(35)384 『motor game(後編)』

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「キャハハ」
また・・・あの女来やがった・・・相変わらず耳に響く甲高い声だ
こっちは徹夜明けで眠いというのにちょっとくらい位が高いからって休んでいるんじゃねえよ。あ、近づいてきた

「かおり~どこ~おい、そこのお前、香織知らない?」
お前に、お前って言われる筋合いはないが上司には逆らえない・・・

「いえ、私は見ておりませんが、第3セクションの方ではないかと思われます」
「なぜ、そう思うんだ?」

{お前の声が聴こえないならどこでもいいんだよ}
そんな本音が喉まで来ていたが必死にこらえ、丁寧に対応した
「いえ、この時間でしたら中庭からお帰りになる時間と思いましたので」
「・・・あんた、なっちに続いて香織にまでストーカーしてるのか」

おい、いつ俺が『天使』のストーカーをした。確かに、天使は素敵なお方だ
でも、俺みたいな愚民が触れてはならない存在なんだよ。あのお方は純粋な白でなくてはならないんだよ。
う、同僚にまで白い目で見られている。知っているだろ。俺にはそんな時間がないってことくらい。
お前こそ、この前マルシェ様と仲良くなりたいって言ってただろう。

「あら、矢口、こんなところでまたさぼっているの?」
「あ、香織。ちょうどいいところに来たね!こいつ香織のストーカーなんだよ」

だから、俺はストーカーじゃないって言ってるだろ!相変わらずこのインチキ女の感情は読めないからわからないが…

「あ、そう。今度からしないでね。気持ち悪いから」

お前もかよ!だからしてねえって、俺は無実だって。おい、チビ女笑ってるんじゃねえよ。同僚、肩に手を置くな!


「矢口、なんで私を呼んでいたの?」
「それはね。ジャ-ン!『トモダチコレクション』」

チビ女はゲームが好きなのか。それだけで予言者を呼んだのか?いったいどういう仲なんだ?

「知ってるわよ。あたしを作ったんでしょ。この前見せてもらったじゃない」
「そうそう、矢口となっちが親友なんだよ~」
「ふうん・・・」

インチキ女も大変だな…しっかし、興味なさそうだな。あんな相手をしないといけないなんて。。。
現実ではあのチビと天使は親友にはなれないんだろうな。ククク・・・

「それだけなの?こっちは忙しいんだからね。」
「何?香織?何かあったの?教えてよ」
「あの裏切った新垣の所在地が明らかになったんだよ」
「あ、裏切り者のおマメちゃんが?どこよ、早速倒しに行くからさ」

だからお前みたいなのがいるからボスが情報を流さないんだよ。勝手な行動するんだから
この前は亀井と道重とかいう女が小部隊を殲滅させたらしいし、この組織も危ないんじゃないのか?

「それは他の幹部が行っているから。あなたは待機」
「チェーまたかよ。つまらないな・・・じゃあリゾナンターのところ行こうかな」
「だから、それは不吉だから禁止と何度も行っているでしょう」

親子みたいな会話だな。。。身長差もあるし、影だけ見れば親子に間違われるだろうな。。。

「!そんなことより見てみて、面白いことが起きたんだよ。ほらほら」
「何よ、どれどれ・・・」
「Rとミティが喧嘩したの」


チビ女め、ほかの幹部も入れたのか…そして仲間同士を喧嘩させて楽しむなんて、どんな楽しみ方だよ。
ん?まてよ。ってことは天使とかR様もいるのか?A様もマルシェ様もいるのか?豪華なマンションだな

「ほら、すぐに仲直りさせてあげなさいよ」
「え~面白いから、ほっとくよ。キャハハ。ちなみに香織の親友はマルシェだから。大好物は卵焼きだった。
あ。それからこいつも入れてみた」

え?俺?そういえばこの前誕生日と血液型を聞かれたけど、そのためだったのか?
チビ女が作った俺のMiiは似ているのか?気になるぞ。

「どうだったの?」
幹部だらけの生活・・・楽しそうだ。苦しそうだけど…
「こいつ・・・友達0、キャハハ・・・うける~」

      • やっぱりいつかチビ女を見返してやる

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ダークネスの本部の中でも特に厳重な地区に彼女の部屋は作られている。
張り巡らされた赤外線システム、埃をも感知するような精密な重力感知システム。
無論至るところには監視カメラがあり侵入者を見逃すことは決してない。

「中澤さま、本日もお疲れ様でした。それではお部屋の鍵を閉めせていただきます」
「ああ、お疲れ様。しっかりかけてな。ほな、おやすみ」
「はい、お疲れ様でした、ボス」

中澤の部屋に鍵をかけた部下の足音が遠くなったことを確認して中澤は戸棚から焼酎を取り出し、グラスを4つ並べた。
グラスに氷を入れ適度な割合の水割りを作り、部屋の中心に置かれたテーブルに持っていった。

「ほな、始めようとしようか。もう、みんな出て行ったで。今日は四人や」


「よっしゃ、久々の酒や。飲もうとしよか」
カーテンの後ろから一人
「この酒は麦かそれとも芋か?芋は匂いキツイからウチ、あかんで」
奥の扉からまた一人
「最近、年のせいかな?肩が痛むんよ・・・そろそろアカンくなってきたか?」
ベッドの中から一人出てきた

中澤はグラスを各自に渡した。
「それでは、久々の報告会を始めたいと思う。まずは、乾杯」「「「乾杯」」」
グラスがチーンと音を鳴らした。

「くぅ・・・こいつは上物やな。姉さん、ゴチになるわ。」中澤の向かいの女が感想を述べた。
「ちょっとやめてよ、おいしいのは当たり前でしょ。この私が選んだんだから」
「ハハハ、ごもっともや」
四人全員が笑い声を上げた。シワを消すためにはどの化粧品がいいか、最近知ったおいしいお店などの話題で会話に花が咲いた

「・・・そういや、そっちの状況はどうなんや?」中澤が自分の右隣の女に尋ねた
「うちか・・・まあ、スパイの新垣が適度に情報を送ってくれるから安泰ってとこやな。
あいつはできるヤツや。多少精神は鍛えなくてはならないが、スパイとしての責務は完璧や」

中澤の向かいに座っている女が少し身を乗り出した。
「ほう、羨ましいのぉ。うちのところのスパイは寝返ったで。
そちらさんも気ぃつけんと寝首をかかれるで。こっちの姉さんみたいに」
そういって女は中澤の左に座っている女を指さした。

「知っとるやろ、こいつはマルシェに利用されていることになっているんだから」
「やめな。私だってあの科学者がいろいろ利用していることくらい知っているのよ。それを知っていて、あえて操られているフリをしてるんだから。
 マルシェを自由に離させて私は美味しいところをいただくの。ステキじゃない」


中澤の右隣の女が、自分の向かいの女に問いかけた
「スパイが逃げたって、どんな感じなん?情報が足りないのか?」
「いや、あいつの居場所はわかっている。潜入させた先に寝返っただけだ。
ただ殺らないのはうちの預言者が不吉なことをいうからな。時が来たらすぐに始末する。」

「そういえば、姉さんのところの状況はどうなんですの?」中澤に質問が飛ぶ
「ウチかい?まあ、変わりようないね。相変わらずのリゾナンターとの膠着状態。基本的にはそっちと変わらないんじゃないの?」
「まったくだ。圧倒的不利にもかかわらず、戦い続けるあいつらには本当に感動すら覚えるわ」

「『共鳴』だっけ?数人の心が1つになることで通常の数倍の力を示す能力」
「そうそう、最初聞いたときはみんな驚いたっけ」
「部下達は予想もつかない力って話題になっていたわねえ」
「普通は一人一能力が『原則』。それを破る力である『共鳴』。まあ、中には例外もおるようやけどな」
「特にリゾナンターはその例外が多いな。二つの能力保有者の亀井、道重」
「それから光井もや。水守とかいう能力があるらしい。かつては飯田も持っていたらしいな」
「そして3種類の能力を持つ高橋と久住。もっとも久住の『魅力』なんて忘れられているがな…」
「実際、複数の能力を戦闘に活かしているのは亀井くらいだがな…『風使い』と『傷の共有』」
「道重も『崩壊』は危険が迫ったときのみ、久住は今は専ら電撃を放ち、光井は予知で指示を出す、高橋に至っては能力を使うことすら減っている」
「久住をこちら側に連れてくれればなあ…アイツはもっともっと強くなる。少なくともRは超えられるハズや」

「しかし、『共鳴』という事実に一番驚いたのは、ウチラやろな」
「部下よりも簡単に納得ができたからな。とは言え、ウチラと似た能力を複数人で使うとは・・・」

「一人一人では弱くても、お互いの能力が互いに作用しあう・・・まさに」
「「「うちら」」」

もしこの場を眺めることができた人間がいたならば、遠目から見たらさぞかし不思議な光景であったであろう。
中澤の部屋のバラを模った間接照明に照らされた影は四つ。同じくらいの身長、体形、声
そして、多少の日焼けによる肌の色の違いはあるにせよ全く『同じ顔』であった。


「時を操りし、K」「未来を視る不戦の守護者」「天使」「悪魔」「魔女」「天才科学者」「鉄の女、R」「サイボーグ、A」
一人一人の『中澤』が自分の部下達の名前をあげながら、そのことを噛みしめる。

「うちらの部下にはこれだけの実力者がおる。正直、まとまって反乱を起こされたらウチは終わりや」
「自分で言うのもなんやけど、正直『人望』だけではあいつらは押さえつけられへんしな」
「実際にアンタのところはマルシェに乗っ取られそうになったやろ」
「それは言わん約束。まあ、反乱を抑えるためにウチラが互いに協力しているというわけやろ」

中澤の一人がグラスに焼酎を注ぎながら会話を続けた
「なんやったっけ?『parallel resonant』って付けたんやっけ?ウチらの能力」
「正式名称は忘れた。ただ、いくつも存在する並行世界を移動し、同時に存在することのできる能力ってとこやろ」
向かい側の中澤に酒を注がれたこの世界の中澤が解説を続けた。

「うちらはお互いの危機を知ることができる。心の声とでもいうのか・・・」
「まあ、なんとなくわかるってことや。リゾナンターの『心の声』と同じ感じや」
「そしてうちらは、それぞれ『異なる』もう一つの能力を持っている」

ニヤリと少し色が黒い中澤が焼酎を一気にあおった。
「うちは、『気』を自由自在に操ることができる」
「うち、あんたの能力羨ましいわ。それで肩コリとかも取れるんやろ。シワも対処できるし」
たった今発言した中澤は色が少し黒い中澤に睨まれた。
「そんなチンケな理由で求めんなや。こいつで何回あんたの危機救ったと思ってるんや」
「ホンマ、感謝してるで、あのときはヤバかったわ~」

「一人一人の能力は正直、部下ほど強力ではあらへん。『気』を操るとか空間の隙間を作る程度のことや。
 ただ『1人1能力』の原則が適応されないことが最大の利点やな。」
「1つの世界に二人以上のウチらがいるときは、『中澤』全員が他の世界の『中澤』の能力も使えるようになるってことやな。
使い方は直感で理解できるし、『共鳴』されて威力は増幅される。
      • ところで、最大で幾つの能力を同時に使ったか覚えとるか?」
「ウチの記憶では12能力やな。Gがキレたあの時はヤバかったな…およそ2年くらい前のことか」
「ピンチの時は互いに協力して戦える。そして『本当』の能力を知っているのはウチらだけや。
共有できる能力は並行世界の数だけあるし、云わば無限の種類の能力を使えることになっとる」


「しかし、同時にウチらが王であり続けるために、他の世界にいることがバレルのを禁止しているって意外とメンドクサイって思わんか?」
「何をいうとんのや!それを守ることがウチらの間での約束やろ。その約束を破ったせいで安定した地位を失ったら元も子もないやろうが」
「その通りや。考え直しや。ただ、今のところ、部下の誰にも知られておらへんから上出来やけどな。」

「仮に見つかっても、知られる前に叩くのみ。あれはいつやっけ?
 誰かに一度見つかったことがあったよな。しかも全ての世界で同時に」
「めっちゃ昔やろ。覚えてへんわ。珍しい事件やったな。
 全ての並行世界で同時に見つかるなんて。あんなことはなかった」
過ぎ去りし過去を振り返るなんてことはしたくないとでもいうように眼を伏せた。


「まあ、結局何事もなく過ぎたけどな。ウチの世界では、新垣に始末させたことは覚えているが…
 それからはリゾナンターなるものが出てきて忘れてしまったからな。」
「『i914』・・・あいつはなぜかわからんがウチラ全ての世界で共通した存在や。
 早いとこ潰さなあかんな。そうでなくてはウチらの野望が崩れる」



中澤の一人が口を開いた
「そういえば、最近『トモダチコレクション』というゲームが流行っているそうだ」
「ああ、うちの矢口もやっていた」
「あれやろ、DSでMiiを作って、友人・知人などのMiiを登録する。
 そして架空の島のマンションで生活するMii達の生活を観察したり、干渉して楽しむゲーム」
「見方を変えれば『仮想空間』を作ってその世界の支配人として人間関係を見て楽しむもの」
「食事を与えたり、服装、インテリアを与えて自分の好きなキャラを作ることもできる」
「その一方で気にいらなけらば消すことができ、思い通りの世界を作ることができる」


この世界の中澤が口を開いた。
「そんな自分だけの世界を作るゲームが流行っている。気持ちはわからんでもないな」
右隣の中澤が続けた。
「やはりだれしも、『自分の世界を作りたい』という欲望は共通のようだ。思い通りに行きたい。束縛を嫌っているのかもしれない」
さらに隣の中澤がめんどくさそうに後を続けた
「ゲームの中では、キャラは作られた世界で親友、恋人を作り、感情がプログラムされた世界をぼんやりと生きている。
結局はプレイヤーがゲームの世界を好き放題にできることを楽しんでいるんだろう。仮想にしかすぎないのに・・・」
最後の一人の中澤が締めに入った。
「普通の人々が『仮想社会』に甘んじている一方で我々は」
4人はグラスを高々と上げた。

「「「「この全ての世界を支配する」」」」


会合が終わった後にこの世界の中澤は他の世界の中澤を見送ることにした。
並行世界の中澤はそれぞれの世界に繋がる入り口とても簡単に作れる。
指をならせば入口が開く。その際には景色が一瞬にして裂ける。その色は闇に満たされている

並行世界の中澤と一人ずつ別れの言葉を交わして別の世界の二人の中澤が帰っていった。

「じゃあ、あんたで最後や。次はあんたの世界にウチがおじゃまするで」
「では、姉さん、お好きな日本酒用意しておきますよ。また来週にでも」
「せやな。それまで、危険を感じたらすぐに飛んでいったるわ」
「さすが、ウチや、頼もしいわ。あ!そやそや、さっきのこと、思い出したで」
「何をや?」帰ろうとした中澤が振り返った

「アンタの世界で、うちらの能力を見たヤツや」「誰や?」




               「小川麻琴」