(36)036 『ミティの受難』

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世界征服を目指し、日夜悪行三昧に精を出している悪の組織ダークネス。
7ヶ国に23の支部と60の出張所、78の連絡事務所を有し
創立11年の中堅勢力ながらも悪の組織業界第3位のシェアを誇る。
ただ第3位ということは、1位になれない問題点を抱えているということでもある。

幹部級の能力者の実力には定評があり、戦闘魔獣の改造技術においても注目されている。
戦闘員の戦闘能力にも大きな問題はない。
情報部門の弱さがもたらした市場のニーズと組織トップの認識の乖離こそが、業界のトップに手が届かない原因とされていた。
その状況を打破する為に、新たな能力者の獲得による戦闘部隊の再編、調査部門に精力を注入している途上にある。
とはいえ、本来の業務である悪事を怠るわけにもいかない。
今日も幹部ミティの率いる実行部隊、コードネーム“マッドドッグ”は、
悪の組織にとって永遠の使命とも云える幼稚園児の送迎バスの乗っ取りを試みようとしていた。

今回の作戦はいつにも増して完璧だった。
衛星都市である○○市なら幼稚園のバスの警護も手薄い。
さらに、万が一を想定して自慢の合成魔獣イカカニゴンまで投入した。
下級戦闘員もまずまずの活躍を見せた。
商社を定年退職して現在の職に就いたという初老の運転手も、ミティ自慢の豊満な肉体で悩殺し思いのまま…の筈だ。
ちょろいぜっ、と思ったが…

「それまでやよ、ダークネスの悪人ども!」

慌てて見つめたその先には、それぞれが思い思いのポーズを決めた7人の戦士が立ちはだかっていた。
いつもながらにモノトーンのコスチュームで遠目には誰が誰だか見分けがつき難い。

「ふん、現れたな。リゾナンターどもって2人足りねえじゃねえかよっ」

「リゾナント・インディゴは中華料理屋のバイトを抜けられへんかったやよ。
 愛佳っやなくてリゾナン・パープルはクラスが新型インフルエンザで学級閉鎖になったから外出禁止なんよ」


緊張感を削がれるぜ、相変わらず。 と思いながらも部下の戦闘員達に命令を下す。

「お前らやってしまえ!」

「リゾナント・ファイアー!!!」 「ぐわぁぁぁぁ…… 」

「リゾナント・サンダー!!!」 「ぐえぇぇぇぇ…… 」

「リゾナント・丸太ん棒キック!!!」 「ぎゃぁぁぁ……、ちょっと幸せ!!!」

「リゾナント・ぬぅーん」 「ミゲーーーールッ!!!!!!!!!!」

「リゾナント・高いところまで一緒に瞬間移動してドロップ!!!」 「落ちるーーーっ!!!」

メンバーの頭数と緊張感は足りないものの、そこは共鳴という絆で結ばれた正義の味方。
勇壮な掛け声が戦場に響く度に、哀れな下級戦闘員達の悲鳴が轟く。

「お前ら、下ってろ。 こいつらにはヤツをぶつける。
 出でよ! 戦闘魔獣イカカニゴン!! クソ生意気な奴等を自慢のハサミで八つ裂きにしてしまえ」

我ながら大時代な台詞だと思うが、敵のリーダーが噛み噛み星人なだけに自分が踏ん張らなければこの話がコメディになってしまう。
いやコメディでも面白ければ大歓迎なのだが、作者の筆力から見て笑えないコメディになっちまう。
笑えないコメディの敵役なんて道化は、死んでも願い下げだ。


イカカニゴンの投入にミティは絶対の自信を持っていた。
軟体生物特有の柔らかい身体は物理的な攻撃を寄せ付けない。 
10本の腕の先端に大きなハサミを装備している。
体長2メーターの改造魔獣は、その実力を誇示するかのように腕を振り回し、正義の味方達を威嚇していた。
凶暴で醜悪な魔獣の登場に、リゾナンターの間に緊張が走る。

「よし、ここはれいなにまかせるっちゃ。 リゾナント・パ~~~ンチ!」

一見華奢な身体には似つかわしくない抜群の身体能力を誇るリゾナント・ブルーこと田中れいな。
ダークネス顔を気合で歪めながら、地を蹴り宙に舞い上がり、体重と落下の重力を込めた一撃を繰り出す。

イカカニゴンを一蹴するかと思われたが、イカカニゴンの柔らかな身体は、衝撃を完全に吸収してしまい、
逆にリゾナント・ブルーの身体が、弾力で弾き飛ばされてしまった。

「わあっ…… 」

「田中っち。大丈夫? 」

「おのれ、怪物め。 許せない。  皆、フォーメーション、真夏の光線やよ!」

「おうっ!」

立ち上がったブルーも加えた7人の戦士たちは、戦闘フォーメーションを変更する。

「オーッホ~ッホッホッホォォォ… 御覧になって、リゾナンター。  我がダークネスの科学力を。
 今日が貴様らの最後の日になるのよ。 さあ、イカカニゴン、 小癪な正義の味方達を殺っておしまい!」

勝ち誇り、イカカニゴンに命じるミティ。
我ながら大時代な台詞だと思うが、ここで自分が踏ん張らないと(ry


しかし…、だが……

?????

イカカニゴンは突っ立ったまま身動き一つしない。
いつの間にか10本の腕も力なく垂れ下がっている。

「ど、どうした、イカカニゴン、こいつらを倒すんだ。さあ、早く!」

有利だと思っていた戦況に嫌な風が吹いてきたことを感じ取ったミティは、ややヒステリックに命じた。
その時傍らに控えていた科学部門の責任者ドクター・マルシェが、大きく一つ手を打った。  パン!!

「うわぁ!」

間近で鳴った大きな音にミティは驚いた。
リゾナンターも戦闘員たちもマルシェに注目する。

「美貴ちゃん。悪い知らせがあるんだ」

悪の天才科学者が、言葉とは裏腹の愛らしい顔でミティに告げる。

「おう、誰かと思えばダークネスの誇る悪の天才科学者、妖魔学士コンコン殿ではないか。 一体何事ですかな 」

人前では本名で呼ぶなっていつも言ってるだろうが、という抗議の思いを込めて敢えて最も呼ばれたくない名前で呼ぶと、
みるみるうちに顔を赤らめる妖魔学士コンコンことドクター・マルシェだった。


「うーん、私としたことが、とんだ失態だよ。 でもね前々から幹部会議で訴えてたんだよ。
 研究施設の老朽化と、組織内の意志伝達機能の劣悪さがいつかヒューマンエラーを招くって。 そもそもさあ」

「オッホン、ドクター。 ただいま取り込み中ゆえ、手短かに説明願えるかしら」

胸の中に芽生えてきた嫌な予感から目を逸らそうとしながらも、声は無意識の内に上擦っていしまう。

「うーん。 じゃあ単刀直入に言うね。  イカカニゴンは、もう駄目だね」

「な、な、な、何でだよ。 どうしてなのさコンちゃん?」

目の前に敵がいるというのにあっさりと致命的な事実を告げられたことに我を忘れてしまう。
そしてマルシェの返答をその場に居合わせた者全員が固唾を呑んで見守った。

「見てもわかるけど、イカカニゴンはイカとカニの遺伝子を操作して誕生させた戦闘魔獣だから…」

「…だから?」

「だから、当然海の中でしか、棲息出来ないんだよねえ」

マルシェを除く全員が、そう、リゾナンター、戦闘員、人質にされかかった幼稚園児、皆がコケた。
ミティはといえばあまりの情けない事態に腰を抜かした。

「いててっ、… あのぉ、それではドクター、ひょっとすると我らが頼みの魔獣イカカニゴンは、 もう…」

「はい、逝っちゃってるね、アハハハハハ… こりゃあ大失敗だよね、ハハハハハ… 」


怒りに駆られたミティは科学部門の責任者の頬を抓り上げる。

「このスカポンタンのアホンダラが。 一体どうすんだよ!
こんなクソ面白くも無い話に5レスも使っちまったんだぞ! それで最後はそういうオチかよっ 」

「イテテテ… 美貴ちゃん。 今はそれどころじゃないから、戦闘魔獣にはお約束の自爆装置が仕掛けてあるから… 」

「あるからどうしたっていうんだよ」

「あと、2,3秒で爆発するんじゃないかな」

そして、大爆発が起った。
爆煙に紛れて逃亡を図りながらミティは誓った。
私をこんな目に合わせた作者は、草の根分けても探し出して酷い目に遭わせてやると。