(30)720 『Have a good day!1~はっぴーでらっきーなサンデー~』

※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



――――AM 7:37 正門前


すっごい人。

それがこの場所に着いて最初の感想だった。
きっと小春だけじゃなく、みんなもおんなじ気持ちだったと思う。
開門と同時に入場しようってことになったから早めに出てきたのに、先客が何百人もいたんだもん。
前に撮影で来た時はこんなに人はいなかった。
あ。ひょっとして、あの時の順調な撮影はスタッフさんの人知れぬ苦労とかがあってこそなのかも。
今度一緒になったら差し入れでもしてあげようかな。


ここは、富士京DEZUNIE動物公園。


「いろんなテーマパークのいいとこどりをしたみたい」って評判の、国内有数の大型遊園地だ。
小春たち9人は、その遊園地の開門を待つ入場列の中にいた。


はじめこそ予想以上の人の多さに圧倒されたけど、そんなことでテンション下がるほど
うちらはヤワじゃない。
列が進むのを待っている間にすっかり調子を取り戻した。
今では、どこのアトラクションに行きたいとか、こんなグッズを買いたいとか、
もう何度も語り語られた話を繰り返している。
でも不思議。
同じ話を何度聞いても話しても、全然飽きることがない。
なんでだろって思って視線をずらすと、愛ちゃんと目が合った。
小春の目を見て、愛ちゃんはにっこり笑う。

・・・ああ、そうか。

なんにも言ってないのに、あの笑顔が小春に答えを教えてくれた気がした。


―――楽しいことは、何度繰り返しても楽しいんだよ。




みんなで遊園地に行こうって話になったのは結構前。
閉店後のお店で9人揃ってご飯を食べてる時だった。



年頃の女の子が9人も集まったんだ。
まじめな話、メルヘンな話、いろんな話題が飛び出した。
揺らいでる消費社会についてとか、笑顔と幸せはどっちが先なのかとか、
ギネスに載るくらいの夢ってどんだけ素敵なんだよ、とか、まあいろいろ。
それらのことを一通り語り合ったあと、話題は定額給付金の使い道へと移る。

「組織抜けたせいで仕送り止められてピンチなんだよねー。やっぱ生活費に消えちゃうかなー」
「絵里はねぇ、夏服とかぁサンダルとかぁバッグとかぁ・・・あれ?
ねえ、キューフ金っていくらもらえるの?」
「れいなは肉!絶対肉に使うと!」
「何?肉とな?おうれいな!メガマック食いに行こうぜ!ガハハ」
「特別欲しいもんもないし、やっぱ貯金かな~?はよ自立したいしぃ」
「貯金なんて夢がない人のすることだね!小春?小春は使うよ!それはもぉド派手に使っちゃうよ!」
「中国人お金もらえない。サベツだよ!顔みなおんなじじゃん!」
「国民すべテにお金バラまくなんて、日本てフトっ腹デスね。・・・チッ!」

こんな感じで話は和やかに進んだ。
だけど愛ちゃんだけはその輪に加わらず、何かをじっと考えてるような顔をしている。

そんなに使い道悩んじゃうのかな。宝塚のプレミアムDVD買うんじゃないのかな。
もしかしてお店の売り上げがピンチでお金はそっちに回さなきゃいけないほど家計が苦しいのかな。
なんて思って小春が話しかけようとした瞬間。
愛ちゃんは、突然立ち上がってこう言った。

「なあ。給付金使ってみんなで遊園地でも行かん?」



言われてみれば、名案だと思った。

9人で遊びに行くなんて今まであんまりなかったし、そもそも小春はロケとか取材ばっかで、
仲間同士で遊園地に行ったことがない。そんなのは別世界の話だと思ってた。
それから、みんなのお金を集めて9で割ればジュンジュンとリンリンも一緒に楽しめる。
何よりそういう使い方をすれば思い出まで残せちゃうわけだし。
反対する理由は、どこにもなかった。


「行くー!!!」




だけども年齢も職業も違う9人の予定を合わせるのには時間がかかった。
特に大変だったのは小春のスケジュール調整。
お休みちょーだいって言ってもらえるようなお仕事でもないから、
こうやってみんなと休日を合わせるのに今日までかかってしまった。
まったく。もうちょっと融通利かせてくれてもいいのに。

でも、もうそんなのどうでもいいんだ。
気分は上々、体調万全、ついでに降水確率10パーセント。
こうして、今日という日を最高の形で迎えることができたんだから!


「だいすきが~とまぁらないー」
「ちょ、久住さん。歌ったらさすがにヤバいですって」

気分が盛り上がって歌を口ずさんだら、みっつぃーに注意された。ちぇー。

まあ確かに、歌ったりなんかしたら子供が寄ってきちゃうかもしれないな。
声かけられるのは嫌いじゃないけど、今日だけはそういうの忘れて過ごしたい。
でもさあ、矛盾してるかな?
注目はされたくないのに、今のこの気持ちを大声で誰彼構わずに教えたいって思ってる。

私、世界一幸せです、って。