(31)112 『光の抗争-7-』

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     ◇◆


どんな裏切りも
どんな悲しみも
どんな苦しみも

すべてを忘れることはできなくても
包み込んで癒せる存在でいたい

共鳴者として共に戦い始めた時から
貴女は大切な人だから
大切な仲間だから


貴女が弱っても私が守る、守ってみせるから――――




 「…っは…ここまで来るのに、時間かかったぜ…」
 「…意外だね。なんでよっすぃがここに来るの?」
 「なんでかは、今もあんたに向けてる銃で分かると思うけど」


息を整えながら後藤に話しかける吉澤。
その手には銃が構えられ、後藤に銃口を向けていた。

そして吉澤は新垣と高橋の方を一回見やると、すぐに後藤の方へと視線を戻した。


 「…新垣を、殺ったのか?」
 「”まだ”死んではないけど、このまま処置しなければ、死ぬよ」
 「っ後輩にまで手をかけるのか?」
 「…だって、うるさいんだもん。安部さん安部さんって……もうこの世にはいないのにね」


薄ら笑いを浮かべ、後藤は冷たい視線を吉澤に向けた。
空はまだ雲に覆われ、周囲は生温かい風に吹かれていた。


 「…ところでよっすぃは、ごとーを殺しに来たのかな?」
 「さっき言ったはずだ。銃をごっちんに向けてるからな」
 「彼女たちを、高橋たちを助けるつもり?」



鋭い視線と共に殺気が吉澤の身体を貫く。
ここで視線を外したら一瞬で殺されてしまうような雰囲気の中、吉澤は心を保ち言葉を出す。


 「…さあね。分からない。…でも、気付いたらここに来てたよ。銃をごっちんに向けながらね」


まだ身体の中に埋もれていた殺気を放ち、後藤から視線を外さないように答えた。
決して腕を落とさず、銃口を向けたままで。


 「…よっすぃは、闇側だよね」
 「ああ、そうだよ」
 「じゃあ、なんで高橋たちを助けるようなことをするの?」
 「……正義は嫌いだ」


偽善の正義。万人を救うことなど、できないに等しいのに。
彼女たちは自ら危険を冒してまで、己の信念である蒼き正義を掲げて突っ込んでいくんだ。
目の前で悲しむ人々がいるからとか、弱き者がいるからとか。
みんなの望む平和な未来の為にと謳い、ただ前を見据え戦っていく姿。


 「でも、彼女たちを嫌いになることなんてできない。今では闇と光に分かれても、可愛い後輩だから」



じわりと滲む汗が、頬を静かに伝う。
潮の香る風が、よけいに身体に纏わりついて気持ち悪く感じる。
波の音も、風の音も、すべて聞こえない。

聴き逃すまいと耳を傾ける先は、対峙している後藤の言葉。


 「…よっすぃも、いつからか離れていったよね。ごとー、寂しかったんだ」
 「……」
 「もう、ごとーの周りには誰もいない。一人なんだよ。だから」


少しだけ目を伏せ、どこか悲しい笑みを浮かべた後藤に違和感を感じる。
けれどその違和感が何なのか、今の吉澤には分からなかった。


 「…闇も光も、人間を悲しませるものは何一つだって存在してはいけないんだ。
  新しい世界を創造して、すべて、すべて、無くしてあげる…」


後藤が視線を再び吉澤へ変えたと同時に手をかざし、光の球を吉澤にぶつけた。
それに気付くも一瞬遅かったせいか、横に跳んだと同時に片足に光の球が掠り傷を負ってしまう。
血が流れ続けるが、吉澤は銃口を後藤に向け乱射する。
その度に避けていく後藤に苛立ちながら、傷を負った足に手を当てながら後ずさる。



 「…っはぁはぁ…」
 「もう終わり?あっけないねー」


一歩ずつ、ゆっくりと後藤は吉澤に歩み寄る。
さきほどの傷のせいで足の神経が切れてしまい思うように歩けなかった。
吉澤は弾の入ってない銃を放り投げ、這いながら後ずさる。


 「能力は?使わないの?」


吉澤は能力を使おうとするもすべて遮断されてしまう。
それは、目の前にいる後藤の力が圧倒的だから。


 「…よっすぃ、時間稼ぎならもう終わりだよ。新垣はもうすぐ死んで、高橋は敗れるんだ」


目線を高橋たちのいる方へと向けると、新垣は横になっていた。
顔はどこか青白く、息は弱々しく吐かれていた。
一方高橋は、放心状態になっているのか新垣を見つめたまま一歩も動かずに新垣の傍にいた。


 「…っ高橋!!何やってんだよ!目を覚ませよ!!」


叫べども、高橋が気付く様子は無い。



 「…っあ…」
 「そんなに叫んだら、傷がさらに開いちゃうよ?バカだなー、よっすぃは。
  こんな所に来なければ予定よりも早く死ぬことなんて無かったのにね」
 「っ高橋ぃ!!起きろぉ!!!」
 「もう終わりだって…」
 「生きろ!新垣ぃ!!」
 「言ってるじゃんかっ」
 「がはっ…!!?」


その言葉と同時に後藤は吉澤の鳩尾に蹴り込みを入れた。
腹を抱え、床に伏して苦痛に顔を歪ませる吉澤を目の前にして、後藤はまたも笑みを浮かべた。


 「よっすぃはごとーの大切な親友だったから。一瞬で死なせてあげるね?」


起き上がる気配の無い吉澤の傍に膝をつき、後藤は手を吉澤の首の近くへと持っていく。
後藤の掌に集められる力の結晶が、段々と形に現れ、鋭い光の筋へと変わる。


 「バイバイ、よっすぃ。君は確かに、ごとーの大切な親友だったよ」


 「……った、かはし…」