(34)206 『motor fivers 前編』

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荒涼とした大地。砂嵐が吹き荒れたこの地では、青い空など遠い昔にしか見た覚えがない。
地面にはヒビがはしり、見えるのはところどころにある四角い家々と井戸だけ。荒れ果てた街にその女は立っていた。


今から一時間前、ダークネス本部では幹部を集めての会議が極秘に行われた

報告をするのは諜報部部長の吉澤である
「・・・ということより、これまで我々と協力関係にあった組織が裏切ろうとしていることが判明しました。これは確実な情報となっています!」

その組織は麻薬や武器の売買で利益を得ており、ダークネスはその組織をボディガードとして働き、組織の活動が明るみに出ることや組織に敵対する組織を潰していった。月々組織から一定の金額を徴収することによって、ダークネスは利益を得ていた。

もともと裏の世界では知らないものはいない組織であるダークネスとつながっている組織を襲おうとするものなどいない。
警察やFBIからの捜査の手が及ぶ前にいくらでもダークネスは対処できるため、組織にとっては完璧なボディガードであった。

蜜月関係であったと両組織は思われていた。ダークネスのボスですら、先日“組織”のボスにお中元を贈っていた。

しかし、それにもかかわらず“組織”はダークネスを裏切った。圧倒的な実力と勢力を持つダークネスから離れるという普通では考えれない行動に飛び出たのだ

吉澤の説明が続く。
「組織が我々と手を切った理由というのも入手しました。先日、先方のボスが暗殺され、その暗殺を行ったものが新しいボスとなったとのことです。この青二才が自信過剰なものらしく、自分が最強の能力者であると述べていたとのことです。
 さらにあろうことか明日にも先方がこちらに乗り込むということも入手いたしました。ボス、いかがしましょうか?」

幹部全員の視線がボスに集まる。


ボスはテーブルの上に置かれているお茶を取って言った。
「まあ、ほっといてもええんやけど、来たら来たでうちらの本部壊すだろうから修理費が惜しいし、誰かつぶしに行って来て」

あっけなく行って見せるボスに対してマルシェが手を上げて質問をした。
「誰が行けばよろしいのでしょうか?ボスお選びください」

ボスは一瞬考えたがすぐに前を向き言った。
「誰でもええけどな~行きたい奴はおらんのか?暇つぶしになると思うで。行ったもんは、今ある仕事は後回しにしてええからな」

それを聞いた幹部は、『ほぼ』全員は私が行く!と手を上げてボスにアピールしだした。
「キャハハ、簡単にわたしがやっつけてやりますよ!ボス!一ひねりですから~」
「ボス、氷の魔女と恐れられている、このワタクシめにおまかせください。無礼者を美しい氷像にして持って帰らさせていただきます」
「敵が強力な能力者ということに科学者魂が燃えます。決して仕事をさぼるためではなくてですね、興味で行きたいです」
「せっかくここまで情報を仕入れたのですから、楽しみは私にご褒美としてくださいよ、ボス」
「最近、鞭が錆びて仕方がなかったわ~骨のある仕事だわ。楽しめそうね・・・」
「強化したサイドブースターの機能を試したかったので、ボス、Aにご指名を」
「・・・眠いからいいや」「新しく買ったカメラで風景取りたいからパス」
「未来は私を呼んでいないわ」

結局、ボスの指示でじゃんけんをすることになった。
「「「最初はグー」」」「「「「じゃんけん、ポイ」」」」
グー、グー、グー、グー、パー、グー

「やったぁ~私の勝ちね。それでは皆様、悪いですが楽しませてもらいますわ。」
ジャンケンの結果、静粛人Rが向かうことになった。

そういうわけで今、Rはいつもの戦闘服で組織のあるアジトの近くまで来ていた。


Rは改めて吉澤から聞いた情報を思い返した
「組織構成員は本部では200人くらい。能力者は幹部3人とボスのみ。その幹部は3人ともレベルとしてはB(―)クラスだから問題ない・・・か。なんだか、思ったよりも軽い仕事になりそうだわ」

手に持った黒色の鞭が風にひらりと揺れる。鞭に付けられた鋭い金属性の刃物は太陽の光を反射して赤く妖艶に輝いていた。
この鞭はこれまで無数に散っていった者たちの活き血を吸って、それをRが丁寧に磨いて作られた特製品である。
刃物は見た目では分からないくらいの細かい凹凸が付いており、ちょっと触れただけでも血管を破く。

「最近は・・・あまり暴れらなかったから・・・うずうずするわ」
口角を上げて声を出さずにRは笑い、吉澤から渡された地図を見た。

「なるほど・・・こういう構造になっているのね…ここが入り口で・・・ここにボスの部屋があって・・・」
奇襲計画をRは練りあげ、いよいよ行動に移す時が来た。

Rは鞭を颯爽とかかげ敵のアジトである建物まで走りだした。鍛え抜かれた脚力を活かして敵の誰にも気づかれることなくRはアジトまで100mの位置にまで移動した。

Rが目的の建物を見るとそれは不釣り合いとも思えるくらいに大きな屋敷であった。
「まったくあの組織は何を考えているのかしら。見た目を派手にして明らかに怪しいじゃないの・・・マハラジャじゃないんだから。潰しに来て正解だったかもね」

敵に気づかれないように警備の様子をちらっと目をやると入口には数人の銃を構えた覆面をした男がいた。吉澤の情報が確かならば彼らは能力者ではないことになる。

「なるべく楽しみたいから、どこまで能力を使わずにできるか試してみようかしら…」
そういって手に持った鞭を改め得て持ち直して、一気に建物に向かって走り出した。


突然建物に向かってきた黒い衣服の女を見て警備兵は早速銃を構えた。
(侵入者だ、構えろ)(止まれ!止まらなければ撃つぞ)
警備兵たちはRに向かって一斉に銃口を構え、引き金を引いた。

ダダダダダッッッッッッッ・・・

「何言っているのか、わからないんだ、よ、っと」
Rは華麗にジャンプを決め、構えられた銃から放たれた全ての弾をよけ、同時に空中で鞭を振り回した。着地と同時に警備兵の胸には一直線に紅色の線が引かれ、その場に崩れ落ちた。

「生きているものには忠告を与えるわ。敵が正面から向かってきたときは先に引き金を引いた方が負けよ。ギリギリまで引き付ける。それが鉄則」
Rは鞭を一度振り付着した血液を払って、建物に向かって走り出した。

先ほどの光景を見ていたのであろう次々と兵士が出てくる。マシンガンを構えたものやナイフを構えてもの、青龍刀を振りかざすもの、次々と敵は出てくる。
(俺が殺る)(ここを通すわけにいは行かない)(ヤツを倒せば俺は幹部になれるんだ)
様々な感情が立ちあがる中、Rは次々と鞭を敵に向かって走らせていく。

聴こえるのは敵の向かってくる足音、銃の乱射音、兵士たちの叫び声とヒュンと小気味よい鞭のしなる音でだけであった。そして鞭のしなった跡には赤いしずくが常に舞い上がり、兵士達が倒れこんでいた。

Rが鞭を使うにはいくつかの理由があった。その1つが攻撃範囲の広さ。ロープ上の物質はなれるまでには時間を要するが一旦コツをつかむと手足のように裁くことが可能となる。
加えて刃物を仕込むことで殺傷能力は向上し、普通なら一瞬ひるむだけの攻撃も致命傷となる傷を与えることができる。


2つ目としてはその攻撃が不規則であるという点であった。マシンガンやバズーカがいかに殺傷能力に優れていたとしてもその動きは直線的であり、発射する物体の向いている向きで攻撃対象は自分が狙われていることが分かる。
しかし鞭による攻撃では鞭を『なぎ払う』ようにして動かす直線的な攻撃に加え、手首を引くことで鞭の動きは曲線に変化し、その動きは持ち主にしか把握できないため敵は不意を突かれ傷を負う。

その動きは風のようであった。兵士が気がつくころには銃を撃てないほどの近距離に踏み込まれ直接打撃を受ける。鞭が届く範囲にいないものは銃を構えようとしているが、建物の中では仲間がいるために思い切り打つことはできない。
そのためにあっという間に距離を詰められ、Rの鞭の餌食となってしまう。

自分を中心にして踊るようにその場で一旋すると鞭は兵士たちの胸元に一様の傷を生み、その血は後ろに待機している兵士達からR自身の身を隠す絶好の壁となる。


しかし、鞭だけで戦うことも限界が来たようであった。

「オマエ、止まれ!」
ようやくRにも何を言っているのかわかる敵が出てきたことに満足して、Rは鞭を振り回すのをいったん止めた。
最後に振りぬいた鞭でまた7人ほどの兵士が倒れこんだ。

「やっと幹部様のお出ましか。どうしたのかしら?遅いじゃない。もう残っているのは100人もいないんじゃないかしら」
「黙ってイロ。お前はダレだ?ナマエ言え」
そういって幹部と思われる男達はRの周囲に残っている部下を全員集め、取り囲んだ

さすがにカタコトなのは仕方ないが仕方がないことだとRは思っていた。
「あなたの名前はなんなの?先に名乗るのは常識でしょ。そのセリフを言うのは敗者が多いのよ、知ってますか?」
「生意気イウナ!俺の名は・・・」
「興味ないからいいわ。教えてあげる、私の名前はR」
「オマエから聞いてきて、それはないだろ。オマエ、倒す(一斉に銃をぶっ放せ~)」
幹部の一人の言葉と同時にRの周囲に銃弾の雨が降り注ごうとしていた。

(チッ、ここまでが限界か・・・能力無しで倒したのは300強ってところか。。。つまらないが、能力の第一段階を解放するか)
Rは心の中で自身への制限を一部解除した。

Rは両手を上げ一瞬、目を閉じた。次の瞬間にはその手からは闇色の光が放たれた。


念動力:最も普遍的な力。念じるだけで対象物に対して物理的干渉を及ぼすことができる。しかしそれゆえに能力者自身の強さが最も単純に現れる力でもある。

Rに向かった銃弾はあと少しで目標に着弾する距離で空中に静止した。

「な、なんだト。。。あ、ありえない。。。人間じゃない」
幹部の男は歯をガタガタふるわせながら、後ろに下がった
「人間じゃない?気にいったわ。そうね、私は人間じゃないわ。粛正人Rよ」

Rがそう言い放つと同時に空中に静止していた銃弾がそれを打ち出した本人へ向かって飛んで行った。銃を構えていた兵士達は空中に弾が止まっていたのを見て止まっていた。
誰一人として反射された銃弾をよけきれるものはおらず、全て倒れこんだ。
「残りはあなた達幹部3人とボスだけよ」

Rは後ろに下がっていた幹部に近づいた。コツリコツリというブーツの音が石造りの床にむなしく反射する。

「ヤメロ、近づくな」
少しずつ少しずつ後ろに下がっていく男
「許してくれ、オレ達は悪くない。新しいボスガ」
手をRに向けながら必死の弁解をする男
「助けてクレ、これが欲しいんだろ」
手に何かの粉を差し出しながら一歩Rに近づく男

「チッ、お前らなんかが幹部とはな・・・つまらない組織と手を組んだものだ。後悔しなさい、この私と出会ったことを」
そう言ってRは大きく鞭を持った手を掲げた。ヒュンと軽い音がして鞭が男達に向かって飛んで行ったが、急に停止した

「お前ら、何をしている?」後ろから男の声が聴こえた。「「「ボス」」」