(35)432 『闇夜に浮かぶ孤高の炎』

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  炎と共に揺らめく姿

  闇をも照らすその煌めきは

  孤高の存在にまでは届かない

  声をも包む 温かさを持って



        ◇◆



深夜零時、新宿にそびえ立つビルの屋上で私は相手を待っていた。
全身に黒を身に纏い、暗闇に溶け込もうとする姿は、到底一般人には見えないだろう。
高層ビルの屋上で、強風に煽られながらも微動もせずに相手を待つ。

 「…やっと来たか、待ってイタヨ」

まだ中国にいた頃の在籍していた組織からの調査官が今夜来ると伝えられていた。
場所は人目につかない所。調査官が赴くビルの屋上で会おうと、約束がされていた。

そこで話し合われる内容は、全てが極秘の裏情報。
決して表に出されることはなく、“存在してはならない”情報であった。
それらの情報を受け取る代わりに、私は日本での闇組織についての情報を渡す。
それが等価交換であり、私の今回の仕事でもある。



 「…こちらからは以上だ」

一言そう伝え、私は調査官達を背にして高層ビルから飛び降りた。
落下に際して更に強くなる風に煽られながら、平然とした顔で空中でもう一度跳躍し、近くのビルへと跳んでいった。


        **


新宿から離れたビルの屋上へと来た私はそこで一旦身体を休むことにした。
ビルからビルへと伝い歩き、さすがに十五分程経った頃、身体が少しだけ冷えてきた。

周囲に誰もいないことを確認して、私は自らの能力で炎を作った。
掌に灯る炎は、とても温かくて冷えた身体にはちょうど良かった。

 「アタタカイ…」

その場に座り込み、掌に灯る炎を見つめる。
ゆらゆらと揺らめき、温かさが身に染みる。

自然と目を閉じて、少しの間だけその暖かさに身を委ねた。

その時、一瞬声が聴こえた気がした。
私はその場でゆっくりと立ち上がり、周囲を見渡す。
しかし近くに気配は無く、少し遠くまで探そうとしたが、すでに声は止んでおり居所は掴めなかった。



どこから聴こえてきたのかと思いながら、私は仲間たちを思い浮かべる。
そして仲間たちの声を探そうとするが、誰一人として声を拾うことはできなかった。

仕方が無いと諦め、私は炎をかき消すと、自分が住む家を目的地にまたビルからビルへと伝い歩いた。


        **


最近、仲間の一人が帰り道の途中で敵に遭遇したと言っていた。
夕暮れ時は気を付けるようにと注意されていたのに、彼女は敵と遭遇し戦った。
簡単に倒してすぐに家へと帰ったそうだが、仲間たちは皆心配していた。

私も、心配をかけるわけにはいかない。
そう思い、私は足早に自分の家を目指した。

炎を灯す孤高の存在でも、何かを求める微かな声には気付けないでいた――――――