代人が元の時代に帰るのを見送った後は戦国時代に残り、徳川家康の代わりに『天下泰平』の志を実現すべく戦いを続けた。
徳川家督相続前の名字は西野。

【サーヴァントとしての願い】
高橋を現代に無事帰す。






【マスター】
高橋鉄男@群青戦記

【マスターとしての願い】
なし。
強いて言うなら無事家に帰ること

【weapon】
なし
掛矢を使い慣れているが現時点では所持していない。ホームセンターに買いに行こう。

【能力・技能】
アメリカンフットボールで鍛えた筋力。
立っていられないほどの深手を負いながら戦闘を続行できる根性とタフネス。

【人物背景】
スポーツ強豪校・星徳高校アメフト部に所属していた高校二年生。母親を慕っている。自称マザコン。蒼に対しては自分たちの大将として強い信頼を寄せている。
ある日突然、学校丸ごと戦国時代にタイムスリップした彼らは生きて現代に帰るために戦国武将を相手取って戦う。
作中で最初に「順応」した生徒。タイムスリップ当初は生き残るため躊躇なく敵を殺していたが、母親を悲しませたくないという思いから徐々に殺人に抵抗を感じるようになる。
とはいえ戦意を失ったわけではなく最後まで最前線に立ち続けて蒼を支え、本能寺の変の後、ほとんどの生徒と共に現代に帰還した。
…というのが原作の流れ。本作では現代に戻れず模倣東京に招聘されてしまったようだ。

【方針】
母ちゃんの待つ家に帰る。
できるなら人殺しはしたくない。

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最終更新:2021年06月14日 20:46