(33)223 タイトルなし(雨の中の獣)

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雨が、降っていた。
いつごろから降り出したのか、女は覚えていなかった。

覚えているのは、肉を裂き、骨を断つ感触。
一瞬遅れて吹き出す鮮血。断末魔の叫び。

一糸纏わぬ全身が、両の手が、血に染まっていた。
爪の間に肉片がこびりついている。
口の中に血肉の味が残っていた。

自我を取り戻したとき、かつてはよく嘔吐していた。
いまでは罪の意識と、悲しみにも似た諦念が込み上げてくるだけだ。

同じなのだ、と女は思った。
獣の姿をしていようと、人の姿をしていようと、
自分が化け物であることに変わりはない。

絶え間なく落ちてくる雨粒を顔に受けながら、女は真っ黒な空を見上げた。
自分が泣いているのかどうか、女にはわからなかった。
ただ、念じた。
降りしきる雨に、祈るように念じつづけた。

洗い流せ。
血も、涙も、罪も、孤独も、悲しみも。
すべて洗い流せ。