「僕は殺せる。大切なものを守るためならば、親でも兄弟でも、だ!!」
肉親の面影を想う余り彼の者は修羅の道を歩む、
たとえそれが報われない思いであったとしても。
「この世界は……スタン達の手によって救われなければならない。
それを邪魔する奴は……この僕が許さない!」
あるべき未来のために得られた理想もすべて捨て、
卿は身命を捧げてでも歴史を正すことを志した。
名誉を捨て、命を捨て、名を捨て……何者にもなれない。
そして、何も残らぬであろう結末だと彼は自覚している。
何故なら彼は異物。本来あるべき世界に彼の居場所などない。
それでもなお、神へと抗う卿の物語は───
酷く、つまらない物語だ。
無数の雑多な音が溢れかえる。
闇を克服し、夜であろうとも人は往来していく。
偽物ではあるが、東京ではありふれた光景だ。
「■■■■■───ッ!!」
その音に人知れず絶叫が入り混じる。
東京にはありふれている、とあるビルの屋上。
月明りに照らされた屋上にて表現できないような悲鳴を上げる一人の人物がいた。
性別の判断は付かない。何故なら今のそれは全身が火だるまの如く燃えている。
白と黒の装いをした、渋みのある中年男性に掴まれた状態で。
「君から貰うものは……何もなかったな。」
もがけど、人の身であったそれは助かることはない。
ほどなくして抵抗はなくなり、だらんとぶら下がった腕を見て男は手放す。
こんな非常事態に、相棒たるサーヴァントは一体何をしているのか。
決まっている。その火柱となるマスターの前に既に燃やされた後だ。
「君は欲するに値するものすらなかった……先に言いたまえ。」
興味を無くしたと言わんばかりに、
燃え尽きたそれをどうでもよさそうに見ながら踵を返す。
振り返れば、この悪辣なアサシンの主の少年が険しい顔で待っていた。
アサシンと比べると、マスターは小柄でかなり若々しい姿だ。
東京と言う舞台では浮いたファンタジーな格好だが、
黒を基調とした恰好の少年は端正な顔つき。
美少年と言っても差支えはないだろう。
「この舞台は死界だ……そうは思わないかね。
もっとも、私が決めただけで卿が思うかは別だが。」
「アサシン。僕はお前のやることを制限は今だけはしない。
だが、理解も賛同するつもりもないと言うことを忘れるな。」
アサシンのしている行為は不愉快でしかない。
己の欲望のままに行動し、マスターだろうと遠慮なく殺す。
いや、彼にとっては殺すと言う行為と認識してるかも怪しい。
このサーヴァントは人の英霊ではあるが、人の心がなかった。
人の心が欠如しながら、人であると言う歪な存在だ。
「第一、お前は僕の理解など求めていないだろう。」
混沌・惡の属性に相応しいサーヴァントだ。
勝つためではなく、欲望を満たすの為に殺す。
相性の善し悪しで言えば間違いなく最悪になる。
最初に召喚し出会った際にも、絶対に合わないと悟ったほどだ。
(これについていけるだけ、僕も大概だが。)
だが、仕方ないと割り切る。これがこの世界における相棒と武器。
仲間も相棒もいない。唯一戦ってくれるのは嫌悪するこの男だけだ。
「残念だ。その奇抜な仮面から、卿とは気が合うと思ったのだが。」
やれやれと肩をすくめながら指摘するのは、少年が被っている仮面だ。
いや、それを仮面と言うには少々間違いだとも思えてくるだろう。
仮面と呼ぶには色々スカスカで、顔が入る程度に大きい怪物のような頭蓋骨。
角度次第でわかるのでは、仮面と言う顔を隠すものとしては機能してない。
「かの魔王は、焼き払った杜鵑の躯を用いて杯にした。
卿の仮面とは、同様に杜鵑から得たのではないかね?」
「これは元いた世界で変装のためにしていただけだ。
僕は元の世界の歴史に、裏切り者として名を遺した。
瓜二つな顔の人間がいれば目立つに決まっているだろう。」
彼は大罪人だ。仲間だった彼らと大切な存在を天秤にかけて裏切った。
歴史にも裏切り者として名を残した存在で、本人もそれを認めている。
そのための変装であり、彼と同じ嗜好といわれるのは不愉快極まりない。
「なるほど。故に卿は『ジューダス』と名乗ったのか。
新約聖書の裏切り者の名……いや、卿の甥の慧眼は素晴らしいな。」
「僕の夢を見たのか……あいつは多分自覚してないだけだ。」
何故初対面の人間に裏切り者たるジューダスをつけたのか。
今思えば、カイルの名づけ方は想像の斜め上を行く。
ある意味その斜め上っぷりは、あの男と親子なのだとも思えるが。
「しかし卿は実に無欲なものだよ。
聖杯と言う願望器を前に、歴史の改竄を望まないとは。」
「僕がした選択は、たとえ何度生まれ変わっても同じ道を選ぶ。」
彼、ジューダスは自分のしたことに後悔はない。
歴史を変えて、反英雄としての道を歩まない考えも、
世界を救った英雄として歴史に名を刻むつもりはなかった。
そういう俗な願いには興味すらない。
「では、何故梟を放し飼いとするのか。」
だがそこには矛盾がある。
聖杯を望まないはずなのに、
サーヴァントはおろかマスターも殺すのを傍観した。
優勝云々を望まないと言う発言とは真逆の行動だ。
「未だ明かされぬ卿の胸中、聞いてみたいものだ。
無聊の慰みとして、堪能できるやもしれぬのでな。」
「言ったところで意味はないと思うが、僕には時間がないんだ。」
神の卵―――ジューダスがいた世界に現れた巨大彗星。
アレを落とそうとする神を倒すため、その神の卵へと乗り込んだ。
言うなれば最終決戦の地。そんな最中にジューダスはこんな場所にいた。
エルレイン達が万が一に備えて用意していたのか、それともただの偶然か。
どちらにせよ、この聖杯戦争に招かれたことであの世界から自分は消えたのは事実。
仲間が消えれば確実にカイル達は探すことを優先してしまうし、戦力も低下する。
自分がいなければならないほど、自分だけに依存したメンバーではないのは確かだ。
だが、心配ないと言い切れるほど相手はやわな存在ではない。相手は紛れもない神。
フォルトゥナが世界の破壊と再生を行えってしまえば、取り返しがつかないことになる。
神が関与した世界を、果たして聖杯がどこまで通用するのかもわからないのだから。
「聖杯戦争なんてものをやっている時間すら惜しい。」
「卿も中々惨いものだ。巻き添えとなった無辜の民も構わずとは。」
「兄弟だろうと刃を向けた僕には、今更な話だ。」
最初はこの世界に来てからは脱出しようと画策した。
自分達の世界のためだけに人を殺して願望を実現させる。
それは相対していた神、フォルトゥナ達と同じ行動なのだから。
最初はこの世界を調べた。だが彼は博識であれども天才ではない。
ハロルド程の智慧のない彼に脱出手段など確立できるはずもなく。
「聖杯が欲しいなら好きにしろ。僕は興味がない。」
この数日で向こうでどれだけの時間が経っているか分からない。
もしかしたら既に手遅れかもしれない。だからジューダスは急いでいた。
スタン達が繋いだ歴史を、世界の崩壊は目の前により時間は僅かなものだ。
早急に聖杯戦争を終わらせる。これ以外の手段しか彼に出来ることはない。
手段は択ばない。騎士道精神と言ったものは最初からあったかも怪しいが、
そんなものは全て何処かへと捨て置いた。
(『受け入れなければ前に進めない』……か。)
エルレインを倒せばリアラも死ぬ。だが倒さなければ世界も終わる。
大事な仲間であるリアラを殺さずに済む方法はないか考えたカイルへ贈った言葉。
自分の歩んできた道も同じことであり、受け入れた果てが今になる。
これからの未来に自分と言う過去の人間は必要はない。
元々生き返るはずのない人間だし、自分のした行為を変えるつもりもない。
これからの未来にはカイル達は必要だ。スタンやルーティ、多くの人が繋いだ未来を守る。
「話は終わりだ。次の標的を探すぞ。」
その為ならば、いくらでも手を汚そう。
嘗ての大罪人の如く、嘗ての仲間を殺めようとした非常さ。
此処にいるのはジューダスであり、同時にジューダスに非ず。
ジューダスにして、四英雄を裏切ったリオン・マグナスへと戻る。
仲間の歴史と言う、一人では余りに重いものを背負ってしまったが故の答え。
元の世界で時間は経ってないだとか、希望的観測は一切考えない。
(最初は最悪だったが、今となっては救いか。)
聖杯を欲するサーヴァントであることは、今となっては救いだ。
躊躇せず殺し、騎士道精神など欠片もない。卑劣な手段も必要なら平然と行う。
悪の権化たる存在は、勝ち抜くと言う観点に於いては最適なサーヴァントでもあった。
「……心得た。」
自身が裏切り者であり、世間には永劫に蔑まされても。
歴史を正しいものへ戻そうとする彼の物語はアサシンにとっては酷くつまらないものだ。
愛や信義と言ったものを嫌う、マリアンの為、スタンの為と動くジューダスはそれになる
アサシンも余りいい主従は築けないとは思っているが、それでも従い続けている。
単純に聖杯と言う名器がアサシンには欲しいものの一つでもあるが、
(卿からは『結末』を賜りたいものだ。)
一見クールなようで、終末を阻止せんと臨む熱い渇望。
これについては別だ。そこには眩い光が感じられる。
聖杯にに近づけば近づく頬希少な『宝』になりうるものだ。
是非とも育んで欲しい。そして後にそれを受け取りたい。
(実に楽しみだ。この死界は。)
自分が英霊ならば嘗て仕えた魔王や剣帝が召喚される可能性。
そしていなくても数々の名のある宝具が揃い踏みの世界。
満たされることはないだろうが、堪能は出来るはずだ。
今は一先ずマスターに従うつもりではある。
自分の行動を不快には思うが、何も制止はしない。
好きにやらせてくれるのだから、暫くは尽くすつもりだ。
だがこの男は梟。いつ裏切ったとしてもおかしくはない。
天我独尊、この男───松永久秀にはそれが相応しいのだから。
【クラス】アサシン
【真名】松永 久秀@戦国BASARA
【属性】混沌・悪
【ステータス】
筋力:C++ 耐久:C 敏捷:B 魔力:B 幸運:C+ 宝具:D+
【クラススキル】
気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している
完全に気配を絶てば発見することは非常に難しい
突如として一軍を奇襲しに行くその立ち回りからランクは相応に高い
【保有スキル】
魔力放出(爆炎):C+
武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。いわば魔力によるジェット噴射
武将と言う人の身であった為、類似スキルのカルナやブリュンヒルデと比べるとそこまで高くはない
しかし宝具でのブーストがかかると低かろうと侮れない
天我独尊:B
最悪の自分本位。自分が悪であり幼子と理解しながら、
その行動をやめるつもりのない、本能と欲望に忠実な男の呼び名の一つ
精神汚染の亜種だが、彼方と違ってランク関係なしに意思疎通は可能
(意思疎通が可能でも、相手側が理解できるかどうかという点に関しては別)
高ランクの無窮の武練程ではないが、戦闘時に精神的な理由の能力低下を受けない
梟:A
何を壊し何を得ようとも、決して満たされることのない幼子
価値あるものを蒐集し、管理しつつ時には何かを与える気まぐれな梟
だが全ては彼の欲を満たす為。贈るものも貰うものも、相手のことなど関係ない
相手の心情や性格と言ったものを見抜く。真名看破みたいなものはできないが、
鮮明に把握すればするほど宝具の『与奪』を発動中の幸運が強化される
【宝具】
珠玉の調べ・焔宝 ランク:D+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~30(爆風が) 最大捕捉:100
大量の火薬をばらまいてからの大爆発を起こすと言う、派手だが普通な宝具
だが発動から一定時間の間、炎を用いた攻撃全てに魔力放出(爆炎)の恩恵を受ける
宝具自身はさほど強くなくその後のアサシンが強いと言うもの。その為宝具だが燃費はそこそこ
与奪 ランク:EX 種別:対人(或いは対界)宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
最早超能力に匹敵する奪取
左腕は宝を手にするための宝具へと至っている
相手に何かを贈る/貰うことができ、最低限その内容の宣言が必要
贈る場合は贈る内容に対しての行動に対しての有利が取れるようになる
(『犠牲』や『現実』など物理的に可能なものが条件。それ以外はただの言葉遊びで意味はない)
特殊な事例に人格が複数ある相手に『別離』を贈ると分裂(人格の分離以外無害)と言うことも可能
貰う場合は相手が瀕死であればほぼ確実にそれを奪える(逆に言えば瀕死でもないと奪えない)
物理的な物であれば宝具であろうと奪取が可能。ただし彼が奪った物を使うことは稀だし十全に扱えない
また、貰う場合は物以外の抽象的なものも収集可能。その場合は貰う相手を左手で掴むことが条件
例えば『名前』を貰うことで当人は自分の名を思い出せず、見知った相手も名前を思い出せなくなる
この都合、対象自体は対人に過ぎないものの影響力は対界宝具と言う特殊な宝具
【weapon】
十束剣
右手に構える宝刀
脇差などもあるが、使った試しはない
火薬
何処に仕込んでいるのかすら分からない大量の火薬
相手へ付与して爆破する。松永の基本的な戦術
自決する際以外で自爆することは決してない
基本的に指パッチンで起爆させる
【人物背景】
戦国乱世の大きな幼子にして極悪人
全て自分の本能と欲望のままに物を愛で、物を得る
永遠に満たされない器を胸に乱世を歩んだ
【方針】
己の欲望のままに赴く
そして、いずれは主君の『結末』を賜りたい
【聖杯にかける願い】
聖杯と言う杯を手に入れればそれでよし
【マスター】
ジューダス@テイルズオブデスティニー2
【能力・技能】
晶術
十八年前の技術ではソーディアンマスターのみが用いることが出来たが、
ジューダスが復活した世界では、ソーディアンなしでも一般人が使役可能になっている
とは言え、ソーディアンを使った場合の威力とは比べると、やはり見劣りしてしまう
ジューダスはソーディアンマスターだが、シャルティエを所持してないため晶術は平凡
強くとも中級晶術、ネガティブゲイトなどに留まる
ソーディアンマスター
簡潔に言ってしまえば意志を持った剣、ソーディアンと意志の疎通が図れる特殊な体質
とは言うが、今の彼はそのソーディアンと別れてしまった以上この技能はないに等しい
剣術
リオンの時に卓越された剣の腕は高く評価され、
将来はセインガルド王国の誇る七人の指揮官、
七将軍になるだろうと言わしめるほどの才能を持つ
短剣と剣の二刀流による、手数の多い攻撃が特徴
また、リオンの頃も空襲剣などの移動しながらの攻撃も多い
【weapon】
剣・短剣
何処で手に入れたかもわからない、ただの短剣
【ロール】
学生だが、まともに登校はしていない
【人物背景】
第二次天地戦争でスタン達四英雄を裏切り、
歴史にその名を刻んだ裏切り者、リオン・マグナス
エルレインの手によって蘇った『英雄になれなかった存在』だが、
彼は自身のしてきたことに悔いがなく、エルレイン達と敵対する
まさに最終決戦、神の卵を地上に落とされる前に決着をつける道中
幸か不幸か、彼は願望器を手にする切符を手に入れてしまった
【聖杯にかける願い】
どうでもいい。神の歴史改竄を相手に、
聖杯が機能するなど全く思っていない
【方針】
一切の手段を問わず優勝を狙う
脱出の手段があればそれを目指すが、確信が持てるもの以外は捨て置く
最終更新:2021年06月15日 20:48